──しばらく活動休止ということですが、それはなぜなのでしょう?
ILL-BOSSTINO(以下、BOSS): 単純に3枚目のアルバムを作りたいから制作に集中したいんだ。この3年間は、ライヴばかりだったから。自分たちのWebサイト(http://go.to/blueherb)もやったり、レーベル運営したり、自分のアイディアがたまっていかないんだよね、出る一方で。
──2ndをリリースした時と今では、TBHを取り巻く環境は良くも悪くも変わりましたよね。
BOSS: まぁ、狙い通りというか、予想通りという感じかな。環境としては、ちょうど良いくらいじゃないかな。
──それは、セールス的なところも含めて理想に近いということですか?
BOSS: うん、かなり完成してきてる。TBHの第2期としてはね。確かに『SELL
OUR SOUL』の時は、インタヴューもたくさん受けて、すごくメディアに露出したから、傍目に見ればブレイクしてるというか…、まぁたいしたブレイクでもないんだけどさ。でも、それ以後の約2→3年間、俺はいろんなクラウド(観客)と現場(ライヴ)で戦って、打ち負かしてきたから。100本くらいライヴをやってきたけど、どこも満員だし、どんな小さな町に行ってもクラウドはちゃんと自分でリリックを解読して向かってくるから。(リスナーの数が)落ちてきていると感じたことは一度もない。むしろ、そういう話題性みたいな部分に頼らないでリスナーを増やしてきてるという実感の方が強いよ。
──現場でのコミュニケーションが一番大切だ…と。
BOSS: インタヴューはさ、結局インフォメーションでしかないから。俺という人間とか俺らの音楽を知ってもらうためには、生のライヴを観てもらうことが全て。だから、これまでやるべきことは全部やってきてるという感じはしてる。落とし前はつけてきたっていうか。
──これまでライヴは何回か観てきましたが、昨日のライヴ(12/12@LIQUIDROOM)は、TBHとしてもうある程度完成している感じがしました。
BOSS: そうだね、もう完成してる。寸分の隙もないっていうか、コンビネーションひとつとっても完璧だよね。100本以上のライヴで常に修正して、常に精度を上げて、こなしてきたから。今日の時点では、昨日のLIQUIDROOMが今までの中で一番。でも、次のライヴでは、絶対それを超えるから。ライヴをやればやるほど、俺らはまだまだ上にいく、絶対。あとクラウドのレベルも上がってくるしさ。前よりも上にいかないと、観に来てくれないからね。
──TBHのメンバー編成は、ライヴではDJ DYEさん、制作ではトラックメイカーのO.N.Oさんという役割が決まってるのですか?
BOSS: 決まってるね。DYEほど、俺のライムを聴こえやすくミックスできるDJはいないから。恐ろしいEQ(イコライザー)の動かし方でやってますよ。全部のトラック、それに俺の声の域までも把握してるから。曲の中でストリングスやキックとぶつかるところがあれば、それぞれ下げたり。その中でも更にリリックの中で一瞬ココを聴かせたいという部分があれば、そこだけを浮かび上がらせたりとかね。そこまで細かくできるようになってる。パーフェクトだね。
──今回のレーベル・コンピレーションですが、前作よりも全体的に音の質感が変わりましたね。
BOSS: うん、そうだね。NAOHITO UCHIYAMAとSHUREN
THE FIREという新しい血が入ったのがデカいと思う。広がったというか…。SHURENなんて絶対、俺の影響を受けてないラッパ-だから。むしろ、自分のほうがカッコいいと思ってるよ(笑)。まだ20代そこそこ。それでこの音はないでしょう(笑)。ド渋だよね。全て一人でやってて本当にすごいよ。恐ろしい。
──内容としては、全体的にダンス・ミュージック寄りになってきてますよね。O.N.Oさんのトラックもブレイク・ビーツだけど、4つ打ちっぽくも聴こえるし。
BOSS: 「智慧の輪」とか? O.N.Oちゃんも昔みたいにスタジオに篭って作るよりも、一人でライヴやるようになったから、目の前にいる人たちのために作るという意識が強くなったんじゃないかな。それで、自然にダンス・ミュージックの要素が入ってきたんだと思う。
──BOSSさん自身、TBHとは違うダンスミュージック・ユニットHERBEST MOONでアルバム制作をしたことはどうでしたか?
BOSS: 新鮮だったね。まあ、基本的にダブなんてやればやるだけできるんだよね。テクニックが必要というか、あるのかも知れないけど、むしろそれより感情の方が強くて。感情次第でいくらでも作れると俺は思ってるから。だから、フランソワ(・ケヴォーキアン)さんとかああいう人の作る音に比べたら20年くらい遅れてるんだけど、今の自分たちのいるところから見れば、全然順調。TBHに関しては、ずっと自分らの思うヒップホップの先端を走り続けてるという意識があるけど、ことダブとかダンス・ミュージックとかいう部分では確実に20年は遅れてるからね。当然まだまだ学ぶべきことは多いし、道は長いと思ってる。