| ――前回のときに、アルバムはオリジナル曲ばかりで構成される予定と伺いましたが、有言実行になりましたね。
石田ショーキチ(G&Vo):そうですねぇ。せっかくですね、バンドにソングライターが2人もいるので、負けてられねえぞ(笑)と。
――黒沢さんは、このバンドだと気負いがまったくないので曲がすんなりできることが多いとも言ってましたが。
黒沢健一(Vo&G):そんなこと言ってましたっけ?(笑)。ああ、でも楽なことは確かです。もともとみんな友達だし、バンド内にプロデューサーはいるし、まかせられることは安心してまかせられるので、楽でしたね。
――メンバーそれぞれが他の活動をしているので、一斉に集まるのが本当に限られてしまったようですが、逆にその少ない時間の中で濃い時間を過ごせたのでは?
石田:レコーディングをする前に、リハーサルスタジオでの時間を多く設けて、その段階で綿密にやれば、あとはレコーディングスタジオで「せ~の」でほぼやれましたね。
こうして、完成された1stアルバム『BRAND-NEW MOTOR WORKS』。2人に思い入れのあるいくつかの曲の解説をお願いした。
黒沢:確か「The Slide」は、大コピーバンド大会をやっていたときに、「そうだ、アルバムの話も来ているから、みんなで曲をだそうよ」なんて言って、ジャムってたときにできたメロディに石田くんが歌詞をつけたものですね。「World
One Sign」はMOTORWORKSでアルバムの前にシングルを2枚リリースするという話になって、それじゃあシングルユースな曲を作らなきゃ、と言ったときにいくつかできたものの中のひとつ。その時は1stが「SPEEDER」になることも決まってなかったと思う、確か。
石田:僕は最初、「SPEEDER」の存在自体、忘れてましたから(笑)。そう思うと掘り起こしてきたよね。
黒沢:うん。それで「SPEEDER」が1stシングルに決まって、あとひとつと考えていたときに、そういえば石田ってGS好きだったよなあ。このバンドでGSスタイルの曲があったらおもしろいよなと。
今回、アルバムに収録されている曲は11曲、ほぼ半々で石田、黒沢作品となっているが、基本はあくまでも4人でジャムっていたところで完成させた。デモのデモみたいなものを持ち寄ってそれをリハスタジオで4人で聴き、100円ショップで買ったホワイトボードに石田が楽譜を書き写しては「今のデモではこんな感じ~。さあ、ここからどうして行く?」というような感じの曲作りではじめられたという。
石田:ほんと、100円ショップで買ったホワイトボードを4枚まとめてつなぎ合わせて、でもパタンとたためるようにして(笑)。どこへでも持っていったね。
 |
|
▲(左から)ホリノブヨシ、黒沢健一、
石田ショーキチ、田村明浩
|
今回のアルバムの中で、2人が一番思い入れのある曲は「コスモゼロ」。石田ショーキチがメインヴォーカルを取っている。
石田:自分で歌うつもりじゃなかったですからね。黒沢健一に歌わせたいという曲で、作詞作曲というより、デザインをした曲ですから。自分では絶対歌えないようなテクニカルなメロディを歌のうまいシンガーがいるんだからと思って、メチャクチャ、テクニカルなことを書いて……。で、ある程度オケができ上がりつつあって、さあレコーディングというときに、黒沢が「お前、歌えよ」と言い出して(笑)。
黒沢:ライヴでは歌っていたんですけどね(笑)。僕はすごくこの曲が好きで、そういう意味では自分で歌うのはまったく問題なくて、むしろがんばりたいと思っていたくらいで。自分で歌っているのも想像できたしね。そんなんだから、自分でもこれを歌うことを疑っていなかったぐらい。でもあるとき、レコーディングの前にメロディの確認や歌いまわしのサジェスチョンを石田くんとやった後に、石田くんが歌っているデモテープを聴いたんですね。そしたらもう「やっべえ!
こっちがオリジナルじゃん」って。もうガツンとやられてね。
石田ショーキチの言葉を借りれば、このヴォーカルチェンジは「豪送球を投げたら、ピッチャー返しで飛んできてモロ当たって“痛ってえ!”みたいなもんですよ(笑)」。なぜ、黒沢さんは自分で歌わなかったのだろうか。
黒沢:オリジナル・ヴァージョンとカヴァー・ヴァージョンの違いってあるじゃないですか。絶対こっちがオリジナルで、一回そっちを聴いちゃうと、その自分で歌ったというものがフェイクに感じてしまって。きっとうまく歌えるだろうし、石田くんの考えている世界に近づけるのかもしれないけど、それは俺の声質とか歌いまわしとかで済むようなものではなくてね。アルバムに入れるんだったら、なんとしても石田のヴォーカルじゃないと。実際最初はバンド内の意見は半々だったんです。だから、いろんなことを言って、最終的には脅して(笑)歌ってもらった。
石田:さっきも言いましたけど、すげえ難しい曲ですからね。人用に作った(笑)。
きっちり役目を果たした石田さんの「コスモゼロ」は、このアルバムの聴きどころのひとつであるだろう。
こうして収録されたこのアルバムでは5人のミキシングエンジニアを使っている。
――5人の起用って、少し多いのでは?
石田:プロデューサーがミキシング・エンジニアをチョイスするのは曲のアレンジのひとつです。アルバム1枚がずっと同じような曲だったら別ですけど、多少なりとも違う傾向の曲があるんだったら、別々の人に頼まないと。ミキシングはやる人によってまったく別に仕上がってきますからね。今回は自分の得意な曲は自分でやったけど、この曲ならあの人がいいなとか、この曲のチャームポイントはここだから、こういうのに強い人は…と探して。オーダーはバッチリでしたね。
――そういうこだわりどころから、遊びでスタートしたバンドと言えどもプロ根性をきちんと見せた1枚という感じですね。
石田:そうだね。当たり前のことを本当に当たり前にやっているだけなんだけどね。
――まもなくこのアルバムを引っ提げての全国ツアーがスタートしますが、最後に抱負を。
黒沢:俺はライヴをやるたびに、こんなに楽しくっていいのか?というのにターボがかかって(笑)。楽しくってしょうがないんだよね、ホント。
石田:俺なんて、あからさまにステージ上で笑ってますもん(笑)。俺たち、浮いてない?って思うけど、いっかあ!
楽しいしってね(笑)。
取材・文●山田正樹
|