新たな出発
天国か地獄かはその人次第。 ElevenのAlain Johannesが夢見ていること。 「スーパーマーケットの通路に商品案内の目印がなく、ベビーフードの隣に電球があるみたいに、あちこちに商品がばらばらに置かれていたら…まるで『買うべきもの!』って感じだったら、そりゃ最高だろうね! 店に行くのがずっと楽しみになるよ」 ありがたいことに、Elevenの4枚目にして最新作の『Avantgardedog』は、Johannesの想像上のスーパーマーケットのような混乱状態とは程遠い。 しかし様々な影響が冒険色豊かに混じり合っていることは確かだ。純粋なポップと中近東風メロディが出会い、バロック風キーボードがカーニヴァル調のにぎやかな音と並び、美しいメロディが温かみのあるアコースティックギターと絡みあう…そして案内の目印はない。それでもすべてに合点がいき、すばらしいサウンドが生まれている。Elevenの得意技は抑制された混乱であり、Johannesによればそれはロックバンドだけに許されることだという。 「ロックミュージックというのは創造性の傘みたいなものだと思う」と彼は語る。 「その傘の下では自由自在に動き回れる。詩情や、あらゆる種類の音楽から受けた影響を持ち込んで、ある種の信念と集中力とロックミュージックだけに固有の感覚とを一緒に解き放つ。それはスタイルというものとは違う。切れ味のあるギターの音を指すのでもない。すべての音楽様式の中で最も自由なものだよ」 15年の間(Elevenとしては過去10年)、ギタリスト/シンガーのJohannesと彼のパートナー(音楽の上でも恋愛の上でも)であるキーボード/シンガーのNatasha Shneiderは、ロックンロールを限界まで推し進めてきた。 彼らの付き合いは、Red Hot Chili Peppersのメンバーも在籍していたJohannesの’80年代初期のバンド、What Is This時代にさかのぼる。 このバンドの解散後、JohannesとShneiderはWalk The Moonを結成、後にドラマーのJack Ironsが加わってElevenが誕生する。3枚のアルバムを制作後、’95年、アルバム『Thunk』の制作中にIronsはPearl Jamに加入、その穴をGreg Upchurchが埋めた。
「すごく暗い時期だったけれど」とJohannesは思い起こす。 「たくさん曲を書いて、自分たちを再発見しようと努めていた。自信と、音楽ビジネスの狂気に汚されてしまった自分たちと音楽とのピュアなつながりを、取り戻そうとしていた。まさにそんな時だよ、Soundgardenがヨーロッパツアーに俺たちを連れて行き、さらに経費も出してくれたのは…俺たちのツアーをサポートしてくれるレコード会社はなかったから」 「それに彼らは自分たちと同じ一流ホテルに私たちを滞在させてくれたの」とShneiderはつけ加える。 「本当に手厚く面倒みてくれたのよ。」 Soundgardenのメンバー全員がElevenの大ファンだった。実際、Soundgardenが解散した時、シンガーだったChris Cornellは映画『Great Expectations』のサントラ盤用の曲を、JohannesとShneiderと共作した。 それがきっかけとなって、Cornellのソロアルバム『Euphoria Morning』を彼らのホームスタジオで一緒に作ることになった。 「彼はエゴを捨てきる大いなる努力をしたわ。彼が信じるすばらしいもののために」とShneiderは語る。 「彼は誰ともコラボレートする必要はないの、だってあれだけ才能があって、大きな視野を持ってる人だから」 ElevenはCornellのバックバンドとしてツアーに参加した。この時期には、彼らはA&Mのために『Avantgardedog』を録音し終え、A&MとUniversal Musicの新たな提携の成立を待っている状態だった。 そして今そのアルバムは発売されたが、Elevenはまた同じジレンマに直面している…彼らの音楽が特定のジャンルには収まりきらない、胸躍るようなロックチューンばかりだからだ。 もっとも、それを気にしているわけではない。 「ひとつのカテゴリーに収まるとするなら、それは私たちが作ったカテゴリーになるでしょうね」とShneiderは言い切る。 「そうさ」とJohannesがニヤリとする。 「『買うべきもの』というカテゴリーだよ!」 by Janiss Garza |
しかし、常に解決しない問題が1つあった。レコード会社は好奇心をそそるこの洗練されたバンドに、どう対処すべきか分からなかったのだ。なにしろElevenはどこにも収まらないバンドだったから。以前のレコード会社との離別後、彼らを理解してくれるレーベルを探すのに2年かかった。