【インタビュー】ナイト・レンジャー「AIにも真似できないものがある。それは心と魂だ」

2026.08.24 10:24

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まさにこの夏を締め括る一大イベント<THE GREATEST ROCK FUKUOKA(通称FUKU ROCK)>の開催が目前に迫ってきた。8月29日(土)、福岡・みずほPayPayドームで行なわれるこのフェスでヘッドライナーを務めるのはJOURNEYだが、必見なのは当然ながら彼らのステージだけではない。昨年10月にフェアウェル・ツアーと銘打ちながら大阪と東京のファンに別れを告げたナイト・レンジャーが、この機会に今一度、日本にやって来るのだ。

今回は、日本に人一倍の思い入れを抱いているこのバンドを代表して、リード・ヴォーカルを分け合うジャック・ブレイズ(Vo, B)とケリー・ケイギー(Vo, Dr)のふたりがインタビューに応えてくれた。彼らとのお喋りはいつも笑いに満ちていて、しかもジョークと本気の境界線がわかりにくかったりすることも多々あるのだが、北米ツアーの合間を縫ってリモート取材に応じてくれた今回も、まるでこの名コンビの漫才を聞いているかのようだった。その和気藹々とした空気感が読者の皆さんに伝わること、そして彼らの発言が、このフェスを観に行くべきかどうか迷っている人たちの背中を押すことになるのを筆者は願っている。

――こうしてあなた方からまたお話を聞けるのを嬉しく思います。日本でのフェアウェル・ツアーが行なわれたのが2025年10月のことでした。ファンの中にはあのツアーをもってナイト・レンジャーが歴史を閉じてしまったものと思い込んでいる人たちも少なからずいるようなので、まずその誤解を解いておきたいんですが、あなた方は今年も精力的にライブ活動を続けていますよね? 今現在のツアーの調子はどうですか?

ケリー:すごくいい感じだよ。2026年はこの年末までに60本強の公演を行う予定なんだけど、今のところ調子は最高だ。ブレット・マイケルズやZZトップなど、古くからの友人たちとステージを共にしながら、ツアーの日々を楽しんでいるよ(註:このインタビューが実施されたのは、ZZトップのドラマーであるフランク・ベアードの訃報が届く数日前のことだった)。

ジャック:今週末にはリック・スプリングフィールドとのダブル・ヘッドライナーのショウが控えている。昨年の日本公演以前も、それ以降も、休む暇もないくらいノンストップで動き続けているんだ。終わりがないんだよ。というか、あまりにツアーが楽しくて終わらせられないんだ(笑)。

――継続中の北米ツアーもフェアウェル・ツアーの一環としてのものなんですか?

ジャック:いや、フェアウェルというのはあくまで「日本でのツアーとしては」という意味だったんだ。何故なら、日本でやるからには自分たちが最高だと思える状態でやりたかったから、あのタイミングでけじめをつけたかったんだ。そして実際、満員の武道館でそれをやり遂げることができた。あれは本当に最高だった。すると今回「もう一回やらなきゃ駄目だよ」と、今回の件を持ち掛けられてね。しかも話を聞いてみたら俺たちの友人であるジャーニーやラウドネスも出演するっていうじゃないか。そこで「わかった。じゃあもう一回だけやろう。これが最後だ。日本に行って福岡でプレイするぞ」ということになったんだ。

――あなた方は1985年に2回目のジャパン・ツアーが実施された際に初めて福岡公演を行なっていて、以降、1997年、1998年にも福岡でプレイしています。この土地についてはどんなことが印象に残っていますか?

ケリー:あまりに昔のことだから記憶が不確かなんだけど……ジャックはその後もTMG(Tak Matsumoto Group)のツアーで福岡を訪れてるはずだよね?

ジャック:そのとおり。福岡はとにかく食べものが最高なんだよ。

ケリー:みんなそう言うんだよな。福岡の食べものってそんなに特別なのか?

――ラーメンも他の土地とは違うものですし、鶏の水炊きとかも有名です。福岡は何でも美味しい、という人も多いですよ。

ケリー:いいね。なんだかますます楽しみになってきた(笑)。

ジャック:あと、博多人形というのも福岡のものだよね? 確か昔、メンバーそれぞれ20個ぐらい買い込んで帰ったことがあったよ。今もみんなの家のどこかにあるはずだ。

――それはすごい。ところでナイト・レンジャーはこれまで何度も日本に来ていますが、この国でいわゆるフェスに出るのは今回が初ということになりますよね?

ケリー:そうだと思う。

ジャック:確かに初めてだね。<FUJI ROCK>とか<SUMMER SONIC>といった日本を代表するフェスに出たことはないし、日本で今回みたいな大規模なフェスに出るのは初のことだ。それも今回、<FUKU ROCK>に出ようと思った理由のひとつなんだ。バケットリストって知ってるよね? 人生が終わるまでにやりたいことのリストのことなんだけど、そのリストの中に「日本で大きなフェスに出ること」というのがあったのさ。それを達成してこそ、本当の意味で華々しいフェアウェルになるんじゃないかと思えたしね。

ケリー:昔、KISSが独自のフェスを開催するという話があって、実はそれに出演する予定だったんだけど、残念ながらそのフェスのプラン自体が立ち消えてしまったことがあった。過去にはそういう話もあったんだよ。

――そんなことがあったとは。しかもあなた方にとっては日本の野球場でプレイするのも初めてのことですよね? 今回の公演会場、みずほPayPayドーム福岡は、福岡ソフトバンクホークスのホームで、ホークスは日本が世界に誇る王貞治さんも長年にわたり監督を務めていたことがあるチームなんです。

ケリー:王さんの名前は聞いたことがある。ジャックはどう?

ジャック:もちろん知ってるさ。超有名だからね。しかもミスター王はナイト・レンジャーのファンだっていう噂を聞いたことがあるよ。

ケリー:はははは、きっとオオタニ(大谷翔平)もそうだな。

ジャック:みんなナイト・レンジャーが大好きなんだ(笑)。

――そういうことにしておきましょう(笑)。先ほども話に出たように、今回はあなた方と同じベイエリア出身の先輩、ジャーニーも出演するわけですが、彼らとは古くから付き合いがあるはずですよね?

ケリー:ニール・ショーン、ジョナサン・ケイン、それからすでにバンドを離れてしまったけど、ロス・ヴァロリーも本当に昔からの友人だし、ずっと友情関係が続いてきたよ。今でも偶然顔を合わせたりすることがあるけれど、いつだって彼らと会えるのは楽しみなんだ。みんなすごくいい連中だし、ジャックもニールとは25年、いや、30年ぐらいの付き合いになるんじゃないの?

ジャック:いやいや、40年以上だよ(笑)。サンフランシスコでニールと初めて会ったのは、(ナイト・レンジャー結成以前に在籍していた)ルビコンが解散した少し後くらいのことだったかな。(註:ルビコンの解散は1979年。つまりジャックの記憶が正しければ45年以上前ということになる)ジャーニーのアルバムの曲をニールやジョナサンと一緒に書いたこともあるし、ケリーが体調不良のためにツアーを離れなければならなかった時は、現ジャーニーのディーン・カストロノヴォが代わりにドラムを叩いてくれたこともある。俺たちはそんな、大の親友同士なんだよ。そして何よりもエキサイティングなのは、ジャーニーにとってもこれが最後の大舞台になるっていうことなんだ。

ケリー:彼らのツアーは確か<FINAL FRONTIER>と銘打たれているはずだよ。

ジャック:太陽のまわりを最後に回る大きな旅。そんな機会にジャーニーとナイト・レンジャーがステージを共にするなんて、まさに「有終の美を飾る」と言うに相応しいことだよね。同時に、俺もケリーも驚いているんだ。なにしろジャーニーとの最後のショウを1回やるためだけに日本に、しかも福岡に行くことになるんだからね。

――地元のサンフランシスコではなく福岡で記念すべきショウをやる、ということですもんね。

ジャック/ケリー:(声を合わせて)そのとおり。

――日本のファンにとってはとても光栄なことです。そして先ほどラウドネスの名前が挙がりましたが、彼らについてもよくご存じのはずですよね?

ケリー:ああ、もちろん。

ジャック:アキラ(高崎晃)はいい友達だよ。素晴しいギタリストだ。

ケリー:彼らとは、つい先日もクルーズで一緒だったんだ。

ジャック:そうそう、<MONSTERS OF ROCK CRUISE>でね。ラウドネスと一緒なのももちろんだけど、BAND-MAID、RED WARRIORS、HOUND DOGのステージを観るのも楽しみにしているんだ。どういうバンドなんだろうっていう興味があるし、早めに会場に行ってちゃんと観ようと思っているよ。

ケリー:当然そうするよ。楽しみだな。

――すでにご存知かもしれませんが、BAND-MAIDはガールズ・バンドなんです。

ケリー:いいね。

ジャック:Adoも女の子だし、すごくビッグだよね?

――ええ。Adoはバンドではありませんが、近年の日本では女性によるロック・バンドの活躍にも目覚ましいものがあるんです。

ジャック:それは最悪だな。

ケリー:なんてこと言うんだ。

ジャック:もちろん冗談に決まってるだろ? ガールズ・バンドは最高だ(笑)とはいえガールズ・バンドの活躍は今になって始まったものじゃない。1980年代のアメリカにはヴィクセンもいたし、俺たちもジョーン・ジェットと共演したりしてきたしね。そのジョーンが1970年代にやっていたランナウェイズもクールだったし、ゴーゴーズも最高だった。女性だけのバンドって素敵だよ。BAND-MAIDを観るのが楽しみになってきたな。

ケリー:確かに。俺はリタ・フォードのライブは観たことがあるけど、女性だけのバンドのライブはVIXEN以来観たことがないな。それもだいぶ昔の話だし、BAND-MAIDのステージが楽しみだね。

――日本のロック・バンドがアメリカで成功するうえで必要なのは何だと思いますか?

ジャック:難しい質問だな。

ケリー:まさに先日、ジャックとそんな話をしてたんだよな?

ジャック:ああ。ふたりでB’zの話をしていたんだ。実際問題、アメリカのシーンでブレイクしたといえる日本のバンドはラウドネスだけかもしれない。彼らの名前は今でもよく知られているよ。だけど「成功のために何が必要か?」というのはすごく難しい質問だな。なにしろアメリカと日本とでは状況も違うわけで…。

ケリー:だけど結局は楽曲なんじゃないかな。人々から広く共感を得られる曲があるかどうかにかかってくる。それは国の違いとは関係なく、どこでも同じなんじゃないかな。

ジャック:そうだな。まずはヒット曲になる曲を作ることだよね。GLAYもLUNA SEAもX JAPANもみんなアメリカでのブレイクを願っているんだろうと思うけど、結局はいい曲を作る以外にないんだろうな。

――今回の<FUKU ROCK>には福岡ばかりではなく日本各地のロック・ファンが足を運ぶことになるはずですし、僕も東京から観にうかがいます。これは間違いなく、遠出をしてでも観に行くべき価値のあるフェスですよね?

ジャック:そのとおり。俺たちも日本にいるすべてのナイト・レンジャーファンに会いたいから、公演当日はぜひ休暇をとって福岡に来て欲しい。ナイト・レンジャー、ジャーニー、そしてラウドネスをはじめとする日本の素晴らしいバンドたちと福岡で合流して、楽しいひとときを過ごそうじゃないか!

ケリー:そうそう。福岡に来て、美味しいものを食べよう。ランチでもいいし、ディナーでもいい。すべてジャック・ブレイズの奢りだ(笑)。

ジャック:おいおい、ちょっと待て(笑)。さすがにそれは無理だけど、名古屋のファン、札幌のファン、大阪のファン、仙台のファン……とにかく日本中のファンがこのフェスに足を運ぶべきだと言っておくよ。そこで最高のロックンロールを体験してくれ。なにしろジャーニーを観られるのはこれが最後になるかもしれないんだぜ。最後にもう一度、みんなで「ドント・ストップ・ビリーヴィン」を歌おうじゃないか。ついでに俺たちの「炎の彼方」を歌ってくれてもいいし(笑)。

――当然どちらの曲も大合唱になるでしょうね。ナイト・レンジャーのツアーはこのフェス終了後も続いていくようですし、すでに2027年2月まで公演日程が出ていますよね?

ジャック:今、まさにその先のツアーのブッキングを進めているんだ。まだまだこの仕事は続いていくよ。とにかく今は、最高に楽しくて仕方がないからね。

ケリー:それに、2027年はナイト・レンジャーにとって結成45周年の記念すべき年だからね。45年って、信じられるかい?「一体どれだけロックし続けてきたんだ?」って感じだよ。自分で言うのもナンだけど、本当に最高の気分だ。

――長い歴史を持つロック・バンドが次々とキャリアの幕引きをしている昨今、音楽をデスクトップで作ることが主流になっていて、ロック・バンド然とした音楽が廃れつつあると見ている人たちもいます。それでもグレイトなロック・ミュージックはこの先の未来も不滅だといえますか?

ケリー:当たり前じゃないか。

ジャック:俺もそう信じているよ。AIとか最新技術をもってしても不可能なことがひとつあるとすれば、それはコレさ(と言って、自身の胸を叩く)。

ケリー:そう、ハートが肝心なんだ。

ジャック:心と魂、それがいちばん大事なんだ。さっきケリーが「結局は曲が大事だ」と言っていたけど、まずはいい曲を書かなきゃならない。だけどそれですべてが決まるわけじゃなく、演奏する時、歌う時にはフィーリングが必要だ。AIには音を再現することができるかもしれないけど、うちのブラッド・ギルスみたいなフィーリングのある弾き方は誰にも真似できない。そういうものなんだ。ケリ・ケリーの弾くギターも、エリック・レヴィーが繰り出すソウルフルなキーボード・サウンドも、ケリーと俺とでリード・ヴォーカルをシェアする独特さや、フレーズの応酬、ベースとドラムの一体感…そういったものはすべて、俺たちが長年一緒にやってきて完全に息も合った状態にあるからこそのものなんだ。それはAIには到底真似のできないことだし、そこには魂なんてないからね。

ケリー:俺もまったく同感だよ。コピーすることは可能でも、ホンモノにはなり得ないんだ。もちろんAIで作られたものの中にも「悪くないな」と思えるものはある。だけど何より重要なのは、バンドが集まって一緒に演奏して、作曲して、録音して…というプロセスだと思う。ホンモノの、生身の人間じゃなきゃできないことが確実にあるんだよ。

ジャック:それこそ「エド・シーランのAIヴァージョン」なんて、あり得ない話だろ? 彼の曲は、彼が魂から書いているものだからこそ成立しているんだ。ケリーとはしょっちゅうそんな話をしている。「曲を作ること、歌詞を書くこと、音楽を生み出していくことは、そのミュージシャンの魂を覗き見るようなことでもあるんじゃないか?」みたいなことをね。

ケリー:そう。まさにその魂が刻み込まれ、音楽から溢れ出ていくんだ。

――ええ、まさに。最後に今一度、福岡での再会を楽しみにしている日本のファンへのメッセージをいただけますか?

ケリー:これまでずっとナイト・レンジャーやアメリカのロック・バンドを応援し、コンサート会場に足を運んでくれてきた日本のファンのみんなに、まずは感謝の気持ちを伝えたい。日本には本当に特別な思い入れがあるんだ。1stアルバムの「DAWN PATROL」がリリースされた時、俺たちは他のどこよりも先に日本にライブをやりに行った。だから最後にもう一度、日本のみんなの顔を見たい。どうか、ナイト・レンジャーに最後のお別れをしに来て欲しい。

ジャック:本当に楽しみにしてるよ。去年の10月、フェアウェル・ツアーで大阪と東京に行けたのは本当に最高だった。終演後もメンバーみんなと顔を見合わせて言っていたんだ。「これでサヨナラだなんてあり得ない。もっとやらなきゃ。もう一度やろうぜ!」とね。そしてもう一度やるうえで、これ以上の形はない。なにしろジャーニーという長年の友人たち、ラウドネスという日本の友人たちと一緒にやれるんだからね。それにBAND-MAID、HOUND DOG、RED WARRIORSもいる。俺たち、これまで日本のフェスに出演したことは一度もなかったけど、これは俺たちにとっての「死ぬまでに叶えたい夢のリスト」に入っていたことだし、だからこそみんなに観に来て欲しい。日本のどこに住んでいようと関係なく、8月29日には福岡に来てくれ。なにしろ、これがみんなにとって俺たちのライブが観られる本当に最後の機会になるかもしれないんだから。福岡で「これぞホンモノのロックンロール」といえるものを楽しんでもらえるはずだ。

取材・文◎増田勇一
ライブ写真◎土居政則

◆FUKUROCKオフィシャルサイト

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