【インタビュー:前編】黒夢、リテイクアルバム『Drug TReatment 2026』『CORKSCREW 2026』完成「人生の流れを確認することができるような作品」

■今回のリテイクはより生といえば生
■今の等身大に近いもので表現した
──人時さんはどうですか? 当時の黒夢サウンドに関しては。
人時:部分的に歌とかベースがどうとかっていうのはあるんだけど、それよりもトータル的に『Drug TReatment』も『CORKSCREW』も、音源になった時の質感が極端なんですよ。尖った部分をより尖らせたようなミックスをしてるから。
──当時、どうして尖らせたんでしょう?
人時:『Drug TReatment』だったら“より生々しく”というのがキーワードで。それは、ひとつ前のアルバム『FAKE STAR ~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~』(1996年発表)みたいに打ち込みが多用されたデジタルサウンドの対極に行きたがっていた時にできたのが、『Drug TReatment』だったから。それで、より生になった『Drug TReatment』をさらに昇華させて、よりハードでアグレッシヴになったのが『CORKSCREW』だっていうのが僕の見解で。両方とも“音質・バランスのすべてが素晴らしい”というものではないと思うんです。“聴感上、エゲつないところにいきたいよね”っていうミックスの仕方だから。極端なことを言うと、『CORKSCREW』ではそれをさらに尖らせて“全部歪んでるじゃん”みたいな。だから今聴くと“なんじゃこりゃ”ってなる。
清春:うん、オーバーになってたよね。
人時:そう、とてもオーバーアクションな感じ。それが功を奏してる部分も当然あったと思うし、当時のひとつの手法ではあったんですね。だけど、「今、それをやりますか?」って聞かれたら「うーん?」って悩みますね。それをやることは現代の技術ではたやすいんですよ。だけど、さっき清春さんが嘘って表現したけど、今回はそういうものではない。今回のリテイクは、より生といえば生だし、今の等身大に近いもので表現することができたかな。

──まさに今の黒夢ですね。
清春:当時は虚言が多かったからさ。
人時:ははは!
清春:ただ、たしかにオーバーアクションだったけど、それが他のアーティストからすると“なんじゃこれ”って変わったものに見えてたと思うんですよ。“こんなに激しいことをするんだ!?”とか“ヴィジュアル系だったのに!?”とか、当時のメジャーシーンでの存在感も含めてね。サウンドに関して言うと、いろいろなものを表現するのが黒夢だった。僕は音楽的なことに関して自信がなかったので、自信がないなりに人と違う技を使いたいと思うことが多かったのと、自分がどういう歌を歌って、それがカッコいいかカッコ悪いかってことを見極める判断力が少なかった。一方でその判断力は、年を取ると鈍るという一般論もあるけど、出来なくなっていくんじゃなくて、判断が違うんですよね。
──なるほど。
清春:『Drug TReatment』も『CORKSCREW』も、僕らの20代当時に出しておくことができたということが素晴らしい。今の若いバンド、20代でもめちゃくちゃ上手いし、ちゃんとしてますね。……そう考えると、この2作品は何だったんだって思うんですけど(笑)。
──先ほど清春さんご自身がおっしゃったように、黒夢はいつもセンセーショナルで、存在としてもバンドサウンドとしても異質で刺激的でした。
清春:黒夢は違う部分でも刺さってたのかもしれないね。在り方というか。二人組なのにロックだとか、歌詞とか曲自体とかが刺さるような。今、普通に当時のオリジナル音源がSpotifyとかで流れてきたら、“なんじゃこれ! この音ヤバ!ヒド!”ってなると思う。時代だなっていう。

──当時のシーンは、耽美な世界観を追求するヴィジュアル系バンドが多いなか、黒夢は作品リリースのたびにカメレオンのようにコロコロと表現を変える人たちという印象でした。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』には、パンク/ハードコアもやるんだ!?という驚きがあったんです。
清春:音楽がオリコンチャートに支配されていた’90年代のメジャーシーンって、“どうやったら売れるか”がすべてだったんだよね。たとえば、“どういう曲がシングルとして1位を獲るのか”とか“アルバムにはシングルが何曲入ってたら売れるのか”とか“どういうタイアップが効果的なのか”とか。他にも、“誰が先にアリーナでやるのか”とか“誰が雑誌の表紙になる”とか“誰が先にMステに出る”とか、そのくらいの競い合いでしかなかった。音楽ビジネスの中のバンド部門で誰が先頭に立って、そのバンドが他のジャンルと背比べできるか、そういう物差しの上でのせめぎ合いだったと思う。だからこそ、僕らのような当時のバンドたちも一般層に認知されたと思うんですよ。今のバンドよりも一般層に認知されているのはそういうことで。
──CDが何百万枚売れるとか、そういう時代でもありました。
清春:当時はいかにオリコンの中で上位に行けるか。いかにカラオケでたくさん歌われるか。僕ら世代の曲ってそういう世界にいた。だけど僕らは、そういう人気比べみたいなムーブメントからかなり早めに離脱しようとしていた。といっても、黒夢って当時メジャーで4〜5年しかやってないので、最後の2枚で離脱した。『Drug TReatment』と『CORKSCREW』はそういうアルバムだったね。
──はい。人時さんの言葉を借りれば「尖った部分をより尖らせた」ようなアルバムです。
清春:『FAKE STAR ~I’M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER~』はまだその途中にあったアルバムで、離脱しきったのが最後の『CORKSCREW』だったよね。で、黒夢はクラッシュした。今思えば、これを4〜5年でやってたというのがすごい。年食った今だと、5年なんてめちゃくちゃ早く経つんですから(笑)。

──メジャーにいったバンドはマイルドになったりソフトになっていくのが通常でしたが、黒夢は尖り続けながらセールスを上げていたこともすごいです。
清春:世界レベルで見たら当時のせめぎ合いって、どうでもいいことだったと思うんですよ。でも、その時の僕らにとってはそれが大事だったし、今の日本の音楽シーンのある一部の人たちにとっても、大事なことだよね。今はフェスがあって、それが音楽番組とかセールスチャートと同じくらいの影響力を及ぼす世界もある。“あのフェスに出たほうがいい”とか“出るんだったらいい時間帯に大きなステージに出たほうがいい”とか。ツールが違うだけで、やってることは変わらない。そうだからこそ、どこにも属さないアーティストがいてもいいんじゃないかなって思うんです、どの時代にも。そういう黒夢を象徴した2枚を今、新たに録ったんだという感覚はありますね。それを俯瞰してみることもできているし。さっきも言ったように、成長した人たちがまた今回のアルバムを耳にしてくれているっていうことは、そういう人生を送ってきたということで。ということは、当時の僕らの影響力が強かったということなのかなって。だからヒット曲を録り直してるだけではない。
──おっしゃるとおり、’90年代は今では考えられないくらいにシングル曲がもてはやされていましたよね。アルバムも“このシングルが入っているから買う”みたいな飛びつき方をしていた人も多いはずで。今回のリテイクにあたって、シングルベスト的なものを1枚出そうということにはならなかったんですか?
清春:うん、それも考えましたね。
──ではなぜ、それをやらなかったのでしょう?
清春:いずれやってもいいと思ってるんですよ、やってないことのひとつとしては。活動歴が長くなると、やってないことって減っていくじゃないですか。昔のメーカーからベストアルバムが何枚かリリースされてたりもした。で、復活ライヴをやったり、復活ツアーをやったり、10数年前には2枚の新しいオリジナルアルバムを作ったし、ライヴDVDも出した。そして去年、また再集結ライヴをやった。で、今回は僕らの意思で2枚のリテイクアルバムを作った。今考えると、そういう手順の踏み方が大事なんです。
──順番ですか。
清春:普通だったら、10数年前、僕らが新譜(アルバム『Headache and Dub Reel Inch』とアルバム『黒と影』)を出したタイミングで、リテイクをやっててもおかしくないよね。なんなら、その時点でシングルベストみたいなアルバムをリテイクで出すことも、普通のバンドだったらあり得る。だから、気が付けば僕らは順番が逆なんです、先に新譜を出して、次にセルフカバーアルバムを出して、そして今後シングル曲を録り直すこともあるかもしれないっていう。普通は活動に勢いを出したいから逆の順番だよね。僕らは、そういうものすべての逆をいってる。

──たしかに。
清春:『Headache and Dub Reel Inch』と『黒と影』はいいアルバムですよ。「ミザリー」「アロン」「Heavenly」「ゲルニカ」とか、音楽的には『Drug TReatment』や『CORKSCREW』の頃よりも遥かにいい仕上がりだと思ってます。でも、そこから10年経って、体力が衰えた頃に、この2作品のリテイクを出すっていうのが、僕には面白い(笑)。
──リテイクの内容、だいぶ激しいですし。
清春:激しいですよ。オリジナルよりもテンポもキーも上がってる。でも、今の僕らにはそれができるんです。ただ、永遠にできるわけじゃないから、今やっておこうっていうのがある。新曲なんて要らないもんな、Guns N’ RosesもMötley Crüeも(笑)。







