「M-SPOT」Vol.063「大所帯バンドの実態を妄想する」

今回紹介するバンドは、ジャズの複雑な味わいにヒップホップのグルーヴを掛け合わせ、大編成にしかできない熱量でオーディエンスを歌って踊らすというビッグバンドだ。
そのメンバーは総勢21人。そのサウンドとパフォーマンスの迫力は大編成バンドでこそ表現できる大きな魅力だが、その統制とバンド運営には、どのような実態がつきまとうのだろうか。バンド経験者であえばこそ、容易に想像できる大所帯バンドの隠された苦労と大変さに思いを馳せてみよう。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。
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──今回は、ビッグバンドを紹介させてください。Jiggy Beats Jazz Orchestraというグループなんですが、サウンドはピカイチ、とてもステキな音楽とライブを繰り広げているんです。まずは聴きましょうか。こちらは「Mirror」という最新楽曲です。
──めちゃくちゃかっこいいですよね。彼らは21人もいる大所帯のバンドで、プロフィールには「21人のアーティストが集結するジャンルレスな音楽コレクティブです」とあるんですが、大編成にしかできない熱量でオーディエンスを「歌って踊らす」ビッグバンドというコンセプトだそうです。この人数のバンドって、どのように運営・活動をしているんでしょう。
野邊拓実(TuneCore Japan):ビッグバンドって触れてこなかった世界なので、ちょっとわからないですね。僕も4~5人編成のバンドをずっとやってきていますけど、それですらスケジュールを合わせるのって大変なのに、21人ってどうやって合わせているんでしょう…。とはいえ、例えば社会人サークルみたいなのってあったりしますよね。吹奏楽だったりバンドでもあると思うんですけど、みんなでスケジュールを合わせて集まって飲み会やったりスタジオに入ったりしているので、意外と普通にできるのかな。わかんないですけど、でも少なくともリーダーは死ぬほど動いているんじゃないかな(笑)って思います。
──レコーディングひとつとっても、人の数だけ労力も増える気がします。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですよね。会社員でも20人の部下がいるチームとか、めちゃくちゃ大変じゃないですか。
──音楽も本気であればこそ、意見もぶつかれば軋轢も生まれたりしますけど、ここまでの大所帯となるとその次元は越えて、各自の精神的な余裕をもって楽しむことを最優先するようなモードで活動できるのかな…。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。もはや細かい人間関係なんてものを管理する余裕はないですから、なので、もう大人じゃないとできないよなって思いますよね。
──「大人だから」という一言で片付けるのはあまりに無神経ですけど、少なくとも「大人じゃないと無理」ですよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):倫理観というか、自己管理でちゃんとやってくださいっていうのができる人たちじゃないと確実に成立しないと思います。これ、例えばサークルクラッシャーみたいな子が入ってきたらもう終わりじゃないですか。やっぱりビッグバンドを成立させることって凄いですよね。ライブが決まった時とかってどうすんだろう、みたいな。
──精神性というか、大人の立ち振る舞いが問われますね。金銭や野心よりも、そこで活動すること自体に価値を見出している状態というか。Jiggy Beats Jazz Orchestraの音楽性やメンバーの人柄を含めて、居場所としての心地良さと自負心がバランスされている人たちで構成されているんだろうなって思います。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね、人間性とか性格にもよるのかもしれないですけども、逆に21人もいたら、その中で「俺が俺が」みたいなことをやることの無意味さみたいも分かっているというか、自分の意見が必ずしも通るわけではないという前提のもとで全員が動きそうなので、逆に5人バンドとかよりも安定した活動ができるのかもしれないな。
──オーケストラと同じ感じなのかな。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですよね。音楽じゃないですけどダンスチームとかパフォーマンスグループって20人とかいたりするので、そういう運営と同じ感覚になるのかな。楽曲説明に「作曲をキーボーディストの小松優介、作詞をヴォーカルの渡井彩未が担当…」とあるので、バンドでスタジオに入ってセッションで曲を作るというスタイルではなく、制作された楽曲の骨格を各パートごとにパートリーダーがまとめるとか。
──アレンジしていく過程で「やっぱりここでソロを回したいよね」「じゃあここを伸ばして…」みたいなやり取りはありそうですけどね。
野邊拓実(TuneCore Japan):人が増えれば増えるほど強力なリーダーが必要になるとは思いますね。ちゃんとした組織が形成されてるのかもしれない。それがすごく流動的で、今回はこの人がリーダーみたいなとこもあるかも。でもすごいですね。大人数でひとつの音楽にまとめていくことへのモチベーションやバイタリティが凄いと思います。
──こういう形で音楽活動が持続していくことの尊さというか素敵さが際立ちますね。
野邊拓実(TuneCore Japan):続けられることもすごいですし、まず始められたのがすごいですし、いいなぁ。僕は最近バンドを新しくやろうと思ってメンバーを集めたんですけど、5人のメンバーが揃うのに7か月かかったんですよ。それでも順当な方だと思っているんですけど、21人揃えるのって(笑)。核となるバンドから徐々に楽器が増えていったんだと思いますが、この「Mirror」を聴いても人数の多さに対してきちんとまとまっているというか、ごちゃごちゃした情報量の煩雑さみたいなものを感じさせないですよね。強力なアレンジャーとかがメンバーの中にいるのかもしれない。
──いろんな才能が隠れていそうですね。今時っぽい感じもあるしね、なによりボーカルの感じもいいし。
野邊拓実(TuneCore Japan):語りかけるような形というか、しっとりした声でね。
──ビッグバンドと言っても古き良きスタンダードなビッグバンドではなく、R&B、オルタナティブ、ラップ、シティポップ、ジャズといった様々なスタイルを織り交ぜているとのことなので、フレキシブルさをもって音楽的に高いレベルの人たちが楽しんでいるみたいです。
野邊拓実(TuneCore Japan):めちゃくちゃ楽しいでしょうね。だって、21人もいたらいろんなことができるじゃないですか。いろんな音が使えるし、全部生楽器だし、人数がいればいるほど迫力も出てくる。このライブを体験したらお客さんもどんどん増えていくんじゃないかな。
──わかります。でもメンバー数を増やしたら楽しいことより大変なことが増えそうで無理…って思っちゃうのは、ロックバンド界隈出身だからでしょうか(笑)。
野邊拓実(TuneCore Japan):「大変さの方が勝つでしょう」みたいな感じに思っちゃう(笑)。だからこそ「みんなでやろうよ」みたいな、本当に根明な人がいないと始まらないしできないだろうな。Jiggy Beats Jazz Orchestraはみんな若そうだし、人生2週ぐらいしましたみたいな感じでもなさそうで、楽しそうでいいなって思います。
──バンド経験者であればこそ、「なんかいいな、羨ましいな」みたいに思わせるバンドですね。

野邊拓実(TuneCore Japan):僕も大学生の時に、米米クラブのコピバンをやったことがあって、10人以上の編成だったんですけど、なんかめちゃくちゃ楽しかったんですよね。コピーだったっていうこともあって曲を作る大変さが一切なかったのもあるんですけど、めちゃくちゃ楽しい体験だったんです。やっていくうちに、メンバーの音楽性や嗜好性が見えてきたりして、もうちょっと継続的に続けていたりしたら、お互いのことをもっと知れて楽しかっただろうなとも思うし。
──それはどういうきっかけで?
野邊拓実(TuneCore Japan):ドラムのやつが「米米クラブがやりたいんだ」って、メンバーをかき集めてきた感じ。そいつが「いっぱい人集めたらいいじゃん」ぐらいな感じで、何にも考えてないタイプの人だったので、凄く楽だったんですよ。
──そういうパワーって大事ですよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):すごい大事だなって思います。腕力というか進める能力みたいなもの。でもいろんな能力が必要と思いますし、小編成のバンドとは違う困難がいっぱいあるんだろうなと思いますけど、それを一切感じさせない音を出しているのが素晴らしいですよね。
──楽しいから演っているし皆さんに楽しんでほしい…そういう気持ちが音に出てますよ。
野邊拓実(TuneCore Japan):そして、この編成のバンドがレコーディングをして音源を出しているというところがマジですげえなとも思います。だってもう、レコーディングって考えるだけでめんどくさそうだと思うもん。マイクどうやって立てんの?何チャンネル必要なの?みたいな。
──リスペクトですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):本当に尊敬、すごいなって思います。バンドなんて4~5人でもいさかいがあったりするのに、20人とかもいるともう喧嘩している方がおかしいだろうから。
──何人になると「喧嘩しない境界線」を越えるんでしょ。
野邊拓実(TuneCore Japan):部活みたいな空気としてできるのかもしれないですね。バンド活動の大変さなんて外に出すべきでもないので、普通のリスナーにはこの大変さは伝わらないと思いますけど、バンドマンにとっては、もう本当にすごいことが成立していることがわかるので、これは夢ですよね。1回は大編成でやりたいなって思います。
──ロックバンドがオーケストラを引き連れてコラボする気持ちも同じかもしれません。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですね。これを常にやっていくって本当にすごい。毎回文化祭みたいなテンションなのかな。ライブ終わった後とか絶対泣いちゃうでしょ。
──音楽の楽しみ方として、ある種の理想ですね。
Jiggy Beats Jazz Orchestra
「Jiggy Beats」は、21人のアーティストが集結するジャンルレスな音楽コレクティブです。R&B、オルタナティブ、ラップ、シティポップ、ジャズなど、様々なスタイルを織り交ぜながら、重厚なアンサンブルと、アーティスト個々の表現力を融合させています。フルバンドであるビッグバンド編成から8人の小編成までシーンに合わせて柔軟にその規模を変え、オーディエンスと共に踊る事をテーマとしています。
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=922895
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.







