「M-SPOT」Vol.059「No No Girlsでその才能を見せつけた現役高校生Cocoa」

音楽には流行り廃りがある。ムーブメントもある。時代のぶり返しや揺り戻しもある。
音楽を作りそれを完成させ世に打ったときに、どのような波に乗るのか、あるいは乗せないのか。音楽が世で語られるときには、必ずその時の時代性や世の中の流れのストーリーが絡み合ってくる。
今回紹介するのは「No No Girls」でその才能を見せつけた現役高校生Cocoaの最新作「SUN POUR」だ。その圧倒的な才能はどのような楽曲アレンジで世にアピールされていくのか。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。
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──今回はCocoaさんを取り上げましょう。分かる人にはすぐ分かる「あ、あのKOKOAね」というシンガーです。「No No Girls」で最終14名に選出された現役女子高生ですが、この「SUN POUR」という曲は、音楽プロデューサー Yuto.comとのコラボ楽曲として2025年8月20日にリリースされた楽曲ですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):「No No Girls」でKアリーナ横浜のステージに上がったんですよね。最終審査で通った子たちと落ちちゃった子たちと両方出るというのも、面白い試みだなって思って見ていました。
──そう、そこに決定的な差なんて無いことがよくわかりましたよね。そのレベルのアーティストがここM-SPOTににさり気なく登場するというのがヤバいですよね。もはやメジャーもインディペンデントもへったくれもない。
野邊拓実(TuneCore Japan):そこに完全に差はないですね。
──まだ高校なのにこのスキル、何もせずに普通に暮らしててこんなスキルが得られるもんなんですかね。
野邊拓実(TuneCore Japan):いや、無理だと思います。何の努力もなしにこんなスキルは得られない。定義が曖昧なんであれですけど、始めた時のスタート地点の高さっていうのは、やっぱり才能のひとつだと思いますけど、その後の成長速度みたいなのがあるので、そこには並ならぬ努力があると思います。
──確かに、プロフィールに「過去にはニューヨークで本場のボイストレーニングを受けるなど、若くして国際的な経験も積み重ねている」とありますね。
野邊拓実(TuneCore Japan):曲もそうだし、歌い回し的にも現代っぽいと思ったのは、展開ごとに歌い方が全部違う点ですね。同じラップでも、カッコよくラップしている部分とすごい可愛い女の子の声でラップしている歌い分けがあったり、フックではかっこよく歌い上げるように立っていて、曲のどこを切り取っても毎回違うテイストになっている。コロナ禍のTikTok流行以降の感じですごくいいなって思います。
──プロデューサーの腕の見せ所ですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):賛否あるとは思うんですけど、最近は曲の展開がすごいと言われますよね。Mrs. GREEN APPLEなどもそうですけど、どんどん展開していくような構成じゃないと今の子って飽きちゃうみたいなことをよく聞きます。僕はそんなことはないだろうって思うんですけど、曲の展開がいっぱいあったほうがショート動画を何種類も作れるんですよね。僕も曲を作る上では結構考えたりして、1曲作るだけで10個ぐらい切り出すところがあると「コスパいいな(笑)」みたいにも思います。そういう意図があってアレンジするのかはわからないですけど、でも「今のスタンダードってこういう構成をするよね」みたいな展開の多さを持つところはあって、そう考えるとこの「SUN POUR」にも時代性を感じますね。
──この「SUN POUR」にはリミックスも含め様々なバージョンが発表されていまして、その中に、「スピードアップバージョン」もあるんですね。こんな感じです。
野邊拓実(TuneCore Japan):今時ですね。「スピードアップ」とか「アコースティック」の存在は、やっぱり今を据えている感じがします。スピードアップなんて、完全にTikTokのポエミーなエモいことを言う時のバックで流れ出しそうなショート動画の感じだし。
──単純にテンポを速めているわけですが、このスピードアップバージョンっていうのはアーティストにとってどんなものですか?
野邊拓実(TuneCore Japan):まあ僕もただの単なるバンドマンなので、アーティストを代表するような顔で答えていいものじゃないですけど、僕は「いいんじゃない?」って思ってます。そもそも楽曲には適切なBPM(テンポ)と適切な歌い回しやアレンジがあるはずという気持ちはすごくわかりますし、僕もどっちかっていうとそっち側ですけど、一方で楽曲を発表している以上、誰かに聴いてほしいし評価してほしいという気持ちがあるわけですよね?じゃなきゃ、発表していないはずで「作って楽しかった」で終わってるはずだから。
──確かに。
野邊拓実(TuneCore Japan):アーティストと聴いてくれる人との間で初めてその楽曲の良し悪しというか、どうあるべきかみたいなところが確定するものだと思うんです。で、その聴いてくれる側の人たちの需要のされ方に対して、ちゃんとアプローチをするという姿勢は絶対に悪いことではないと思うんですよね。
──なるほど。
野邊拓実(TuneCore Japan):アーティストとしてのあり方にもよりますけど、「もう僕はとにかく自分の世界を表現したいんだ、それだけなんだ」「それを好きになってくれ」みたいな感じであれば、その適切なBPM以外はないと思いますけど、そうではなく「やっぱり音楽って、聴かれて初めて成立するよね」みたいな思想・考え方で「受け入れてくれている人たちにちゃんと届いて、その人たちが何かを受け取ってくれるところで音楽はゴールする」っていう考え方もすごく素敵だなと思うんですよね。需要する側、使う/聴く人たちというのは、TicTokのようなシーンごとに聴き方が変わってきたり、どういう風に音楽があってほしいかは受け取り側のシチュエーションによって変わってくると思うので、そういう側面に立って考えると、スピードアップみたいな作品もすごく丁寧な音楽のあり方だなと思います。
──スピードアップバージョンの存在意義がスッキリ理解できました(笑)。
野邊拓実(TuneCore Japan):リスナー側のニーズってあるよなって思うんです。僕は高校生ぐらいの時、CDの2曲目にカラオケ版が入っていたりしたでしょ?自分で歌いたかったからこれが良かったんですよね。そういうレベルで考えると、会場で売っている物販がTシャツだけじゃなくてタオルやリストバンドとか来るたびにいろんなものが買えるみたいなサービスと同じような丁寧さだと感じます。
──いろんなバージョンが作られていること自体が「SUN POUR」が現代的であることを示しているわけですが、サウンド的にも最先端ですよね。これまでよく聴いてきたような暴力的なキックは影を潜めていますし、コード感もテンポ感も控えめで、楽曲を引っ張っているのは明らかにボーカルであるという徹底した作りで。
野邊拓実(TuneCore Japan):意図的にバックのトラックに耳があまり行かないようになっているのは、ちゃんとボーカリストをフィーチャーするためですかね。例えばケンドリック・ラマーみたいな楽曲全体が超すごいヒップホップ・アーティストもいれば、リリックに耳が行くようにトラック自体はあんまり主張せずにあえて単調にしたりする場合もあって、そこは2極化しますよね。「ヒップホップの本来のあり方」なんてものもありませんけど、ヒップホップの出自を考えたら後者の「リリックにちゃんと耳が行く」のは多分正当なんだろうなとは思います。そういう意味ではYuto.comというプロデューサーによるトラックの薄さと主張してこない感じは、時代性だなと感じますね。
──時代の流れを感じますか。

野邊拓実(TuneCore Japan):情報が飽和した社会への疲弊から、アニメでは日常系が流行ったりするような、過剰にやりすぎたものへの反発みたい形で削減の方向に動いているアーティストが多い気がします。主張や強制感があんまりないような、自然にスッと入ってくるようなものというのは、2026年以降増えていくんじゃないかなって思っていて、そういう意味ではこの曲はど真ん中で、そういう動きをしているんじゃないかな。そういう解釈ですね。
──ミュージシャンもプロデューサーも、そういう世の中の流れやムーブメントに対するアンテナ感度の高さは非常に重要な時代ですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):そう思います。最初に言ったような「作って満足、別に誰に聞いてもらわなくてもいいよ、作って楽しかったからオッケー」みたいなタイプの人はそんなことは考えなくていいと思うんですけど、誰かに聴いてほしいとか評価してほしいのであれば、きちんと現代の人に向けて音楽を投げるべきだと思うんです。自分が影響を受けた時代の音楽性であっても、それを2026年の人たちに聴かせるためにどうしたらいいかっていうのを考えるべきですよ。
──そこは欠かせちゃいけないのか。
野邊拓実(TuneCore Japan):そう、じゃないとただ古臭いだけ。日頃から現代の音楽に触れている人がやっている昔の音楽なのか、触れてない人がやってる昔の音楽なのかっていうのは、かなり分かれると思うんですよね。
──そこ、大事ですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):自分もそこを指摘されたことがありますから(笑)。だから今は、音楽だけじゃなく、どういう時代なんだろうとか、何が起こっていてそれに対してみんなどう思っているのかをすごく考えながら生きています。そういう視点を持っているか持っていないかで出てくるものも変わってきますから、音楽を聴いてほしい・評価してほしいと思っている人は、そういうところを考えるべきだなって思っています。
──時代の波に乗る必要も時代に迎合する必要もないけど、今、2026年で何がどのように動いていて、どういう人たちでムーブメントが起こっているのかは知った方が良いですね。自分はどこにいてどこに向かっているのかを知ることで、初めて自分の立ち位置が分かるわけですから。
野邊拓実(TuneCore Japan):時代を分かってそれに乗る/乗らないということと、分かっていなくて乗れないのでは大きな差がありますから、僕も自戒を込めてみんなで一緒に考えていきたいなって思います。
Cocoa
現役女子高生にして、圧倒的な実力と存在感を放つ次世代アーティストCocoa (KOKOA)。オーディション番組「No No Girls」では、7,000名の応募者の中から14名に選出され、Kアリーナ横浜の大舞台で堂々たるパフォーマンスを披露。過去にはニューヨークで本場のボイストレーニングを受けるなど、若くして国際的な経験も積み重ねている。2025年8月20日、音楽プロデューサー Yuto.comとのコラボ楽曲「SUN POUR」をリリース。音楽番組でのパフォーマンス出演も控えており、Z世代を代表する新星として注目を集めている。
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=1018550
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.







