【ライブレポート】ブライアン・アダムス、日本武道館26回目というホームに刻むロック讃歌

2026.01.27 09:51

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1月26日、東京・日本武道館にてブライアン・アダムスのジャパン・ツアーが幕を開けた。当然ながらこれは昨年8月にリリースされた最新アルバム『ロール・ウィズ・ザ・パンチズ』に伴うワールド・ツアーの一環としてのものであり、彼の日本上陸は2023年3月以来、約3年ぶりとなる。この日のステージでは実にトータル28曲が披露され、人で埋め尽くされた会場内には何度となく合唱の輪が広がっていた。まさに至福のひとときだった。

正直な話、いまさら「超満員の武道館で観たブライアン・アダムスのライブが最高だった!」と絶賛してみたところで、誰も驚きはしないだろう。彼のライブの素晴らしさはとうの昔から知れ渡っているし、1983年から来日の機会を重ねてきた彼にとって、日本武道館はこの国でのホームのような場所。だからそうした事実そのものに目新しさはない。ただ、それでもなお観る者に満足感と感動をもたらしてくれるのが彼のライブなのだ。

本日、1月27日にも彼は同会場にて公演を行なうことになっており、28日には大阪公演も控えている。この場では公演内容についての具体的な記述を極力避けておくが、これから観に行く人たちにまず言っておきたいのは「絶対に開演時刻に遅れないように!」ということだ。実際、この日の公演では開演定刻をわずかに過ぎた頃にはオープニング映像が流れ始め、その後、意外な形で演奏がスタートすることになった。この記事に伴う写真から、それがどういうことなのかを察してしまう読者も多いはずだが、実際にどのようなサプライズが仕掛けられていたのかについては記述せずにおきたい。

実際の演奏曲目についてもここでは具体的に触れずにおくが、『ロール・ウィズ・ザ・パンチズ』からは4曲が披露され、馴染み深い代表曲の数々も網羅されていたし、意外な楽曲が顔を出す場面もあった。もちろんブライアンのショウにはセットリストが存在する。しかしそれはあくまで“基本的な骨組み”であり、彼はその場でリスト上にない曲を臨機応変に加えていく。なにしろ開演前のステージ背景のスクリーンには大きなQRコードが表示されていて、来場者はそれをスマホで読み込むことで曲のリクエストをすることができるようになっていたりするくらいなのだ。

そして実際、この夜の演奏内容もセットリストと完全一致するものではなかった。そうしたスポンテニアスな進行が可能なのは、ブライアンにとって長年の盟友であるキース・スコット(G)をはじめ、気心の知れた仲間たちとの、必要最小限の人数での演奏だからでもあるだろう。しかも、そのシンプルさがさまざまな楽曲の良さを最大限に引き出しているのもまた事実だ。ストレートなロック・チューンにおける生々しさや飾り気のない強さがダイレクトに伝わってくるばかりではなく、ドラマティックなバラードにおいても“広がりがあるのに間近に感じられる”というマジックが起きるのだ。

当然ながらアリーナ規模ならではの演出もみられたし、ステージ背景のスクリーンに映し出される映像にも特筆すべきものがあった。しかしその内容についても、この場では伏せておく。ただ、もうひとつお伝えしておきたいのは、ブライアン自身もステージ上で発言していたとおり、日本武道館で彼以上に多くの公演を行なってきた来日アーティストはエリック・クラプトンしかいない、という事実だ。ちなみにこの夜の武道館公演は彼にとって通算26回目にあたるもの。その記録は27日に早くも塗り替えられることになるわけだが、この先も更新され続けていくことだろう。

彼はショウの後半、セットリストにはなかった予定外の某楽曲を披露する際、日本との縁の深さについて語り、彼自身にとって印象深かった出来事として「初めて日本に来た時、ここで父に再会できたこと」を挙げていた。当時、彼の父親はカナダ大使館に勤務していたのだった。筆者が1996年にインタビューした際にも、彼は「あの時、11年ぶりに父と会ことができた。それは僕にとって素晴らしい出来事だったし、とてもいい想い出になっている」と発言していた。

以降、彼は何度も訪れてきたこの国でたくさんの想い出を作り続け、同時にそれをオーディエンスにももたらし続けてきた。そして何よりも重要なのは、現在67歳になっている彼が、今現在も途轍もなくクリエイティヴであり、1980年代、1990年代と比べてもまったく遜色のない歌声を聴かせてくれているということだろう。しかも今回のツアーは『ロール・ウィズ・ザ・パンチズ』の発売以前にあたる2025年5月から続いてきたものだけに、ショウとしての完成度も、ブライアン自身を含むステージ上の4人のバンド然としたケミストリーも素晴らしいものになっている。

ブライアン・アダムスのライブは、予想を裏切ることはあっても、期待を裏切ることはない。この先の公演の行方にも注目したいところだ。

文◎増田勇一
撮影◎畔柳ユキ

◆BRYAN ADAMS – ウドー音楽事務所