【ライブレポート】KI_EN、初ワンマンツアー<奇縁ノ壱>ファイナルの地元・京都で「すごい進化を遂げました」

京都発3ピースバンドのKI_ENが12月21日、KYOTO MUSEで自身初のワンマンツアー<奇縁ノ壱>を大成功に収めた。同ツアーは12月14日の東京公演を含む2都市2会場で行われたものだ。そのファイナル公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
2024年11月にトイズファクトリーよりメジャーデビューし、2025年3月と8月に京都でワンマンライブを行ったKI_EN。そして開催された<奇縁ノ壱>は11月19日配信リリースの1stアルバム『旅立ちのとき』を引っ提げた自身初のワンマンツアーとなる。この日のMCによると、先ごろ行われた東京公演も手応えを得たとのことだが、なんといっても京都はKI_ENのホーム。応援ムード満載のとてもあたたかな一夜となった。

開演時刻の少し前に会場に到着すると、既にフロアには熱気と高揚感が充満していた。グッズを身につけた人、手作りのうちわを持参している人。ファン同士で喋っている人も多く、“総出でお祝いするぞ”といわんばかりに、子どもも大人もウキウキした様子で開演の時を待っていた。スタッフは皆、バンドロゴと本公演タイトルの焼印が押されたオリジナルの木札を首にかけていて、よりチーム感が感じられた。これは祇園祭で神輿担ぎが首から下げる木札をモチーフにしたもの。彼らが京都発であることの矜持が感じられる。
そしてステージには、バンドロゴが大きくあしらわれたバックドロップが張られ、お馴染みの提灯が置かれていた。会場内BGMでは、京都α-STATIONでKI_ENが担当しているラジオ番組『OTABI STATION』(毎週金曜24:30〜25:00)のCMや、メンバーによる注意事項の影アナが流れ、じわじわとテンションを高めていた。



定刻を少し過ぎた頃、SEが流れてメンバーが登場。ステージに設置された提灯にも火が灯る。これまでは野川爽良(Vo, G)、橋本歩夢(Key)、澤風雅(Gt)の3人でライブを行なっていたが、今回のツアーから林純乃介(Dr)と椿拓朗(B)がサポートメンバーとしてジョインするなど、盤石の布陣で今回のライブに臨んだ。
野川、橋本、澤がフロントに並んで立ち、「よーさの! チャチャチャ!(x 3回)ヨー!」と祇園祭の掛け声で手締めを行う。8月のワンマンではライブの締めに叫ばれていたこの手締めが、オープニングで行われたかたちだ。オーディエンスももちろん大声で斉唱し、のっけから場内に一体感を生み出した。
「待たせたな、KYOTO MUSE!」と野川が叫び、「性根」をパワフルかつ爽やかに響かせる。真っ直ぐに伸びる歌声とバンドアンサンブルは輝きを放っていて、早くも多幸感を感る最高の幕開けだ。続けてロックな「創造と感動」へ。一聴しただけで、練り込まれた楽曲構成やフレーズの妙に実力の高さを感じて舌を巻いた。野川と橋本がツインボーカルをとる「Fifty-Fifty」では、澤の華麗なタッピング奏法が炸裂し、オーディエンスは手をあげてこれに応える。

「改めまして、<奇縁ノ壱>へようこそー!」と野川が元気に挨拶し、カントリー調のイントロが軽快な「記憶の地図」、アルバム収録曲「輪廻」、ロックバラード「春風」を連続で披露。どの曲もグッドメロディーで、サウンドの表情も幅広い。コンポーザーである野川のメロディーメーカーぶりがひしひしと伝わってきた。
続くMCでは、「あったかいですね、京都は。楽しいね」と野川。橋本が「1曲1曲に手締めしたいくらいや」と言うと、フロアからは愛のあるガヤとツッコミが飛び交う。「東京、めっちゃ声デカかったよね。京都も負けないでくださいね」と野川が笑いも交えつつ、リラックスした雰囲気でトークを展開していった。そして野川は1stアルバム『旅立ちのとき』についてこう言及した。
「すごく大事なアルバムになりました。いつか自分が旅立つ時に、もう一度聴き返したくなるアルバムになったらいいなと思って作り始めて。“等身大の自分たち、今の自分たちに歌える歌を歌おう”ということで8曲が並びました」──野川爽良



さらにこのMCでは、トオミヨウとKI_ENの共同プロデュースで生まれたリード曲「旅立ちのとき」のミュージックビデオを叡山電車“八瀬比叡山口駅”で撮影したところ、澤の髪色と電車の色が全く同じだったというエピソードで笑わせて、同楽曲へ。生き生きと鳴らされるアンサンブルに惹き込まれ、今後もっと大きな場所で歌われる代表曲になる予感がした。バラードソング「夢のまた夢」をしっとりと聴かせ、ここでメンバー紹介へ。橋本のソロ、澤のソロに続けて、野川はバイオリンソロを披露。そこから「忘れられんな」へ。クラップするオーディエンスを見て笑顔を浮かべるメンバーが心底楽しそうだ。
突如、彼らが担当するラジオ番組『OTABI STATION』のジングルが流れ、公開収録を行うことに。アルバム『旅立ちのとき』にちなんで「タイムスリップするなら過去か未来どっち?」「2026年の抱負は?」というお題で、和気藹々とトークタイム。この模様は12月26日放送回でオンエアされるとのことだ。


ライブ本編に戻ると雰囲気が一変、クールで大人っぽい楽曲群で魅了していく。澤が編曲した「Better (ALBUM ver.)」、橋本のボーカルとラップが印象的な「シミラー」、ミラーボールと赤い照明が妖艶な「茶柱」がエッジーに奏でられた。熱気と歓喜が充満する会場。楽しい時間はあっという間だ。「残すところあと2曲」と野川がアナウンスすると「えー!」という声があがった。続けて野川が想いを語る。
「あっという間なのは、この1年もそうでしたよね。昨年11月1日にデビューして1年。3人で活動を開始して、1年経ってようやくアルバムという形を残せて、ツアーも行えて、いつのまにかサポートメンバーも増えてるやないかって。すごい進化を遂げました。本当にありがとうございます。まだまだ発展途上ですし、やらないといけないこともたくさんあります。それでも僕たちはこれからも日々突っ走って頑張っていこうと思うので、応援よろしくお願いします!」──野川爽良
フロアからの容赦ないガヤ(おそらくメンバーと顔見知りと思われる)にたじたじになりつつも、野川は「最後までデカい声出してください! でも次バラードなんですよね」とオチをつけ、フロアを大爆笑の渦に包み込んだ。どこまでもアットホームな空気感だ。そして歌われたラスト2曲。壮大なサウンドメイクと王道のJ-POPメロディーが心に沁みわたる「星空に一番近い場所」を最後の1音まで丁寧に届け、本編ラストは「Better」のシングルバージョンで、思い切りロックに駆け抜けた。

アンコールのクラップ代わりに、「ヨーイヨーイ」「ホイットホイット」と祇園祭の御神輿の掛け声が。やがてそれが伝播し、フロア全体に祭りのパワーが宿っていく。これぞ地元京都な結束力とホーム感だ。しばらくして、ツアーグッズTシャツに着替えた野川、橋本、澤が「よーさの! チャチャチャ! ヨー!」で手締めして「アンコールありがとう!」とステージにカムバックした。
「今日楽しかった人ー!」と野川が問うと多くの手があがり、「良かったー!」とホッとした表情を見せたメンバー。橋本による新グッズ紹介を経て、アンコール1曲目は3人だけで「日晴」をアコースティックバージョンで披露。“淀みなく澄み渡る 未来を携えて 高く高く上昇気流を背に受け 今飛び立つ”という晴れやかな歌詞は、今のKI_ENにマッチしているようだ。野川のバイオリンも高く天を貫き、美しく空気を震わせていた。
ここでサポートの林と椿を呼び込むと、二人がケーキを手に登場。ライブ前日に22歳の誕生日を迎えた澤をサプライズでお祝いするべく、橋本の伴奏と野川の歌で「Happy Birthday」を歌唱。メンバーはこのために、頑張って前日にお祝いをしなかったそうだ。澤は「歳をとるごとに、どんどん祝われる規模が小さくなるやろうと思ってたんですけど、まさかのここでトップがきました。ありがとうございます」とはにかみながら感謝を口にした。事務所とメンバーからの誕生日プレゼントも手渡され、記念撮影後に、フロアから「ホイットホイット」と掛け声が聞こえてきて、白羽の矢が立った澤が本日3回目の「よーさの!」で締め括った。

野川は改めて「本日、初ツアー<奇縁ノ壱>最終日。皆さんのおかげで楽しい1年になりましたし、楽しい1日になりました。本当にありがとうございます!」と述べて、メジャーデビューシングルである「スノーハート」を優しく壮大に歌い上げた。「また来年会いましょう! KI_ENでした!」と叫んだ野川。「2025年最後の手締めで終わりましょう!」ということで、全員による渾身の「よーさの!」が響き渡った。
<KI_EN初ツアー 2025 「奇縁ノ壱」>ファイナルは地元らしい祝祭で、会場にはとにかく3人を前へ前へ送り出そうというポジティブで力強いエネルギーが満ちていた。この日、何度も響いた「よーさの!」の掛け声は、彼らにとって誇りでありお守りなのかもしれない。集まったオーディエンスにとってもKI_ENの3人が誇りで自慢なのだということが存分に伝わってきた。彼らの進化を成長を躍進を、心から望んでいる。こんなに応援してくれる人がいたら、きっと大丈夫。そんなふうに思えるポジティブなツアーファイナルだった。これからKI_ENがつむぐ“奇縁”が広がっていくのが楽しみで仕方ない。
取材・文◎久保田瑛理
撮影◎オガワタクヤ
■<KI_EN初ツアー 2025 「奇縁ノ壱」>12月21日(日)@京都・KYOTO MUSE セットリスト
01 性根
02 創造と感動
03 Fifty-Fifty
04 記憶の地図
05 輪廻
06 春風
07 旅立ちのとき
08 夢のまた夢
09 忘れられんな
10 Better(ALBUM ver.)
11 シミラー
12 茶柱
13 星空に一番近い場所
14 Better
encore
en1 日晴(Acoustic ver.)
en2 スノーハート
■ライブ/イベント情報
▼<no-no × ESAKA MUSE pre. NEW SINGLE【手を振る】Release Event『記憶の花束』>
1月28日(水) 大阪・ESAKA MUSE
出演:no-no、KI_EN and more
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe3t6NNaiw8XHBEcQou3xwuvT8ujhg-0mGHRTbtysHSfL5b9w/viewform
▼<RAD CREATION & RAD ENTERTAINMENT presents でらロックフェスティバル 2026>
1月31日(土) 名古屋市内ライブハウス15会場以上にて開催
※でらROCK×Ruby Tuesdayコラボステージ
https://derarockfes.radcreation.jp/
▼<THE BONDS 2026 GIGANTIC TOWN MEETING -THANKS 10TH GIGA->
4月12日(日) 梅田BANGBOO / Banana Hall / 梅田Zeela
https://the-bonds-osaka.com/
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