【インタビュー】ASH DA HERO、デビュー10年を振り返りワールドツアー最終公演を語る「世界で暴れる日本代表のロックバンドに」

■これはどこにも話してなかったけど
■実は最初からバンドにしようと思ってた
──行き詰まった状態を抜け出すような、突破口となる出来事はなんだったんですか?
ASH:Argonavis (メディアミックス作品『from ARGONAVIS』から派生した5人組ボーイズバンド / ARGONAVIS from BanG Dream!(バンドリ!))から楽曲提供のオファーが来たときですね。「ASHさんのこの曲のこの部分がすごくカッコ良くて素敵なので、こんな曲がほしいんです」と言ってくれて。“やっぱり求めてくれる人がいるんだ”と。で、全力を込めて曲を書かせていただいたら、Argonavisのファンの皆さんが「めっちゃカッコいいじゃん!」って振り向いてくれた。それがすごく救いになりましたね。
──作家としても認められたと。
ASH:そう。もちろん、「いろんなことをやれるのがASHだから、そこが好きなんだよ」って、ずっと見守ってくれていたファンのみんなが、すごく支えになっていました。そのふたつが、ボロボロになった自分に水を与えてくれて、再び創作意欲も湧いてきたんです。
──ASHがArgonavisに「STARTING OVER」を楽曲提供したのが2019年8月のこと。2020年1月にも第二弾として「MANIFESTO」を書き下ろしました。そして挫折から立ち上がり、コロナ禍の2021年9月4日に、ソロプロジェクト完結と新バンドASH DA HERO始動を発表。ギタリストの脱退を経て、現在はギターレスバンドとしてチャレンジを続ける強い姿勢を見せています。ご自身が描くASH DA HERO像は現在、理想を超えている感じですか?
ASH:超えている側面と、想像していた以上に現実は難しいなって側面と、どっちもある感じです。当初は、テーブルの上でパソコンを叩いて企画書を作ってたわけで、机上の空論のように“こういうロックスター像が世の中に必要だろう”って想い描いていたんです。それを演じるように表現することでASH DA HEROになろうとしていた。だけど、自分が本来持っている要素と相反している部分が出てきたり、それがうまく混ざらなかったり、苦悩もして。そもそも頭の中で思い描いた設計図や理想像が間違っていたのかな?って感じる時期もありました。
──アップデートの連続だったわけですね。
ASH:自分の中のいいところはどこだろう?って模索する10年でもありました。そして、まだまだ叶えられていないこともたくさんあるし。

──バンド形態になったとき、力強いメンバーが自分の傍らに常にいてくれることで、自身が描く野望はさらに広がりました?
ASH:これはどこにも話してなかったことですけど、実は最初からASH DA HEROはバンドにしようとしていたんですよ。サーカス団のような、なんでもできるバンドにするべくメンバーを探したけど、なかなか見つからず。そのまま、まずソロで活動をスタートさせたんです。いずれASH DA HEROというプロジェクトが、たとえば海外へ行くようなタイミングになったときに正式メンバーを引き連れて、世界中で暴れる日本代表のロックバンドにしたいって話は、ごく一部の人にはしていたんですよ。
──では予定通りと言えば、そうだと。
ASH:そうですね。コロナ禍になったときにバンドメンバーを迎えて、自分のギヤが“絶対に海外へ行くぞ、時代の主人公になる曲を作るぞ”ってモードに入った感じです。
──バンド形態になった途端、ソングライティングの色合いも変わりましたよね?
ASH:それまでは自分ひとりで歌詞も曲も書いていたけど、バンドになってからは曲を書くスピードの早いNaruくん(Narukaze)がいて、「僕は歌メロのトップラインと歌詞を書くから、しのぎを削るようにふたりで曲を作っていこうぜ」って。

──Narukazeさんが音楽性の相違で2024年秋に脱退しましたが、バンド形態となったASH DA HEROのソングライティングの相棒だったわけですから、大きな痛手だったと思うんです。バンド内ではどう考えていたんですか?
ASH:そもそもバンドって、他のメンバーとの音楽性の違いはあるものじゃないですか。だから、初めから相違はなかったし、相違はあったんです。という言い方が正しいのかもしれない。そして、そこがバンドの一番の面白いところでもあって、Naruくんとの音楽制作は、自分ひとりじゃ決して生み出せない素晴らしい楽曲が生まれたし、最高の化学反応の連続でした。では、なぜ別れることになったのか。それは、恋人や家族が別れるときに近い感じで、ひとりひとりの人生を考えたとき、より良い選択をするべきタイミングでもあったんです。お互いに苦渋の選択でしたが、たくさん話し合って決断しました。
──お互いを尊重し合った結果だという。
ASH:そうです。たくさん話し合いましたからね。でも、僕らは“ああ、どうしよう…”って悩んだし、最初に出た案は「誰かギタリストを探すしかない」ってことでした。でもNaruくんが本当に素晴らしいギタリストだったから、代わりを見つけるのは相当難しいことで。というか、代わりなんていない。
──それで目線も変わったわけですか。
ASH:「海外にはギターレスのロックバンドも存在している。ASH DA HEROにはベースがいて、ドラムがいて、DJがいて、ボーカルがいる。であれば、ロックができないという言い訳にはならない。ロックができる気がする。いや、できる。やるんだ。それを作っていこう」って話をメンバーやスタッフともしたんです。「未知の領域だけど、やってみよう」と。痛みも悲しみも不安もめちゃくちゃあったけど、目の前に待ってくれているファンのみんながいるから、俺たちは進むんだっていう決意。そして「みんなに希望を見せることが、ロックバンドとして一番カッコいいことだ」って話をして、とにかく進もうと。


──メンバーの結束力、音楽への情熱が一気に高まったんですか?
ASH:もう一気に。それまでは僕とNaruくんがバンドを引っ張って、他の3人がそれをサポートしてくれるという側面がそれぞれのスタンスにあったと思うんです。
──そうですよね。
ASH:これは、先日のアルバム『HYPERBEAT』インタビューでもメンバーが話したことですけど、Naruくんがいなくなったことによって、“俺がやんなきゃ。俺がやるしかないだろ” ってメンバーそれぞれが奮い立ったんですよね。それを見て、“あぁ、みんな変わろうとしてるんだ”って思ったし、“僕も変わらなきゃいけないし、みんなを引っ張っていくってことをさらに意識しなきゃいけないし。それと同時に、自分が引っ張るだけじゃなくて、みんなで一丸となって進まなきゃいけない”って。そういう意識になりました。そこは大きな変化です。







