【コラム】eillが描く、恋の終止符のその先「ラストシーン.」

これまでも数々のアーティストの歌が恋愛リアリティ番組を彩ってきたが、おそらく現在、最も視聴者の感情移入を誘っているのがPrime Videoで10月16日から配信が始まった『ラブ トランジット』シーズン3と、その主題歌であるeillの「ラストシーン.」だろう。
曲が番組の魅力を増幅していると同時に、番組自体が「ラストシーン.」の世界と絶妙にリンクした映像──という理想的な相互作用が生まれている。その点を紹介するために、まずは番組の概要について簡単に触れておくとしよう。

『ラブ トランジット』は、CJ ENM系列の韓国コンテンツ配信サービスTVINGのオリジナルシリーズ『乗り換え恋愛』のフォーマットを元に、日本で製作されている。最大の特徴は、「出演している10人=5組の元恋人たち」という点だ。一度は別れた男女が、約1ヶ月間にわたってホカンス生活をする様子を描いている。誰が誰の元恋人なのか視聴者は知らず、出演者たちも当事者同士のこと以外は何も知らない。交際期間、別れた時期、破局理由が異なる出演者たちは、どのように行動するのか? 複雑に入り乱れる各々の関係、真実が明らかになって生じる変化、駆け引き、嫉妬、未練などが絶えず渦巻くので、一度観始めると行く末が気になって仕方がない。
「ラブ トランジット=愛の乗り換え」というタイトルにも表れている通り、出演者は各々の決断を経て未来へと踏み出すが、出演者が向かおうとするのが「新たな恋のスタート」のみであれば、視聴者が見守るのは「個々の恋が成就するか否か?」という一点に集約される。しかし、元恋人同士が参加しているがゆえに「復縁するか否か?」という選択肢もあり得るのが、この番組ならではの要素だ。そしてeillの「ラストシーン.」の輝きの理由も、まさしくそこに根差している。
『ラブ トランジット』の視聴者が番組と向き合いながら気づくのは、「恋の終止符は、本当の意味での終止符ではない」という点だろう。出演している全員が恋の終わり、つまり破局の体験者たちだが、過去の恋の余波を何らかの形で受けていない者は1人もいない。未練を引きずり続けている者、裏切りを経験して恋に憶病になってしまった者、元恋人が誰かと仲よくなるのを見て燻っていた想いに気づく者が過去の恋と地続きの世界に居るのは言うまでもない。
しかし、新しい恋に向かったとしてもその点はさほど変わらないのだと、『ラブ トランジット』を観ていると度々実感させられる。「幸せになってあいつを見返してやる!」、あるいは「次の恋人との出会いによって未練を断ち切りたい」という決意は、終わった恋を起爆剤とした行動以外の何ものでもない。「次の恋へと潔く進んでいるのだから私は未練ゼロの未来志向」と思うことすらも、かつての恋を意識することから逃れられていない。要らない過去は現在を作り上げているという点で尊い過去と同じなのだろう。eillの「ラストシーン.」は、「恋」という営みのそんな部分を奥行き深く浮き彫りにしている。
恋の終わりを経たこの曲の主人公は、過去を断ち切れない「未練」のエリアの住民だ。様々な描写が並ぶ中、恋の思い出と結びついたラブソングに関する表現が印象に残る。前半での《ふたりで聞いたラブソングは》に続くフレーズは《まだ私のこと想いながら聞いてよ》。終盤では《どんな恋をしたって 誰と歌ったって ずっとずっと想って聞いてよ。》と歌われている。映画や漫画などのエンディングは物語に終止符を打つが、現実の人生は、そう都合よくはできていない。破局は恋の終止符でありつつも、「ラストシーン」のその先の生活は続く。この曲のタイトルに加えられている「.」は、そんなことを示しているのかもしれない。
ピアノを基調としているバッキングトラックは、徐々にストリングス、リズム楽器などを加えながら熱量を高めていく。歌に関してもウィスパー寄りの声に想いを乗せて幕開けつつも、抑えようもない感情を終盤にかけて滲ませる。本当の意味での「ラストシーン」も「.」も、この曲の主人公にとっては存在しなかったことがまざまざと伝わってくる歌だ。そして、『ラブ トランジット』シーズン3の10人の出演者も、何かしらの部分でこの曲と重なることに気づかずにはいられない。だからこそ番組の視聴者は、強い感情移入と共に受け止めているのだと思う。
eillは『ラブ トランジット』のこれまでのシーズンの主題歌も手掛けてきた。シーズン1の「happy ending」もシーズン2の「happy ever after」も、恋の終止符の先にある感情を描いているという点では相通ずるものがあり、そのテーマに改めてじっくり向き合ったのがシーズン3の「ラストシーン.」ということになるのだろう。『ラブ トランジット』が彼女に大きなインスパイアを与え続けているのが窺われる。
この番組がきっかけでeillに惹かれた人には、効果的に流れる挿入歌の「FAKE LOVE/」「革命前夜」「Love, lala ~恋の行方~」「hikari」「Baby, with u」「BAE」「fortnight」「HARU」「スキ」「プレロマンス」「フィナーレ。」などもじっくり聴いてもらいたい。11月5日にリリースされる2nd EP『ACTION』には「ラストシーン.」が収録されているが、TV アニメ『桃源暗鬼』第二クール・練馬編 エンディング主題歌「ACTION」など、他の曲もきっと好きになると思う。そして間もなくスタートする『ACTION TOUR 2025-2026』のどこかの会場に足を運ぶのもお勧めしておきたい。ブラックミュージックを下地にしつつ多彩な表現を届ける彼女に深く魅了されることになるはずだ。
文◎田中 大
◾️「ラストシーン.」
■EP『ACTION』
2025年11月5日(水)発売
購入:https://eill.lnk.to/ACTION_CD
特設サイト:https://eill-action.com
◆収録曲(初回限定盤・通常盤共通)
M1.ACTION
M2.what am i made for?
M3.ラストシーン.
M4.Love, lala ~恋の行方~
M5.NEEMIA
M6.fortnight
◆初回限定盤
品番:PCCA-06437 価格:4,800円(税込)
・初回限定盤映像特典(Blu-ray)「BLUE ROSE TOUR 2024」@東京国際フォーラム ホールC
1.BAE
2.FAKE LOVE/
3.罠
4.25
5.ただのギャル
6.Succubus~初恋
7.happy ending
8.プレロマンス
9.20
10.palette
11.踊らせないで
12.MAKUAKE
13.片っぽ
14.happy ever after
15.SPOTLIGHT
16.23
17.ここで息をして
18.WE ARE
EC1.革命前夜
EC2.Baby, with u
EC3.フィナーレ。

◆通常盤
品番:PCCA-06438 価格:2,200円(税込)

◆封入特典(初回限定盤・通常盤共通)
ランダムカード(全5種)※初回生産限定
◆CDショップ予約購入先着特典
・Amazon.co.jp:メガジャケ(初回限定盤ver./通常盤ver.)
・楽天ブックス:A4クリアファイル
・セブンネットショッピング:アクリルコースター(初回限定盤ver./通常盤ver.)
・タワーレコードおよびTOWERmini全店、タワーレコードオンライン:ジャケ写ステッカー(初回限定盤ver.)
・全国HMV/HMV&BOOKS online:チェキ風ブロマイド
・PCSC含むその他一般店:ジャケ写ステッカー(通常盤ver.)
※全国のCDショップ、WEBショップにて2025年11月5日発売の『ACTION』をご予約・ご購入のお客様に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
※各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします。
※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。
■<ACTION TOUR 2025-2026 (国内公演)>
2025年
11月29日(土)大阪・心斎橋BIGCAT
開場17:00/開演18:00
12月5日(金)北海道・札幌PENNY LANE 24
開場18:00/開演19:00
12月13日(土)宮城・仙台Rensa
開場17:00/開演18:00
2026年
1月17日(土)福岡・DRUM LOGOS
開場17:30/開演18:30
1月24日(土)愛知・名古屋DIAMOND HALL
開場17:30/開演18:30
2月7日(土)東京・Kanadevia Hall(旧:TOKYO DOME CITY HALL)
開場17:00/開演18:00
◆料金・券種
[東京公演以外] スタンディング(整理番号付き)7,700円(税込)
別途ドリンク代 600円必要
[東京公演] 指定席 7,700円(税込)
別途ドリンク代 500円必要
お一人様4枚まで(分配可)
※未就学児のみでの入場不可。4歳以上要チケット
※録音・録画機材(携帯電話)使用禁止
※営利目的の転売/譲渡禁止
※名古屋公演以外は、ドリンク代のお支払いは現金のみとなります。
チケット販売サイト:イープラス
チケット販売URL:https://eplus.jp/eill/
◆公演に関するお問い合わせ
・大阪公演
サウンドクリエーター:TEL 06-6357-4400
(祝日を除く平日 12:00~15:00)
・北海道公演
マウントアライブ:TEL 050-3504-8700
(平日 11:00〜18:00)
・宮城公演
ノースロードミュージック:TEL 022-256-1000
(平日 11:00~16:00)
・福岡公演
BEA:TEL 092-712-4221
(月~金 12:00〜16:00)
・愛知公演
サンデーフォークプロモーション:TEL 052-320-9100
(12:00~18:00)
・東京公演
クリエイティブマンプロダクション:TEL 03-3499-6669
(月・水・金12:00~16:00)
■<ACTION ASIA TOUR 2026 (海外公演)>
開催都市:台北・上海・バンコク・香港・ソウル
日時や会場、チケット情報は後日発表







