【インタビュー】ACIDMAN、日本武道館ワンマン直前に語る「みんなの想いがひとつになる。そんな経験って日常生活ではほとんどない」

ACIDMANが10月26日(日)、ツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “This is ACIDMAN 2025”>のファイナルとして、日本武道館ワンマン公演を開催する。自身初の日本武道館公演は2007年のツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “green chord”>ファイナルとして。以降、回数を重ね、前回公演はツアー<ACIDMAN LIVE TOUR “Λ”>ファイナルとして行われた。そして開催される7年ぶり7度目の日本武道館ワンマン発表当時、大木伸夫(Vo, G)はBARKSインタビューで、「<This is ACIDMAN>は2021年からスタートさせたんですけど、いつか武道館でやりたい企画だと当初から思っていたんです」と語っていた。「もう一度やりたいと思っていた」という日本武道館公演を“これぞACIDMAN”を意味する<This is ACIDMAN>のツアーファイナルで実施することこそ意義深い。
<This is ACIDMAN>は年一回、メジャーデビュー記念日近辺に開催してきたワンマン公演だ。“事前にセットリストを公開する” “毎年ほぼ同じセットリストで行う”というコンセプトは、演劇や伝統芸能のように長く愛される公演を目指したもの。加えて、デビュー当時より一貫して拘ってきた映像演出も取り入れて行われるなど、彼らの真骨頂と言っていい。その<This is ACIDMAN>を冠したツアーは、今回初めて開催されてものであり、大木曰く「Road to 武道館じゃないけど、スペシャルなツアーのファイナルが武道館公演」として届けられるかたちだ。日本武道館公演について、その直後にリリースされる13thアルバム『光学』の予感について、大木伸夫にじっくり訊いたロングインタビューをお届けしたい。

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■舞台上に立っても客席で観てても
■日本武道館は空気が違う
──3月からスタートしたライブツアー<This is ACIDMAN 2025>が、残すところファイナルとなる10月26日の日本武道館のみとなりましたが、ツアーの感触はいかがですか?
大木:すごく忙しかったです。これは自分で自分の首を絞めたところがあるんですけど、<This is ACIDMAN>という演目は同じセットリストでやると僕のなかでは決めていて。2021年のスタートから、毎年ほどんとセットリストを変えないというコンセプトでやってきました。
──<This is ACIDMAN>は、“事前にセットリストを公開する” “毎年ほぼ同じセットリストで行なう”というコンセプトのもと、演劇や伝統芸能のように長く愛される公演にしていくというもので。今回は初のツアー形式となったことで、そのコンセプトにも変化が?
大木:全国各地をまわるツアーとなると、段々と自分のなかで物足りなくなってくるというか。<This is ACIDMAN>の選曲のルールとしては、シングル曲やミュージックビデオがある曲と定めてはいるんですけど、それでもたくさんの曲があるので、どうしてもあまりライブでやらない曲たちも増えてきてしまって。今回は“毎年ほぼ同じセットリストで行なう”というルールを破って、あらゆる会場で毎回違った内容にしたくなったんです。それで毎回リハーサルにも入っていました。
──それは忙しいですよね。
大木:通常のツアーでは、例えば照明の仕込みとかもあるので、毎回のようにセットリストを変えられたらとても対応しきれないはずなんですけど。僕がそういうモードになっちゃったので、今回は結果的に、毎会場全部違う感じでやって。スタッフの方も含めてすごく忙しいのに対応してくれています。その上、ツアー中にはレコーディングもあったので、ライブの合間にレコーディングをして、また曲作りをして、それでライブのリハをやって、ライブをやって…。

──各地でお客さんからのリクエスト曲を募って、それをセットリストに盛り込んでいくという試みも、それまで演奏していなかった曲が挙がりそうですし。
大木:そうですね。そこも意外な曲もいっぱい出てくるので面白かったです。
──2021年から<This is ACIDMAN>の回を重ねて、感じることはありますか?
大木:<This is ACIDMAN>は最初、実験だったんです。毎年同じ演目で、セットリストも事前に発表をしてライブをやっている人たちって、あまりいない。でも演劇や映画とか、ストーリーがわかっているものをあえて観るというエンタメがあるなら、音楽でもその方法はあり得るんじゃないかなっていう思いが最初のスタートだったんです。それを4年続けてきて、ほとんど同じセットリストで変わらないにもかかわらず、ありがたいことに動員があって、すごく評価していただけてる実感がある。だったら、今回はツアーにしてみようと。であれば、そろそろ武道館をもやりたいよねという話をしたときに、ちょうど今年が、前回の武道館から7年ぶり7度目という縁起のいい数字で……さらに言うなら令和7年というのもあるんですけど(笑)。とても縁起のいい1年になりそうだなということで、武道館でツアーを締めくくろうとなりました。
──今回のツアーで全国をまわることで、ようやく<This is ACIDMAN>を観られるという方も多いと思いますが、各地の反応はどうですか?
大木:すごく盛り上がってくれていますね、それによってこちらも盛り上がるし。ファンの方の年齢も含めてちょっと落ち着いたツアーになるかなと思いきや、全然そうではなくて、すごくエネルギッシュです。新潟とか岡山とかの公演では床が抜けるんじゃないか?みたいな盛り上がりだったので。僕らもやっていて楽しいし、興奮しますよね。僕たちがやり続けてきた音楽というものが、本当にお客さんの心の奥に刺さってくれていることが、客席から伝わってきます。ただのエンターテインメントとして来てくれているわけではなくて、もちろん流行っているからとか人気があるからとかで来てくれているわけでもない。すごく好きでいてくれるという。ピュアな思いで来てくれているのが感覚として伝わってくるので、それは誇りに思う。
──各地のリクエスト曲で、意外な曲とか嬉しかった曲はありましたか?
大木:すべてです。全然予想してなかった曲たちが多くて、想像を超えてました。シングルにしてないとしても、僕は作者でもあるので、どの曲にも愛着があるんです。ただ、ツアーやライブでやってみた手応えから、“この曲はあまりライブ人気がないのかな。あまりやらないようにしよう”って、なんとなく自分の中で勝手に決めちゃっていた節もあって。でもリクエストを募ってみると、そういう曲が意外と1位になったりもするんです。この間も、アルバム『新世界』収録曲の「カタストロフ」をやったんですけど、“なんでこの曲をあまりやってこなかったんだろう”って思うくらい、みんなが反応してくれて。今、この時期だからなのか、再評価していただけている気分になるので、とても嬉しいですね。
──日本武道館でもそういった曲が入ってくるのが楽しみです。
大木:どんな選曲になるのかが、今から楽しみではありますね。

──改めて、10月26日に7年ぶり7度目の日本武道館公演を迎えますが、この日本武道館という場所はバンドACIDMANや、大木さん個人にとってどんな場所ですか?
大木:魅力のある場所だと思っています。ビートルズ来日公演の影響は大きいと思うんですけど、世界的なバンドたちが何十年もの間で作り上げた文化のおかげで、本来は日本古来の武道をやる場でありつつ、世界に知られる音楽の殿堂にもなったという。
──たしかに。
大木:スピリチュアルな空気感が流れている場所で、僕は、自分がライブでやるときだけじゃなくて、他のアーティストを観に行くときも、武道館は別ものという感じがあるんです。空気が違うというか、神社仏閣とか、そういう神聖な場所のようなイメージを持っているので、意味深いところだなと思います。
──法隆寺夢殿をモデルにしたという八角形の建築ですし。ステージに立ったときの感覚もやはり違うものですか。
大木:はい。ステージに立ったときも全然違うし、客席で観ていても違いますね。
──これまで6度の日本武道館公演をやってきて、印象深いライブはありますか?
大木:これが、僕は過去6回のライブのことをほとんど覚えてないんです。武道館に限らないんですけど、どんなに冷静にやった記憶があっても、やっぱりライブってとんでもない究極の集中状態なので、ほとんど内容を覚えていないというか、本当に自分がそこに立ったのかなって。今回、7年ぶりの武道館公演が決まって、今年に入ってからYouTubeで過去の武道館公演映像を期間限定で無料公開してきたんですけど、映像を見ても違和感がすごくあるんです。自分がやったとは思えない。でも、映ってるのは自分だから、本当にここでやったんだろうなみたいな、ちょっと疑いながら見ています。映像を観て初めて、ああすごいことをやっていたんだなという感覚なんです。せっかく美味しいものを食べたのに、美味しいという記憶を忘れちゃう、かわいそうな人だったりするんですけど(笑)。結構アーティストってみんなそうらしいです。







