【ライブレポート】SION、すばらしい仲間とともに描く40年目の新たな景色。40年を経て“今のSIONが最高”な理由

2025.10.23 12:00

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SIONのニューバンドとして2023年に結成、即座のライブ体制で活動をスタートしたSION’S SQUAD。長らくSIONの活動の一翼を担う藤井一彦(G, Vo / THE GROOVERS)を筆頭に、数多のバンドで苛烈なビートを刻むクハラカズユキ(Dr / The Birthday,M.J.Q他)、推進力の高さとたおやかさでこちらも多くのバンドを支える中西智子(B / ウルフルケイスケバンド他)と、ステージに居並ぶ姿を想像するだけで胸が高鳴るメンバーが揃った。

そんなSION’S SQUADとして3周目、初日・札幌から福岡まで北から南へ全7本の縦断ツアー、そのファイナルにして初の福岡公演が開催された。各地で完売御礼となった本ツアーだが、福岡も見事ソールドアウト。“ファイナルにして初”というこの特別な夜を見届け祝福すべく、ウィークデーにもかかわらず幅広い世代のオーディエンスが集っている。

ツアーロードを象徴するようなワイルドなリフが導いたオープニングは「すばらしい世界を」。ストレートでブレのないサウンドがフロアの熱気をなお昂らせ、この1曲だけでSION’S SQUADというバンドのヴィヴィッドさとリアリティーが伝わってくるようだ。続く「住人」のタフネス、澱みのないドライヴ感、アウトロへ向けて研ぎ澄まされていくような藤井のギターソロがすでにキレッキレで、隣のSIONじゃなくとも破顔一笑である。

「バンドで来るのはかなり久しぶりだけど、元気でしたか?」

歓びの滲む、そして歌と同様の慈しみに満ちた声に、フロア中から「SION~!」「SIONー!!」「来てくれてありがとー!」と歓声が上がり続けるのをニコニコと眺め、「こちらこそ、ありがとうだよ」と応えつつ、詩情にあふれブルースハープが沁みる「薄紫」、さらに「ガラクタ」へとつなぐ。《このガラクタはまだまだ止まらない/確かに型の古いエンジンさ/だけどまだまだ止まらない》という反骨に満ちた歌は、その後の20年で疑いの余地なく証明されて、今ここでどんな揶揄も敵わない泰然さすら伴って輝いている。無論、この新たなバンドのダイナミクスも大きく貢献しているだろう。前半の山場でプレイされた「夜しか泳げない」でも、跳ねるリズム、軽やかなアンサンブルが実に心地よく、オーディエンスのコーラスも相まって、芳醇な一体感に酔いしれさせてくれた。

中盤、「Slide」「がんばれがんばれ」と、多くのリスナーが自身の生活に伴走させてきたであろうかけがえのない名曲を揺蕩うような流れの中で聴かせ、そして「じゃあ、このあたりで新しいのを1曲」と披露されたのは、ブギーロックな新曲「あれから50年」。《あれから50年/俺は115になった/ディランもストーンズもとっくにあっちで鳴らしてる》──そんなフレーズから始まるこの歌は、115歳になった“俺”の日常と森羅万象の営み、たとえ国や社会が大きく変貌しようとも大切なものを守るという変わらぬ気概を、ユーモアとアイロニーたっぷりに歌う。

「気がどうかしてしまったわけではありません(笑)。ただ、一彦に(デモ)テープを渡したときは、“…そっちっスか!”とえらくびっくりしてもらって、とっても嬉しかった!…どうだ、まいったろ!」(SION)

「最近、ヒトに、まいったかどうか聞くんですよ(笑)。…まいりました!」(藤井)

(SION&オーディエンス大爆笑)

「今のいいな(笑)。今度はそれを歌にしよう!《俺は最近、ヒトにまいったかどうか聞くらしい》」(SION)

チャーミングすぎるやり取りの後、「彼女少々疲れぎみ」でのSIONと中西との掛け合いを経て、バンドはさらにヒートアップ。オーディエンスとの熱いハーモニーを生んだ「俺の声」、アグレッシヴなグルーヴが心身を滾らせた「お前がいる」や「Hallelujha」といった真骨頂で、会場中を熱狂と歓喜の渦に巻き込んでいく。そしてクライマックスは、クハラと中西のダイナミズムあふれる峻烈なビート、藤井のマシンガンギターも炸裂し、SIONのソウルの源流のみずみずしさを示した「新宿の片隅から」。

「わかるやろ、115になったって歌えそうなのも。すばらしい仲間やろう。中西智子。クハラ“キュウ”カズユキ。藤井一彦。…最近は、ここで俺は訊きます。俺は誰だ?」

「SION!!!!!!!!!!」

オーディエンスのありったけの愛を受け取ったSION’S SQUADが本編ラストに鳴らしたのは「マイナスを脱ぎ捨てる」。今年6月にデビュー40周年を迎えたSIONにとって、「今が最高潮だ」と感じたり言われたりしたことは幾度もあっただろう。逆に、肉体の衰えがパフォーマンスに影響することだってあったろう。それでも、今夜のステージのようにピカピカの新曲を嬉しそうに歌い、最高の仲間とアジテイトな音を鳴らし、あの頃のあの歌たちが今を生きる様を見せてくれている限り、「今のSIONが最高にカッコイイ!!」と私は声を大にして言う。まずは今夜、2度のアンコールに応え、再び新しい歌も交えて人生と音楽を謳歌することの歓びを全身全霊をもって伝えてくれたことに、最大の感謝を贈りたい。

なおSIONは、幻のオールタイムベスト『30th milestone』(30周年記念限定盤)のリクエストプレスの受付がスタートしている。レーベルの枠を超えた全35曲のリマスタリング音源(SHM-CD2枚)に加え、デビュー前のライブ音源(CD)、ライブ映像とMVを収録したDVDの4枚組豪華仕様盤は、ファン必携、新たなリスナーにとってもSIONの道程を知ることのできる貴重な作品だ。ぜひこの機会をお見逃しなく。

文◎Satomi Yamasaki

セットリスト
SION’S SQUAD TOUR 2025
2025.10.21@福岡INSA

【Set List】
M1. すばらしい世界を
M2. 住人
M3. 薄紫
M4. ガラクタ
M5. 光へ
M6. あの日のまんま
M7. ウイスキーを1杯
M8. 夜しか泳げない
M9. Slide
M10. がんばれがんばれ
M11. あれから50年
M12. 彼女少々疲れぎみ
M13. お前の笑顔を道しるべに
M14. 俺の声
M15. まるで誰かの話のようだね
M16. お前がいる
M17. Hallelujha
M18. 新宿の片隅から
M19. マイナスを脱ぎ捨てる

EN1. 調子はどうだい
EN2. Old Gunslinger(好きでいたいんだ)

W EN1. バラ色の夢に浸る
W EN2. このままが

SION オールタイム・ベスト『30th milestone』30周年記念限定盤
品番:TECI-1500
価格:¥11,000(税抜価格 ¥10,000)
商品形態:アルバムCD(3枚組)+DVD

■予約期間
2025年10月10日(金)22:00 ~ 2025年11月9日(日)23:59まで
予約:https://teichiku-shop.com/products/detail/TES0000417

■お届け時期
2025年12月下旬頃の出荷を予定。

※ただし、予約期間内に規定数以上のご予約に達した場合のみ、生産決定とさせていただきます。
予約締切日までに規定数に達しなかった場合は、残念ながら生産はされず、ご予約はキャンセルとさせていただきます。
予めご了承ください。

■収録曲
Disc-1 
01. 新宿の片隅から(「SION」/1986年) 
02. 俺の声(「新宿の片隅で」/1985年)
03. SORRY BABY(「SION」/1986年)
04. 風来坊(「風来坊」/1987年)
05. 12月(「春夏秋冬」/1987年)
06. このままが(「春夏秋冬」/1987年)
07. サイレン(「SIREN」/1988年)
08. カーテン(「Strange But True-Strange side」/1989年)
09. 記憶の島(「Strange But True-True side」/1989年)
10. 夜しか泳げない(「夜しか泳げない」/1990年)
11. 12号室(「夜しか泳げない」/1990年)
12. 夢を見るには(「かわいい女」/1991年)
13. 蛍(「蛍」/1992年)
14. 月が一番近づいた夜(「I DON’T LIKE MYSELF」/1993年)
15. ありがてぇ(「I DON’T LIKE MYSELF」/1993年)
16. 彼女少々疲れ気味(「SION 10+1」/1994年)
17. 金魚(「抱きしめて」/1995年)             
【全17曲収録/収録時間76:18】

Disc-2 
01. がんばれがんばれ(「フラフラ」/1997年)
02. 通報されるくらいに(「SION comes」/1998年)
03. お前がいる(「SION comes」/1998年)
04. 薄紫(「DISCHARGE」/1999年)
05. 砂の城(「好きな時に跳べ!」/2001年)
06. 雪かもな(「UNIMELTY FLOWERING」/2002年)
07. キャスト(「ALIVE ON ARRIVAL」/2003年)
08. ガラクタ(「ALIVE ON ARRIVAL」/2003年)
09. たまには自分を褒めてやろう(「東京ノクターン」/2005年)
10. 夏の終わり(「東京ノクターン」/2005年)
11. マイナスを脱ぎ捨てる(「20th milestone」/2007年)
12. Hallelujah(「住人~jyunin~」/2008年)
13. 鏡雨(「鏡雨~kagamiame~」/2009年)
14. お前の空まで曇らせてたまるか(「鏡雨~kagamiame~」/2009年)
15. 燦燦と(「燦燦と」/2010年)
16. 気力をぶっかけろ(「Kind of Mind」/2012年)
17. 後ろに歩くように俺はできていない(「不揃いのステップ」/2014年)
18. ONBORO(「俺の空は此処にある」/2015年)    
【全18曲収録/収録時間79:54】

Disc-3 SION LIVE 1986 at SHIBUYA LIVE INN 
※メジャーデビュー4日前の貴重なライブ音源!
1. 風向きが変わっちまいそうだ
2. やるせない夜
3. コンクリート・リバー
4. 春夏秋冬
5. ハード・レイン
6. ダーリン
7. SORRY BABY
8. TONIGHT
9. 俺の声
10.レストレス・ナイト
11.はやく慣れることさ
12.ハングリー・ナイト
13.街は今日も雨さ
14.KNOCK ON THE HEART
15.クロージング・タイム
(収録:1986年6月17日 渋谷ライブ・イン)          
*M8とM10以外は未発表音源              
【全15曲収録/収録時間76:03】

Disc-4 SION LIVE & CLIPS (DVD)
RARE LIVES
1986年2月28日 渋谷ライブ・イン
M1.風向きが変わっちまいそうだ (★)
M2.俺の声
M3.12月

1988年5月29日 汐留PIT
M4. バラ色の千鳥足 (★)
M5. パニック
M6. ノスタルジア (★)

1989年3月2日 NISSIN POWER STATION*音声はモノラルです
M7.もの悲しい風 (★)
M8.こんな大事な夜に (★)
M9.カーテン (★)

STRANGE CLIPS
M10.春夏秋冬
M11.サイレン
M12.元気か?
M13.水の中にいるようだ

SION-YAON with THE MOGAMI 2010>2015
M14.住人(SION-YAON 2010)
M15.遊ぼうよ(SION-YAON 2010)
M16.どけ、終わりの足音なら(SION-YAON 2011)
M17.コンクリート・リバー(SION-YAON 2013)
M18.月が一番近づいた夜(SION-YAON 2014)
M19.お前の空まで曇らせてたまるか(SION-YAON 2015)
M20.このままが(SION-YAON 2015)
*(★)は未発表映像                
【全20曲収録/DVD収録時間 約100分】