「M-SPOT」Vol.038「月追う彼方にみる、ひたむきさと喜びと楽しさ」

今回のM-SPOTで紹介するのは、月追う彼方という名のJ-POP~J-ROCKバンドだ。チャットモンチーを筆頭とした2000年代邦ギターロックの遺伝子を素直に継承しながら、真っ直ぐな目線でエネルギッシュにキャッチーなメロディを紡ぐ3ピースバンドだ。
月追う彼方のサウンドから見えてくるものは、音楽に対するひたむきさと音楽を奏でる喜びと楽しさ。その香りはどこから漂うのだろうか。トークを重ねるのはいつものナビゲーターTuneCore Japanの堀巧馬と進行役の烏丸哲也(BARKS)である。
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堀巧馬(TuneCore Japan):月追う彼方という北九州出身のスリーピース・バンドがいるんですが、「うたかた」という曲の…なんていうか「平成サウンド感」がめちゃくちゃいいんですよ。純粋に応援したくなる感じのサウンドで。
──ピュアさが引き立っていますね。
堀巧馬(TuneCore Japan):初めて聴いたときにチャットモンチーを思い起こしたんですけど、プロフィールを見たら全員女性のスリーピースバンドで「チャットモンチーがルーツ」と書かれてあって、「いいな」と思ったんです。
──「平成サウンド感」にちょっと胸がキュンとしちゃう感じ(笑)。ドラムも太くて落ち着いていて、堅実に叩きつつも、2コーラスではリズムの遊びが入ったりして、ライブでもめっちゃ盛り上がりそうですね。
堀巧馬(TuneCore Japan):なんか楽しそうですよね。一般的に、「ライブはライブの体験があって音源だけではその魅力は判断できない」ものですけど、時折「この人のライブは、絶対面白いだろうな」って思わせてくれる音源ってありますよね。このバンドにはそれをすごく感じるんです。曲を聴いた時に「ライブが楽しそうだな」って思える…これって実はすごいことと思うんですよ。
──確かに。
堀巧馬(TuneCore Japan):3人で目を合わせながら、ステージですげえ笑顔でやっているっていう雰囲気が音源から伝わってくる。そのエネルギーがすごくないですか?
──レコーディングしている時の心情が、実はライブのときと同じなんじゃないでしょうか。レコーディングって、「いいプレイを録りたい」と思えば思うほど「いいプレイから遠ざかる」という謎の落とし穴があるじゃないですか。
堀巧馬(TuneCore Japan):わかります。「その先にお客さんがいるんだ」という感覚も失ってしまってね。
──そう。実力の120%を出したいという背伸びって、プレイからパッションを奪いますよね。そういう邪気がないから、のびのびとした心地よさが音源に宿っているんじゃないかな。
堀巧馬(TuneCore Japan):上がったテンションや汗のかき方まで伝わってきそうで、なんなら最後に「ありがとう!」とか言ってそうですもん。もちろん音源には入っていないけど(笑)。
──レコーディングでも、いつもの演奏でライブの時と同じようなパワーを出す…それができるっていうこともひとつの才能ですね。

堀巧馬(TuneCore Japan):ほんとにそう思います。やっぱりレコーディングって、音源としての作品の完成度を高めるみたいな職人気質な要素が顔を出すと思うんですよね。
──当然のように「完成度を高めたい」と思うから、それが普通だったりもします。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうなんですよ。普通はみんなそっちだと思うんですけど、そことの違いは何なのかって言語化できないんですけど、雰囲気に出ますよね。「お、俺には伝わる」みたいな(笑)。だから「完成度だけじゃない魅力というものは、音源からもにじみ出る」というのを知れる楽曲のひとつだと思ったんです。音源なんて完成度が高い方がいいに決まってるのにも関わらず、荒削りの方が逆にいいみたいなパターンも実は存在するわけで。
──結局「完成度ってなんですか?」って話ですよね。「譜面通りに理想的に演奏されたものが完成度が高いとするのですか?」みたいな話で、要するにそれはバンドに求められているアティテュードの話になるわけです。譜面通りでもパッションがなければ意味がないわけで、そういう意味では必ずしも「いい音楽」≒「高い完成度」ではないですよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):確かにそうですよね。要は「自分たちが最も輝いている」と思える共通認識ができているってことですね。
──「伝えたいこと」「見てほしいもの」を音源として表現することがミュージシャンのスキルだとすれば、月追う彼方は極めて高いスキルを持ったバンドとも言えますね。
堀巧馬(TuneCore Japan):いや本当にすごいですよね。顔も見えないのに楽しそうって思えるってすげえことだな。
──音源を作るときの目標設定みたいなものを改めて見つめてみるのも大事かもしれない。ミュージシャンって迷いがちというか間違いがちというか「何が正解なんだっけ」って、迷走しがちじゃないですか。
堀巧馬(TuneCore Japan):確かに。逆に、僕らリスナー側にも読み解く楽しさってありますよね。音楽がバンバン消費されていく世の中で、「アーティストが表現したいもの」とか「こうであるべき」みたいなことや「美学」みたいなものを感じ取りながら聴くのと、右から左へ流れちゃうのでは違いますよね。そういう捉え方ができなくなっちゃうと、人としての感受性が乏しくなっていっちゃう感じもする。そういう時代を感じてしまう自分もいるんですよね。
──音楽の中に込められている色んな思いやメッセージも吸収していきたいですね。じゃないともったいない。
堀巧馬(TuneCore Japan):楽曲も増えてアーティストも増えていく中で、せっかく音楽を聴くんだったら、感受性もどんどんアップデートしていった方がいいですね。
──そこからの刺激が、リスナーをアーティストに変えていくわけでもありますから、新しい才能を生み出すきっかけに、月追う彼方の「うたかた」のような楽曲が世に響いていけばいいですね。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうですね。いろんな方向性でインスピレーションが得られるといいですね。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
月追う彼方
北九州発スリーピースロックバンド 月追う彼方。地元・小倉で[Gt/Vo しほ] と[Ba/Cho かおり]で結成後、拠点を東京に移し現在は下北沢・渋谷を中心に勢力的に活動中。2025年1月には[Dr/Cho ななみ]が加入しさらにグルーブがパワーアップ! ルーツであるチャットモンチーを筆頭とした00年代邦ギターロックの遺伝子を継承しながら、新世代ならではのエネルギッシュで繊細な音楽性を貫く。喜怒哀楽、どんな感情にもそっと寄り添う歌詞と、キャッチーなメロディに切なさとノスタルジックさが交わる楽曲、そして高熱量かつ巧妙なライブパフォーマンスにより、次々とライブハウスでファンを獲得。全国各地で多くのサーキットイベントへ出演するなど、インディーズロックシーンでの勢いは日々加速中。
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=861664







