「M-SPOT」Vol.037「タイパ&コスパ最悪なバンドという喜び」

今回のM-SPOTで紹介するのは、キャッチーながらハードなバンドサウンドで温度感高いエモなサウンドを聴かせてくれるロックバンドだ。
2025年の音楽ムーブメントやSNSでバズを起こしやすいテイストではないことが主な要因なのか、このようなサウンドを聴かせてくれるバンドは、気付けばインディペンデント界隈でもさほど多くないようだ。アニソンやゲーム音楽などが時代を牽引する中で、いわばど真ん中の王道キャッチーサウンドだった肌触りのサウンドなのだけれど、現代の若年層にはどのように響いているのか。
トークを重ねるのはいつものナビゲーターTuneCore Japanの堀巧馬と進行役の烏丸哲也(BARKS)である。
◆ ◆ ◆
──M-SPOTに応募してきたアーティスト群はまさしく宝の山のごとく、素晴らしい作品が目白押しなのですが、今回はVELTPUNCHというバンドの「嘘つき」という楽曲を紹介したいと思います。
──各サウンドが出過ぎずにやるべき仕事を全うしているというか、引き算によってきちんと精錬された様子が見て取れるサウンドで、とてもまとまりがいいと思いませんか?
堀巧馬(TuneCore Japan):僕は、自分たちはこれで行くんだみたいな「意思が伝わって来るような楽曲」に惹かれる傾向があるんですけど、確かに、足し算じゃない引き算に入ったフェーズにいることを感じさせてくれますね。
──ドラムとベースにギターが2本という4人組ですが、ギターとベースがツインボーカルという構成なので、ソリッドな構成ながら音数はたくさん出せるバンドだと思うんです。ライブハウスで盛り上がりそうなオルタナティブロックバンドって、重厚感と音圧でねじ伏せるサウンドを作りがちだったりしますが、VELTPUNCHの音にはどこにも無駄がなく隙間があって風通しがいいけれど、骨格がしっかりしているのでパンチ力やパワフル感は失われていない。ある種ロックバンドのひとつの理想形にも聴こえます。

堀巧馬(TuneCore Japan):確かに。メンバーの誰がどのように曲を作っているか、その進め方にも個性が出ますよね。どういう作りをしてるんですかね。ひとりがリーダーシップを取るパターンもありますけど、そもそもバンド自体が奇跡に近いものだと思うんですよ。
──違う人間が同じ方向を向くこと自体が、ね。
堀巧馬(TuneCore Japan):そう。しかも音楽みたいな言語化も難しい…というか言語化できないから音楽をやるわけで、言葉みたいにカテゴライズができない中で「これだよね」「そうだね」みたいに意見が整っていくこと自体がめちゃくちゃ奇跡なんだと思います。
──そこがバンドの魅力でもあるわけで。
堀巧馬(TuneCore Japan):ひとりで作りあげることもすごいことなんですけど、やっぱりバンド活動って、それ自体が醍醐味だし、聴く側もそういうところを考えながら聴くと、また一味変わった聴こえ方がしてくると思いますね。
──THE LAST ROCKSTARSの取材時、SUGIZOは「火花を起こす」と表現していました。メンバーの個性がケミストリーを起こしているときに、最終的にどのような形状になるかわからないというフレキシビリティがバンドの魅力だ、と。物事がバチンっとぶつかって起きる火花…その奇跡の瞬間を捉えるもので、イメージ通りにならないことこそ楽しいし面白い化学反応であるということです。火花の形は予測できないから。
堀巧馬(TuneCore Japan):予定調和じゃないところですね。結局、協調性みたいなところって、どこまでアーティストに求められる素養なのかな。
──協調性…極論、いらないよね(笑)。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうなんですよ。要はバチバチやっていくわけだから。とはいえ、複数人で物事を前に進めるためには、協調性のような能力は絶対に必要になりますよね。
──もちろんそれはそうですね。そのうえで、「こいつとやるとこんな花火が出る。そこに魅力と面白さを感じるから、こいつとやるんだ」というのがバンドマンの心情ですよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):だから尚更、奇跡だなって思います。家族でさえ、協調性が必要だったりするんですから(笑)。
──いや、ほんと。
堀巧馬(TuneCore Japan):ですから、偶然出会った誰かと意気投合して、自分の意見も言って、相手の意見も受けて、お互いぶつけ合ってひとつのものができあがるってほんとすごいことですよ。
──そういう意味では、関西のMusaというバンドも注目してほしいです。2025年1月に結成したばかりなんですけど、いわゆるハードロック基調のアニメ主題歌系なんですが。
──「アニソンです」と言ってしまえば世界観も作りやすいので、ツールやAIを用いて個人で音楽制作する人が爆増していますよね。そんな時代だからこそ、逆にバンドで丁寧に曲を紡いでいくことって、素晴らしいケミストリーを生む方法だとも思うわけで、ここにも「メンバーが集まった」という奇跡がありますよね。
堀巧馬(TuneCore Japan):確かに、こういうバンドって最近減りましたもんね。疾走感のある平成っぽいアニメを思わせるようなバンドサウンドって、今どきはライブハウスでも出会うことがあまりない。
──ひとりでもできるようになったからかもしれない。バンドって違う4人が火花を散らすからこそ、想像もしてなかったケミカルが起こる。それは音源だけじゃなくてライブ中にも起こるもので、その瞬間のカッコよさってコントロールできないものですよね。そこに魅力があるからバンドマンはライブをするし我々は観に行く。音楽を聴くのが目的なら、こんな非効率なものもないわけで。
堀巧馬(TuneCore Japan):ほんとそうですね。タイパとかコスパじゃないですからね。これが好きでこのメンバーでやるから楽しいっていう。逆にこの非効率さを楽しむことこそバンドの魅力のひとつなんでしょうね。

──今の時代はタイパやコスパが正義ですけど、本当にそこが最重要なら音楽なんか聴く必要もないし、まして音楽をせっせと作ることなんか無駄の極致ですからね。
堀巧馬(TuneCore Japan):もってのほかですか(笑)。
──だから逆に言うと、「遊ぶんだったら思いっきり遊びましょうよ」「誰にもできない遊び方をしましょう」ってことです。人生の楽しみ方という意味では、バンドって最低に最高な至宝の贅沢ですよ。音楽にタイパやコスパを持ち込むなんて愚の骨頂で。
堀巧馬(TuneCore Japan):ですね。今のアーティストって、ほんとにやることが増えちゃってるんです。TuneCoreとしても1番の課題に感じているところで、プロモーションに悩んでいるアーティストってすごく多いんです。悩んでいるというか困っている。SNSツールも増えて、「TikTokは毎日投稿したほうがいいですよ」とか言われて「広告はこうで…」って、楽曲を作るだけで火花散らして疲れるのに「んな、毎日投稿できるわけねえじゃん」みたいな。それでいて「動画も作んないといけないんでしょ?」みたいな。で、金もないってなってきた時に、本末転倒になってきますよね。
──つらすぎる。
堀巧馬(TuneCore Japan):せっかく楽しい活動だったのにも関わらず、「動画作んないといけないから」って楽曲制作にかけられる時間も削られていく。逆にそっちに力を入れすぎたりすると、「あれ、なんで俺、音楽やってたんだっけ」みたいなことになる。ここが今、1番の問題だなと思いますね。
──勝手なことを言えばね、「売れなくたっていいじゃん、自分たちがハッピーなら」って気持ちでやるのもひとつのあり方ですよ。もちろん「絶対売れたいからどんな苦しみも乗り越えるぞ」っていうモチベーションでやるのもひとつ。音楽の楽しみ方や作り方も本当に様々で正解はなくて、「自分が信じる道が正解」のはずだから、そこはピュアに頑張ってほしいかな。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうですね、間違いない。結果、自分の信じた道を行きましょう。
──音楽を選んだ時点で、タイパもコスパも無縁の世界に身をおいたんですから、愚直に邁進するして欲しいです。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
VELTPUNCH
VELTPUNCH(ベルトパンチ、略してベルパン) 日本・東京拠点に活動のオルタナティブロックバンド。 An alternative rock band based in Tokyo, Japan. VELTPUNCH [ベルトパンチ] Vo,Gt : 長沼秀典/Hidenori Naganuma @VP_official Vo,Ba : ナカジマアイコ/Aiko Nakajima @aiko_veltpunch Gt : 荒川慎一郎/Shinichiro Arakawa @arakawasi Dr : 浅間直紀/Naoki Asama @naoki_asamac
[VELTPUNCH オフィシャル] Instagram:https://www.instagram.com/veltpunch_official/
X:https://x.com/VP_official
Subscription:https://www.tunecore.co.jp/artists?id=100837
Apple Music:https://music.apple.com/jp/artist/veltpunch/151405340
Spotify:https://open.spotify.com/intl-ja/artist/5pGkTQuHNVgzBgX4d9pFsc?si=tshl3thwTDW-ufzY-OyVyA
LINE MUSIC:https://lin.ee/xBiHi3M
YouTube:https://www.youtube.com/playlist?list=PLyKb1TE2oTrnN2W0BkpGFLgWMeSGypuVC
Label (EVOL RECORDS):https://www.evol-records.com
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=100837
Musa
2025年結成のVo.Sho Gt.KIRA- Ba.tetsu Dr.yugaで構成される4人組バンド ハードな楽曲に切なくも力強く歌うShoの声がポイント
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=970665







