【インタビュー】超学生 × チバニャン、「やるからには究極のプラモデルみたいなものを作りたい」

今年5月に自身初の作詞作曲楽曲「アイラブインターネット」をリリースした超学生が、早くも新曲をリリース。音楽プロデューサー/トラックメイカーのチバニャンをソングライターに招き、ご主人に恋をするヤンデレ猫耳メイドが主人公の楽曲「しゅきしゅきメイドマスカレイド」を完成させた。
同曲の発表を祝し、今回のインタビューでは超学生とチバニャンの対談が実現。2024年3月にリリースされたチバニャン&Gigaの「のぼせもんHERO feat.鏡音レン ずんだもん」の歌ってみた動画を超学生が七海うららとのツインボーカルで投稿したことをきっかけに縁が生まれた超学生とチバニャン。彼らの初タッグ曲は、なぜ「ヤンデレ猫耳メイド」が主人公になったのだろうか。超学生の思惑や、チバニャンの制作エピソード、両者の共通点など、たっぷりと話してもらった。
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◾︎僕がチバニャンさんと一緒にやる意味を考えて導き出した結果、これしかなかった
──超学生さんとチバニャンさんの初タッグは、どのような経緯で実現したのでしょう?
超学生:チバニャンさんとは以前からご一緒したいなと一方的に思っていて、僕からお声掛けしました。楽曲のコンセプトは僕が考えていた「超学生がチバニャンさんに曲を書いていただくならテーマはこれしかない!」と思ったものを最初の打ち合わせまでに用意して。
チバニャン:そうそう。結構決め打ちだったんですよね。
超学生:ご主人に恋しているヤンデレ猫耳メイドが主人公で、かわいらしさも狂気もどちらも感じられる楽曲を作っていただきたかったんです。
──超学生さんは「どんなものも歌います」「超学生で遊んでください」というスタンスで、楽曲の方向性は作家さんにおまかせすることが多いので、珍しいですね。
超学生:僕がチバニャンさんと一緒にやる意味を一つひとつ考えて導き出した結果、これしかなかったんです。まず、僕のチャンネルでリスナーのみんなが好きなものの要素を絞っていったところ、「メイド服」「猫耳」「ダークな雰囲気」のものにリアクションが多い傾向にあって。それで「ヤンデレ猫耳メイド」という主人公像が浮かんだんです。そこにこれまでチバニャンさんが手掛けてきたいろんなグループへ提供した楽曲や、よく生配信で話している東方Project楽曲の要素や、僕の仮面の要素を組み合わせた結果こうなったという。
チバニャン:へえ、めっちゃうれしいな。そもそも僕を知ってくれたきっかけはなんだったんですか?
超学生:やっぱり最初はグループへの提供曲かなと思います。当時は中学生くらいだったので、あんまり音楽作家という存在をわかってなかったんですよね。MVのコメント欄を読んで「どうやらこの曲はMVに映っていない天才が作っているらしいぞ」と知るんです。チバニャンさんは当時から楽曲制作解説動画や耳コピの動画も上げていて、とんでもない天才がこのグループを支えているんだ!と感動したんですよね。
チバニャン:あははは! 僕としては裏でこそっと曲作るくらいがちょうどよかったんですよね(笑)。
超学生:あのスタンスがかっこよかったんですよね。おまけに去年からボカロPデビューをなさっていたので、だから今回お声掛けしやすかったところもあります。
チバニャン:超学生くんはもともと知っていたし、去年僕の曲もカバーしてくれてたんですよ。
──2024年3月にチバニャン&Giga名義でリリースした「のぼせもんHERO feat.鏡音レン ずんだもん」ですね。超学生さんは七海うららさんとのコラボレーションで同年4月に歌ってみた動画を投稿していました。
チバニャン:たしか僕らが「のぼせもんHERO」を上げた後に、超学生くんがSNSで「一緒に歌ってくれる女性のシンガーさんを募集します」って呼び掛けてたのを見たんですよ。あれ見て直感的に「のぼせもんHERO」を歌ってくれる気がしたんです。そしたら本当にそうだった(笑)。だから超学生くんが上げたカバー動画のリンク、すぐGigaちゃんに送ったもん。
超学生:わーうれしい!(笑)
チバニャン:その動画から1、2ヶ月後、俺が自分の誕生日に配信してたら、超学生くんがスパチャ投げてくれたんですよ。「誕生日おめでとうございます」って。200円でしたけど(笑)。
超学生:チバニャンさんは以前から配信で「のぼせもんHERO」の歌ってみた動画について触れてくれていたんですよね。「超学生くんに見せたいものがある」とも言ってくれていて、なんなんだろう?と思っていたら、そのときに仮面が出てきて(笑)。
チバニャン:「のぼせもんHERO」をカバーしてくれてたから「俺も歌ってみた動画を出す!」って仮面を買ってみたんです(笑)。そこからしばらくして今回の話をいただいて……配信で超学生くんの話題を出して良かったなと思いました(笑)。いろんな畑で音楽を作りたいなと思っていたところだったし、新しいジェネレーションの方が一緒にやりましょうって声を掛けてくれたのがすっごいうれしくて。制作も楽しかったです。
超学生:こちらこそ受けていただいてありがたいですし、しかもチバニャンさんめちゃめちゃ接しやすいんですよ。割と細かく直接連絡を取りながら完成まで至ったので、すごい新鮮な体験でしたね。
チバニャン:やっぱ一緒に作るからには「ここはこうしたいんだけど言いづらいな……」と思わせたら嫌だなと思って。「思ったことは何でも言って!」と言っていましたね。そのほうが結果的にいいものになるし。
超学生:チバニャンさんがそういうスタンスなので、普段できないようなお願いや要望も出せました。間奏はコメント欄でタイムスタンプと一緒に「ここチバニャンすぎる」って書かれるものにしたいとお願いをして(笑)。超学生にせっかく書き下ろしていただくならシンプルな“featuring超学生”になっても面白くないので、チバニャンさんにとって超学生とコラボする意味のある楽曲にしたかったんですよね。
チバニャン:超学生くんほんとに今年24歳……!? 普通そんな考えられないよ! 制作を通していろいろお話させてもらったけど、超学生くんは考える力がある賢い人だし、何より人間のあったかい部分や愛情があるし、一緒に制作しててすごく楽しかったんです。表に立って歌う立場なのに自分でミックスもするし、マニアでないと絶対たどり着かない機材を持っていたりするところも、ほんとすごいなと思っていて。

──好きなものや、制作に関することをとことん突き詰める熱心で純真なところは、チバニャンさんと超学生さんの共通点のひとつだと思います。
チバニャン:相性いいのかな? 超学生くんとしゃべってると元気をもらえるんですよね。
超学生:こちらこそです。マスタリングとかにも立ち会ってくださったし、「いつでも呼んでください」と言ってくださったり、気遣いが本当にありがたいんですよね。
チバニャン:それはGRPさんの影響かも。一緒に仕事することが結構あって、あの人も「直したいとこあったら全然言ってね」というスタンスだし、仕事へのやる気がすごくある人なんですよ。そういう姿を見て「俺も誰かと一緒に音楽を作るなら言いやすい関係を築きたいし、同じベクトルで“いいものを作りたい”という気持ちを持っていたい」と思ったんですよね。最近は特定の物事を歌う曲がバズってる印象があるから、超学生くんから曲のコンセプトをもらったときおもろ!と思ったし、超学生くんに質問したら返ってくる答えも具体的だったからほとんど迷わなかった。
超学生:僕でガチガチに決めたコンセプトを一旦お伝えして、意見をいただけたらと思ったんですよね。依頼する側から具体的に要望を出しすぎたり、指定しすぎたりすると作家さんも「なら自分でやってくださいよ」みたいな気持ちにならないかなと心配ではあって。
チバニャン:俺は具体的に言ってもらったほうが作りやすいかなあ。たまに「心地よいサウンドで」とか「ふわふわしている感じ」というオーダーをもらうことがあるんだけど、俺は寝具メーカーじゃないんだけど!って思ったりする(笑)。「心地いい」「かっこいい」もいろんなパターンがあるし、漠然としたイメージだけだとどんなことを求めているかわからないから迷っちゃう。その点超学生くんは求めてるテンポまで教えてくれたからありがたかったです。だからこれは実際にメイドのことを知る必要があるなと思って、秋葉原のコンカフェに通ったんですよ。
──「しゅきしゅきメイドマスカレイド」は、歌詞の面でも主人公のキャラクターがしっかりと作り込まれていることが印象的でしたが、綿密なリサーチがあったからこそのものだったんですね。
チバニャン:歌詞の《真っ赤に染まる衣装で/二人の生誕祭よ》は、参加した生誕祭の主役の女の子だけ衣装が赤かったからそのままサビに使いました。実際に働いている女の子に「今ムカついてること何?」とかいろいろ質問して、こういうことに腹が立つんだなと理解を深めていきました。俺の想像で書いても変なメイド像になっちゃうから、直接聞くのがいちばんいい。リアルにいきたかったんです。なんなら店名も歌詞に使っているので作家失格ですね(笑)。
──これだけ意味も主人公像も解像度が高いのに、ついつい口ずさんでしまうほど言葉のリズムがいいことにも驚きです。
超学生:歌詞が入る前、チバニャンさんが存在しない言語で仮歌を入れてくれてたんです。その時点でチバニャンさんにはなんとなく「こういう言葉の響きにしたい」というイメージがあって、僕もそれを考えながら聴かせてもらっていて。いざ歌詞が入ったものが届いたら、あの仮歌の響きのままなのにちゃんと意味が入っていたから僕も驚きました。
チバニャン:これね、Gigaちゃんの受け売りなんですよ。Gigaちゃんは謎言語で仮メロを入れるんですよね。だから「のぼせもんHERO」もGigaちゃんの仮歌に、俺が歌詞をつけてるんです。やっぱり歌詞は響きをベースにして考えたほうが音にハマるんですよね。仮歌の段階で本能的に気持ちいい響きを重視したほうが、結果的にいいものになる気がしてます。とか言いつつ、作詞はほぼchat GPTですけどね(笑)。
超学生:そんなわけない(笑)。サビ頭の《イラナイイラナイ超イラナイ》も、仮歌は《メケライメケライメケメケライ》でしたよね。
チバニャン:“超”って言葉は絶対入れたかったんですよね。サビはコミカルで面白くてフックがある言葉を使いたいし、“超学生”ってすっげえいい名前だし、超学生くんに“超”って言葉を歌ってほしかったんです。あとは1番のAメロの《Melody》《Memory》《Theory》《ペロリ☆》は絶対韻を踏みたかった。
超学生:送ってもらったときに「ここで韻を踏んでるのがこだわり」とおっしゃっていたので、「踏んでます」みたいなドヤ顔で歌いすぎないほうがいいなと思ってサラッと歌ったりしました。
──最後《ペロリ☆》でハズす感じ、チバニャンさんのセンスだなと思います。
チバニャン:超学生くんってシュールな雰囲気を出すのがすごくうまいんですよ。真面目に見えて、めちゃめちゃチョケられる人だと思ったからこういうのもアリだと思ったんです。《まじないまじないおまじない/おいしくな~れのおまじない》も実際にコンカフェでこのおまじないを唱えながら魔法陣を書いたから、そのときに「すげえ! これ絶対に曲に入れて超学生くんに黒魔術っぽい感じで歌ってもらいたい! 絶対ハマる!」ってテンション上がりましたもん。
超学生:その部分はメインを録った後にガヤをいっぱい録ってチバニャンさんに送ったので、合唱みたいになってますね(笑)。ライブでも盛り上がるだろうなあ。みんなでおまじないして、すごい空間を作りたいですね。







