「M-SPOT」Vol.060「ハッピーさを万人に伝えてくれる優しさの音楽」

もちろん音楽には好き嫌いがあるし、聴き手の感受性や心身のコンディションによっても、音楽の受け取り方は大きく変わってくる。ときには楽しげな音楽が悲しく響いたり、憂い漂うマイナーキーの音楽に希望を感じるようなこともあるだろう。
だからこそ、わかりやすい音楽にはストレートに伝わっていくパワーが宿るのであろうし、老若男女問わず共通した感想を与えるような音楽性には、限りないポピュラリティの可能性が秘められているとも言えそうだ。
今回紹介するWolf Saitoというアーティストも、そんな可能性を秘めたアーティストのひとり。コメンテーターはTuneCore Japanの野邊拓実、そして進行役はいつもの烏丸哲也(BARKS)である。
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──今回ご紹介したいアーティストは、Wolf Saitoというシンガーソングライターなんですが、自らは「会社員の傍ら音楽活動を行うシンガーソング会社員」と語っている方です。活動は本格的なんですが、会社員として生活基盤を確保しながらミュージシャン活動を両立させるという、まさしく現代の音楽事情を映し出したような方ですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):いいですね。なんていうか、肩の力が抜けている感じがしてハッピーな雰囲気が伝わります。AIが作ったようなガチガチの構成と完成度を求めるのではなく、AIとは真逆を向いているような微妙な抜け感というかこなれたサボり感というか、いい意味での心地よいダサさがきちんと残っていたりするところがいいですね。
──広瀬香美主宰のスクールで作曲、作詞、ボーカルを学んだ経験があるそうですよ。自分で音楽を作って歌って表現することが好きなんだという思いが、曲から溢れている感じがします。こういう活動形態の中からヒットが出たら、そんな夢のある話もないですよね。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですよね。この「ハッピーさ」って、音楽にストイック過ぎて余裕のない人からはなかなか出てこないものだと思うんです。アーティストにとってそこを解決する方法は「人生に対してあんまり期待しすぎない」だとも思うんですよ(笑)。それができれば「ハッピーさ」はフリーターだろうと学生だろうと出せるようになると思うんです。そういう意味では、このWolf Saitoさんの「生活の糧は会社にあるから、音楽は好きなことをやっていこう」みたいなメンタリティーが、こういう肩の力が抜けた感じとか余裕というところに出てきている気がします。
──確かに。悲壮感漂う音楽って聴くのつらいもんね(笑)。まあそういう音楽を聴きたい時もあるんだけど。
野邊拓実(TuneCore Japan):僕が悲壮感漂う音楽ばっかり作っている悲愴感芸人みたいなところがあるんで、ちょっとあれですけど(笑)、でもそうだと思います。悲しい音楽っていうのは、悲しい時の悲しさを肯定してくれたり寄り添ってくれたりもするんですけど、基本的には悲しくなりたい人なんかいないですからね。定常的に聴きたいものはやっぱりハッピーなものだよなって僕も思います。
──ただ現実の世の中って、いろいろ厳しくて悲しいことの方が多かったりしますし。

野邊拓実(TuneCore Japan):経済は不安定だし将来も不安だし将来年金が出るのかもわからないし、いろんな不満・不安はありますけれど、やっぱりハッピーな音楽を聴いてハッピーな気持ちを取り戻したい・ハッピーな状態を保ちたいよねっていうのはすごくある。そういう意味でもこの「SUNSET BABY」はいい曲だなって思いますね。サビも難しいことなしに「SUNSET BABY」って言ってくれるだけ。情報量多すぎな社会の中で、強く情報を突きつけてこないところに優しさすら感じます。
──野邊さんも疲れているようで(笑)。
野邊拓実(TuneCore Japan):なんて言うんすかね、「何かをしろ」「お前はこうするべきだ」みたいなことを突きつけないで、「夕日が綺麗、最高。いいね」みたいな「お前もよかったら来いよ」「気分が乗ったら一緒に見ようぜ」ぐらいの感じのテンション感がありがたいなって思います。
──音楽が持つデトックス効果に完全にヤられていますね。
野邊拓実(TuneCore Japan):そうですかね(笑)。僕は昔、「この歌詞、何にも言ってないじゃん」みたいなことを凄く言っていた大学生だったんですけど、最近は「逆に言わないでおいてくれるって、すごい優しさだな」って思っちゃう。自分の表現としては、どこまでも解像度を上げて正確に自分の感情を生々しく表現したいって思ってはいるんですけれど、それをちゃんとオブラートに包んでくれたり、見えないようにしておいてくれるのは、すごく優しいことなのかもしれないな、みたいな。たまに遊ぶと楽しい友達もいいけど、いつも無駄な話を一緒にしている友達が1番いいんだろうなっていう。…やっぱ僕、病んでるかもしれない(笑)。
──(笑)でも、ひとつの曲を聴いただけでこうやって色々な感情が動くというのは、音楽の良さでもあり面白さでもあり、魅力だということですね。
野邊拓実(TuneCore Japan):人柄が出るなって思うんです。ただの妄想なんですけれど、楽曲を聴いている感じからは、いい人っぽいなって思いますよね。
──やっぱり音楽の力ってすごいですね。これからも素敵な音楽を紹介していきたいと思います。
Wolf Saito
会社員の傍ら音楽活動を行う「シンガーソング会社員」。 23歳から楽曲制作を始め、広瀬香美主宰のスクールで作曲、作詞、ボーカルを学ぶ。 バッキングボーカル、仮歌を経験。 現在はサブスクで楽曲を配信中。 毎月第1土曜日 深夜24時~コマラジ(狛江FM)で「秋山・ウルフの平成百貨店」レギュラー出演中。 サウナー。平成(特に90年代)の女性シンガーフリーク。
https://www.tunecore.co.jp/artists?id=134519
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.







