【レポート】中華圏最大級の音楽アワード<第36回 GMA金曲獎>、国境を超えて世界へ「言語もジャンルも多様」

中華圏最大の音楽アワード<第36回 ゴールデン メロディ アワード 金曲獎>が2025年6月28日、台湾・台北アリーナで開催された。
2025年の応募総数は23486作品。その中から27部門169件の作品がノミネートされ、各受賞者および作品の発表授賞式が行われた。審査委員長を務めた丁曉雯は、「今年は言語もジャンルも多様で、国際的にも通用する作品がとても多かった」と総評を述べた。

また、今年のメインビジュアル“六角螺絲”は、全ての人の心の中に自分のネジがあり、リズムに合わせて回転し、音楽が静かに私たちの心と感情を結びつけているというイメージで作られたとのことだ。
以下に、注目の受賞項目をピックアップしてご紹介したい。
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2000年代初頭に一世を風靡した男性グループEnergyの「星期五晚上」が年度歌曲賞を受賞。21年ぶりの再始動となった彼らは、今も現役でキレのあるダンスと親しみやすいアレンジで世代を超えて注目を集めた。
「21年待ったけど、これは終わりではなく始まり。僕たちは戻ってきた」というEnergyのスピーチがとても印象的だった。


人生で一度だけしか受け取ることが出来ない最優秀新人賞(最佳新人獎)を手にしたのは、台中出身のラッパーsomeshiit山姆。アルバム『愚公(A FOOL)』は、日常の葛藤やささやかな感情を“語り”のスタイルで丁寧に描いた作品だ。「ストリートのリアルと詩的表現が共存している」と審査員からの高い評価を受けた。
「これは一生に一度あるかないかのチャンス、僕は音楽を続けていきます」と受賞後に話した山姆 someshiit。SNSではこのスピーチが多くの共感を呼んだ。

3枚目のアルバム『好聲豪氣』でW受賞した呂士軒。ラップはもちろん歌に繋げる融合性がとても高いと評価された。

台語(台湾語)部門で圧倒的な存在感を放ったのが、アーティスト・李竺芯。アルバム『Suí 水』は、台湾語の詩的な響きとコンテンポラリーなサウンドが融合した作品で、リリース直後から、これは台湾語?それともフランス語?と注目されていた。6部門にノミネートされ、結果、最優秀台湾語女歌手賞、最優秀台湾語アルバム賞、年度アルバム賞といった3部門を受賞した。
「“私”のように、どこにも属さない声を持つ人が、もっとこの世界にいてほしい」と話した李竺芯。アルバム『Suí 水』の歌詞のテーマは“水”と“女性の内面”。流動的な感情を台湾語で表現することで、言語の美しさと音楽が結びついた。

その他、7部門にノミネートされたのが、SunsetRollercoasterとHYUKOH のコラボ作品「AAA」だ。
最優秀MV賞、最優秀歌唱レコーディングアルバム賞、最優秀パッケージデザイン賞など、李竺芯と並ぶ3部門を受賞した。


パフォーマンスゲストは7年ぶりに台湾ステージに立ったMISIA。披露したのは「希望のうた」と「明日へ」の2曲だ。圧巻のロングトーンに会場総立ちの中、大きな拍手が送られていた。
「一緒に明日に向かいましょう。また会えますように」と中国語で話したMISIA。ステージの最後には台湾語で「多謝(ありがとう)」と感謝の言葉を伝えた。
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2025年の金曲賞で強く感じたのは、台湾音楽の“個性”が世界へ向かう年だったということ。言語と音楽の多様性、個性的な声を持つことの勇気。台湾音楽が国境を超えて広がりつつあることが示された。4時間超となった<第36回 GMA金曲獎>には喜びと涙の様々なドラマがあった。その模様はオフィシャルYouTubeチャンネルに動画が公開されている。
取材・文◎竹内将子
写真提供:台視
MISIA写真提供:@Rhythmedia
関連リンク
◆<第36回 GMA金曲獎> オフィシャルサイト
◆<第36回 GMA金曲獎> オフィシャルYouTubeチャンネル







