BLR-I 片寄明人スペシャル・コラム

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グレイトな洋楽アーティストのライヴ映像を続々配信している
BARKSの人気コンテンツ<Barks Live-Rally International>
編集部的にも仕事半分趣味半分で楽しんでしまっておりますが、
ここはひとつ、ミュージシャンの目から見た
「この映像にはこんな見どころももあるんだよ♪」というポイントや、
そのアーティストの魅力を聞いてみたいなと思った次第。
ということで、J-POP界きっての音楽愛好家であるGREAT3、
片寄明人氏による<Barks Live-Rally International>選り抜きコンテンツの
スペシャル・コラムをお届けします!



R&Rバンドの素晴らしさ、儚さ、その両面を骨の髄まで感じさせてくれる


Barks Live-Rally International
SPECIAL COLUMN

【第1回】BLR-I 04 ch
Joni Mitchell
「Painting with Words & Music」

【第2回】BLR-I 05 ch
The Who
「At the Isle of Wight」


【第3回】BLR-I 11ch
Earth,Wind & Fire
「Earth,Wind & Fire-Story」

【第4回】BLR-I 14 ch
ELO
「ELO-Live at Wembley and Discovery」


>>Barks Live-Rally Internationalへ



著者紹介

片寄 明人
比類なきオリジナリティとポップ・センスに溢れる3ピース・バンド、GREAT3のヴォーカリスト。その豊富な音楽知識から、ネット上のヴァーチャル・セレクト・ショップ“sitio”にてCD紹介も担当している音楽愛好家。

【オフィシャル・サイト】
http://www.Great3.com/
【Music Gallery sitio】
http://www.sitio-music.com/
【東芝EMI】
http://www.toshiba-emi.co.jp/


GREAT3 New Single

「climax e.p.」
TOCT-4456 1,100(tax in)
2003年2月26日発売


1. DAN DAN DAN ダン・ダン・ダン
2. Devil's Organ 悪魔のオルガン
3. Haiku 熊穴に入る

GREAT3 New Album

『climax』
TOCT-24982 3,059(tax in)
2003年3月26日発売


1. Superstar スーパースター
2. Dummy Oscar 誰かの唇
3. Television 裏切りの男
4. Honey 恋人よ
5. HAIKU 熊穴に入る
6. China Bowie チャイナ・ボーイ
7. Volvox ボルボックス
8. The Thorn 刺だらけの都市
9. DAN DAN DAN ダン・ダン・ダン
10. Al Capone アル・カポネ
11. Devil's Organ 悪魔のオルガン
12. Charm Against Evil 渦巻いた世界


ロックンロール・バンドにはそのキャリアにおいて絶頂を極める瞬間が必ずあります。バンドが長寿になればなるほど、その表現方法は姿形を変えながら“円熟味”を増したり、時には若かった頃よりも素晴らしい作品を届けてくれるアーティストも存在することは確かです。けれどもロックンロール・バンド、特にそのライヴには残酷なまでに全盛期というものが歴然と存在すると僕は思うのです。

このザ・フー、1970年のワイト島ライヴはまさにその絶頂の瞬間を封じ込めた貴重な映像です。ジミ・ヘンドリックスのライヴなどでも有名なワイト島で60万人もの観衆を集め開催された第3回ワイト島フェスティバル。ザ・フーも前年に続き二度目の出演だったようです。伝説のウッドストックや素晴らしいライヴ・アルバムを産んだ<ライヴ・アット・リーズ>といった舞台で充実したライヴをこなし、名実ともにライヴバンドとなったこの時期。さらに1970年といえばエポック・メイキングとなったコンセプト・アルバム『トミー』を発表した翌年、不朽の名作『フーズ・ネクスト』発表の前年でもあります。そう、あらゆる面で脂の乗りきったザ・フーがここにいるのです。

その魅力を余すことなく伝える選曲は「マイ・ジェネーレーション」「マジック・バス」などのヒット曲が続く前半に続き、ロック・オペラ「トミー」のライヴ・ダイジェスト版ともいえる後半まで全22曲のボリューム。僕が10代の頃にはドキュメンタリー・フィルムなどで断片しか観ることができなかった「ワイト島ライヴ」のほぼ全貌が体験できます。

何よりも素晴らしいのがこの映像とカメラワークの美しさ! とても60万人に向けているとは思えないほどこぢんまりとしたステージをあらゆる角度から狙った数々のショット、そのどれもが感動的なまでにロックンロールの神髄を記録することに成功しているのです。キース・ムーンの熱い視線がピート・タウンゼントの動きから片時も目を離さずにいる様子、そしてお互いのアイ・コンタクトで演奏に熱気が吹き込まれていくドキュメント。キースの背中越しから撮ったステージ・ショットは押し寄せる観衆の熱気とキースが見ていたであろう3人の演奏する後ろ姿をもリアルに捉え、それはそれは息を呑むほどの迫力なのです。

フリンジ・ジャケットでアクション全開、マイクをグルングルンと振り回す26歳のロジャー・ダルトリーと派手なガイコツ柄の革の上下を着てるくせに立ち位置は微動だにせず、涼しい顔で鬼凄い指さばきを魅せる26歳のジョン・エントウィッスル。そして白いつなぎを着て風車の様に腕を振り回す25歳のピート・タウンゼントを後ろから煽り立て、まるで台風の様にドラムを叩きまくる23歳のキース・ムーン。この奇跡的なまでのバランス、個性の惑星直列とでも呼びたくなるような4人の佇まいを感じ取るにはCDやレコードを聴いているだけでなく、ライヴ映像を体験することが絶対の条件でしょう。

1968年頃にローリング・ストーンズが企画制作し、以降30年近くもお蔵入りして公開されなかった「ロックンロール・サーカス」という映像作品をご存じでしょうか。これが公開されなかった理由の一つとしてゲスト出演したザ・フーのライヴがトリのストーンズを軽く喰ってしまったからだという噂が長年に渡って囁かれ続けていましたが、それもこのワイト島でのライヴを観れば、あながち嘘でないことがわかるでしょう。ハッキリ言ってザ・フー全盛期のライヴにはストーンズもビートルズキンクスも遠く及ばない熱量とマジックがあります。これに対抗しうる熱量を持ったライヴを当時体現していたのは、やはり全盛期のジミ・ヘンドリックス&ジ・エクスペリエンスぐらいではないでしょうか。その両者の来日公演が実現しなかったことは当時の日本のロック・ファンにとっては、あまりにも不幸なことだったと僕は思うのです。

4人のオリジナルメンバーのうち2人が鬼籍に入ってしまった今もザ・フーは再結成を繰り返しツアーを行なっています。それは素晴らしいことであり、正面切って老いに立ち向かうピートの姿勢は尊敬に値する行為だと心底思うのですが、その一方でやはりこの映像の中で本当にキラキラと輝いているキース・ムーンが“ありえない”ほどの情熱でドラムを叩きまくる姿を観るたびに鳥肌が立つと同時に涙がこぼれそうになってしまい、「ある意味ザ・フーはキース・ムーンの死を持って終わった」という意見に僕は同意してしまうのです。

ロックンロール・バンドの素晴らしさ、それゆえの儚さ、その両面を骨の髄まで感じさせてくれるこの作品。こういった作品こそ名作と呼ばれ、後生に語り継がれるべきものでしょう!

Great 3 片寄明人

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