正直、それほど期待していたわけではない。アラニス・モリセットを、なんとなくオルタナ世代のポップ・シンガーと思っていた僕は、シンガーとして評価はしていてもライヴはそれほどでもないんだろうと“たか”をくくっていた。それに、この日のラインナップの中では、アラニス・モリセット1人が浮いているようにも思えた。 ▲Alanis Morissette '98年以降、アルバムを発表していないAlanis。所属レーベルと交渉中との噂も伝わっているが、いずれにしろ早く新作を出してほしい | しかし、アラニス・モリセットは素晴らしいライヴ・パフォーマーだった。歌いながら、広いステージを左右に走り、飛んだり跳ねたり、体全体をくるくると回して、腰まで伸ばした髪をぐるんぐるんと振り回す。そんなパフォーマンスはもちろん、体全体が見る者をひきつける魅力にあふれている。 それをオーラと言ってしまうと、いきなり陳腐になってしまうけれど、確かに彼女は、たった1人で数万人の注目に耐えられる器の大きさを感じさせた。やはりスターになる人は違うと痛感した。そうでなければ、時代を象徴するスターにはなれなかっただろう。 どちかと言うと、デビュー・アルバム『ジャグド・リトル・ピル』に近い雰囲気のステージだったと思う。アンコールにこたえ「THANK U 」を歌った。いつ聴けるかとずっと待っていただけに、この「THANK U 」には感激もひとしおだった。 文●山口智男 |