しかしながら、その来日メンバーのメンツがすごい。というのも、なんとそこには元サンダーの面々がほぼ全員顔を揃えていたのである。勿論、ルーク自身がリード・ヴォーカルをとっていることから、シンガーのダニー・ボウズはやって来なかったが、結果的に当日のショウは、サンダーの元メンバーとそのファン達の同窓会のような雰囲気も大いに漂わせていた。
「まぁ……その件については、いろいろと言われるかもしれないけど、本当に良いミュージシャンを探すのってすごく大変なんだよ。でも、サンダーのメンバーなら素晴らしいミュージシャンだということはよ~く分かってるし、人間的にもとてもイイ奴ばかりだからね。本当に良い音楽を作ろうと思ったら、外野の意見なんていちいち気にしてられないよ。
今回俺が、彼等と一緒にプレイすることにしたのは、友達だからとか、元サンダーのメンバーだからとか、そういうんじゃない。単に、良いミュージシャンを集めたら、結果としてこうなってしまっただけさ。それに、メンバーの顔ぶれは同じでも、やっている音楽は違うし、オーディエンスの中には(サンダー時代からの)よく知った顔だけじゃなくて、見かけない人達──つまり、新しいファンも沢山いたんだ。若い子も結構いた……ということは、彼等にとっては、俺が聴いて育ってきた音楽に近い今回の音楽性が、逆に新鮮だったんだろうな!」
というワケで、今回、ルークと共に日本の地を踏んだメンツは以下の通り。
●ルーク・モーリー(G,Vo)
●トニー・マイヤーズ(G)
●クリス・チャイルズ(B)
●ハリー・ジェイムズ(Ds)
●ベン・マシューズ(Key)
●タラ&アナ(Cho,Per)
ルークの幼馴染みというトニー、そして、コーラス&パーカッション担当のタラ&アナ姉妹は、いずれもサンダーの元メンバーとは違うが、アルバム『エル・グリンゴ・レトロ』にも参加していたことから、やはり同作に全面参加していた他の3人のメンバーとのコンビネーションはほぼ完璧。それどころか、あまりに自然体でリラックスした空気に包まれ──“本当にここは日本なのか? もしかして、会場ごとロンドンのパブに移動したんじゃ……”なんて思ってしまったぐらいだ。しかも、外は雨……。もしかすると、ショウの間だけ、僕達は本当にロンドンへ行ってしまっていたのかもしれない。
「本当に……すごく楽しかったよ! ライヴ自体の雰囲気も良かった。サンダーみたいにエネルギッシュな音楽をやっているワケではないから、オーディエンスも飛び跳ねたりすることはなかったし、コンサートが終わったあとにクタクタになることもない。ホント……かなりレイドバックした雰囲気の中で、これまでになくリラックスしてプレイできたね!」
ライヴのセット・リストは、当然ながら『エル・グリンゴ・レトロ』からのナンバーがほとんど。しかし、ファン思いのルークは、ちゃんとサンダー・フリーク達へのサービスも忘れない。ショウの後半で、サンダーのラスト・アルバム『ギヴィング・ザ・ゲーム・アウェイ』(’99)からの「オール・アイ・エヴァー・ウォンテッド」がプレイされた時、より一層大きな歓声が沸き起こったことは言うまでもないであろう。
「実は……セット・リストを全部決めてから、もう1曲必要だということになり、じゃあサンダーの曲を……ということでたまたま候補に上がったのが『オール・アイ・エヴァー・ウォンテッド』だったんだ。この曲を選んだ理由? 単に、歌のキーが俺に合ってたというだけさ。他の曲は歌えなかったんだ(笑)。でも今、改めてこの曲を聴き返すと、既にこの頃、将来的に(ソロで)やりたい方向性は決まっていたんだなって思うよ」
また、アンコールでは、お楽しみのカヴァーもタップリとプレイしてくれた。僕が観た5月24日には、ルーク曰く「ポール・マッカートニーの曲の中で一番好きだ」というザ・ビートルズの「レディ・マドンナ」や、ジョー・コッカーの「黄昏の孤独/You Can Leave Your Hat On」(オリジナルはランディ・ニューマン)、そして、タラ&アナとのデュエットによるマーヴィン・ゲイ(&キム・ウィルソン)の「イット・テイクス・トゥー」という3曲が披露されていたが、他に、日替わりでTレックスの「ゲット・イット・オン」なんかも選曲されていたらしい。いかにも、ルークの趣味丸出しという感じではないか。