“ロックのイリュージョニスト”としての華々しいショーの終焉

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一大ロック・エンタテインメント
ここにKISSありき。永遠あれ!


“ロックのイリュージョニスト”としての華々しいショーの終焉


KISS The Farewell Tour 初日(2000年3月11日アリゾナ州フェニックス)のライヴレポートはこちら!



The Farewell Tour in Japan

2001年3月9日 横浜 横浜アリーナ
2001年3月10日 横浜 横浜アリーナ
2001年3月13日 東京 東京ドーム
2001年3月16日 九州 福岡国際センター
2001年3月18日 名古屋 レインボーホール
2001年3月21日 大阪 大阪城ホール
2001年3月22日 大阪 大阪城ホール

■2001年3月9日 横浜アリーナ
1. Detroit Rock City
2. Deuce
3. Shout It Out Loud
4. Talk To Me
5. I Love It Loud
6. Firehouse
7. Do You Love Me
8. Calling Dr. Love
9. Heaven's On Fire
10. Let Me Go,Rock And Roll
11. Shock Me / GUITAR SOLO
12. Psycho Circus
13. Lick It Up
14. God Of Thunder/ DRUM SOLO
15. Cold Gin
16. 100,000Years
17. Love Gun
18. I Still Love You
19. Black Diamond
────
En1. I Was made For Lovin' you
En2. Rock And Roll All Nite

■2001年3月10日 横浜アリーナ
■2001年3月13日 東京ドーム
■2001年3月16日 福岡国際センター
1. Detroit Rock City
2. Deuce
3. Shout It Out Loud
4. Talk To Me
5. I Love It Loud
6. Firehouse
7. Do You Love Me
8. Calling Dr. Love
9. Heaven's On Fire
10. Let Me Go,Rock And Roll
11. Shock Me / GUITAR SOLO
12. Psycho Circus
13. Lick It Up
14. God Of Thunder / DRUM SOLO
15. Cold Gin
16. 100,000Years
17. Love Gun
18. Black Diamond
────
En1. I Was made For Lovin' you
En2.Rock And Roll All Nite

■2001年3月18日 名古屋レインボーホール
1. Detroit Rock City
2. Deuce
3. Shout It Out Loud
4. Talk To Me
5. I Love It Loud
6. Firehouse
7. Do You Love Me
8. Calling Dr. Love
9. Heaven's On Fire
10. Let Me Go,Rock And Roll
11. Shock Me / GUITAR SOLO
12. Psycho Circus
13. Lick It Up
14. God Of Thunder/ DRUM SOLO
15. Cold Gin
16. 100,000Years
17. Love Gun
18. I Still Love You
19. Black Diamond
────
En1. I Was made For Lovin' you
En2. Got To Choose〜
En3. Parasite〜
En4. She〜
En5. Makin' Love〜
En6. Rock And Roll All Nite

■2001年3月21日 大阪城ホール
1. Detroit Rock City
2. Deuce
3. Shout It Out Loud
4. Talk To Me
4. I Love It Loud
5. Firehouse
6. Do You Love Me
7. Calling Dr. Love
8. Heaven's On Fire
9. Let Me Go,Rock And Roll
10. Shock Me / GUITAR SOLO
11. Psycho Circus
12. Lick It Up
13. God Of Thunder/ DRUM SOLO
14. Cold Gin
15. 100,000Years
16. Love Gun
17. Forever
18. I Still Love You
19. Black Diamond
────
En1. I Was made For Lovin' you
En2. Hotter Than Hell〜
En3. She〜
En4. Parasite〜
En5. Rock And Roll All Nite

■2001年3月22日 大阪城ホール
1. Detroit Rock City
2. Deuce
3. Shout It Out Loud
4. Talk To Me
5. I Love It Loud
6. Firehouse
7. Do You Love Me
8. Calling Dr. Love
9. Heaven's On Fire
10. Let Me Go,Rock And Roll
11. Shock Me / GUITAR SOLO
12. Psycho Circus
13. Lick It Up
14. God Of Thunder/ DRUM SOLO
15. Cold Gin
16. 100,000Years
17. Love Gun
18. I Want You〜
19. Forever〜
20. I Still Love You
21. Black Diamond
────
En1. I Was made For Lovin' you
En2.Got To Choose
En3.Parasite
En4.She
En5.Makin' Love〜
En6.Rock And Roll All Nite
はじめに断っておくが、僕がKISSというバンドの存在を意識して聴くようになったのは、ここ5〜6年のことでしかない。僕は今年で31歳になるのだが、この年齢は日本におけるKISSとはもっとも縁遠い世代なのである。

KISSのカブキ・メイク時代による全盛期というのは'76年から'79年頃まで。当時小学生でしかない世代にとってKISSはその存在こそ知っているものの曲はほとんど知らない、といった状況が一般的であった。

そして数年後、KISSはノー・メイクになり、当時隆盛だったLAメタルのシーンに食い込んでそれなりの成功をしていたものだが、ラットやモトリー・クルー、ポイズンといった連中なんかに比べるとNWOBHM(※)世代にはウケが悪かったし、また、エアロスミス『パンプ』ほどの文句無しの大傑作があったわけでもない。そんなわけでKISSを聴く時期を僕は逃してしまっていた。
※NWOBHM …New Wave Of British Heavy Metalの略。'80年代に生まれたへヴィメタルの一大ムーヴメントを指す
 
そんな僕にKISSを聴く機会が訪れたのは'94年。

KISSのトリビュート盤がリリースされたときのことだった。そのアルバムに手を伸ばしたのは、当時僕が夢中になっていたオルタナのアーティスト(ダイナソーJr.レモンヘッズレイジのトム・モレロ、etc.)が大挙参加していたからだが、当初参加アーティスト目当てに聴いてみたら目からウロコが落ちた。曲がシンプルで疾走感があってなんとも小気味良い!

ここに収録されていたのは9割方メイク時代の曲だったために、大仰なLAメタル時代の楽曲が一切なかったこともあるが、それにしても聴き返しを必要としないまでのシンガロングできる優れたポップ・ソングばかり。

驚きのあまりメイク時代の作品を次々と買ってみると、これがまた当時僕がズッぱまりだったグランジとほとんど音の質感が近くてまたビックリ! かねてからニルヴァーナサウンドガーデン、メルヴィンズといった連中がインタビューでしきりにKISSが好きだったことを語っていたりしてたので気にはなっていたが、その理由をようやく実感することが出来たのだった。

そうしているうちに、当のKISS本人たちも若手バンドからの熱烈な再評価に気をよくしたのか、オリジナル・メンバーのエースとピーターを呼び戻して10数年ぶりのオリジナル・メンバー&メイクつきで'96年に復活。世界各地で例を見ない大成功を収め、'98年にはこのメンバーでアルバム『サイコ・サーカス』を制作し全米チャート3位の大ヒットを記録するなど、世紀末を前に再びKISS全盛期の到来を思わせた。

しかし、そんな矢先の解散ツアー決定!

KISSのオイシイ時期をしっかりと体験出来なかった僕からすればもう少しこのメンバーで頑張ってほしいとも思ったのだが、なにせ一時音楽活動が滞っていた二人のメンバーを無理矢理呼び戻しての復活である。どこかに無理が生じて来てもやはりこれは仕方のないこと。加えて、職人バンド的な演奏技量などがもともと高いバンドでないがゆえに、年齢によるパワーダウンが目立ってしまうのではないか。そう思うと、その「解散」という選択はなんとなく納得出来た。「これは絶対最期の勇姿を見届けねば!」と思い、張り切ってドームのチケットを手に入れたが、来日直前になってピーター・クリスが脱退。「あれれ!」っとズッコケながら僕は東京ドームへ向かった。

ドームのステージの脇にはKISS4人の巨大フィギュアが左右に2体ずつ振り分けられていた。会場前、淋しさのあまり僕はそのフィギュアばかりを見ていたが、そうしているうちにライヴはいつの間にかはじまった。

「You Want The Best,You Got The Best, KISS!!!」というお決まりの司会のガナリでライヴの幕は切って落とされた。

1曲目は彼らの代名詞的名曲「デトロイト・ロック・シティ」。4人のメンバーは銀色に光るステージもろともゴンドラに乗って上から下に降りながら登場。恒例のド派手な花火がドカーンとなる中、ロック・ショウはスタートした。のっけから「デュース」「シャウト・イット・アウト・ラウド」「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」といった名曲のオン・パレード。それに素直に身を浸せば抜群に楽しめたはず…なのだが、やはり悲しいかな、年齢による衰えは正直隠せはしなかった。ポール・スタンレーはとにかく一人元気で、その自慢の伸びる高音で観衆に何度もコール・アンド・レスポンスを促していたが、ジーン・シモンズはツアー疲れかヴォーカルにキレがなく、ことエースとなると悲しいかな、歌を歌い出すともうギターが弾けなくなる有り様。これまでのツアーでもほとんど披露されたことがない隠れ名曲「トーク・トゥ・ミー」を歌ったりしたことでファンが一生懸命エースを盛り立て場内は温かい和に覆われはしたが、厳しい見方をすればやはりそれは淋しい一幕ではあった。

しかし、こと“ロックのイリュージョニスト”としての華々しいショーアップの仕方、これに関しては文句なく世界一の実力を改めてアピールした。

エースの宙に飛ぶギター、ジーンの口から出る炎と鮮血、レールを使ってターザンのごとく大胆な空間移動を試みるポール、そして限界を知らないかのように爆発を続ける無限大の花火。これはもう、素直に純粋に楽しめた。アリーナ・ロックショウは数多くあれど、ここまでの気前よさというものには今もってなかなか出会うことがない。

と、淋しさと満足感を交互に感じながら、ライヴは本編が終わり、アンコールの「ラヴィン・ユー・ベイビー」、そしてお約束のお別れナンバー「ロックンロール・オールナイト」で壮大なフィナーレを迎えた。

消え行く花火のように、KISSたちは傷だらけになりながらその壮絶なショウを終えて静かに宇宙へと帰還していったのであった。終演後、花火の爆発音の後に水を打ったように響く静寂と、空気を抜かれプシューッと解体されていくKISSフィギュアが見ていて妙に淋しかった。

正直なところ、現時点でのライヴそのものの勝負ならAC/DCやエアロの方が技量的にも体力的にも上だろう。また、全盛期の若いKISSの方がもっとパワフルな演奏もしただろう。しかし、そのアイディアとエンターテインメント精神と、永遠に残る名曲の数々で何年も生き残って来たバンドがフラフラにボロボロになりながらも必死になってもがく姿、これは痛くもあったが同時にあっぱれでもあった。消える直前のロウソクの炎の最期の輝きのような貴重な瞬間。目撃出来てよかったと思う。

文●太澤 陽aka沢田太陽(00/03/28)

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