次世代へ“ロックンロール”を…
次世代へ“ロックンロール”を… |
ZOOPHILIA(ズーフィリア)は最近ではちょっと珍しく、ロックというスタイルにこだわったバンドである。 最近、「~系バンド」とかロックのバックグラウンドを全く感じさせないバンドが多い中、ただならぬこだわりを感じるのである。 そんなZOOPHILIAのバックグラウンドに切り込んでみたいと思い、メンバーの水谷俊介(Vo)、緒方達也(Dr)、岡田純明(B)、濱島真太郎(G)4氏に話を聴いた。 |
Vo/水谷俊介 Dr/緒方達也 B/岡田純明 G/濱島真太郎 ZOOPHILIAからコメントが届いています | ――「cutting gray」発売以降、状況の変化は? 水谷(Vo): 東京でライヴをするようになってからは一年くらい前だから、これを発売したからといって特に変化はないね。ただプロモーションビデオを撮ったり、雑誌の取材受けたりで色んな人との交わりが増えたね。 ――「cutting gray」の歌詞やライヴのMCで、東京に対する冷たい印象を特に歌っているように思えるのですが…。 水谷: 自分が東京に出るようになって感じた冷たさとか、「変な町だな」っていう事や、違和感とかっていう不自然なところは、東京っていう町自体がよそから来た人たちで出来ている町だから、誰でも最初は絶対思ったことだと思うんだよね。俺が思ったように、渋谷のスクランブル交差点を歩いている人も思ったと思うんだよね。そういう事を忘れて、下を向いて歩いて行ってしまっているっていうのがスゴイヤバイなって思って…。そういう初期衝動って言うのはすごく大事なんじゃないかって。俺はその時の感情を忘れないために、それを言いたかったからcutting grayを書いたんだよね。特に東京の人達は初期衝動って言うものに関して、ホントないなって…。なんか熱さみたいなものを敬遠してるだろうなと思う。 ――「cutting gray」の作曲はすべてZOOPHILIAとなっていますが具体的にZOOPHILIAの作曲の手順はどのように行ってるんですか? 水谷: 俺か真太郎(濱島)のどっちかがリフやコード進行をスタジオに持ってきて、で、みんなでジャムって…。それでメロディーをつけているうちに歌詞がワンワード「ポコーン」と…。で、それの理由を探す。なんでそれなのかと…。 岡田(B): たとえばそのワンワードのイメージを「ここってどんな感じ?」とか聴いて、そのイメージを自分の中で消化して、作っていったりもする。 ――『cuttin gray』のPVの出来はどうですか 水谷: ああいう動きの少ないPVって少ないよね。今回ディレクションをしてくれた人が動きの少ないものを作ろうっていってくれたからね。その人も初めてディレクションをしたっていうこともあって、色々と実験的なこともやれたんだよね。 ――名古屋でやっているときと比較して、東京のオーディエンスはどうですか? 水谷: すごくいいよ。でもまだ東京と名古屋以外はあんまり知らないからね。それに名古屋って地元じゃん。 ―― 一緒に出演するバンドを見てどうですか? 水谷: 対バンでいいバンドはほんと見たことない。ホントカッコよくないんだよね。 ――他のスタイルのバンドを見てどう思いますか? 水谷: 自分らみたいなスタイルじゃないとカッコ良くないとか、そういうこだわりは全然ない。キリンジとかスガシカオだってすっごいカッコいいと思うしね。 ―― 一緒に出演するなかで仲良くなったバンドとかいますか? 水谷: 全然いない。何回か一緒になったバンドとかあるけど。 ――打ち上げとかは? 水谷: あ~イヤだね。酒飲むのはいいんだけど、嘘つかなきゃならないのがヤだね。「良かったですよ~」とか絶対言うよね。そんなの絶対ホントじゃないし、「おまえらムチャクチャかっこ悪いな」って言って雰囲気悪くなるのもやだしさ…。本当にそう思って「カッコいいですね」って言っていることもわかるんだけど、俺らのことカッコいいって言えるんだったら、おまえらもっとカッコよくなるだろっていう。もうちょっとましなことできるんじゃないかなって。 |
マキシ・シングル「cutting gray」 1.cutting gray 2.九龍 3.コーデュロイ 4.オリーブ 5.-Instrumental- ZOOPHILIA Live Schedule 2001.1.14 at 高円寺SHOW BOAT 2001.1.23 at 下北沢SHLTER 2001.1.24 at 下北沢CLUB Que 2001.1.27 at 名古屋 ell. FITS ALL 2001.1.30 at 大阪十三ファンタンゴ 2001.2.4 at 前橋club FLEEZ 2001.2.5 at 渋谷CLUBエッグサイト 2001.2.13 at 下北沢CLUB Que | ――ZOOPHILIAのメンバーそれぞれのバックグラウンドになっているアーティストってなんですか? 濱島(G): 一番良く聴くのはトム・ウェイツとか。 ――好きなギタリストとかっていう聴き方はしませんか? 濱島: …っていうか、あんまりギターの音って好きじゃなかったりすんだわ。ギターがかっこいいなぁって思うのはジミヘンとかストレイキャッツとかかな。 ――ライヴやCDでVoの水谷さんがギターソロを取っていて、浜島さんはあえてソロを取らないような感じがしたのですが、それはあえてそうしているんですか? 濱島: あんま好きじゃないんだよね…(笑) ――水谷さんはソロを取るのは好きなんですか? 水谷: うん、好き。楽しい。 ――サウンドを聴いている感じでは、オルタナティヴ/グランジ系の影響も感じるのですが。 濱島: ニルヴァーナはメチャクチャ好きだよ。あとP.J.ハーヴェイなんかも聴いたりする。 ――水谷さんは? 水谷: やっぱニルヴァーナは好きだよね。音ももちろん好きだけど、もっと根底にある部分。なんか振りかえってみると俺が好きなアーティストってどこか悲しいんだよね。 ――日本のアーティストでは 水谷: 最近はナンバーガールが好き。ホントにカッコいいかって言われたらどうかわかんないけど…。あとルースターズが好きだな。最近教えてもらったんだけど。 ――シンガーでは 水谷: レディオヘッドのトム・ヨークかな。で、ロカビリーはやっぱり結構好きかな。俺はやっぱり音だけじゃなくて精神的な意味でパンクっぽいものが好きだね。 ――岡田さんは? 岡田: ニルヴァーナはやっぱり好きだね。あとレディオヘッドも好きだし、ソニック・ユースとか少年ナイフも好き。 ――方向性がわかりやすいですね。 岡田: 俺は偏ってるよ(笑)。わかりやすく偏ってる。あとは中東寄りの民族音楽が好き。俺には出来ないけど…。なんかイメージ的に火の周りで踊ってるようなヤツ。 ――もっとパンク寄りのものが好きなだと思ってましたが…。 岡田: ん~、昔「クーラ・シェイカー好きでしょ」って言われたことあるよ(笑)、聴いたことないけど…。 濱島: 俺「ハノイ・ロックス好きでしょ」って言われた(一同爆笑) 水島: 結構聴いたことないようなものを言われること多いよね。「ダイナソーJr.好きでしょ」とか…、あれは結構かっこよかったけど。 岡田: でも、パンクは好きだよ。やっぱ…カッコエエ。 ――緒方さんは 緒方(Dr): レッチリ。ニルヴァーナも好きだけど…怖い。カッコいいんだけど、怖くなってくる。あとはツェッペリンとかジミヘンも好きだな。最近はポリスに興味持ってる。 水谷: 俺もhiro:nに興味持ってる(笑) ――パンク的な部分では? 緒方: イギーポップも好きだし、クラッシュも好きだよ。 ――現在皆さんの年代でZOOPHILIAのようないわゆるロックにこだわったスタイルをやっている人たちっていうのは、すごく珍しいと思うんですけれども、その背景ってなんなんでしょうね。 水谷: 俺達は環境が良かったんだよね。スタジオなんかでもまわりはみんな年上だし、みんなそういうロックにこだわった生き方をしている人たちばっかだから、それに憧れたり、それを否定したり…。最初はその人たちに認められたいって言う気持ちがあったんだよね。 ――現在の日本のトップ10とかを見て、自分達はどういうポジションになっていくと思いますか? 水谷: 最初はやっぱりロックっていうものを追求するってことは、100%自分のためだけにやってきたんだけど、でもこうやって大勢の人の前でやるようになって、この状況を覆すことが出来たらすごい面白いんじゃないかって、ある時点で思うようになってきたんだよね。例えば僕らみたいなバンドが100万枚ぐらい売るようになったら、多分日本のシーンも海外にも誇れるような物になると思うんだよね。 最近ってメジャーなのにインディー扱いみたいな人って一杯いるじゃん? 俺も自分のためだけにやるんだったらインディーで全然構わないし、今もそうやってたと思うんだけど…。でも…教えたかった。 僕らがこういう環境にいて、こういうロックンロールっていう物を教わったように、今の若い子に教えたかった。17歳で人殺してるヤツとかおるけど、わかるんだよね、気持ちは。もう煮え切らなくて、暇だし、なにやっていいかわかんないようなさ。だったら俺らも人は殺してるかもしれないって思うから、そういうヤツらにボカァーンとさぁ、「俺らの生き方こうなんだけど、どう思うよ」って、「おもしろそうでしょ」みたいな。それを伝えたいなって思うね。 ――“日本のロック”っていう言われ方はどう思いますか 水谷: だって俺は日本の歌謡曲とか聴いて育ってきたから、それはあたりまえだと思う。むしろ日本人のくせに外人になろうとしてるヤツはカッコ悪いと思うよ。あと今の日本のバンドって、バックグラウンドが見えないじゃん。でも俺らの場合はこういう生き方してきたからこういう音だっていう。 ――今後の方針は? 水谷: ライヴで曲が育っていくバンドだから、たとえレコーディング中でもジャンジャンやっていきたい。 緒方: ライヴやってると、曲にしても歌詞にしても精神的な部分がどんどん見えてくるから。 ――2001年の目標は? 濱島: 子供欲しいな、子供作ろうかな(笑)。女の子で10歳の…。どっかで売ってないかな…(笑)。今年はアルバムは作りたいね 水谷: 何に対しても素直になりたい。嘘ばっかし言ってるから疲れる。パンクしそう。あとは曲作りたいね。 岡田: いろんなところライヴしに行きたいね、食い物うまいし。あとはいい曲作りたいし、いいライヴ一杯やりたいね。 緒方: 楽しくやりたい。今年は東京に引っ越してくるし。 |
なるほど彼らの口からは、ロック好きオヤジが喜びそうなアーティストの名前がたくさんでてきた。 特に彼らの世代的には二ルバーナを中心とするグランジの影響が色濃いのが印象的だった。 しかし、共感できるのは、かつての偉大なロックアーティストに対するリスペクトや、スピリットを踏襲しているところだ。 ZOOPHILIAは今年の4月にシングルを、また今年中にフルアルバムをリリースするらしい。 現在の日本ロックシーンを憂う人たちに是非チェックしていただきたいバンドだ。 取材・文●元井靖行 |