DUB界の超強力メンバーが大集結した“ECHOMANIACS”

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ECHOMANIACS

 

DUB界の超強力メンバーが大集結した“ECHOMANIACS”


テクノやドラムンベースのルーツとして見直されてきたのか、日本でも最近ダブの人気がジワジワと盛り上がっており、その流れで開かれたのが今回の“ECHOMANIACS”というパーティ。恐らく日本で今まで開かれたダブ・パーティの中では、最も濃く強力なメンツを集めたものだろう。名前だけ見ていても「うーん煙たーい(笑)」という雰囲気がビンビンに伝わってきて、そのイルな感じに期待度が高まる。さっそく新宿リキッドルームへGo!

会場内は早い時間からかなりの混雑ぶりで、特にフロアの真ん中はほとんど身動きが取れないほど。なんでも当日券もソールドアウトの満員札止めだったらしく、クラブ・イベントだと思ってゆっくり出てきた人は残念な思いをしたのかもしれない。客層もイルな感じとは程遠く、男女とも若くてオシャレで小奇麗な人ばかりだった。あまり変な人がいなくて少し寂しかったが(何を期待してるんだ?)、シーンの裾野が広がっていることがまざまざと感じられる。あとロビーでP.1.L.のTシャツを着た若者を2名ほど発見し、妙に懐かしい気分にもなった(笑)。

Adrian Sherwood
一番手は御大Adrian Sherwoodのミックス・ショウ。この人のミックス・ショウを初めて聴いたのはもう10年近く前で、しかも場所は今は無き芝浦ゴールドだった(泣)。そのときはなんとカセット・テープにOn-Uレーベルのレア・トラックなどいろいろな音源を収めてきて、その場でエフェクターとミキシング・ボードによるダブ・ミックスをかますというすごいものだった。カセットとは思えないエッジの効きまくった音質の良さが妙に印象に残っている。今回はさすがにカセットではなかったようだが、さほど優れた音質のソースを使っているとも思えないのに、やはりサウンドのクオリティは高い。エフェクトのタイミングなども思い付きでやっているように見えて、実は身体に染み着いた感覚が的確なミキシングをやらせているのだろう。オタク心を刺激されてちょっと機材を確認したかったが、あまり近くまで寄れず詳しくは不明。それでもROLANDのスペース・エコーや、レゲエの人がよく使う奇妙なSEを発するデバイスなど、おなじみのマシンを確認できてニンマリ。終盤はマイクも使ってMCでもがんがん客を煽っていた。元気なオヤジだわ。

3HEAD
2時間ちょっとのセットが終わって、次に登場したのは新人バンドの3HEAD(エンジニアはそのままAdrianが担当)。日本では初のお目見えとなる彼らだが、ヨーロッパではかなりのライヴをこなしているらしく、パフォーマンスも堂々としたものだった。演奏テクニックも申し分なく、ラガマフィンのSimon Bogleと女性ボーカルのRuth Rogers Wrightのコントラストが良かった。観客もほとんどが初めて彼らの曲を聴いたはずだがリアクションもまずまずで、とりあえずは成功と言えそうだ。

Andrew Weatherall
次に登場したのは、実は今回一番期待していたAndrew Weatherall。しかし残念ながら今回は少し不発気味。Sabres Of ParadiseをやめてまでTwo Lone Swordsmenに走った彼だけに、よもやハードな四つ打ちに終始するようなプレイはしないだろうし、ルーツ・レゲエ(Lee Perryなんかもかけてた)からテック・ハウスまでを網羅したDJプレイはバレアリックの2000年版解釈って雰囲気もあったのだが、ほかのメンツが強力だっただけにもう少しガンガン押しても良かったような気がする。

Dry & Heavy
その次に登場したDry & Heavyは、とにかくこんなに人気があったのかということに驚かされた。彼らのライブが始まった途端にフロアに人が動く動く。始まる前にロビーで人の話を盗み聞きしていた限りでも、この人たちを目当てにやってきた観客は多かった模様。King Jammysとのコラボレーションで仕上げたアルバムも絶好調だし、ノリにのっている旬なバンドという感じがした。ボーカルの女の子のちょっとズベな感じも可愛らしいし、ルーツに根差しながら日本人受けするメロが乗った曲もそつがない。きっかけ次第では大ブレイクしそうなバンドだ。

Dennis Bovell
最後のDennis Bovellは、バンドでの出演を期待していたのだが、ソロでの登場となって少し残念。しかしDJブースでトースティングしながら、カラオケ状態で観客を盛り上げる姿はやたらエネルギッシュだったので、これはこれでありかもしれない。客いじりのうまさは見ていて微笑ましかったし芸歴の長さを感じさせてくれた。でも次はバンドで来てベース弾いてね。

最後に一言。やはりこれだけのメンツを集めたのだから、サウンド・システムはもう一頑張りできなったのだろうか? 鳴らしているうちにスピーカーがゆるゆると動き、ビル全体を揺らしてしまうほどの爆音が欲しかった。いや、実際にスタッフやライブハウスはよくやっていたと思うし、新宿の雑居ビルでそんな爆音を出したら問題にならないわけがないとは思うのだが、ダブの魅力とは日常性を歪めるような異常な音の空間を作り出すことにあるわけだから。次回があるなら期待します。

文●巽英俊(00/11/17)

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