Aliceの町の住人たち

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Aliceの町の住人たち

アリゾナ州では、世界中のどこよりも多くのUFOが目撃されている。中にはすごいのもあって、空に輝く7つの光を皆が目撃したとか…

そう語るのは、漆黒の髪とお揃いのクマを鋭く光る目の下に湛え、ソファにうずもれる男。

それはまるで、空飛ぶフライングVのように見えたそうだ

確かに状況は、何やら奇妙である。プレスコットからの道すがら、静かに伸びるハイウェイ沿いには、中西部の変人メタル野郎、Ted Nugentがゴミの一掃に資金を提供した旨を伝える標識があり、さらに南下してフェニックスの郊外に入れば、MegadethのDave Mustaineがゴルフカートに乗り込んで、青々としたグリーンの上を穏やかに、口笛混じりに進んでいるというのだから。そしてダウンタウンでは、Alice Cooperが自らの名を冠したレストラン、Cooper's Townに与えられたベストレストラン賞を甘んじて受け入れようとしている。ここでは彼のブランドのバーベキューソースを販売し、母親のツナキャセロールが自慢の一品だ(あ、それから、バーの頭上を飾る猪の頭。これは他でもない、Nugentが仕留めたものである)。

そう、Alice Cooperなのである。ソファに座った、その男。鶏料理といえば彼の場合、可哀想な鳥をステージ上のパイロで丸焼きにするのが定番だった。アメリカの道徳的多数派に、道徳的多数派という言葉すらない頃から忌み嫌われ、あのMarilyn Mansonの導線となった男が今や、「トップレスのウェイトレスも濡れたTシャツコンテストもなしの、子供連れで行けるファミリーレストラン」を営んでいるのだ。アメリカの古き良きメタルスターたちを、宇宙人がまとめて乗っ取ったという以外に、説明のしようがあるだろうか?

星の数ほどいるスターの中で、我々だけが知的な存在だとは思えないが…」とAlice。

問題は、どうしてアリゾナに集まったか、ということだ

ハイウェイを掃除して、レストランを開いて、ゴルフをするため?

そいつは…」ソファに座った男は面白がる。

なかなかの説だな

アリスのレストランは、実はとても、とっても、とっても高級なレストランだ。中庭には小さなステージが設けられ、地元のバンドや当のロックスターが即興でジャムセッションを繰り広げられるようになっている。バーの天井際には33フィートもあるスポーツTVのスクリーンがしつらえてあって、ウェイターもウェイトレスも野球帽を被り、Aliceと同じように目の回りを黒く塗っている。Aliceの母親(「
実に腕の良いコックでね」)が折に触れてキッチンに顔を出しては、本格的なアメリカンフードの調理法を伝授する。Paul McCartneyのベースにEric Claptonのギター等々、Hard Rock Cafeばりのロック関係の記念品と壁のスペースを争うのは、野球のバットやフットボールのユニフォーム、果てはモハメッド・アリのサテンのショーツなど。テーマは“ロックとスポーツ”だそうだ。Aliceのビジネスパートナーには、ピッチャーのRandy Johnson(彼にちなんで、2フィートもあるホットドッグが“Big Unit”と名付けられている)やDave Mustaine(“Megadeth Meatloaf”とは、昔ながらのスモークしたミートローフをテキサストーストに乗せ、マッシュトポテトと、炒めた玉ねぎ、そしてグレイヴィーソースを付け合わせたもの)が名を連ねている。

私の知る限り…」とAliceが言う。

プロのフットボールや野球、バスケットの選手で、バンドに憧れたことがないという人はひとりもいないし、ロックンローラーは皆、バスから降りてまず最初に、スポーツチャンネルをつけて贔屓のチームの成績をチェックしている。ポルノビデオじゃなくてね

例にもれず、Aliceもゴルフ狂だ。

毎日プレイしているよ。ロックをやっていなければ、たぶんプロゴルファーになっていただろう。ゴルフはいいね」と彼は言い張る。

実にロックしているよ。世の中で最も中毒性のあるものだ。自分が中毒になっているものを、私はちゃんと把握しているんだ

 その通り。かつて、アルコールがそうだった(今は違う。Cooper's Townで出される巨大なSammy Hagarテキーラも無害だ)。もうひとつ、こちらは相変わらず中毒状態なのが、ラウドでへヴィなロックである。Aliceの最新アルバム『Brutal Planet』は、彼にとって史上最高にへヴィにしてラウド。

世間にこう言わせたいんだ。『これがAlice Cooperとは思えない。逆の方向へ行ってるものと思っていたのに』と

つまりはMichael Boltonの方向へ?

もっとも、Michael Boltonは歌えても、私は歌えないがね

しかし、髪型はAliceの方がずっといかしている。ところで、酒も飲まないゴルフ好きの父親にしてレストラン経営者であり、喧嘩をふっかけたりポスター相手にマスをかいたりするような思春期をとうに過ぎた彼が、どうしたらこれほどのへヴィメタルモードに入れるのだろうか。

私も52歳になった。父親であり夫であるという点では、確かに大人だよ。だが、子供たちと車に乗っていてOffspringが流れてくれば、思いきり音量を上げる。そういうところは変わっていないんだ。やたらな怒りは卒業したし、車や女の子の心配は失くなって、今、心配なのは娘の車だがね! このアルバムを、よりタフに、よりエッジの効いたへヴィなものに…と推し進めたのは、この俺だ。皆が「これをステージでやるエネルギーがあるのか」と口を揃えたが、俺は『当たり前だ!』と言ってやった。こういうのをやるからエネルギーが湧いてくるんじゃないか。いいロックンロールに心踊らされるのが、俺はたまらなく好きなんだよ。そこからは、どうしたって卒業できないね

3人の子供たち(18歳、14歳、7歳)の好きなものを聴いたことが、主なインスピレーションになった。

KornLimp BizkitRage Against The Machine…ああいう連中の、ガツンとぶつかってくるようなエネルギーが気に入った。そういうエネルギーで、Aliceの曲を包んでみたんだ」。

いわゆるニューメタルの台頭が、Aliceの「競争本能を目覚めさせたんだよ。気分はさながら老いぼれた速撃ち野郎さ。いつの時代も、自分の方が速いという若手が名乗り出てくるものだが、こっちとしては『坊や、今さらまた拳銃を抜くのは不本意だが、仕方がないな、バキュ~ン!!!』というわけだ

Marilyn Mansonなんか、格好の的になりそうじゃないか。

女性名で、化粧をして、シアトリカルな衝撃ロックをやっているロッカーについて意見を求めると、Aliceはこう言った。

あそこまでAliceに似させるとは、正直なところ驚いた。『おっと、ここまでやられると、こっちが恥ずかしくなるな』とね。あいつに電話して『方向性を変えろ』と言ってやろうかと思ったくらいだ。しかし、あいつは確信犯だ。わかっていて、私が腹を立てるようなことまでやってのける! 『聖書を破り捨てるとは!』と、クリスチャンの私としては、観ていて本当に腹立たしかった。会う機会があったら、『曲作りにもっと時間をかけろ。飾りばかりで、本体は大したことないじゃないか』と言ってやるだろう。彼は彼で、うまくやっているとは思うが、私はどちらかというとRob Zombie寄りだな。彼はショウマンで、ユーモアのセンスもある。Marilynのは深刻過ぎていけない

『Brutal Planet』も、やはりコンセプトアルバムだ。ショウもコンセプトに基づいた、ハロウィンのお化け屋敷をテーマにした遊園地、Six Flagsのアトラクションのよう。

世紀末的な、とことん悲観的なものを書きたかった」と言うAliceだが、未来のホロコーストに、いつものようにちょっとしたユーモア感覚をあしらうことを忘れてはいない。

私に言わせれば、優れたホラー映画は優れたコメディだからね。『エクソシスト』だってそう。2度目に観た時は、リンダ・ブレアがあれこれ吐き始めたところで、私は笑ってしまった。最初に観た時は怖かったんだが

その晩の彼のデートのお相手は、たまたまリンダ・ブレアだった。だから言ったでしょう、アリゾナでは不思議なことがあるもので…

by Sylvie Simmons

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