さらけ出された“音楽”と“魂”
さらけ出された“音楽”と“魂” 追憶の通りを曲がって、どこにでもある“アメリカの裏路地”を歩いてみよう。家族の前で歌や踊りを競っているにぎやかな少年少女たちが、すぐに見つかるはずだ。彼らの望みは、すこしばかり小遣いを稼ぐこと、もうちょっと遅くまで起きていること、そしてなにより、道行く近所の人たちから拍手喝采を浴びることである。そんな光景を覚えてらっしゃるだろうか。d'angeloは覚えているにちがいない。 この夜ホールの入り口をくぐったのは、ニューヨークの流行を左右しているお洒落な人々だった。端正な身なりで甘い香りを漂わせている彼らの姿を見ていると、上品なr&bでも始まりそうな気配だった。ところが! ホールを揺さぶることが、この夜の方針だったのである。 フード付きマントを着たd'angeloが舞台に登場すると、観客はいっせいに彼に注目した。彼が歌った“devil'spie”のひと切れは分厚い。これで舞台は整った。そこから後はフルスロットルである。“smooth”“feellike makin' love”“spanish joint”は昔ながらの“踊れる”滑らかな演奏だったが、それらと並行してヒップホップのゴツゴツ感を前面に出したのが“chickengrease”と“left & right”(この曲ではthe blunt brothers、redman、methodmanが舞台に登場)、そしてa tribe called quest風にアレンジされた“brownsugar”。意外だったのは“sh*t, damn, motherf**ker”がロックアレンジになっていたことだ。シンバルのスラッシュ、振り回されるマイクスタンド。そのときd'angeloは、この曲が歌っている下劣で狂った反社会的人間に変貌していた。 ロマンティックな人たちの心は、美しい“send it on”と“lady”、そして雰囲気のある“onemo' gin”で満たされた。“untitled (how does it feel)”は、d'angeloのヴィデオデビュー以来みんなが口ずさんできた歌であり、言うまでもなくこの夜のメインエヴェントとなった。この歌が始まるころには彼はシャツを脱いでいたが、それでも彼はストリップショーのようなことをしてみせた。この歌の後半でsoultronicsのバンドメンバーはひとりずつ舞台を去り、最後にd'angeloはひとりきりになった。 by dnd |