さらけ出された“音楽”と“魂”

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さらけ出された“音楽”と“魂”

追憶の通りを曲がって、どこにでもある“アメリカの裏路地”を歩いてみよう。家族の前で歌や踊りを競っているにぎやかな少年少女たちが、すぐに見つかるはずだ。彼らの望みは、すこしばかり小遣いを稼ぐこと、もうちょっと遅くまで起きていること、そしてなにより、道行く近所の人たちから拍手喝采を浴びることである。そんな光景を覚えてらっしゃるだろうか。d'angeloは覚えているにちがいない。
2ndアルバム『voodoo』が証明しているように、この男はいいのである。ホントに! このアルバムは、評論家の間でもセールスの面でも評価が高い。しかし、d'angeloが2000年以後のソウルミュージックを担う存在と認められるには、あとひとつの難関を乗り切らなければならない。それは、ステージだ。3月16日、ニューヨークにある名高いラジオシティ・ミュージックホールには、彼が最後のハードルを越えられるかどうかを見極めようとする満員の観客が集まった。

この夜ホールの入り口をくぐったのは、ニューヨークの流行を左右しているお洒落な人々だった。端正な身なりで甘い香りを漂わせている彼らの姿を見ていると、上品なr&bでも始まりそうな気配だった。ところが! ホールを揺さぶることが、この夜の方針だったのである。
まずその方針を明確にしたのは、演奏を務めたsoultronicsだった。13人編成のこのバンドには、グラミー賞にノミネートされたトランペッターroyhargroveや、グラミー賞受賞グループrootsのドラマー?uestloveが参加。彼らがタイトなアレンジで“playa,playa”の演奏を始めると、だれも姿を見たことのなかった今夜の主役が現れた。

フード付きマントを着たd'angeloが舞台に登場すると、観客はいっせいに彼に注目した。彼が歌った“devil'spie”のひと切れは分厚い。これで舞台は整った。そこから後はフルスロットルである。“smooth”“feellike makin' love”“spanish joint”は昔ながらの“踊れる”滑らかな演奏だったが、それらと並行してヒップホップのゴツゴツ感を前面に出したのが“chickengrease”と“left & right”(この曲ではthe blunt brothers、redman、methodmanが舞台に登場)、そしてa tribe called quest風にアレンジされた“brownsugar”。意外だったのは“sh*t, damn, motherf**ker”がロックアレンジになっていたことだ。シンバルのスラッシュ、振り回されるマイクスタンド。そのときd'angeloは、この曲が歌っている下劣で狂った反社会的人間に変貌していた。

ロマンティックな人たちの心は、美しい“send it on”と“lady”、そして雰囲気のある“onemo' gin”で満たされた。“untitled (how does it feel)”は、d'angeloのヴィデオデビュー以来みんなが口ずさんできた歌であり、言うまでもなくこの夜のメインエヴェントとなった。この歌が始まるころには彼はシャツを脱いでいたが、それでも彼はストリップショーのようなことをしてみせた。この歌の後半でsoultronicsのバンドメンバーはひとりずつ舞台を去り、最後にd'angeloはひとりきりになった。
彼はそこに立っていた。力強く。自信に満ちて。彼の音楽と魂を曝け出して。

by dnd

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