【インタビュー】MUCC、YUKKEが語るアルバム『1997』の多重的な遊び心と信念「メンバーに対する驚きが尽きることがない」

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■最終的に自分に何が必要か?
■それが“3”だったんですよ


──11曲目の 「△ (トライアングル)」はYUKKEさんの作詞、作曲はミヤさんとの共作です。制作はどんなところからスタートしていったんですか?

YUKKE:今回のアルバム作業のためにイチから作った曲ではなくて、曲が出揃った後、ミヤが昔の採用されなかったデモのストックを聴き直したらしく。その中から“今回入れたい曲”ということで引っ張り出されました。2年以上前、アルバム『新世界』(※2022年発表)を出した時に自分が作った曲だったんです。「△ (トライアングル)」という仮タイトルは既に付けていて。「昔の曲で、こういうのがあったよ」って引っ張り出された時、最初は自分の曲だとは思わなくて。ただ、仮歌を聴いたら俺が歌い出したので、“あっ”と(笑)。

──“あ、自分で作ったんだ”と(笑)。

YUKKE:2年前の俺は、プログレ要素のある曲を作りたかったんだろうな。それを引っ張り出してもらって、アレンジと共に今回こうなった感じです。原曲から大きく変わったわけではなくて、サビのメロディをミヤが少し足してくれたり、新しいパートを追加してもらった感じですね。

──制作時のキーワードはプログレだったんですね。オルガンの使い方に、'60年代のドアーズ的なサイケデリックロックを感じていましたが。

YUKKE:プログレは自分がものすごく聴き込んでいたジャンルではないので、イメージで作っていった曲ではあったんですよね。マニピュレーターとの当時のLINEを見返してみたら、ピンク・フロイドの『狂気』のアルバムジャケット(※三角形のプリズムをモチーフとしたアートワーク)を見せながら「このイメージなんですよ」みたいなやり取りをしていて、面白かったです。何となく「△ (トライアングル)」と付けていたのが、“このテーマで歌詞を書きたいな”にまでなっていき。意味的にも数字で言ったらトライアングルは“3”ですし、2年前の自分からいいバトンをもらったなって。


──3といえば、MUCCの皆さんも3人ですよね。直接的な表現ではないですけど、3人の関係性も投影しながら書かれたのかな?と。

YUKKE:そこでしたね、今回最初に“書きたいな”と思った理由は。Aメロはオブラートで包むというか、書き方は変えていきましたけど。ただ、そこを隠しているんだったらサビだけはもう、普通の自分の言葉で書いてみようって。“ごめんなさい”という言葉とか、逹瑯に歌わせるのは昔なら躊躇しましたけど、たまには楽しいかなと思って。

──“全部僕が悪かった”と、懺悔もしています。

YUKKE:そんな気持ちがあったんでしょうね、自分に。

──“ごめんなさい”は、YUKKEさんの中に、言いたい言葉としてあったということですか?

YUKKE:ありましたね。

──何に対してですか? 神様に向かって書かれた言葉ではありますが……。

YUKKE:……神様じゃないな。一つの出来事があった時に、自分がもっとがむしゃらに何かを壊すほどのことをしていれば、“こうはならなかったかもね”という、一つの後悔でもあるし。ただその先、最終的に自分に何が必要か?と考えた時、それが“3”だったんですよ。状況が変わっていく中で、いろいろな別れや、すごくたくさんのことがあると思うんですけど、“最終的にこの3がいればいい”という気持ちになってしまったというか。

──バンドが今の形になった、みたいなことも含めて?

YUKKE:まぁ、それもありますね。最後に一文添えた“狂気の沙汰”だなと思っている出来事があったりして。個人的には去年から今年にかけて一番大きかったことかもしれない。

──それを表現したことによって、YUKKEさんの中で、その出来事を客観視できた部分もありますか?

YUKKE:みんなに話すこともなかったんですけど、歌詞にして書けたことで、自分の気持ちが確固たるものになったかなという気はしています。“俺はこう思う”っていう。


──YUKKEさんのその想いを、メンバーのお二人には話していなかったんですか?

YUKKE:話したことはないですね。“どう思ってるのかな?”というのは、僕自身も歌詞だったり、そういうところで気付いたり知ったりすることが多いので。だから、歌詞を書ける場があることがすごくいいなと思います。

──では、この歌詞に対して、「これってYUKKEのこういう想いだよね?」とメンバーから言われたことも?

YUKKE:ないです。言われたら顔真っ赤になりますよ(笑)。まだライヴでは演奏していないので、実際にやってみてどう感じるかが楽しみ。想像できてないところがあるので面白そうです。あと、こういうジャンルの曲には個人的にすごくカラフルなイメージがあって。その辺を、アングーラという子ども向けのスイスの積み木ゲームみたいなおもちゃやキュービックなどにたとえてみたら、ぴったりとハマッた歌詞が書けて。

──曲調が呼んだ部分も?

YUKKE:MUCC史上やったことのないBPMというか、スローとミディアムの間ぐらいのテンポ感なんですけど、それがすごく難しくて。レコーディング中も「このテンポ、やったことないよね。すげえ難しい」と言いながら演奏していましたけど、すごく楽しくもありました。

──2分30秒あたりからの間奏も、長くねっとりと絡み合いながら。

YUKKE:テンポチェンジをしてるんですけど、逹瑯があの間奏部分はステージ上で「何をしてよう?」と言っていました(笑)。演奏するほうはたくさんやることがあるんですけどね。

──「△ (トライアングル)」は、間奏はもちろんイントロの変拍子も含め、プログレッシヴですから。

YUKKE:アルバムの初回限定盤には、1曲ごとそれぞれのテーマとなるアートワークが付くんですね。デザイナーさんにイメージを伝えたり、汲み取って作ってくれたジャケットもあったり。『狂気』のジャケットのイメージは伝えていなかったのにデザインで拾ってくれていて、“うわ、伝わってた!”と驚きました。そのブックレットを見てもらうだけでもすごく楽しめると思います。


──13曲目の「空っぽの未来」は作曲がYUKKEさんとミヤさんの共作で、作詞は逹瑯さん。特にサビが素晴らしいです。

YUKKE:ありがとうございます。

──YUKKEさんとミヤさん、作曲ではそれぞれどこを担当されていますか?

YUKKE:元々去年のツアーぐらいから“Daydream”という言葉をMUCCは掲げていて、その中で自分は「DD」という仮タイトルで曲を作ってみようとしたら、バラードが出来たんですよ。でも、このアルバムに入れるとなると、既に「October」というバラードもあったし、バランス的に「もうちょっとポップなアレンジをしたいな」と。ミヤからも「サビがすごくいい」と言ってもらえていたので、そこは残しながら、サビへ向かっていくAメロとBメロの作曲をミヤがしてくれて、合体させた感じですね。

──なるほど。メロディだけでなくサビのコード進行にもキュンと来るような切なさがあり、最高でした。

YUKKE:まさに、ディレクターから「キュン!と来るのが大事だ」と言われて、コード進行から先に作ったサビでした。自分もたしかにそういうものが好きだし、説明が分かりやすかったので、狙って作りやすかったというか。打ち合わせを経て、それを自分的にはバラードで表現してみたんです。ディレクターもキュンと来てくれたからなのか、この曲をアルバムに収録することに対してすごく推してくれたり。

──制作はスムーズに進みましたか? バラードとして一旦は完成していたんですよね?

YUKKE:そうなんです。そこに対して、'90年代のhideさんであったり、ああいったポップな部分をアレンジで加えていったんですけど、ミヤがブースに入って歌ってみたりして。スタジオ作業の中でAメロとBメロはできちゃいましたね。サビに向かっていく雰囲気もしっかりできていたから、サビの聴こえ方もとても良くなりました。

──逹瑯さんの歌詞に対しては、どう思われましたか?

YUKKE:逹瑯の歌詞をたくさん見てきましたけど、この曲に載ってきた言葉は、一個一個が刺さるというか。これまでに比べて、オブラートを一枚脱いだ書き方をしているなとは思いました。怖さもあるし、その辺でちょっとドキッとしながらも、そういう言葉をこういう明るいポップなメロディに載せられると……なんかたまらない感じがしますよ。

──こういったピュアな曲が生まれてくるところが、MUCCの素敵さだと思います。1997年の結成ですから、ベテランですよね。

YUKKE:ベテランなんですかね?

──間違いなくそうです。キャリアを積み重ねてきた今だからこそ表現できたと感じるものは今回ありましたか?

YUKKE:それはそうだと思いますね。これまでやってきたことを経ての、今回の歌詞であったり、曲の紡ぎ方だったりするとも思うし。まだそこが枯渇する感じは全然なくて。“あ、今回はこんな書き方をしてきた”とか“え、こんな曲を出してきた”という驚きが、メンバーに対してまだたくさんあるし。それが1枚のアルバムで何個も垣間見えているから、やっていけているのかなとは思います。まだやってないこと、新しいことがすごくたくさんあるなと。

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