【インタビュー】蜷川べに、「“和楽器の新ジャンル”を作っていくのが私の夢」

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◾︎国内外でいろんなジャンルの音楽をやったりセッションをしたい

──MVも、べにさんっぽさが表現されていてよかったです。

べに:あれも、ざっくりとしたイメージはあったんですけど、監督さんたちにお任せした部分も大きくて。「絶対こうじゃなきゃいけない」みたいなこだわりって実はあんまりなくて。そこをガチガチに自分自身で決めてしまうと、受け取る側が私に期待しているものを狭めてしまうんじゃないかなって思ってるんです。曲を作ってくれる町屋さんもそうですし、MV監督さんもそうですし、それぞれの人が私をこう見ているっていうところを活かしていきたいんですよね。その方が社会の需要に応えられる気がするし、自分のこだわりより、みんなが求めてるものに応えたいという思いの方が強いんです。

──ということは、これからも周りの方やファンの方の意見を活かして、いろんな姿を見ることができそうですね。

べに:そうですね。オリジナリティなんて否が応でも出ちゃいますし、自分がこうしたいんだということを押し出しても、そこに需要がなければ趣味で終わっちゃう。それよりはみんなで喜べることがやりたいですね。音楽という枠組みだけではなくて、例えばインスタライブでトークを長めにやってみたりとか、オンラインサロン「べにとかまちょの家」でも毎朝毎晩、ファンの方の書き込みに全部返信することを日課にしてたりするんですよ。

──え、すごいですね。

べに:その中で面白い意見やアイディアが出てきたりもしますし、グッズもみんなの声を活かして作っています。サロンにしても、ものづくりにしても、ツアーにしても、みんなと意見を出し合って考えるっていうのを重視していきたくて。1人1人とちゃんとコミュニケーションを取っていくというのは、自分の中での決まりごとです。

──なかなかそこまで密にコミュニケーションを取っているアーティストさんもいないような。

べに:あー、そうかもですね。私、仕事とプライベートの境目があんまりないかもしれないです。起きて返信、寝る前に返信がもう生活の一部になっちゃってます(笑)。

──そんなファンの皆さんは、今回の「春ね。」について何かコメントしてくれていますか?

べに:和楽器バンドにはなかったジャンルで、これはこれでオリジナリティがあっていいですねって言っていただけることが多いです。



──わかります。ソロの曲が和楽器バンドっぽすぎても、それはちょっと違うし。かといって全然違うものでも、これはファン層が全く変わってくる……っていう気持ちがあったんですけど、「春ね。」は絶妙なバランス感がいいと思っています。

べに:和楽器バンドに後ろ髪引かれてる方もたくさんいるとは思うんですが、まぁだがしかし、“これがソロの蜷川べにですよ”っていう部分は出していきたい。和楽器バンドっていうのはゆう子さんが歌っていて、そこに他の楽器が入って初めて和楽器バンド。それとはいい意味で違い全く新しいジャンルだよというところは打ち出していきたいです。

──衣装もご自身で考えられたんですか?

べに:そうですね。自分の希望がありつつ、和楽器バンドのときからずっとお世話になっている有伽ちゃんという衣装さんのテイストを入れてもらいました。それでマネージャーさんとかにも意見を聞いて、これもまたみんなの意見を聞いて制作してもらいました。

──そこもやっぱり皆さんの意見を聞いて、なんですね。

べに:やっぱり、自分が良しと思っていても周りから見たら良くなかったってことって結構あるじゃないですか。ライブのパフォーマンスとかでもそうなんですけど、“自分の演奏的には今日120点だった”と思っててもお客さんからしたら“今日は笑顔が少なかった”って言われちゃうこともあったし。周りの意見は大事ですね。

──ちなみに新衣装も解禁されましたね。

べに:これは有伽ちゃんと、最後の最後まで「どっちがいいかな〜」って残った生地のもうひとつなんです。ライブでやるならこっちかなって最初に決まったのが赤い方で、でも有伽ちゃんも両方生地買っちゃうって言ってたからデザイン同じで作ってもらっちゃいました。ライブが二部制だから、色違いがあったらお客さんも楽しめるかなと思いまして。



──いいですね。カップリングの「迅吹雷影(じんきゅうらいえい)」、これはどういった曲でしょう。

べに:最初町屋さんから「faro(ファロ)」ってタイトルで上がってきて。イタリア語で“灯台”って意味らしいんですけど、レコーディングしてるときに「これ忍者感ない?おしゃれな感じじゃなくない?」ってなって(笑)。そういう話をしていたら、次にこのタイトルで上がってきました。こんな難しいタイトルを考えてくるのも、町屋さんっぽいですよね。

──確かに。

べに:曲に関しては、もう“THE 和”っていう。海外の人が聴いても「あ、シャミセン!」ってなるだろうし。インストでバリバリ難易度高めな感じの聴かせる三味線曲が欲しいというオーダーはしたんですけど、それにしてはちょっと速弾きの部分が多くて苦戦してます(笑)。ライブでやるには練習量が必要だなっていうところが多くて。難易度的には「焔」以上に大変。年々、いつまで指と腕がもつのかと思いながらやってますけども。

──ライブで聴けるんですね。

べに:そうですね。ライブではバンドを入れないので、町屋さんに同期の音源を作ってもらってそれに合わせて弾きます。バンド編成にしてないのは、今後、国内外でいろんなジャンルの音楽をやったりセッションをしたいからなんです。海外にポンっと一人で行ってセッションしに行ったりできるように、ミニマムな状態を維持したい。身軽な状態で世界に“蜷川べに”っていうジャンルを作っていけたらいいなって思うんです。

──その機動力は、和楽器バンドではなかなか難しかったところですもんね。

べに:そうなんですよ。コロナの影響もありましたけど、やっぱりあれだけの大所帯で海外でライブをするのは大変なこと。海外でいろんな音楽とあわせて“和楽器の新ジャンル”を作っていくのが私の夢なんですけど、これまではなかなか踏み出せなかったので、それを叶えるためにソロではカバー曲でオケだけ流せば演奏できたりDJと合わせるだけで演奏できるものをやっていこうと決めています。

──それは楽しみです。

べに:全然まだまだこれからなんですけどね。でもみなさんの意見を聞きつつ、基礎を忘れず継続をしていく。そうやって続けて行ければいいかなって思っていますね。毎年必ずツアーをやらなければいけないわけでもないし。必ずアルバムは一年に一回出す、出したらツアーを回る、っていうルーティーンが果たして本当にこれからの音楽業界にフィットしているのかどうか疑問に感じる部分もあるし。今はSNSやサロンなんかの意見を聞けるツールがあるんだから、これまでのやり方が当たり前とは思わずに、新しい方法を模索していきたいですね。

──ということは、今後もずっと町屋さんと組んでやっていくというわけでもない?

べに:町屋さんにも町屋さんのペースがありますしね。多分、いまはゆっくりモードでやりたいんじゃないかなと思うし。ゆう子さんたちの華風月は和楽器バンド前からやっていたから別として、メンバーと絡んで何かをやるのはすごくいいし和楽器バンドのファンの方もすごく喜んでくれると思うんですけど、それだけだとちょっとね。やっぱり気質的に、自分は一匹狼の方がしっくりくるなって、ソロになって思いましたし(笑)。

──今後またshirafuの活動もあるのかなとか思っていたんですけど。

べに:町屋さんは音楽のことも一番頼れるし、shirafuもやったし、“心友”って感じで「何かやろうよ」ってなれば阿吽の呼吸でやれるんですけど、また一緒にユニット組んでがっつりやっていくかっていうと……やっぱりいまはソロに集中したいです。多分、彼も一匹で好きなようにしていたいタイプだから、お互いのペースが交わるところがあれば、またやるんじゃないかな。

──そうですね、また集結するときのためにそれぞれが新しい道を選んだわけですしね。

べに:メンバーとはいい距離感でいたいですね。やっぱり和楽器バンドファンの中だけでずっとやっていては活休した意味がないですから。もちろん昔からのファンの方たちは一番大事ですけど、いまはそれぞれの第二章が始まっているから、それに共鳴してくれる人たちともまたプラスアルファの人生を送っていきたい。また集まるときがあるだろうから、それでいいと思うんです。

──ちなみに今回のツアーは完全におひとりで?

べに:和楽器バンドが活動休止して、今回のツアーは“蜷川べにってこういう音楽をやります”という第一歩の初戦だと思っていて。「春ね。」を聴いて新規の方が増えた実感もあるんですけど、その方達はきっと「もともとファンではないけど、どんなもんか見てみよう」って思ってるんじゃないかなと分析してるんです。となると、やっぱり今回のツアーは“蜷川べにソロ全部のせ”でやっていこうと決めています。それで一度、お客さんの反応見てみたい。

──「春ね。」以外にはどんな曲が聴けますか?

べに:「春ね。」とカップリング曲、ファンクラブ限定盤にだけ入っている「ひぃ、ふ、み、よ、いつ、む。はもちろんですが、去年の『三味線で弾いてみた』の楽曲、あとは新解釈民謡も。ファンの方に「和楽器バンドの曲やらないんですか?」って聞かれることもあるんですが、それはやりません。やっぱり、ゆう子さんが歌うから和楽器バンドの曲なんです。

──あとは会場では“べにロト”(プレゼント抽選企画)も実施されるんですよね?

べに:最近、自分は抽選中毒なのかなって思うくらい抽選ばっかやってて(笑)。結局、みんながドキドキワクワクしてくれるのが嬉しいんですよね。

──そのサービス精神が、みなさんを虜にしていっている節があると思います。

べに:そうなんですよね、みんなどんどんかまちょになっちゃうんですよね(笑)。オンラインサロンでも、ノリが「ねぇ聞いて!」みたいな感じなんです。私が入らなくても、会員さんたち同士でいろんな情報交換をしていたり、美味しいお店の情報をやり取りしてたりして。今の時期だと卒業をみんなで祝ったり。

──へぇ、すごいですね。

べに:最近は良くも悪くもAIとかテクノロジーが進化して、人とのつながりが希薄になりがちじゃないですか。SNSにも心ない言葉が飛び交いますし。でもやっぱ人にしかできないことっていうのもあるし、人との助け合いってとっても大事で。オンラインサロンでのやり取りって、私の思う理想郷というか、いろんなことを話し合えて、悩みも相談できて、助け合える場になっていると思うんです。SNSだと思わぬところから叩かれたりすることもありますけど、サロンのような安全地帯で密にコミュニケーションが取れる場があるだけで、心が豊かになれそうな気がして。そういう場を作りたいと思っていたから、いまの状況はとっても嬉しいですね。

──ファンの方ともいい関係性が築けているようでいいですね。

べに:ずっと発信し続けてるから心配してくださる声もあるんですけど、楽しくやってます。まぁ一区切りついたら、1ヶ月くらい海外に行ったりするのもいいけど。そういうことができるのもソロの醍醐味ですしね。

──ちなみに新曲も作っていたり…?

べに:そうですね。でもあんまり納期に縛られたくもないから、今年中にまたオリジナル曲ができたらいいなくらいに考えてます。ゆるく楽しみにしておいていただければです。

取材・文◎服部容子

「春ね。」

2025年4月3日(木)リリース

◾︎通常版 2,500円(税込) [品番:ZENT0009]
リード曲「春ね。」+カップリング曲「迅吹雷影」
ブックレット20P
・初回プレス限定封入特典
ランダムトレカ(全5種から1枚・当たり付き)

◾︎MVメイキングver. 3,300円(税込) [品番:ZENT0009-1]
リード曲「春ね。」+カップリング曲「迅吹雷影」
MV映像+MVメイキング映像

・初回プレス限定封入特典
ランダムトレカ(全5種から1枚・当たり付き)

◾︎レコーディングメイキングver. 3,300円(税込)[品番:ZENT0009-2]
リード曲「春ね。」+カップリング曲「迅吹雷影」
レコーディングメイキング映像

・初回プレス限定封入特典
ランダムトレカ(全5種から1枚・当たり付き)

◾︎ファンクラブ数量限定豪華版(FC限定販売) 10,000円(税込)[品番:ZENT0009-3]
リード曲「春ね。」+カップリング曲「迅吹雷影」
FC限定オリジナル楽曲「ひぃ、ふ、み、よ、いつ、む。」収録
MV映像+MVメイキング映像+レコーディングメイキング映像
オリジナル写真集(20P)

・初回プレス限定封入特典
ランダムトレカ(全5種から1枚・当たり付き)

ライブツアー<春ね。はじめて、蜷川べにですvol.3>

4/19(土)
心斎橋AtlantiQs(大阪)
1部 OPEN 13:30/START 14:00
2部 OPEN 16:30/START 17:00

4/20(日)
今池GROW(名古屋)
1部 OPEN 14:30/START 15:00
2部 OPEN 17:30/START 18:00

4/26(土)
札幌PLANT(北海道)
1部 OPEN 15:30/START 16:00
2部 OPEN 18:30/START 19:00

5/10(土)
Live house Dragoon(福岡)
1部 OPEN 14:30/START 15:00
2部 OPEN 17:30/START 18:00

5/17(土)
青山RizM(東京)
1部 OPEN 15:30/START 16:00
2部 OPEN 18:30/START 19:00

チケット金額 : ¥7,000 (税込)

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