【インタビュー】BabyKingdom、“安倍晴明”がテーマの新アトラクション「人生のプラスになってくれたら」

◼︎自信を持ってパフォーマンスしていく
──それがいい効果を生んでいますよね。ギターに関しては、志記さんはどんな工夫をしていますか? 個人的には1Aのバッキングがとても好きなんですが。
志記:この曲では、たっぷり遊ばせていただきました。おっしゃっていただいた1Aは、X JAPANの「Silent Jealousy」を意識してます。これも意味があって。人って、新しいものを受け入れるのにちょっと時間がかかるものですけど、聴いたことのあるものって刺さりやすいというか、すっと耳に入ってくるんです。ギターが個性を出すべきところはイントロとギターソロであって、バッキング、いわゆる歌裏っていうのは歌を聴かせたい部分なので、聴いたことがあったり何かしらで使われているようなフレーズを多用するようにしているんです。
──あぁ、バッキングが気持ちいいと思ったのはまさにそれが理由ですね。和楽器を乗せたのも志記さんですか?
志記:はい。僕ってギターでピロピロしがちなんですけど、今回はできるだけギターをリズム楽器と捉えて。普段ならギターで埋めていたところに箏や尺八、三味線をコラージュしていった感じですね。これはでも本当に己龍先輩がいたからできたことで。己龍先輩から、箏は現代音楽ではこれ、尺八はこれ、みたいな使い方を全部教えてもらっていたんですよ。だからあまり困ることはなかったですね。箏は13弦と17弦の2つを使ってみました。
──箏を使い分けるところにもこだわりが垣間見れます。ギタリストとしての工夫といえば?
志記:やっぱり、イントロのフレーズですね。イントロのフレーズは、お正月によく聴く「春の海」という箏曲をベースにしています。いわゆる和の伝統的なヨナ抜き音階(西洋音楽でいうファとシがない音階)にCmを持っていって、「何しようかな〜」って弾いてたら「春の海」が弾けて。これを高速で弾いたらどうなるんやろって遊んでいたら、こういうフレーズになりました。
──へぇ! ど頭のドラムも効いてますよね。
志記:あのドラムは、僕から虎丸への挑戦状ですね。
虎丸:「SEIMEI」のBPMは168のボムブラストなんですけど、このBPM168って、練習したことがない人間が何も考えずに叩いたとして、できる人とできない人が完全に別れてしまう限界のスピードなんです。なので、「なんでそんな難しいスピードにしたんや。164だったらもうちょっと楽やのに」って聞いたら、「和風の曲やから“いろは”にしたかった」って言われて(笑)! 別にそんなん言わんかったらみんなわからんことなんやからどうでもいいやーん!って話があって。
──あはは(笑)。とはいえ、メタラーの虎丸さんにとっては身に染みついたリズムなのでは?
虎丸:やと思ってたんですよ。けど、168ってなんかめっちゃ早くは聴こえないんですけど、結構早いんですよ。筋肉にくるというか。瞬発的にはね、結構余裕でできるんですけど、継続していくとなるとまた話がちがう。どれだけ自分の体を使い方をわかっているのかという、自分という人間の進化を問われる曲だなって思ってます。
──この曲にはベースソロもありますね。
もにょ:メタルって、ベースはそこまで難しいことをしないんですよ。だから前作の「CALAVERAS」と前前作の「FUNNY∞CIRCUS」のベースが難しすぎたっていうところもあって、どちらかというと今回は楽ちんな方でしたね。ただ、こういったベースソロが楽曲に入ってくるのは初めてですね。これもいつも通り志記さんが作ってくれたベースソロなんですけど、これも己龍の一色日和さんっぽいなって思って。この前、日和さんとご飯行ったとき、「このベースソロめっちゃ日和さんみありません?」って聴かせました(笑)。
──お、ご本人はなんと?
もにょ:「わかるー」って言ってました(笑)。
志記:メタル系のベースって、フレーズっていうよりやっぱり音なんですよ。俺の思うビジュアルメタルの音は、若干の金属なりを含ませなきゃいけないっていう。でも、もにょさんって指引きなんで金属感が出にくくて。いつもよりフレーズを難しくしなかったのにはそういう理由があります。

──なるほど、確かにそうですね。全体を通して、どんな曲になったと思いますか?
志記:「SEIMEI」は、僕らがやってきたようでやってこなかった、“カッコいい”にポイントを置いて作った曲なんですよね。カッコいい、とかエモいって、僕らのA面になる曲では少なかったんで。カッコいいものを作っても、「FUNNY∞CIRCUS」みたいにちょっと小馬鹿にした感じを入れちゃってたり。ですけど、今回はド直球のカッコいいをできるだけ詰め込みました。バンギャの方に刺さるんじゃないかな。
──本当にそう思います。…やっぱり、なんで“金便”って入れちゃうんですかー!
志記:ストレートに、うんち(笑)。
咲吾:みんな僕の手の上で転がされるはずです!
──そして楽曲のカッコよさを補填している今回の衣装。
もにょ:僕は、管狐をモチーフにしています。諸説あるんですけど、式神の一種という。でもね、やっぱ狐というと妖狐だったりとか、セクシーなイメージがあるじゃないですか。だから「虎丸の役だろ!」って意見が出そうなところなんですけども、そこはあえて我慢していただいて(笑)。普段から鼻を描いてる身の私が動物をさせていただきました!
虎丸:もうね、それに関しては各地でプチ炎上ですよ! いろんなバンドマン、関係者から「逆じゃないんですか?」って。
──なんなら虎丸さん、顔隠しちゃってますもんね。
虎丸:そうなんですよー! いわゆる、人型の式神モチーフなんですけど、これ、新たな挑戦だったりもして。僕ね、それなりにやっぱりかっこいいと言われてきた立場なんでずっと顔を出してきたんですけども。今回はちょっと顔を隠して、見えないセクシーさを追求してみたんですよ。
──ええ、それも素敵だと思います(笑)。咲吾さんは陰陽師、志記さんは……。
志記:源博雅です。安倍晴明の相棒ですね。
──やっぱりそうですよね。べびきんの楽曲って、こうして何か新しいことを知れるのも魅力だと思うんです。今回、陰陽師がテーマと聞いて色々と調べていく中で私自身も知識が増えて、それがすごく楽しくて。
咲吾:べびきんを“MUSIC THEME PARK”っていうコンセプトにしたのが、まさにそれで。僕自身はあんまり音楽のジャンルを知らない人間だったんですけど、バンド活動していく中で音楽ってこんなジャンルあるんやとか、こんな国ではこんな曲のリズムの取り方があるんやっていうのを知ってきたんですよ。もちろん、いろんな世界観や文化、言葉とかも。べびきんが何かしら人に興味を与えるきっかけになって、それがその人の人生のプラスになってくれたら面白いなっていうのが僕たちの最初の思いだったので、みなさんにもそう感じていただけたら嬉しいですね。
──カップリングの「水天一碧」も素敵な曲でした。
志記:これは僕が詞と曲を書きました。「SEIMEI」は今回書き下ろしたんですが、こっちは「我武者ライジング」を作ったときにもう一曲書いてたものなんです。そのときはなんか違うなと思ってサビだけできてなかったんですけど、その土台があってできた曲ですね。ライブのセットリストを僕が考えることが多いんですけど、バラードの後に持ってくる曲に悩むんですよ。これは、そこに入れられるように作りましたね。
──水天一碧とは、水と空が一体となって青々しく見えることを表す四字熟語。でも歌詞はその言葉のイメージよりも泥臭くて、必死でもがいた先に見えた景色……のように思えました。
志記:色々な意味を込めてはいるんですけど、僕は京都の大学にいて、そこから東京に出て音楽でやっていこうと決めて。その中で目標を見失ってどうしようかなと悩んだこともあったし、なかなか大変だったときもあったし。でもいつか涙だったものが、空と海と混じっていくというか、苦労と理想が噛み合ったときに一番美しい光景になっていく──という情景を描いています。
──サビ始まりなのも気持ちいいですし、アニソンのようなキャッチーさもあり、いい曲です。
志記:この曲はいわゆるアニソンっぽい、現代音楽っぽい感じですね。「SEIMEI」はベースがそんなに難しくないってお話をしましたけど、それとは真逆のアプローチで、女子が好きなイメージのベースラインをイメージして書いていったんです。ちょっと語弊がありそうですけど(笑)。
──わかる気がします!
志記:女性って、生物学的に低音が好きだという説があって。バスドラとベースに惹かれがちだとか。メロディーが綺麗なものに対してベースが華やかにラインを作っていくようなイメージにしています。
──もにょさんとしてはいかがですか?
もにょ:そうだなと思うんですけど、この曲もフレーズ的にはそこまで難しくないんですよ。カッコいいが似合うタイプのキャラクターではないんですけど、やっぱライブ中はドヤ顔で弾いてみようかなと。
──咲吾さん、虎丸さんはこの曲にはどんな印象をお持ちですか?
咲吾:最初に聴いたときに、やっぱり綺麗な曲だなって思いました。レコーディングでも、その言葉の綺麗さを残せるようにというところを心がけましたね。ただキーが高いので、難易度は高めです。でも歌ってて楽しいです。疾走感のあるこれぐらいのビートの曲が個人的にも好きなので。いわゆる歌ものロックというか。
虎丸:この曲に関しては、まずもう“ドラムを止めてはいけない”と思ったんですよ。なので、綺麗に流れるように叩きました。聴かせるドラムです。

──「SEIMEI」とは違うアプローチですね。
虎丸:「SEIMEI」が短距離走、「水天一碧」が中距離走、「花鳥風月」が長距離走です!
──「花鳥風月」も美しい曲でした。
志記:これは僕が最初にイントロのモチーフと、コードだけの簡単なワンコーラスデモを作ってから、咲吾がメロディと歌詞をつけてくれた楽曲です。
──やはり3曲目となるとバラードにしよう、と思ってのこと?
咲吾:志記に「大人バラード書いてきてー」って言って。
志記:「咲吾さん何歌いたいですか!?」「大人バラードだね〜」って(笑)。“大人バラードってなんやねん”って思いながら作ってます(笑)。出来上がりには満足していますけどね。
──この曲は、しっとりした和風の曲かと思いきや実はジャジーで。
咲吾:メロディーと歌詞ができたらいったん志記に送るんですけど、帰ってきたらジャズになっていたっていう(笑)。でもそれが意外と良かった。べびきんでジャズってあんまりないですし。
志記:もう頭の中に流れてきてしまったのがそれだった、としか言えないんですけど、メロディと歌詞が入ってる状態で1度流してみたときに、いい楽曲のときって頭の中にアレンジがすぐできるんですよ。
──Aメロが特に気持ちいいですね。
志記:ジャズはやっぱりベースがブルーノートを挟みながら美味しいフレーズを弾くのがいいんですけど、そこにギターを重ねたところ、2番のときはギターいらんなって思っちゃって。それで1番と2番のAメロはアレンジを変えています。2番はギターをなくして箏にしました。
──間奏明けも和楽器のみの演奏ですし、構成が面白い曲だなと思いました。
志記:「水天一碧」も始まりがバラードっぽいので、そことの区別はすごく悩んだポイントでしたね。
──区別でいうと、この3曲はそれぞれの違う特色なのに、流れで聴くと統一感もあって。こういう構成も、意識したところですか?
志記:僕自身、例えばメタルの曲の次にメタルの曲がきたら、音像が似てるから区別ができないんですよ。昔と違って今はひとつの曲の中にギターリフがいっぱい出てくるじゃないですか。だから続けて聴いたときに楽曲の切れ目がわかりづらい。だから自分が並びとなる曲を作るときには、テンポも始まりの音像も絶対に変えるようにしています。ちなみに単純に僕の中のただの遊びなんですけど、「SEIMEI」のサビの最初のコード進行4つを3音あげると「花鳥風月」になります。で、ラスサビになるとまた1音上がる。順番に聴いてたら流れは一緒だけど気づかない、という裏での遊びもあったりして。
──うわぁ、すごい。それを踏まえて聴き直してみます。もにょさんは、お得意のグルーブ感だったのでは?
もにょ:そうですね。僕のアイデンティティとする得意なフレーズでした。でも難しかったですね。「SEIMEI」のベースレベルが5だとすると、「水天一碧」が15、「花鳥風月」だけ100超えてきたみたいな(笑)。なんやこれ!ってなったのが1番最初の印象でした。得意なフレーズなんで弾けはするんですけど、ライブでどう表現していくかは今も悩みどころというか。ただ、すごい好きなベースなので、ぜひCDに入っているインストバージョンも聴いて欲しいですね。
虎丸:ベースのレベルが上がるとドラムも必然的にライブでやるのが難しくなるので、俺はなんてことしてくれたんや!ってずっと思ってるんですけど(笑)。地を這っていくドラムのフレーズっていうのを意識して叩いています。四足歩行でノシノシ歩いていく感じというか。
──歌詞についても教えてください。
咲吾:いわゆる「花鳥風月」っていう言葉自体は、万物の自然の美しさを表す言葉だと思ってるんですけど、時間とともに自然が移り変わりゆく中で、自分と自然を対比して、汚さや弱さを感じてしまう葛藤を描きました。自分を花鳥風月と比べて、うまく生きられているのかな、これでいいのかな、自分も花のように美しくありたいな、と。
──言葉選びが綺麗ですよね。
咲吾:古語を使うって諸刃の剣で。使いすぎると何言ってるかわかんなくなるし、でも日本独自の綺麗な言葉だと思うから使いたいですし。でもこうやってインタビューとか話せる場があるので、そういうときに内容については伝えられたらいいかなと思います。逆に、独自の捉え方をしてくれてもいいし。
──どの曲もいろんな解釈ができそうで、そういった意味でも興味深いシングルになっていると思います。さて、本作を掲げて行われるツアー<悪気滅殺~陰陽道~>ですが、このタイトルは……。
咲吾:あの鬼を滅する大ヒット作品からきてます! やっぱり、僕の中で曲がカッコよくなりすぎたというか。「SEIMEI」の金便以外NOふざけでいったので、ちょっとポップさを出したかったんですよ。だから悪い気持ちを全部滅殺しようっていう、わかりやすいコンセプトにしました。
──べびきんのライブは楽しいですから、まさに“悪気滅殺”できますね。最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
咲吾:今回のシングル「SEIMEI」は、楽曲でもMVでも、今の自分たちが出せる曲としての色気というか、9年目だからこその表現ができたかなと思います。同時に、前作のバズで僕たちのことを知ってくれた人たちが日本の文化に目を向けてくれるチャンスだとも思うので、自信を持ってパフォーマンスしていくつもりです。ツアー、ぜひ遊びに来てください。 4月には新たな試みとして<KAKOGAWA MUSIC FES 2025>というフェスにも出ますし、テレビ東京系『超音波』のエンディングテーマに「SEIMEI」が決まって番組に歌唱出演したりとかもあるので、楽しみにしていただければ!
取材・文◎服部容子(BARKS)
19th Single「SEIMEI」
【初回限定盤 A type】 CD+DVD
品番:AMFD-1027 価格:¥1,980(税込)
[CD]
1. SEIMEI
2.水天一碧
[DVD]
「SEIMEI」 MV & メイキング
【通常盤 B type】 CD
品番:AMFD-1028 価格:¥1,650(税込)
[CD]
1. SEIMEI
2.水天一碧
3.花鳥風月
4. SEIMEI (inst)
5.水天一碧 (inst)
6.花鳥風月 (inst)
【A/Bタイプ共通 封入特典】 ※初回プレスのみトレカ1枚ランダム封入(全8種の内)
・リリースイベント
3/12(水) HMV&BOOKS SHIBUYA
3/16(日) littleHEARTS.大阪店
3/29(土) HMV仙台EBeanS
4/6(日) 音楽処
4/18(金) fiveStars名古屋
4/27(日) イオンモールむさし村山1Fセンターコート
5/5(月祝)イオンレイクタウンmori
5/9(金) HMV&BOOKS SHINSAIBASHI
5/14(水) HMV&BOOKS博多
5/24(土) もりのみやキューズモールBASE 1F BASEパーク
<spring oneman tour 『悪気滅殺〜陰陽道〜』>
3月15日(土) OSAKA MUSE
3月20日(木祝) SHIZUOKA Sunash
3月22日(土) 柏 PALOOZA
3月23日(日) mito LIGHT HOUSE
3月30日(日) 仙台 MACANA
4月5日(土) 札幌 Crazy Monkey
4月6日(日) 札幌 Crazy Monkey
4月12日(土) 広島 SECOND CRUTCH
4月13日(日) 高松 DIME
4月19日(土) 名古屋 ell.FITS ALL
4月29日(火祝) HEAVENʼS ROCK 宇都宮2/3 (VJ-4)
5月3日(土) 新横浜 NEW SIDE BEACH!!
5月4日(日) HEAVENʼS ROCK さいたま新都心 VJ-3
5月10日(土) 神戸 太陽と虎
5月11日(日) KYOTO MUSE
5月15日(木) 福岡LIVEHOUSE Queblick
5月17日(土) 滋賀 U☆STONE
5月25日(日) 浜松 FORCE
*TOUR FINAL*
5月31日(土) 神田スクエアホール
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