【ライブレポート】まさにサーカスそのもの、3年ぶりアルバムツアー完走「ヴィジュアル系バンド・BabyKingdom は今が最強です!」
2016年の活動開始以来“MUSIC THEME PARK(=音楽のテーマパーク)”というテーマを掲げ、さまざまなアトラクションになぞらえてのバラエティ豊かなリリース&ツアーを行ってきたBabyKingdom。今年3月には3rdフルアルバム『FUNNY∞CIRCUS』を発売し、同月より全国18か所19公演をめぐるワンマンツアー<INFINITY of CLOWN>を行って、6月4日に新宿BLAZEでツアーファイナルを開催した。
◆ライブ写真
テーマパークと聞けば真っ先に思いつきそうな“サーカス”というコンセプトを、なぜ8年目の今になって掲げることを決めたのか? なぜ、もっと初期の段階で作品化しなかったのか? そんな疑問を解き明かしてくれたのが、この2時間半に及ぶツアーファイナルのステージだった。
開演時刻になるとステージ上に2人のクラウンが現れ、オルゴール人形を思わせるようなパントマイムやジャグリングを披露。ツアーファイナルの特別ゲストとして招かれた彼ら──ラストラーダカンパニーのChang・LONTOは、国内外で数々の受賞歴を持つ強者だけに、場内を一気にガチのサーカス空間へと変えていく。そして、曲芸師という役どころながら相変わらず露出激しい虎丸(Dr)、フワフワのたてがみでライオンと化したもにょ(B)、クラシカルなハットで決めた猛獣使いの志記(G)が登場。最後にスモークの噴き出すなか、ピエロのツノをつけた咲吾(Vo)が「welcome to FUNNY∞CIRCUS!」と文字通りの狼煙をあげ、デジタリックなイントロからロックに弾けるアルバム曲「ハーレクインの憂鬱」でファイナルの幕を切って落とす。
「俺たちとみんなで最高のサーカス作ろうぜ。ヴィジュアル系の強いパワーを見せてちょうだい!」と煽られ、ヘドバンに手振り、手拍子にジャンプ、デスボイスに折り畳みヘドバンと、ヴィジュアル系の“お約束”を次々に繰り広げるフロアはまさしく熱狂の様相。続いて「奇々怪々歌」でおなじみのリフが鳴れば、咲吾の先導でひたすらに踊り、くるくると回って“激しさ”と“楽しさ”を両立させる。サーカスに似合いの哀愁味ある音に乗って“はてな はてな”とステップを踏み、志記による緻密に厚いギターソロへとなだれ込む展開も高揚感抜群だ。さらに「あなたのハートをいただきます!」という合図で一斉にオーディエンスが左右モッシュする「FAKE in PHANTOM」では、ジャジーな指弾きソロを奏でるもにょが慈愛のこもった瞳で客席を見渡す。歌い終えた咲吾が「皆さまの笑顔は今日も素晴らしい! 自分に拍手!」と伝えたように、単に自分たちが満足のいくパフォーマンスを果たすだけでなく、楽しんでいるばぶりーず(BabyKingdomファンの呼称)の様子を見ることが、ライブにおける彼らの大きな喜びなのだろう。
そんな筆者の想いを裏付けるかのように「BabyKingdom にとってデスボイスのデスは“死”ではなく気合。その笑顔をキラキラとした星に変えて!」と前置いた「スタースマイル」では、星の瞬きのようにキラキラと手を振り、スマイルを作るオーディエンスに「最高以外の言葉が出てこない!」と咲吾は早くも感慨深げ。「BabyKingdom の曲は振り付けが多いけど、わからなくても大丈夫です。一番の振り付けはみんなの笑顔」と告げた彼に、思わず志記が「メチャクチャいいこと言うやん!」と称えるシーンもあった。
一方で「おじさん受けがいい」というハードなロックナンバー「Burning FIRE!」の際には、「今から外国人宿します!」と気合を注入して往年の“外タレ”バンドマンになりきり、「Japanese People, OK?」「SHOW! GO!」と飛び跳ね、志記に今度は「お前、緊張してるやろ?」と図星を指される場面も。映像化のため何台ものカメラが入ったツアーファイナルで浮足立っていた彼らのテンションは、だが、長尺のギターソロも仕込まれた熱いロックンロールで功を奏し、デスボイスとヘドバンの嵐を巻き起こす。サイレンが鳴っての「ハイ逮捕」でもキャッチーなサウンドに乗ってフロアと共にタオルを振り、ピョンピョンと跳ねてコミカルな空気を盛り上げたかと思いきや、いきなりのデスボイスで「ダクラメント」へと急転直下。笑顔は完全に消して、不穏なシンセ音と地面が揺れるほどのへヴィなドラミングでダークな世界を作り上げる、その激変ぶりはなるほど、確かにスリルと笑いが隣り合わせにあるサーカスそのものだ。
ギターを抱えた咲吾がエフェクトのかかったヴォーカルで憂いを醸すダークファンタジー曲「VILLAINS PARTY」と合わせ、BabyKingdom の“陰”の部分をフィーチャーしたこの2曲では、オーディエンスも拍手と歓声を封印。一転「この乱世、己に勝る敵は無し!」の号令で始まった和のアッパーチューン「我武者ライジング」では、曲中いきなりピンクの扇子を取り出して左右にモッシュし、次の瞬間、跡形もなく仕舞う手際の見事さには目を奪われるばかりだ。バンドと共に曲の世界観を守り、それぞれのアトラクションを楽しむばぶりーずたちの姿勢に感心していると、続く「虹色COASTER」では弦楽器隊がステージ上を駆け回り、場内に笑顔の花を咲かせていく。そんな彼らに向かって、アルバム名に入っている“∞”とツアータイトルの“INFINITY”は8周年にかけてつけたものだと伝えると、抑えきれない熱を吐き出すかのように、咲吾はこう告げた。
「予想する未来は絶対に叶うっていう持論はあるけど、想像を超える未来を見てみたい。でも、ライブって大概超えるよね。だからライブ好きなんですよ。よく“喋るの上手いですね”って言われるけど、今日は嬉しすぎて上手く言葉が出てこないんだ!」
8周年を迎え、セルフプロデュースで完成させた初のアルバムの収録曲を全てやると公言するツアーに懸ける想いは、どうやら我々の想像以上に深かったらしい。「決して器用なバンドではないんですよね」と自らについて語り、自分たちを追い越していった同期のバンドに対して「もちろん悔しいですよ!」と明かしながらも「でも、年々自信をもらえてるんです。数字よりも今日、このステージでどこまでやれるか?のほうが大事で、それができるようになってきた。ヴィジュアル系バンドBabyKingdom は間違いなく大きくなってます。今が最強です!」と頼もしく言い切ってみせた。
もともとヴィジュアル系など知らず、ヴォーカルも未経験だったところを志記に誘われてバンドを始めた彼は「こんなにファンが好きになれると思ってなかった」という。「BabyKingdom を代表して言います。1本1本のライブが、来てくれた人の何かを救うかも、何かを壊すきっかけになるかもしれない。だから0コンマ1秒のすべてを大切にしようって、8年目で思えるようになりました」とあふれ出す想いは、その後アルバム唯一のバラード曲「MOON WALK」へと結実。ミラーボールの光に照らされて発せられる“不器用な僕”“必ず届けるから”というワードからも、間違いなく自分たちのことを歌い、ファンに贈られたナンバーなのだということが伝わってくる。さらに「大きく羽ばたいて!」と煽った「PENGUIN DIVE」でも“生まれて来られて良かったな”のフレーズ温かく胸に染みわたり、先ほどのMCに嘘は一つもないことを証明してみせた。
「俺たちとばぶりーずの絆は永遠!」と青春ソング「友達ロケンロー!」を爽快に届け、「満天モンキーウェイ」ではモンキーダンスから一気に扇子を振るオーディエンス、なめらかな指弾きベースから奔放なギターソロへと繋ぐもにょ&志記の兄弟タッグ、熱く的確なビートでへドバンを煽る虎丸と、一丸となってめくるめく光景を創造していく。そして「この楽曲は今、一番デカい声が出ると信じてるんですけど違いますか?」と投下したのは「GOLD」。大量のスモークが噴出するなか「俺たちとお前たちで黄金の桜を咲かせようぜ! これがBabyKingdomだ!」と咲吾は檄を飛ばし、自身のデスボイスに全力の拳と声で応えるオーディエンスに対して「お前ら、めちゃめちゃカッコいいぞ!」と返せば、腰を低く落としてギターソロをブッ放つ志記も笑顔でドヤる。最高の一体感を作り上げて沸騰するフロアに、そして彼らはこのツアーで最も伝えたかったメッセージを撃ち込んでいった。
「サーカスって1つの種目じゃないよね、ライブと同じで。1人じゃないよね、それもライブと同じで。ずっとやりたかったコンセプト……想像を超えました。今日BLAZEに来てくれた1人1人が主人公です。“僕なんか”“私なんか”じゃないよ。俺たちがやりたかったサーカス見せつけます」
そう断言して披露されたのは、アルバムのタイトル曲でもある「FUNNY∞CIRCUS」。華やかなブラス音からシャッフルビートに乗るランニングベースが牽引し、タンゴにワルツと変化するリズムで跳ねるフロアは間違いなく笑顔いっぱいだが、その裏にあるどこかメランコリックなサウンド感がピエロの道化と涙──人間の表と裏を表していく。また、間奏では再びChangとLONTOが登場して、咲吾を挟んで鮮やかにジャグリング。最後に「MUSIC THEME PARK堪能していただけましたか?」「楽しいときも辛いときも、ずっと人生のそばにいます。BabyKingdomでした!」と愛いっぱいの言葉を贈って、本編を締めくくった。
べびきんおなじみの“延長営業!”のコールで叶ったアンコールでは「このツアー、今までのツアーで一番メンバーの仲が良かった」と嬉しい報告をし、ツアーファイナルで恒例の次作告知が本日はないこと、BabyKingdom史上最大のキャパシティとなる7月31日・京都KBSホールでのワンマンまで先延ばしされることを知らせる。ちなみに、その日は咲吾の誕生日であり、奇しくも新宿BLAZEの閉館日ということで「生まれ変わったBLAZEが俺に乗り移るかも!」ということだ。また、再びChangとLONTOを呼び込んでからは「うちのライオン調教済みなんで」と、もにょがChangの投げる輪を首で三連続キャッチ成功して拍手喝采。咲吾が「ピエロの関係者の皆さん、いつでもウチの人間ライオン貸し出しますんで!」と猛烈アピールしたのも納得だ。
9月21日の志記の誕生日ライブを渋谷WWWで開催すること、次作は海外のアトラクションであることだけを告知し、ステージ前方にいた虎丸が「私は(ドラム台に)帰りません!」と宣言してからは「監獄☆BEAT」でアンコールの演奏がスタート。曲の終盤までドラム音が入らないユーロビート曲で、虎丸は「存分に(自分を)見て帰ってください!」と咲吾と共にパラパラを踊りまくり、歪んだラップをかましていく。だが「次はみんなが猛獣になる番!」と「メタルタイガー」に続くと、踊っていた2人はドコドコとドラムを打ち鳴らし、デスシャウトでヘドバンの嵐を呼ぶのだからギャップにも程があるだろう。「サボんな誰ひとり! 頭振れ!」「スクワットするぞ!」と咲吾は次々に指示を飛ばしてSな笑みを浮かべつつ、懸命に応えるばぶりーずたちを「すごく良かった! 自分自身に大きな拍手を」と最後は褒め称えた。
「新曲持ってきました……! 途中で歌いきれなかったら名前呼んでくれますか?」と咲吾が泣き真似して、超定番曲の「めっちゃアーメン」をドロップする茶番のあとには「すっごいわろてるやん! きっと俺たちもそうなんやろうな。鏡だもんね、俺たちの関係って。いいライブだったね」とポツリ。「最後のアトラクションはみんなで、パレードで締めくくりたいと思います」と贈った「ぱらでーしょん☆彡」でも、大きく手を振りながら“誰も置いてかないよ”と歌い上げて、「こんなに笑顔あふれてることありますか⁉ってくらい、みんな笑ってたで!」と、誰もが幸せになる笑顔のギブ&テイクを果たしていく。さらに「1人で笑うんじゃなくて、一緒に笑うってメッチャ素敵じゃない? 俺は笑うのが大好きです」と続けて、初めて新宿BLAZEに立ったときのツアーで作った曲があること。みんなを引っ張るつもりの曲だったのに、当時はそれを叶えられなかったことを告白。
「でも、8年経って今日はメチャクチャ大きな背中を見せられるようになりました。頼っていいんだよ、支え合っていこうよ! だって俺らが頼ってるから」と、急遽「誰かのヒーロー」を追加披露すれば、大サビでフロアから大合唱が湧き上がる。「上手く歌おうなんて思わなくていい、ただ楽しめばいい。それが、俺が8年間でわかったことなんだよ!」と絶叫すると、咲吾の瞳は潤むのを止められず「ごめんね。笑えって言って俺泣いちゃった。でも、楽しかったです」と微笑んだ、その涙は実に美しかった。
「7/26には虎丸が加入して8周年を迎えます。いつまでも若さに甘えてられない。でも、その歴に胸を張れるようになりました。必ずKBSホール埋めるから、ついてきてください。可能性を持ったバンドです、赤ちゃんの王国じゃありません、未完成の王国です、毎日生まれ変われる可能性があります。“MUSIC THEME PARK”、最初はバカにされました。でも、どうですか⁉ 今はこんなにみんなが楽しんでくれてます!」
あふれ出す想いを抑えきれないとばかりに咲吾は言葉をつなげ、BabyKingdomというバンド名に込められた意味合いを語ると、記念すべき3年ぶりとなるアルバムツアーは終幕した。今だからこそ、できることがたくさんある──そんな自信と手ごたえに満ちたステージは、これからBabyKingdomが進む道の新たな出発点となるに違いない。
取材・文◎清水素子
写真◎菅沼剛弘
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