【インタビュー】BabyKingdom、“死者の日”がテーマの最新作「CALAVERAS/サルサルーサ」──“美しく生きることが美しく死ねること”
“MUSIC THEME PARK=音楽のテーマパーク”をコンセプトに掲げ、完成度の高いビジュアルとキャッチーな音楽性で、エンタメ要素満載のライブ活動を行っているBabyKingdom。
“べびきん”の愛称で親しまれる彼らは今年の3月にサーカスをモチーフにしたアルバム『FUNNY∞CIRCUS』でグッと評価を高め、10月9日には最新シングル「CALAVERAS/サルサルーサ」をリリース。その後、ツアーにも乗り出す。ライブも音源も“アトラクション”と称するメンバーは、この新曲では“死者の日”をコンセプトに掲げ、カラフルな世界を表現。懐の深さを見せつけている。今回は咲吾(Vo)、志記(G)、もにょ(B)、虎丸(Dr)のメンバー全員を招集。その制作秘話やバンドの魅力について語ってもらった。
◆ ◆ ◆
◼︎僕達の中だけでメキシコを完結させるんじゃない
──最新音源は「CALAVERAS(カラベラス)/サルサルーサ」という両A面シングルになりましたね。サウンドも公開されたビジュアルを見ても、ラテン色全開ですが、今回のコンセプトはどのように決めていったんですか?
志記(G):僕ら、アルバムに向けてコンセプトを決めていくパターンが多いんですけど、前作の『FUNNY∞CIRCUS』を出したあとに、メンバーで話し合って決めていきました。実は僕ら、コンセプトとしてやっていきたいことをリスト化していて、それが結構たくさんあるんですよ。
──そうなんですか!
志記:僕がメモしているだけでも10個以上あるので……。その中から“次はどれをチョイスしようか”って感じで決めていきました。
──コンセプトに悩むバンドさんは多いと思うので、選択肢がたくさんあるってすごいですね(笑)。
志記:いや~、世界中にはいろんな文化がありますし、映画でも“あ、こういう視点でも作れるのか”っていう発見もあるので。そのたびにメモメモ!って感じです(笑)。
▲咲吾(Vo)
──そのたくさんの候補の中で今回はビジュアルもサウンドもラテンを選ばれましたね。ちょうど時期的にハロウィンシーズンでもあるわけですが、南米では“死者の日”(メキシコの伝統文化。11月1日、2日に行われ、街中にガイコツメイクを施した人々があふれる)のイメージがあります。
志記:おっしゃっていただいたように、今回は“死者の日”をテーマにしました。それが完全なキーワードでしたね。なので、まずメキシコの文化とはどういうものかと。僕らはそこを勉強するところから始まるんです(笑)。文化を知った上で作っていかないと、その土地の人にも失礼だと思いますし。日本の中にもまだ知らない文化があるくらいなんで、行ったことのない土地なら、なおさら知らないことが多いので、そこを勉強しながら作品を作っております!
──雰囲気だけで作るわけじゃないんですねぇ。非常に真摯な姿勢を感じます。その結果、サウンドもラテンのリズムを取り入れてますが、ラテンって日本人には苦手分野のイメージがあります。
志記:ホントに“死者の日”でメキシコとなれば、当然ラテンなんですよね。メキシコって独自の文化がありつつも、そこにスペイン系の文化が入ってきて、その混ざり合ったものじゃないですか。もちろん、僕らがバンドである以上、バンドサウンドには重きを置くんですけど、その中でウッドブロック的なパーカッションとか、情熱的なアコーディオンだったりマンドリン、あとはフィドル(小さいタイプのバイオリン)を、曲によって取り入れていきました。
▲志記(G)
──なるほど。いろんなチャレンジがあったわけですね。ここはドラムの虎丸さんにお聞きしたいんですが、普段あまり叩かないようなラテンビートでのレコーディングはどうでしたか?
虎丸(Dr):僕はもう純ジャパン……っていうか、純日本人なんで、体の中にラテンのビートなんて完全に入っていないわけですよ(苦笑)。それを表現するのがすごく難しくて……。まぁ、それっぽく聴こえるようなエセラテンドラムで攻めようとは思ってましたけど(苦笑)。
──つまり自分らしくラテンを解釈されたということですね(笑)。
虎丸:はい! よく言えば(笑)。「サルサルーサ」の方は結構ラテンビートが入っているんですけど、「サルサルーサ」での僕の仕事は、ドラムなんで当たり前ですけど、とにかくノリを作ることでした。曲のスピードも他の楽器との兼ね合いになってくるので、そこをバチッと合わせてラテンらしさとか疾走感を作るのが難しかったですね。
──同じリズム隊として、もにょさんはラテンにどう向き合いましたか?
もにょ(B):ラテンってリズムが主体でラテンに聴こえるところが多いじゃないですか。「サルサルーサ」も「CALAVERAS」もドラム以外にリズムを刻むようなパーカッションの楽器が多く入っているんですよね。ベースフレーズは毎回、志記さんが作ってくるんですけど、ドラムに合わせるところとパーカッションに合わせるところの接着剤みたいなフレーズを見事に作ってくれたんです。ストレートなロックと違う部分はチャレンジでしたし、自分ではそれも楽しめました。
──結果、新たな可能性も広がったと。
もにょ:コンセプトは志記さんと咲吾さんで決めてくることが多いんですけど、新しいコンセプト……特に他の国がコンセプトになると大変なのはドラムとベースなんですよね(苦笑)。やっぱり体に流れているリズムが違いますから。
──ビジュアル面も含め、咲吾さんもコンセプトを主導されていると思いますが、今回“死者の日”にこだわったのはどういうキッカケだったんですか?
咲吾(Vo):もちろん“死者の日”は、もともとコンセプトのストックの中にあったひとつの案だったんですね。で、僕達は前回やったアトラクション(=コンセプト)と、その次のアトラクションの雰囲気はなるべくかぶらないようにハズしてきてたんです。例えば“和”をやったらその次は“和”をやらないとか。前回が“サーカス”でかなりビジュアル系チックな世界観だったんですね。で、最初、志記は「次もサーカスっぽいアトラクションでやってみ~ひん?」って言ってたんですよ。次もカッコよく打ち出せるものでいきたいと。
▲もにょ(B)
──サーカスの世界観は、確かにすごくハマってましたもんね。
咲吾:そこで“死者の日”であれば、メキシコの陽気な感じも出せるし、ドクロっていうモチーフでカッコよさも出せるよねっていうところで始まったんです。
──確かにドクロはロックらしいアイテムですね。でも、死者を陽気に迎えるっていうのはなかなか日本にはなじみのない文化なんで、そういう意味でも新鮮です。
咲吾:そこは僕がいちばん感銘を受けたところなんですよ。どうしても海外の伝統をコンセプトにする時って宗教がからんできたりして、難しい部分もあるんですね。メキシコもスペインの植民地の時代があったり、独立戦争があったり……そこは事実としてあるわけですけど、さすがに歌詞で表現するには難しいんです。でも「CALAVERAS」は完全にスペイン語(=ガイコツの意味)で、海外の方、特にメキシコの方が見た時に引っかかって欲しいなという思いもあって。それで歌詞もいろんな国の人が見て理解してもらえるようなものにしたんです。そこは意識して作りました。僕達の中だけでメキシコを完結させるんじゃなくてね。
──素晴らしい! 海の向こうでも盛りがって欲しいですね! ところで、先ほどは虎丸さんともにょさんがラテンのリズムに苦労したとおっしゃってましたが、咲吾さんはスムーズに歌えましたか?
咲吾:メロディーは自分で考えているんで、そんなに難しいことはなかったですね。今回は日本人に親しみやすい歌謡メロディーで作っているんで。
──なるほど! それは感じました。たぶん、昭和の歌謡曲の中には案外ラテンを取り入れたものが多いんですよね。
咲吾:なので、僕がラテン感を意識したのはサビの入り方ですね。2番のサビで1番との入り方を変えてみたり、3番のサビは2回繰り返して転調で入るとか……そこは自分で指定してそういう流れにしてもらいました。そもそも、日本語とスペイン語って母音が近いというか、発音が似ているんですよね。歌に限らず、言語として似ている部分は多いのかなって思うんです。今回の制作のためにスペイン語の曲を結構聴いていたりしたんですけど、日本語に聴こえるようなところもたくさんあったんで。
──ちなみに、直近のライブではもう新曲達を披露されましたか?
咲吾:全曲、披露は終わりました。
──お客さんの反応が気になります。
咲吾:ウチのお客さんは順応力が高い方だと思うんですよ。だから、僕らが思っている以上に盛り上がってくれました。
──曲を聴いていて、もしかして鳴り物があったらもっと盛り上がるんじゃないかと……。
もにょ:あああ~!(笑)。
──あくまで参考意見です(笑)。そして、「サルサルーサ/CALAVERAS」のリリース後、“winter oneman tour『PARADISE OF THE DEAD』”がスタートしますね。もうラテンのリズムは体の中に入りましたか?
虎丸:入りましたね! 冬ツアーに対しての目標なんですけど、とりあえず冬なんで……まずは体調に気をつけたいなと(苦笑)。
──それは重要です(笑)。
虎丸:あと、今回のアトラクションには「サルサルーサ / CALAVERAS」の他にもう1曲「AVARITIA」っていう曲が収録されているんです。その3曲は、どれもカラーが違うんで、その叩き分けというか、各曲でどう世界観を作っていこうかなっていうのは考えているところですね。
──印象として「AVARITIA」はビジュアル系ファンが好きそうなハードさがある曲ですよね。さすがにこれはお得意なパターンの曲じゃないですか?
虎丸:正直、この曲は僕の得意な部類のドラムではあるんです。なんですけど、BabyKingdomとしては、そういう曲があまりなかったんですね。だから、すごく久しぶりに叩く感じで(苦笑)。もともとメタルをバンドでやっていた時期もありましたし、その頃のことを思いながら叩いてます。
──では続いてもにょさん、この冬ツアーはどう臨みますか? 毎度のことですが、今回も衣装は重装備ですけども(苦笑)。
もにょ:そうですね! でも、今回は温かいんですよ……あ、今回もですけど(笑)。冬ツアーにはピッタリですね。ただ、この前初めてライブでこの衣装を着たんですけど、どうしても演奏しにくいところが出てくるんですよ。なので、毎回ツアーをやりながらブラッシュアップさせてます。もちろん、楽曲もブラッシュアップさせていくんですけど(笑)。ちなみに「CALAVERAS/サルサルーサ」は、かの有名なモンチッチさんとコラボさせていただいているので、もしかしたら……。
──あ! この先ライブで何か面白いことがある……かもしれないですね。あくまでもしかしたら……ですが(笑)。では、続いて志記さん、意気込みはいかがですか?
志記:音源が出来た段階って自分にとってはまだスタート地点なんですよ。だからツアーで曲達をブラッシュアップさせるのはもちろん重要ですね。BabyKingdomの場合、バンドサウンドだけでなく同期でアコーディオンやバイオリン、パーカッションも入りますけど、やっぱり僕らの曲はライブハウスでいちばん映えるように作っているんです。だから、ライブハウスではホンマに細かい調整の積み重ねになるんですよ。12月29日にIKEBUKURO harevutaiで開催されるファイナル公演では、その完成形を楽しんでもらいたいですね。前回の『FUNNY∞CIRCUS』でも、そのアトラクションを通して成長した気がしてますし、自分達の感覚的には今、すごく自信があるので!
▲虎丸(Dr)
──では、シメに咲吾さんどうぞ!
咲吾:今回は“死”をテーマにしているのもありますけど、“死”と“生”って人間、だれしもがひとつずつ持っているものじゃないですか。これってすごく大事なものだと思うんです。実は先日、僕のおばあちゃんが亡くなったんですけど、その時、“悲しいな”っていう思いより、家族とか親族が生前の思い出を話し合っているのを見て、すごく羨ましいなと思ったんですね。なんか、そんな死に方ができていいなって。だから美しく生きることが美しく死ねることと一緒なんやっていうことに気づいたんです。まぁ、今回は“死者の日”がテーマなんですが、強く生きる、美しく生きるっていうことにスポットがあたるツアーになればいいなって思ってます。
──素晴らしいコメント……。最後に、そろそろ2025年の予定を発表するアーティストの方も多いので、言える範囲で来年の予告などあれば教えてください。
咲吾:正直、いい意味で考えないようにしたいんですよね(笑)。制作物があるので、どうしても考えなきゃいけないんですけど……。ただ、最近は先のことよりも、今に集中したいっていうマインドになってます。10年後、20年後を考えるのも大事だけど、そこだけを見て足もとを考えないよりは、しっかりその日のライブ、その日演奏する曲に集中していきたいですね。着実に。とはいえ、来年の制作物は考えてます!
──それは安心です! 何しろ最初に志記さんがおっしゃってましたけど、いろんな“やりたいことリスト”があるようなので(笑)。
志記:はい! 世界の国の数だけ文化がありますからね(笑)。
──頼もしいです! 期待しております!
取材・文◎海江敦士
18th 両A面シングル「CALAVERAS /サルサルーサ」
「CALAVERAS」 配信サイト:https://orcd.co/aon1nma
【初回限定盤 A type】
CD+DVD
品番:AMFD-1024 価格:¥1,980(税込)
[CD]
1. CALAVERAS
2.サルサルーサ
[DVD]「CALAVERAS」 MV & メイキング
【通常盤 B type】
品番:AMFD-1025 価格:¥1,650(税込)
[CD]
1. CALAVERAS
2. サルサルーサ
3. AVARITIA
4. CALAVERAS (inst)
5. サルサルーサ (inst)
6. AVARITIA (inst)
【完全生産限定 littleHEARTS.盤】
「べびきん×モンチッチ」ぬいぐるみ」+CD
品番:AMFD-1026 / 価格:¥7,150(税込)
<モンチッチぬいぐるみ> Sサイズ男の子 / ツアーTシャツ着用 / サイズ(約)H19×W13×D7.5
・A/Bタイプ共通 封入特典
※初回プレスのみトレカ1枚ランダム封入(全8種の内)
<winter oneman tour 『PARADISE of the DEAD』>
10/14(月祝) 柏PALOOZA
10/20(日) 江坂MUSE ※虎丸BDワンマン
10/27(日) さいたま新都心Vj-3 ※ハロウィン企画
11/2(土) 浜松FORCE
11/4(月祝) 広島SECOND CRUTCH
11/6(水) INSA福岡
11/9(土) 高松DIME
11/16(土)京都MUSE
11/17(日) 神戸VARIT.
11/23(土) 名古屋ell.FITS ALL
12/1(日) 大阪MUSE
12/8(日) 仙台ROCKATERIA
12/14(土) 静岡Sunash
12/15(日) 甲府CONVICTION
12/22(日) 西川口Hearts
12/25(水) 新横浜NEW SIDE BEACH!! ※クリスマス企画
12/29(日) 池袋harevutai
リリースイベント
10/9(水) HMV&BOOKS SHIBUYA
10/11(金) HMV大宮アルシェ
10/19(土) littleHEARTS.大阪店
11/7(木) HMV&BOOKS 博多
11/10(日) もりのみやキューズモールBASE1F BASEパーク 11/24(日) fiveStars名古屋
11/30(土) littleHEARTS.大阪店
12/7(土) タワーレコード仙台パルコ店
12/13(金) タワーレコード静岡店
12/21(土) イオンレイクタウンmori木の広場
12/24(火) littleHEARTS.新宿店
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