【対談】GLIM SPANKY × LOVE PSYCHEDELICO、音楽愛に満ちたコラボ曲を語る「この4人でひとつのバンド」

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メジャーデビュー10周年を記念して、GLIM SPANKYが11月27日にリリースしたベストアルバム『All the Greatest Dudes』は、この10年間に発表してきた代表曲の数々もさることながら、そこに加えられた「赤い轍」ほか計6曲のチャレンジングな新曲も聴きどころ。

◆GLIM SPANKY × LOVE PSYCHEDELICO 動画 / 画像

中でも一番の目玉と言えるのがLOVE PSYCHEDELICOとコラボレーションした「愛が満ちるまで」だ。これまでライブでは何度も共演している二組のことだから、もしかしたらこういうコラボレーションを期待していたファンは少なくなかったかもしれない。

GLIM SPANKYの二人にとって驚きの多かったコラボレーションは、メジャーデビュー10周年を飾るにふさわしいものとなったが、その追加セッションとも言える対談が実現。タイトル通り音楽愛に満ちたコラボレーションを、LOVE PSYCHEDELICOのKUMI(Vo, G)とNAOKI(G)、そしてGLIM SPANKYの松尾レミ(Vo, G)と亀本寛貴(G)の4人に振り返ってもらった。


   ◆   ◆   ◆

■すごく好きなギターだなって
■告白みたいになっちゃったけど(笑)


──LOVE PSYCHEDELICOとGLIM SPANKYの初対面はいつ、どこでだったんですか?

松尾:Zepp Tokyoでやったクリス・ペプラーさん企画のJ-WAVEのイベント(<SAISON CARD presents J-WAVE the Chris Peppler Show “JAM-O-RAMA”>)でしたよね。

KUMI:たぶん、そのイベントが初めてという気もするけど、一緒に中国に行ったのはいつだったっけ?

亀本:もっと後だったと思います。

松尾:J-WAVEのイベントが2017年の4月で、中国に行ったのはその年の12月だったそうです。

KUMI:そうだ。じゃあ、初対面はやっぱりZepp Tokyoだったんだね。

──中国には二組で行ったんですか?

KUMI:あと、THE BAWDIES。

亀本:そうでした。

NAOKI:上海でのイベントだったね (<J ROCK STYLE In Shanghai>/2017年開催)。


▲GLIM SPANKY

──なるほど。ところで、初対面した時の第一印象って憶えていますか?

松尾:NAOKIさんが私たちの楽屋にひょこっと顔を出して、「君たちLOVE PSYCHEDELICOよりもサイケデリックな音楽やってるね」って言ったの憶えてます。それまでNAOKIさんって全然喋らない人だと思ってたんですけど、その時、“怖い人じゃないんだ”って思った記憶があります(笑)。

NAOKI:ははは。そういう会話をしたかどうかは憶えてないけど、その前からグリム(GLIM SPANKY)のことは知っていて。KUMIともよく話していた気がするんだけど。亀ちゃんのギターがさ、'60年代のサイケデリックブームの時代の音楽みたいに、すごく深いリバーブが掛かっていて。あの当時、そんなに深いリバーブで、ずっとペンタニックスケールのソロを弾いているギタリストって、あんまりいないよなと思ってたんだよね。それも含め、グリムってサイケデリックブームの頃のサウンドを表現してたから、「あの時代の匂いを感じるよね」みたいな話は、二人と出会う前からしてた記憶がある。僕らは名前に“サイケデリック”って入ってるけど、サイケデリックブームだった'67年とか'68年とかの音楽の影響って、実はそんなに受けてなくて、その時代のちょっと前とか、ちょっと後とかの音楽のほうが自分たちはいっぱい聴いているから、“GLIM SPANKYのほうがリアルサイケデリックだな”って当時思ってたよ(笑)。あと、ジャニス・ジョプリンをカバーしてるのも知ってたから。

──注目していたわけですね?

NAOKI:注目も何も。出てきた時からめっちゃ耳に入ってきたし、すごく活躍してたから。

KUMI:印象的だったよね。

NAOKI:そうそう。あとはやっぱり僕らも同じ二人組っていうのもあるから、ひょっとしたら余計印象的に映ったのかもしれない。

KUMI:サウンドももちろんだけど、レミちゃんの声は衝撃的だったよ。

松尾:ありがとうございます。嬉しい。

──逆にGLIM SPANKYの二人はLOVE PSYCHEDELICOの音楽については、どんなふうに感じていたんですか?

松尾:誰もがそうだったと思うんですけど、“衝撃的な人たちが出てきた”ってびっくりした記憶があります。デリコ(LOVE PSYCHEDELICO)の「Silver dust lane」が使われたウォータリングキスミントのCMって何年でしたっけ?


KUMI:あの曲はデリコの3rdアルバム(『LOVE PSYCHEDELICO III』)に入ってるから2004年かな。

松尾:そっか。2004年ってことは、私、小学生ですね。テレビを見てたら、ウォータリングキスミントのCMが流れて、“何この曲? めちゃめちゃカッコいい!”って衝撃を受けたんですよ。うち、親がいつもロックのレコードを聴いてたから、J-POPとうちで流れてる音楽って全然違うものだと思ってたんですけど、デリコを聴いたとき、“日本にもこういう音楽をやってる人がいるんだ”って思いました。同級生の家族にデリコの大ファンがいて、その子のうちの車に乗ると、いつもデリコがかかってたり、私もCDを聴いたり、小学生の頃からよく聴いてました。

亀本:そうなんだ。僕は、いいなと思ってちゃんと聴き出したのは、実は自分たちがデビューしてからなんですよ。大学に入ってから、日本のバンドをいろいろ聴くようになって。その中でデリコも聴いたんですけど、当時は“自分たちのバンドの参考にできるかどうか”って基準で聴いてたから、デリコは特にギターが本格的すぎたと言うか。“自分達の環境じゃできない。無理だ”と思って、“一回、別の棚に置いておこう”ってなっちゃったんです。だから、デリコがすごく好きになったのは、この10年ぐらいっていう。

──これまでLOVE PSYCHEDELICOとGLIM SPANKYはたびたびライブで共演してきました。それはやはりデリコとグリムならではのケミストリーが生まれるからこそだと思うんですけど。

NAOKI:最初に共演したのって、2020年の<オハラ☆ブレイク>だったよね?

亀本:そうだと思います。

KUMI:一緒に演奏したのはそうだね。

NAOKI:ちょうどコロナの頃で、無観客だったんですけど。4人でね、基本アコースティックで、プラス・エレキギターぐらいな感じでセッションをしたんです。その時に思ったんですよ、“亀ちゃんのギターすごく好きだな”って。

亀本:ありがとうございます(照)。

NAOKI:普段そんなふうに思うことってあんまりないんだよ。やりたい事が他の人とあまり被らないから。っていうのは、僕のスタイルがちょっと古いと言うか、オールドファッションだから、我が道を行くじゃないけど、“人は人。我が家は我が家”みたいな感じで弾いてるからね(笑)。ギタリスト談義とかもそんなに好きじゃないから、亀ちゃんともそういう話はしてないじゃない? だから言葉にしたこともなかったけど、一緒に演奏した時に、“すごく好きなギターだな”って。なんか告白みたいになっちゃったけど(笑)。その時、「LADY MADONNA〜憂鬱なるスパイダー〜」っていう僕らの曲で、僕がアコースティックギターでスライドしてるところに亀ちゃんがエレキでリードギター的に参加してくれたじゃない?


亀本:そうでしたね。

NAOKI:あの時、“ここでこんなフレーズを弾いて”みたいな打ち合わせはしてなかったけど、亀ちゃんが深いリバーブを掛けた音色で、ハウリングを操りつつ自由に弾いているのを聴きながら、もともと音楽って年齢とかキャリアとかあんまり関係ないと思ってるんだけど、“こんな素敵なギタリストがいることに、なんでみんなもっとびっくりしないんだろう”って思ってたよ。それはすごく憶えてるし、「亀ちゃんのギターいいよね」って話をKUMIともしたよね?

KUMI:うん。すごく丁寧で、繊細な音だと思ったよ。品があるんだよね。

NAOKI:僕のスタイルとは少し違うんだけど。似てるなって思うのが、いい意味で捉えどころがないというか。テクニック至上主義でもないし、スタイル至上主義でもない。何て言うのかな。ギターヒーローとして偶像化できるわかりやすさじゃなくて、一言で表せないような深い魅力があると思っていて。キース・リチャーズなんかもそういうイメージがあるんだけど。あれ、今の言い方だと、“そういうところが自分に似ていて、深い魅力がある”って言ってるみたいになっちゃうけど(笑)。

松尾:もちろん、NAOKIさんも深い魅力ありますよ、たくさん。

NAOKI:そういうことを言いたいんじゃなくて(笑)、さらっと聴いたら、捉えどころがないように思えるし、速弾きしてるわけでも、何か一つのテクニックで押し通すわけでもないんだけど、“いろいろな音楽を通ってきた音楽人の味わい”って言えるギターを弾いてるって思うんだよね。亀ちゃんは。

亀本:ありがとうございます。

──亀本さんは、NAOKIさんのギタープレイについては?

亀本:2年前だったかな、<ARABAKI ROCK FEST.>で一緒にやったとき、NAOKIさんとKUMIさんが二人だけで演奏しているところを見ながら思ったんですよ、“本物だ”って。やっぱり二人組で、男女のグループってところでデリコと比べられるというか。同じベクトルの若いバンドみたいに見られることもあるんですけど、根本的な音楽の素養というか、醸し出してるものが全然違うなって。僕らのほうがもうちょっと、これは僕個人の認識ですけど、速いと言うか、スピード感があるというか。そういう印象なんですけど、逆にデリコは音色が豊かで、リズムも、なんだか軽い言い方になっちゃいますけど、“これ、日本のバンドじゃないだろう”って思うんですよ。僕らはもうちょっと日本人だなって感じる部分があるんですけど。そこがすごく決定的に違うなっていうのを横で聴きながら感じてました。

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