【ライブレポート】おいしくるメロンパン、全国27ヵ所ツアー<春夏秋冬レイトショー>完遂「一貫性の中の変化が僕の音楽の楽しみ方」
おいしくるメロンパン史上最大規模の全27本を巡る全国ワンマンツアー<おいしくるメロンパン eyes tour -春夏秋冬レイトショー->。そのファイナル公演であり、おいしくるメロンパンにとって過去最大規模の会場となるTOKYO DOME CITY HALLでのライブをレポートする。
◆おいしくるメロンパン 画像
BGMが徐々に大きくなり、暗転。ビジョンに雲や草花のモノクロ映像が流れた。ナカシマ(Vo/G)がアルペジオを弾いて、「epilogue」からライブはスタート。瑞々しい少年性を宿した歌声が駆け抜け、サビではフロアから拳が上がった。この日の東京は一気に冬に突入したかのような寒さだったが、“まだ暑い日は続くから 夏が君を腐らせる前に 最後の夢を見せて 忘れないでね、”という歌詞に、<春夏秋冬レイトショー>は夏から始まったのだと理解する。
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「おいしくるメロンパンです。よろしくお願いします」というナカシマの挨拶を経て、ミニアルバム『eyes』(2024.5発表)に収録された「シンメトリー」へ。“君のことを思い出す夏が憎らしい”──夏特有の切なさと甘酸っぱさをタイトなアンサンブルに乗せていく。夏の終わりを告げる「色水」にシームレスに突入。スリーピースの緻密なアンサンブルでじわじわと場内の温度を上げていく。ソリッドなカッティングリフを土台に、原駿太郎(Dr)のドラムと峯岸翔雪(B)のベースが躍動するセッションを冒頭に加えて披露された「黄昏のレシピ」が、メンバー個々の技量の高さを浮き彫りにした。
ナカシマが「春に『eyes』をリリースして半年間かけてついに東京に帰ってくることができました」と伝え、「look at the sea」へ。とても重いんだけど、軽やかに駆け抜けていくというおいしくるメロンパンならではの絶妙なアンサンブルにオーディエンスが沸いた。蒼々しく疾走する「紫陽花」で夏の訪れを示し、これでもかとアンサンブルの妙を見せつけていく。リバーブ成分を含んだ幻想的なベースフレーズがイントロに差し込まれた「沈丁花」は、トリオならではの演奏がスリリング。前述した「黄昏のレシピ」ほか、曲間のつなぎが、各曲はもとよりライブ全体の緩急を増幅させてドラマティックこの上ない。
原が「今日は本当に最高だね」と話し始めた。「近くに遊園地があるくらいだから誘惑があるわけじゃん。よくぞ辿り着いてくれました」と楽しそうに感謝を伝え、「(今回のツアーは)ライブじゃなくて映画だと思っています。“劇場版おいしくるメロンパン”だと思っています。俺は今日はアカデミー賞を取る気でいます。映画はこれから、より盛り上がっていく」と話すと、客席のあちこちから笑い声が上がるというおいしくるメロンパンらしい光景が広がった。その様子を腕組みしながら聞いていた峯岸は、「意味がわからなかったら拍手しないでいいですから」と突っ込んで場内爆笑となるあたりに、メンバーの関係性も鮮明となる。「おいしくるメロンパンのライブには作法などないので、身体を揺らすも揺らさないも、あなたの自由です。好きなように楽しんでいってください」と峯岸が告げて中盤戦がスタート。
赤いライトに照らされたステージで展開されるプログレッシヴなアンサンブルで否応なしにスリルを高めた「砂の王女」、荒波に抗うかのような迫力あるアンサンブルで魅せた「架空船」、この流れにも惚れ惚れさせられた。ギターとベースのユニゾンリフが楽曲の核を貫く「空腹な動物のための」は、アグレッシヴで生々しい肌触り。原のドラムロール、ステージ前方に出てきての峯岸のベースプレイにまず大きな歓声が上がった「シュガーサーフ」はしっかりと地に足が付いているような安定感がありながらつんのめっていて、たまらない切迫感があった。
5月に8thミニアルバム『eyes』をリリースし、9月に8.5thミニアルバム『phenomenon』をリリースしたおいしくる。終盤、ナカシマは「これからも僕たちは新しいことにチャレンジして変わっていきたいと思っています。でも変わらないこともあって、一貫性の中の変化というのが僕の音楽の楽しみ方だと思っていて、このバンドでみんなに提示したいことのひとつです。みんなもどんどん変わっていくと思うんだけど、変わらずに僕たちと一緒に、おいしくるメロンパンの音楽を楽しんでくれたら嬉しいです」と伝えた。
「五つ目の季節」で春夏秋冬の先の切なさを描いて本編終了。『eyes』オープニングナンバーにして、現在のおいしくるを象徴するような哀愁とエモーションを孕んだサウンドが場内に心地よい余韻を残した。アンコールはまず、原と峯岸のコーラスワークが印象的な「式日」で本編の余韻をオーディエンスに染み込ませた。ナカシマの「長かったですね」というしみじみした発言からMCタイムへ。
「長かったね」や「楽しかったね」という言葉を口にする面々。原が「27ヵ所映画をやってきて」と言うと、フロアから笑い声が上がった。その後、「ファンが増えてくれてる。こんなにもおいしくるメロンパンを愛してくれている人がいるー!」という喜びの声を上げた原。
ナカシマが「これからも音楽をやっていくので楽しみにしてもらえれば。ツアー終わっちゃうんですね」と名残惜しそうに話すと、原が「映画はいつか終わるもんね」と言い、ナカシマが「今日、負けないね」と答えた。さらに、「今日は俺がみんなを巻き込んで最優秀賞取るから」(原)、「最高の演奏をして終わるか」(ナカシマ)というやりとりを経て、「マテリアル」を演奏。
ビジョンにカラフルな映像が映り、ナカシマの超絶なギターソロをはじめ、3人のプレイヤビリティが爆発する中、一瞬の隙間ができるとオーディエンスから「1、2!」という掛け声が上がり、一体となってフィナーレに向かう。ナカシマが“運命なんてものがないってこと ちゃんと教えてよねえ”と歌い切り、大歓声が上がる中、大団円を迎えた。
取材・文◎小松香里
撮影◎郡元菜摘/翼、(★)
■<おいしくるメロンパン eyes tour -春夏秋冬レイトショー->2024年11月7日(木)@東京・TOKYO DOME CITY HALL セットリスト
02. シンメトリー
03. 色水
04. 黄昏のレシピ
05. look at the sea
06. 紫陽花
07. ドクダミ
08. 沈丁花
09. 砂の王女
10. 眠れる海のセレナーデ
11. 架空船
12. 獣
13. 空腹な動物のための
14. シュガーサーフ
15. フランネル
16. 斜陽
17. あの秋とスクールデイズ
18. 五つ目の季節
encore
19. 式日
20. マテリアル