【ライヴレポート】DEZERT主催<DEZERT PARTY >2日目、盟友たちと交わした愛の宴「攻撃するだけの音楽じゃ死ぬとき俺は後悔する」

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DEZERTが主催するイベント<DEZERT PARTY Vol.15、Vol.16>が、恵比寿リキッドルームで11月1日、2日の2日間に渡って開催された。初日に出演したゲストバンドは、ΛrlequiΩ / deadman / メリー / RAZOR、2日目はLM.C / Royz / Verde/ / vistlipの合計8バンドだ。ここでは、その2日目をレポートしていく。

◆<DEZERT PARTY Vol.16>ライブ写真

いよいよ迎えた2日目の<Vol.16>は、前夜同様に超満員のオーディエンスが会場を埋め尽くした。

■Verde/

定刻と同時に暗転。重低音に導かれるように青白い光が差し込んでくる。この後登場する人物を察知したフロアからはブレスレットやスティックライトの光が浮き上がり、招かれるように黒のスーツでシックにキメたShou(Vo)は現れるなりその両手を広げ歓声を受け止めた。

宴の序曲は「UNREAL」。彼のこれまでのキャリアの中でもダークで退廃的な世界を描く1曲は、こまやかな動と静のコントラストで陰影をなぞる。妖艶で伸びやかな低音で空気を張りつめさせると、メロディアスな「Hope/」へ。クリーンのアルペジオと共に一気に開くこの曲、Shou自身の決意を“希望”と名付ける重要楽曲である。

まさに一人のヴォーカリストとして立つ姿は天賦のスター性の塊であったが、それ以上にエレガントなのに人間性が香る実直さは浸透していき、Verde/としてのShouを初めて目にする層も巻き込んでいく。不穏なイントロで即座に嬌声が巻き起った「Adam」からも明らかなように、これまでの輝かしいキャリアを否定することなく、すべてを従えて表現する姿からは自由度の高さも感じさせる。ブラッシュされたデスヴォイスから、包容力のあるサビへ転じる強さはShouの引き出しの豊富さそのもので、気心知れたサポートメンバーの織りなすアンサンブルも目を惹いた。


ジャケットを脱ぎ捨て臨戦態勢をアピールし、「ヴィジュアル系を背負って立つ男!」と呼んだのは、DEZERT・千秋(Vo)だ。千秋のリクエストとしてVerde/ with 千秋で披露されたのは、地鳴りのような悲鳴が沸き上がった「闇ニ散ル桜」。バンド凍結前にDEZERTと2マンを行った時以来の光景だが、そんな感傷を吹き飛ばすように「突っ込め!」「わざわざこの曲やってくれてんだぞ!全員で来い!」と煽り倒す千秋。タイプの異なるフロントマンは声質も対照的だが、厚く太いShouに対してドライで味のある千秋の歌唱の相性は抜群で、これからもコラボレーションに期待を抱かせるものだった。

2人で手を握りながら歌う光景からも両者に通ずるリスペクトが垣間見えた。バンド凍結前に千秋は「僕たちとみんなでいつか解凍させる。その時はまた2マンやりましょう!」と言った旨を発言していたが、掌の温もりはVerde/として再び音楽を奏でるShouにも伝わったに違いない。最後は「Red/」。朱色を連想させるタイトルだが、美しいメロディと共にステージは眩い白色で満ち溢れた。Verde/にとっても思い入れのある会場でのあっという間の30分だった。




■Royz

2番手はRoyz。バンドキャリアとしては16年目だが、ここ数年さらなる加速を見せている。それがバンドとしての強固なエネルギーによるものであることは大前提として、ヴォーカリストの昴はしばしば千秋との邂逅によって再び心に炎が宿ったと語る。Royzとしても昴自身も未来へ対して苦悩していた時期に、数年前に再会したDEZERTのひたむきな生き方が悔しかったと同時に嬉しくもあったという。しかし、その悔しさはバンドの原動力に変わり、Royzの歴史においてもハイライトとなる楽曲が増えていった。

この日のメニューは、冒頭の「ANTITHESIS」こそ2016年リリースだが、続いた「VENOM」「紫苑」「キュートアグレッション」はいずれも2023年以降の、いわば最新ナンバーたちだ。これまで生みだしてきた数々の名曲に依存することなく、最新形で対峙する必要があった…とりわけこの夜は。そんなプライドと腕を全開でブン回してくる前向きなステージは、バンドが好調であることを告げるように爆発的な威力でフロアを扇動した。

そんな中でも、ドラマティックな失恋の描写がささくれのように生々しい「紫苑」の紡ぐストーリーの終焉に合わせて、壁のように襲い掛かってくるバッキング然り、楽曲のニュアンスに寄り添ったプレイはやはり秀逸でこのバンドの大きな武器と言える。


「DEZERTと出会って学んだことはたくさんあります。強いて言えば、一番学んだことは…ライヴの持ち時間は守ろう」と時計を持ち出し、大爆笑を掻っ攫う一幕もあった。「DEZERTのメンバー…特に千秋とかいうヤツ、モニターで見てると思うけど…時計ってめっちゃええで? 時計って知ってる? 今の自分たちの残り持ち時間わかるんやで?」と、かつては持ち時間超過が通例化していた友人への愛あるイジりは、昴と千秋の信頼関係を感じさせるものでもあった。

DEZERTにも分岐点になった楽曲がいくつかあったように、Royzにも全体重を乗せることで成立する曲がある。そんな曲を彼らはラストに用意した。披露したのはもちろん「GIANT KILLER」。昴の見事なアカペラから、下剋上を体現する歌詞と力強いメロディがひとつになる。曲中、たしかに「ありがとう、ありがとうな!」と昴は呟いた。

そして最後、「待ってろ! 待ってろ! 待ってろよ…武道館、派手に行ってこい!」と盟友に溢れる感謝の想いを投げかけRoyzのステージは幕を降ろした。


■LM.C

3番手はLM.Cだったのだが、登場から驚かされた。maya(Vo)は、DEZERTのひまわりロゴをあしらったTシャツ、さらにはAiji(G)のジャケットの下から除くTシャツには「殺意」の文字が。日本武道館ワンマンを経験している大先輩…DEZERTからすればそういった立ち位置になるLM.Cだが、精一杯のパーティーを届けることに注力していることがジェントルな振舞いからも伺える。

mayaが「いこうぜヴィジュアル系!」と叫び「OH MY JULIET.」から転がりだしたLM.Cのステージが纏う陽のオーラは、一気に会場を包み込む。ザクザク切り込むサウンドと張りのあるmayaの歌唱はLM.Cの軸となる魅力だが、そのファッショナブルさとファンシーさにおいても他に見当たらない存在だ。

最後、腰に掛けたピストルで撃ちぬくパフォーマンスを見せたかと思うと、マイクを取り「DEZERTの皆さんにお声がけいただくのは3度目かな?(中略)…武道館っていうのは、発表した時点でもうライヴが始まっているような感覚があるんですけど、今日はその前夜祭だよね? パーティーした過ぎて物販にシャンパン持ってきたぐらいなんで(笑)。アゲていきましょう!」と華麗に着火していく。


レーザーとデジタルサウンドでその名の通りダンスフロアを生んだ「Chameleon Dance」、低く滑空するキレキレの「MOGRA」と叩きつけ、民族音楽を想起させる崇高な導入から、様々な音色のミクスチャーで突き抜ける至高の「The BUDDHA」まで内包するポップネスを炸裂させ一気に駆け抜けた。

ここで、千秋がこの日2度目、なんとこの2日間で5度目の登場。千秋がmayaのことを「一番好きなバンドマンです」と宣言すると「それプロフィールに書いておいてよ」と、全開のmaya節で漫才のようなかけ合いを見せる微笑ましい場面もあった。

ラストは千秋からのリクエストで「BOYS & GIRLS」。LM.Cを代表するナンバーだが、アイコンタクトを取り飛び跳ねながら歌った千秋は、バックステージで「高校生の時にカラオケで歌いまくったから身体が覚えてたわ」と語った。尊敬と愛…と表現するとやや堅苦しいが、LM.Cはその懐の深さで武道館に向かう後輩に大きな勇気を授けた。




■vistlip

2日間に渡る宴もいよいよ終わりが近づいてきた。パーティーはその賑わいの反面、終わりが訪れると寂しくなる。そんなセンチメンタリティもSEに呼応する声援と共にかき消された。4バンド目にして、ゲストバンドとしてはトリとして登場したのはvistlip。

2023年6月に、DEZERTと東名阪2マンツアーを敢行したことがきっかけで急接近した両バンドだが、編成から楽曲から貫くスタイルは全く別物だ。その深みのある歌の力とアグレッションで一気に空気を変えた最新曲「B.N.S.」、お立ち台に乗った瑠伊(B)のソロから雪崩れ込んだ「EVE」とオーディエンスの興奮度が急上昇していくのが伝わる。歌が主軸にあるのはvistlipの持ち味だが、「聞こえねーよ、東京!」と叫んだ智(Vo)のアジテーションが熱狂を生む様は、ライヴにおける肉感的な強さを感じさせる。

智が「EVE」をやったことを引き合いに「この曲やったら(千秋)をおびきよせられんじゃねえの?ってやってみたら…来ねぇ(笑)」と両バンドの良好な関係性を伺わせつつ「DIGEST -Independent Blue Film-」へ。ミドルで流れるメロディの芳醇さはタイトルとは裏腹に最新形のvistlipだ。しかし、ミドルとは言っても跳ねるようなTohya(Dr)ドラミングが耳を掴むあたりに、一筋縄ではいかないこのバンドの奥深さを感じさせる。vistlipはお祭りの要素も多分に見せつけ、限られた時間で超満員のフロアを沸かせるべく“待ってました!”のキラーチューンの応酬で走り抜けた。


イントロで発生した大歓声と共にシンガロングが巻き起こった「Dead Cherry」、ヘッドバンギングに興じるフロアを生んだ「DANCE IN THE DARK」、「まだ足りねえよな?」とダメ押しとなる「LION HEART」まで容赦なく全6曲を披露。涼しげに鬼テクギターソロを弾き倒すYuh(G)と、自身がマイクを取り歌う海(G)の扇動力の対比までハイレベルなステージを展開。5人バンドの理想形ともいえる、華のある存在感を振りまいた。

クールでソリッドなライヴはラスボス感すら感じさせ、その時間は大トリを担うDEZERTへの素晴らしい贈り物となった。


■DEZERT

イベントの大トリとして登場したのは、もちろんDEZERT。前夜に続いて、無音のまま登場し緊張感と同時に集中力を増幅させていく。最後に手を叩きながら、この2日間フル回転した千秋が登場すると歓声は一段と大きくなった。そんな枯渇する想いを退けるように始まったのは「Call of Rescue」。パーティー感皆無な重苦しく感情を遮断する選曲は意外だったが、耳を塞ぐ千秋の歌唱は、以前よりも感情に任せることなく丁寧で安定したもので、だからこそ強烈な壁を生んだ。

「トリのDEZERTです。全員で…じゃなくお前1人でかかってこい!」と告げると「「君の子宮を触る」」へ。焦らされたフロアは一気にクラッシュ。壮絶なヘッドバンギングの嵐に飲まれた。続いたのはアッパーなメロディが気持ちいい「ミスターショットガンガール」。

「昨日の夜中1時に、千秋から急に歌詞覚えてって連絡がきた」と語るRoyz・昴を迎え入れこの日ならではのコラボも披露。ただ、本来この1曲でお役御免だった昴を強引にステージに取り残し、千秋がフロアに降りた「「変態」」とさらに攻撃的なナンバーを連打。フロアの千秋から「お前も武道館やりたいんだろ? すげえ五文字言ってみろ」と挑発された昴が「時計見ろ!」とステージ上から百点満点のアンサーをすると大盛り上がりに。

これは千秋の照れくささによるところでもあるが、DEZERTは予定調和を嫌い続けているバンドだ。決められたことに刺激を受けない体質とも言えるが、何でもアリは自分たちで創り出すものでもある。武道館を目前にしてこの変わらぬ姿勢が正しいかどうかはさておき、4人の結束力はその音からもステージからも顕著で、彼らが変わらずに変わり続けながらここまで歩んできたことが見て取れる。

ただ、その結束力は彼らだけでなく、支持し続けたオーディエンス、彼らの音楽に惚れて身を粉にしてきたスタッフチームも同様である。まさに武道館決起集会の様相を呈した「再教育」の異常な盛り上がりは、勢いだけのバンドでは決して生みだせない熟成された情緒的なエモーショナルを感じさせた。


1番手で出演したVerde/のShouは「武道館ワンマンに向かう彼らの肩にはすごい重責が乗っかっている」と慮ったが、まさにその現実と向き合い続けたからこそ、彼らのライヴには雑味やブレがない。この2日間に渡った“これまで2マンしたことがあるバンド”との対バンについて、要は他のバンドのお客さんを武道館に来てもらいたくて組んでるものじゃないかと、前夜の千秋はあけすけに語った。千秋は元来とにかく嘘をつけない男であるが、結果として今のDEZERTの持つ説得力と出演した8バンドの愛情の前には、そんな打算めいたものは1ミリも感じ取ることができなかった。

「中指を立てても自分の弱さを思い知らされるだけだった」
「コロナで初めてお客さんが離れる不安、バンドが続けられなくなる不安を感じた」

核心に迫る発言に続いたのは、コロナ禍に生まれた「ミザリィレインボウ」。優しいメロディに無数の手が上がる様は、荒地に咲き誇るひまわりのように美しかった。今にして思えば、コロナに苛まれたあのときに、無様でもいいから架けたいと願った虹は、決して七色の彩りではなかったのかも知れない。だが、たくさんの愛で溢れた日々は続き、待ち焦がれた夜明けはすぐそこまで来ている。それは色よりも物よりも大切な想いだったのではないだろうか。

万感を込めてこの日もラストに演奏されたのは「オーディナリー」。来る12月27日、夜明けの日に贈られる、約束の1曲だ。この曲が生まれた2016年よりも、穏やかでより力強さを感じるアレンジになったが、散々悩みぬき変遷した歌詞は当初のものに回帰したそうだ。過去の証明は人生の肯定でもある。

「攻撃するだけの音楽じゃ死ぬとき俺は後悔する。だから人を幸せにするような音楽を鳴らしたい」

千秋はこうも語った。躓きも迷いも葛藤も、何一つ間違っていなかったことをDEZERTは武道館でもきっと音で運んでくれることだろう。この祝祭に愛をもって色を添えた全てのアーティストとオーディエンス、そしてスタッフに心から敬意を表し、夜明けの日を待ちたい。

文◎山内秀一
写真◎冨田味我

◆<DEZERT PARTY Vol.15>1日目レポートへ

<DEZERT PARTY Vol.16>SETLIST

2024年11月2日(土)恵比寿LIQUIDROOM

◾️Verde/
1.UNREAL
2.Hope/
3.Adam
4.闇ニ散ル桜 with 千秋(DEZERT)
5.Red/

◾️Royz
1.ANTITHESIS
2.VENOM
3.紫苑
4.キュートアグレッション
5. GIANT KILLER

◾️LM.C
1.OH MY JULIET.
2.Chameleon Dance
3.MOGURA
4.The BUDDHA
5.BOYS & GIRLS with 千秋(DEZERT)

◾️vistlip
1.B.N.S.
2.EVE
3.DIGEST
4.Dead Cherry
5.DANCE IN THE DARK
6.LION HEART

◾️DEZERT
1.Call of Rescue
2.「君の子宮を触る」
3.ミスターショットガンガール with 昴(Royz)
4.「変態」with 昴(Royz)
5.再教育
6.ミザリィレインボウ
7.オーディナリー

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