【和楽器バンドインタビュー vol.6】神永大輔「こんなに面白いものはほかにない」

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◼︎和楽器へのハードルが低くならないと、和楽器バンド自体も前に進めない

──神永さんが思う和楽器バンドらしさってなんですか?

神永大輔:8人の個性のぶつかりだと思います。町屋さんのアレンジもそうですし、それぞれの曲の作曲者にも癖があったりとか、そういうのも含めて8人の個性だなと。どんなジャンルのどんな曲でも、この8人で演奏するとなんだかんだ和楽器バンドの音になってしまう。それはやっぱり、この8人で演奏してるからこそ醸し出される“和楽器バンドらしさ”なんじゃないかな。

──やっぱり、つくづく面白いバンドだと思います。その中でも、尺八というのはなかなか特殊なパートで。さらにそんな尺八の中でも、当時から神永さんはあまりいないタイプの尺八奏者でしたよね。

神永大輔:そうですね。マニアックな楽器である分、尺八が好きな人って尺八に対しての強いこだわりがあって、何のために尺八を吹くかという目的がそれぞれ違うと思うんですよね。僕は最初からコミュニケーションの手段として尺八を用いていたので、ほかの奏者さんたちとはちょっと違ったかもしれないですね。だんだんこういう尺八奏者も現れるのかなと思ったら、意外と現れなかった(笑)。本当はもっといろんな人に後に続いてもらえたら嬉しかったんですけど。

──神永さんは邦楽(日本伝統音楽)界ではちょっとした異端児だったと思うんですが、いまでは日本の古典音楽、民俗芸能、和楽器を扱う雑誌『邦楽ジャーナル』の取締役にまでなっていたりして。

神永大輔:やっぱり僕は、単純にこの楽器が好きだから「尺八って楽しいよ、もっともっと世の中に広まって当然のものだと思うよ」っていう気持ちを持っているんですよ。和楽器バンドをきっかけに、和楽器に興味を持って始めたいと思ってくれる人もいらっしゃいますが、「どうやったら始められるんですか?」「どこで買えるんですか?」「どこで習えるんですか?」って問い合わせを結構な数いただいてた時期があったんです。それに対して、なかなかいい答えが伝えられなくて……。和楽器バンドって、J-POPとか一般的な音楽の世界に初めて本格的に和楽器を持ち込んだアーティストだと思うんですけれど、せっかくそれで和楽器に興味を持ってくれた人がいても、それに対して簡単に答えを提供できる場がないなっていうのが、すごくもったいないなって思っていたんですね。

──まぁ、ちょっと和楽器はハードルが高いですよね。

神永大輔:普通に流通している楽器だったら、まず楽器を買ってとりあえず触ってみて、音が出せて、曲が演奏できたら楽しくなって……そこからのスタートじゃないですか。でも和楽器ではそんなスタートの切り方もなかなかできないというか。楽器自体も先生を通して買うみたいな流れもありますし。そういった仕組み自体を整えていかないと、今後第2、第3の和楽器バンドみたいな存在が出てきても、なかなか続かなくて終わっちゃうっていうのはもったいないですよね。僕も尺八奏者として孤独を感じてるところはあるので、和楽器をやりたいなって思う人が簡単に入っていける状態を作っておけたら、将来的に和楽器バンドが活休明けで集まったときにも、もっと先に繋げていけるような気がしてるんですね。というか、和楽器へのハードルが低くならないと、将来的に和楽器バンド自体も前に進めないのかなっていうのを個人的に感じていたんです。


──なるほど。和楽器界の盛り上がりは、和楽器バンドの盛り上がりにも直結するんですね。

神永大輔:たとえばバンドのファンで楽器を演奏してみたいと思ったら、まずは楽器を買ってコピーしてみますよね。和楽器バンドも1回だけ全パートを完璧に五線譜にしたバンドスコアを出したことがあるんですが、それも1回きりで終わってしまっていて。続編が出ないということは、完コピできる人たちが存在しなかったということなわけですよ。それは、アーティストとしてすごく弱点だと思うんですよね。

──あぁ、確かに和楽器バンドのコピーバンドはなかなか出てこれないでしょうね……。

神永大輔:孤高の存在というか、ほかには真似のできないすごいことをしているということでもあるんだろうけど、逆にいえば真似できる要素がないというのも辛いなと思っていて。好きな音楽を愛する方法って色々ですけど、“自分も演奏してみたい” って思うこともその行為のひとつだと思うので、それがやりにくい状態っていうのはよくないなと。だから今回、活動休止期間に僕は、そこの土台作りをすることが大事なんじゃないかなと考えています。

──そういう思いに至ったきっかけのようなものはあるんですか?

神永大輔:SNSのDMで問い合わせをもらったことですね。連日「尺八始めたいんですけどどうすればいいですか?」って連絡が来てたころがあって。教室を探してみてって言っても、 そもそもホームページを持っている教室も少なかったりして「どうしたらいいんだろう」ってことになるんですよね。さらに習えたとしても、それが邦楽の先生だったら古典を習うことになるので「やりたかったことと違うんだよな」とか「永遠に和楽器バンドに近づかない気がするな」みたいな感じになったりするでしょうし。環境自体があまりにも整っていないんですよ。なので活休は本当にいい機会だとは思っていて。和楽器バンドをやってるだけでは見えてこなかった、和楽器を始めた方々の輪もちゃんと作っていけたらいいなと思っています。

──海外における広がりはどうなんでしょう。神永さんは演奏旅行も含め海外へよく行っているようですが、実感として海外に和楽器バンドの存在ってどのくらい伝わっていると思いますか?

神永大輔:先日台湾に10日間行ってたんですけど、 4回ぐらい「和楽器バンドの人でしょ」って声をかけられました(笑)。尺八は持ってない状態で地元のローカルな夜市の水餃子を食べてたら、向かいに座っていた女性に声かけられたりとか。和楽器バンドの知名度は台湾でもかなりあるんだなっていうのをすごく実感しました。

──そうなんですね! この10年で着実に浸透していっているんですね。台湾には尺八ってあるんですか?

神永大輔:こういうのを体感すると、やっぱり活休するのはもったいない気持ちが出てきちゃいますよね。台湾には尺八を吹いてる方は結構いらっしゃって。昔からあったというわけではないですが、台湾が日本の領地だった時期もあるので、そのときに伝わっていたようです。

──欧米での尺八の認知度はどうなんですか?

神永大輔:愛好家はいるんですけど、日本よりマニアックな趣味ではありますよね。もちろん吹いてる方はたくさんいらっしゃって、地域ごとに尺八ソサエティっていう集まりを作っていたりするようですよ。あとは4年に1回ぐらいのペースでワールド尺八フェスティバルってイベントが世界各国持ち回りであるので、そこで知る方もいらっしゃいます。来年はテキサスで開かれるんですが、ここには僕も行く予定です。

──和楽器バンドがもたらした影響も大きいのでしょうね。

神永大輔:楽器に関しては場所や環境の問題から、始めたくても始められない状況もあるのでなんとも言えないですが、 和楽器バンドによって尺八の知名度が本当に上がったんだなっていうのは感じますね。 とはいえ和楽器バンドを知って始めた人や、他の楽器や音楽をやっていた人なら僕と同じ感覚で尺八を扱える部分があるんですけど、尺八からのスタートだとどうしても邦楽だけの世界になりがちではあります。まぁ、どんなきっかけであれ、尺八という楽器を楽しんでもらえたらいいですね。

──尺八に限らず、神永さんは和楽器バンド10年の活動でどんなことが一番楽しかったですか?

神永大輔:一番は、演奏してる瞬間ですね。僕は、一緒に演奏することがその人の人となりが一番わかることだと思っていて。メンバーそれぞれに対しても「あ、この人本当にこういう人なんだな」っていうのを演奏しながら感じてるんです。自分のことに集中する人、一緒に会話してくれる人とか色々ですけれど、それも含めて演奏しているときが一番コミュニケーションが取れている瞬間だなと思う。次に楽しいのは一緒に飲んでるときですかね。演奏の次に濃密にコミュニケーションができるのは、やっぱり飲んでる時だと思うので(笑)。

──“ステージに立つ”といった観点ではなく、“コミュニケーションが楽しい”なんですね。

神永大輔:同じ飲み会でもサシ飲みと大勢で飲むときでは雰囲気が全然違いますよね。それと同じで、会場が変わればお客さんの母数も変わるし伝わり方も色々変われば、お客さんとのコミュニケーションの仕方も変わってくるし、 自分たちのメンバー同士のコミュニケーションの取り方も変わってくる。そのどれもが違って楽しいんですよね。



──この次にまた和楽器バンドが集結するときには、神永さんはどうなっていたいですか?

神永大輔:和楽器バンドを呼べるイベントを組めるようになってたいです。要は和楽器を盛り上げるための施策の中で、「和楽器が集まる音楽フェスみたいなことやるから、そこに和楽器バンド出てよ。」みたいな、8人が再集結できるきっかけも作れたらいいなと。そのために、和楽器の魅力を発信するフェス作りみたいなのは早速やっていきたいなと思っています。

──最後に、神永さんにとって和楽器バンドを一言でいうと?

神永大輔:「面白い」ですね。こんなに面白いものはほかにないですね。すごい人たちだなと思える8人が集まって音を出せて、それが世の中にも認めてもらえるってなかなかないことだと思うので、本当に面白かったし、また面白いことがそのうちできるといいなと思いますね。そしてそのときには、いまよりもっと面白くできるようにしたいなと。

──そんな面白い場であった和楽器バンドのメンバー、町屋さんにアルバムタイトル『THANKS』にかけた感謝のメッセージを。町屋さんの繊細さと神永さんのフリーダムさは、相反するようで相性が良くて、いい関係性だなと思っていました。

神永大輔:じゃあ、9割ぐらいディスってから1割ぐらいいいことを言おうかな(笑)。というのは冗談で、町屋さんへの感謝の気持ちは本当にいっぱいありますよ。何より功労者であり貢献者だと思っていますので。町屋さんの持っている能力と、そこに費やしてくれた時間だったり労力だったりがなかったら、このバンドはもっともっと早く止まっていたかもしれないし、 続けることも、いや始めることもできていたかどうかわかんないです。やっぱり町屋さんの存在はこのバンドにとってすごく大きいと思う。僕やメンバーそれぞれの良さを評価して、一緒に音楽をしてくれたことにすごく感謝してます。町屋さんと一緒に活動させてもらえたことで自分だけではたどり着けないところに一緒に行けた気がしていて。それは本当に他のメンバーに対してもそうなんですけど、 町屋さんの力もすごく大きい。ありがとうございます。あと、ステージ上で一番会話ができるなと思っていたの、町屋さんなんですよ。町屋さんと一緒に演奏してるのはすごく気持ちよかったし、すごく楽しかった。この場をお借りして、感謝を伝えたいなと思っています。

取材・文◎服部容子

『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15508
CD購入:https://wgb.lnk.to/2024_al_cd
配信リンク:https://wgb.lnk.to/thanks_digital

◆商品形態
初回限定LIVE盤(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回限定Document盤(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
CD Only盤(2CD)税込¥4,290/UMCK-1778

◆収録曲(全18曲)
01. 六兆年と一夜物語(Re-Recording)
02. 千本桜(Re-Recording) ※TBS系バラエティ『ランク王国』エンディングテーマ
03. 華火(Re-Recording)
04. 起死回生(Re-Recording) ※テレビ東京系リオ五輪中継テーマソング
05. 雨のち感情論(Re-Recording)
06. 細雪(Re-Recording)※映画『恋のしずく』主題歌/テレビアニメ『京都寺町三条のホームズ』テーマソング
07. Ignite(Remastered 2024)
08. 情景エフェクター(Remastered 2024)
09. Singin’ for... (Remastered 2024)
10. 月下美人(Remastered 2024) ※NHK「みんなのうた」2020年10月・11月度放送曲
11. Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE (Remastered 2024)
12. 日輪(Remastered 2024)
13. 生命のアリア(Remastered 2024) ※TVアニメ「MARS RED」オープニングテーマ
14. Starlight(I vs I ver.)(Remastered 2024) ※フジテレビ系⽉9ドラマ「イチケイのカラス」主題歌  
15. ブルーデイジー (Remastered 2024)
16. The Beast(Remastered 2024) ※アニメ『範馬刃牙』2期オープニングテーマ
17. GIFT(新曲)
18. 八奏絵巻(新曲)

◆各形態収録詳細
【初回限定LIVE盤】(CD+Blu-ray)税込¥8,500/UMCK-7253
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.A 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
Blu-ray:10th Anniversary Best Live Selection
※初商品化となるライブ映像を含む、10周年のライブから厳選された楽曲を収録
収録曲
1. 千本桜 from 2014.1.31 at clubasia   
2. 戦-ikusa- from 2015.5.23 METROCK2015  ※初商品化!
3. 反撃の刃 from 2015.9.10 NHK Eテレ 「Rの法則」  ※初商品化!
4. 起死回生from 2016.8.13 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016  ※初商品化!
5. 雨のち感情論 from 2017.9.13 NHK 「シブヤノオト」  ※初商品化!
6. 千本桜 from 2018.9.22 イナズマロックフェス2018 ※初商品化!
7. 暁ノ糸 from 2019.11.23 和楽器バンド Japan Tour 2019 REACT〜新章〜 FINAL
8. 儚くも美しいのは from 2020.2.16 Premium Symphonic Night Vol.2〜ライブ&オーケストラ〜 in 大阪城ホール
9. Ignite from 2020.8.16 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ〜天球の架け橋〜  
10. Starlight from 2021.5.14 NHK 「SONGS OF TOKYO」 ※初商品化!
11. 吉原ラメント from 2022.1.9和楽器バンド大新年会2022 日本武道館〜八奏見聞録〜
12. 生命のアリアfrom 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
13. 細雪 from 2023.9.7 和楽器バンド Japan Tour 2023 I vs I  ※初映像化!!
14. The Beast from 2024.1.07和楽器バンド大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

【初回限定Document盤】(CD+DVD)税込¥5,280/UMCK-7254
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.B 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
DVD:本作品レコーディングのBEHIND THE SCENEを収録したドキュメンタリー映像

【CD Only盤】(2CD)税込¥3,850/UMCK-1778
初回プレス封入特典:トレーディングカードVer.C 全9種類の内1枚ランダム封入
CD:ベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS 〜八奏ノ音〜』
CD DISC2: このアルバムのためにレコーディングされた新曲を含む全8曲のInstrumental をDisc 2に収録
※Instrumental収録はCD Only盤のみ

◆チェーンオリジナル特典
・UNIVERSAL MUSIC STORE:B5クリアカード(絵柄A)
・Amazon.co.jp:B5クリアカード(絵柄B)
・楽天:B5クリアカード(絵柄C)
・TSUTAYA:B5クリアカード(絵柄D)
・タワーレコード:B5クリアカード(絵柄E)
・HMV:B5クリアカード(絵柄F)
・アニメイト:B5クリアカード(絵柄G)
・その他一般店共通:B5クリアカード(絵柄H)

LIVE Blu-ray『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』​

2024年10月9日(水)発売
詳細:https://wagakkiband.com/musics/15545
購入:https://wgb.lnk.to/2024_bd_dvd

■初回限定盤 Blu-ray(本編 DVD 付き)
¥12,100(税込) / UMXK-9042
ライブCD (2枚組み)+60P フォトブック

■通常盤Blu-ray(本編DVD付き)
¥8,800(税込)/ UMXK-1117

『和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜』
[Blu-ray/DVD収録内容]※Blu-ray/DVDは、内容共通
Overture〜八重ノ翼〜
愛に誉れ
雨のち感情論
天樂
フォニイ
いーあるふぁんくらぶ
月下美人
細雪
雪よ舞い散れ其方に向けて
生命のアリア
虚夢
破邪の儀

吉原ラメント
オキノタユウ
The Beast
ドラム和太鼓バトル~対決武闘館~
ベノム
星の如く
暁ノ糸
<Encore>
BRAVE
千本桜

※特典映像
BEHIND THE SCENE of 和楽器バンド 大新年会2024 日本武道館 〜八重ノ翼〜

<和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS 〜八奏ノ音〜>

11/22(金) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/23(土祝) 東京・LINE CUBE SHIBUYA ※SOLD OUT
11/28(木) 大阪・オリックス劇場 ※SOLD OUT
12/8(日) 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール ※SOLD OUT
12/10(火) 東京・東京ガーデンシアター

【チケット料金】
VIP指定席:前売 ¥15,000 当日 ¥16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
VIP着席指定席:前売 ¥15,000 当日 ¥16,000(税込/VIP席専用オリジナルグッズ付き)  ※SOLD OUT
一般指定席/着席指定席:前売 ¥10,000 当日 ¥11,000(税込)

【企画/制作】イグナイトマネージメント/LIFE

ツアー詳細はこちら:https://wagakkiband.com/contents/765648


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