【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.10(本人歌唱指導付き)美川憲一、山川豊、瀬口侑希、五十川ゆき、不知火鈴香
世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。
◆本人による歌唱アドバイス 動画
演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」第10回目は美川憲一「これで良しとする」、山川豊「兄貴」、瀬口侑希「幸せに遠い岬」、五十川ゆき「三日月と赤い橋」、不知火鈴香「良くない恋泣くよ」を紹介する。
(協力:日本クラウン)
■美川憲一「これで良しとする」
現在78歳にして生涯現役を貫く美川憲一のデビュー60周年(!)記念曲は、なんと作詞がGLAYのTAKURO、作・編曲がB'zの松本孝弘という、ロックの世界でもそう簡単に実現しないであろう、超豪華な組み合わせ。
美川がロサンゼルスで松本と食事をした際に作曲を依頼し、松本が即答で快諾。TAKUROは松本からの誘いだったという。「これで良しとする」は、ファンキーなリズムがソウルフルな70年代風の歌謡曲。歌詞はまるで美川の紆余曲折の人生を表しているかのようでいて、しかし美川が歌うとどこかコミカルな響きがする。老若男女問わず歌いやすい楽曲で、まさに今の時代に求められているのはこんな曲なのではないか。カップリングも同じくTAKUROと松本によるもので、ジャジーな4ビートのバラッド。シャンソンを得意とする美川にはこういう楽曲もよく似合う。なお演奏は、松本がギターを弾き、ドラムスにカースケ、ベースと共同アレンジに徳永暁人など、J-POP系の超人気ミュージシャンたちが参加。ヒットを祈りたい。
「これで良しとする」発売情報
CRCN-8694 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. これで良しとする
作詩:TAKURO / 作曲:松本孝弘 / 編曲:松本孝弘・徳永暁人
2. 華散れど月は輝く
作詩:TAKURO / 作曲:松本孝弘 / 編曲:松本孝弘・徳永暁人
3. これで良しとする [オリジナル・カラオケ]
4. 華散れど月は輝く [オリジナル・カラオケ]
■山川豊「兄貴」
今年の1月に肺がんであることを公表。治療のために活動休止していた山川豊。4月からは抗がん剤治療を続けながら活動再開していたものの、つい先日、ステージ4であることを公表した。心配だ。
クラウン移籍第2弾となる新曲は、男兄弟の絆を描いた人生讃歌。山川の兄といえば鳥羽一郎。漁師の一家に生まれ育つという境遇の中、兄は海の男の歌を荒々しく歌って身を成したが、兄よりも先に歌手デビューした山川は対照的に洗練されたスタイル。杉本眞人による少しフォーク的な楽曲に乗せ、荒木とよひさによるまるで兄弟の関係を側で見てきたかのような言葉を歌うが、ところどころ、鳥羽のコブシが乗り移っているかのように聴こえるのが不思議だ。編曲を担当したのは、アニメ「シティハンター」の音楽を担当したことでも知られる矢野立美。カップリングの「別れのしぐれ宿」は前シングル「人生苦労坂」のカップリングに収録された「ふるさとは港町」に引き続き、山川自身が作曲した楽曲だ。
「兄貴」発売情報
【収録曲】
1. 兄貴
作詩:荒木とよひさ / 作曲:杉本眞人 / 編曲:矢野立美
2. 別れのしぐれ宿
作詩:かず翼 / 作曲:やまかわ豊 / 編曲:斉藤功
3. 兄貴 [オリジナル・カラオケ]
4. 別れのしぐれ宿 [オリジナル・カラオケ]
■瀬口侑希「幸せに遠い岬」
来年4月でデビュー25周年を迎える中堅の実力派。近年は年に2曲と、演歌にしては早いペースで新曲をリリースしていたが、今年はこれが初の新曲となる。
「幸せに遠い岬」は、海鳴り・漁火・岬のはずれと、恋に破れた女の風景を抒情的に綴っていく哀歌。瀬口は歌の世界に入り込みながら、楽曲によって微妙に声色を変えるなど、技量と表現力に長けた歌い手という印象があるが、ここでも1曲の中で声が様々な表情を見せる。歌詞は2008年に70歳で亡くなった作詞家・木下龍太郎の遺作だという。カップリングの「あした川」は添い遂げたい2人を引き裂く世間の風という、80年代的な世情の歌。演歌のランキングでは実はオリコンよりも実相に近いと言われている演歌専門店・楽園堂の週間売上ランキングで、発売後すぐに堂々の1位を記録。ファンの支持の厚さがよくわかる。
「幸せに遠い岬」発売情報
CRCN-8693 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 幸せに遠い岬
作詩:木下龍太郎 / 作曲:大谷明裕 / 編曲:南郷達也
2. あした川
作詩:さくら ちさと / 作曲:大谷明裕 / 編曲:南郷達也
3. 幸せに遠い岬 [オリジナル・カラオケ]
4. あした川 [オリジナル・カラオケ]
5. 幸せに遠い岬 [一般用カラオケ(半音下げ)]
6. あした川 [一般用カラオケ(半音下げ)]
■五十川ゆき「三日月と赤い橋」
こちらも木下龍太郎のスカウトによって2008年にデビューした歌手。ハスキーでスモーキーな声質という演歌歌手には珍しいタイプで、この人が歌うとどんな曲でもブルージーになる、強力な個性の持ち主。
新曲は、こちらも歌えばドスの効いたハスキーボイスの持ち主である岡千秋の作曲。佐賀の嬉野温泉の旅館から見た月下の赤い橋の風景に魅了され、そのイメージを元に書き下ろされた楽曲。イントロの幻想的なイメージから一転、力強く情念を燃やしていくドラマティックな展開に心を揺さぶられる。ご当地ソング的な性質も持ちながら、まるで空想の世界を描いたかのような重厚な世界観が展開される。カップリングの「ギンザ・サニーサイド・ストリート」は軽快にスウィングするジャズソングで、同じ作曲家の曲とは思えない落差に驚く。「さよならなんて」は、2019年のアルバム「バラードな夜を貴方に」の収録曲。
「三日月と赤い橋」発売情報
CRCN-8684 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
【収録曲】
1. 三日月と赤い橋
作詩:冬弓ちひろ / 作曲:岡千秋 / 編曲:猪股義周
2. ギンザ・サニーサイド・ストリート
作詩:冬弓ちひろ / 作曲:岡千秋 / 編曲:猪股義周
3. さよならなんて
作詩:藤原良 / 作曲:西つよし / 編曲:SHIGEZO BAND
4. 三日月と赤い橋 [オリジナル・カラオケ]
5. ギンザ・サニーサイド・ストリート [オリジナル・カラオケ]
6. さよならなんて [オリジナル・カラオケ]
■不知火鈴香「良くない恋泣くよ」
子ども7人、孫5人を持つ“ビッグマミー”の、50歳にして初メジャーリリース曲。熊本県在住で“カラオケBar鈴香”を切り盛りし、地元では地域活性化や子育て支援などの社会活動も行っているという。
22年から熊本県内の道の駅やさまざまな商業施設で歌い続ける中、作詞家の鮫島琉星氏の目に留まり、今年の4月にこの曲をインディーズでリリース。それがメジャーからも出ることとなった。「良くない恋泣くよ」は「浪花節だよ人生は」のような明るく前向きな雰囲気だが、実は不知火の苦労の人生を写し取ったものだという。変わったタイトルだなと思ったら、回文になっているというギミックあり。カップリングの「百花繚乱」は80年代風の歌謡曲で、不知火の艶やかで高音によく伸びる声は、こういったポップス調の方が本領発揮するかもしれない。
「良くない恋泣くよ」発売情報
CRCN-8692 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)
1. 良くない恋泣くよ
作詩:鮫島琉星 / 作曲:坂本孝輔 / 編曲:坂本孝輔
2. 百花繚乱~ひゃっかりょうらん~
作詩:鮫島琉星 / 作曲:大竹隼人 / 編曲:坂本孝輔
3. 良くない恋泣くよ [オリジナル・カラオケ]
4. 百花繚乱~ひゃっかりょうらん~ [オリジナル・カラオケ]
5. 良くない恋泣くよ [一般用カラオケ(半音下げ)]
6. 百花繚乱~ひゃっかりょうらん~ [一般用カラオケ(半音下げ)]
文◎池上尚志
関連記事
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.2(本人歌唱指導付き)純烈、三山ひろし、瀬口侑希、秋岡秀治、成世昌平
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.3(本人歌唱指導付き)三山ひろし、木村徹二、山川豊、美川憲一、大江裕
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.4(本人歌唱指導付き)三山ひろし、田中あいみ、津吹みゆ、羽山みずき、北川大介
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.5(本人歌唱指導付き)木村徹二、はやぶさ、大江裕、原田波人、戸子台ふみや
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.6(本人歌唱指導付き)鳥羽一郎、三山ひろし、中西りえ、一条貫太、新川めぐみ
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.7(本人歌唱指導付き)木村徹二、瀬川瑛子、キム・ヨンジャ、花咲ゆき美、知里
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.8(本人歌唱指導付き)田中あいみ、二見颯一、純烈、長保有紀、西城なつ美
◆【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.9(本人歌唱指導付き)川野夏美、舞乃空、里野鈴妹、真木ことみ、塩乃華織
この記事の関連情報
鳥羽一郎・山川豊、初の兄弟デュオ作品リリース
【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.11(本人歌唱指導付き)北島三郎、大江裕、木村徹二、田中あいみ、野村美菜
道の駅演歌歌手・不知火鈴香、 メジャーデビュー記念Barイベントで東京進出
【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.9(本人歌唱指導付き)川野夏美、舞乃空、里野鈴妹、真木ことみ、塩乃華織
道の駅演歌歌手・不知火鈴香、メジャーデビュー
【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.8(本人歌唱指導付き)田中あいみ、二見颯一、純烈、長保有紀、西城なつ美
美川憲一、デビュー60周年記念シングルは B’zの松本孝弘作曲、GLAYのTAKURO作詞
【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.7(本人歌唱指導付き)木村徹二、瀬川瑛子、キム・ヨンジャ、花咲ゆき美、知里
【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.6(本人歌唱指導付き)鳥羽一郎、三山ひろし、中西りえ、一条貫太、新川めぐみ