【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.7(本人歌唱指導付き)木村徹二、瀬川瑛子、キム・ヨンジャ、花咲ゆき美、知里

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世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。

演歌・歌謡曲シーンから注目の作品を毎月紹介する連載企画「いま、聴きたい演歌・歌謡曲(本人歌唱指導付き)」第7回目も、ぜひ聴いて歌って欲しい5作品を紹介する。

◆本人による歌唱アドバイス 動画

今回は、木村徹二の2ndシングル再リリース盤「みだれ咲き」特別版、港町を舞台にした瀬川瑛子「めおと浜唄」、キム・ヨンジャによるドラマティックな歌謡ポップス「海を渡る蝶」、女の孤独を歌った花咲ゆき美「雨の港駅」、知里自身が作曲した「シークレットラブ」を取り上げる。
(協力:日本クラウン)


■木村徹二「みだれ咲き」特別版



鳥羽一郎の次男で、昨年のレコード大賞新人賞を受賞した木村徹二。22年のデビュー曲「二代目」に続く2枚目のシングル「みだれ咲き」の、カップリング曲を変更しての再リリース盤。

この世はすべて諸行無常と言わんばかりに、今となっては古くさい昭和の男を思わせるような豪快さで歌い飛ばす「みだれ咲き」。カップリングとなった新曲「男の拳」もやはり男はかくあるべしというものを拳に喩えた歌で、その大柄な体格と、海の男である父のスタイルを継承した無骨なスタイルあってこその歌。今時の繊細な男性歌手たちとは一線を画すものだ。両曲とも作詞・作曲は実兄の木村竜蔵。3曲目には、父・鳥羽一郎の「ハマナスの眠り唄」のカヴァーを収録。ここで聴かれる艶やかな低音の中に横たわる優しさはまた違った魅力で、これもまた持ち味となるだろう。



「みだれ咲き」特別盤 発売情報

2024年7月9日 Release
CRCN-8668 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. みだれ咲き 作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
2. 男の拳 作詩:木村竜蔵 / 作曲:木村竜蔵 / 編曲:遠山 敦
3. ハマナスの眠り唄 (アコースティック ver.)  作詩:内館牧子 / 作曲:三木たかし / 編曲:矢田部 正
4. みだれ咲き [オリジナル・カラオケ]
5. 男の拳 [オリジナル・カラオケ]




■瀬川瑛子「めおと浜唄」



7月6日に77歳となった大ベテラン瀬川瑛子。驚くべき若さ、そして重鎮なのに天然な性格で親しまれている、不思議な魅力を持った人です。

約2年ぶりの新曲は、港町を舞台にした2曲をカップリング。「めおと浜唄」は、「石狩挽歌」系の海鳴りが聞こえてきそうな、船の帰りを待つ女の歌。カップリングの「ブルースを聞かせて」は、松尾和子の名曲「グッド・ナイト」思わせるハチロクのジャジーでムーディーな歌謡ブルース。グロッケンシュピールが場末のナイトクラブの風景を描き、ミュート・トランペットが哀愁を奏でる。2024年にこんな曲が聴けるとは思わなかった。アナログレコードで聴きたい曲。



「めおと浜唄」 発売情報

2024年5月22日(水)リリース
CRCN-8664 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. めおと浜唄
作詩:水木れいじ / 作曲:桂木潤 / 編曲:遠山敦
2. ブルースを聞かせて
作詩:水木れいじ / 作曲:桂木潤 / 編曲:遠山敦
3. めおと浜唄[オリジナル・カラオケ]
4. ブルースを聞かせて[オリジナル・カラオケ]
5. めおと浜唄[一般用カラオケ(半音下げ)]
6. ブルースを聞かせて[一般用カラオケ(半音下げ)]




■キム・ヨンジャ「海を渡る蝶」



2019年に日本での活動を再開して5年。それ以降にリリースした楽曲はクラシック・スタイルの演歌から00年代のモーニング娘。のようなアゲアゲの歌謡ディスコの「愛のBINGO!」まで、幅広いレパートリーで攻めた活動をしているキム・ヨンジャ。

 2024年の新曲は、「第38回・藤田まさと記念 新作歌謡コンクール」に応募された曲の中から、最優秀賞に選ばれた2曲を歌ったもの。リード曲の「海を渡る蝶」は、歌謡ポップス調のバラード。海のあちらとこちらでそれでも通じ合う愛の歌だが、引退前のちあきなおみにも通じる思慮深い切なさとスケールの大きさがドラマティックな名曲だ。これは紅白の舞台でぜひ披露してほしい。カップリングの「流氷えとらんぜ」も80年代後半のテイストの歌謡ポップス。こちらもリード曲にしてもいいほどの出来だ。



「海を渡る蝶」発売情報

2024年7月2日リリース
CRCN-8670 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

各配信サイト:
【収録曲】
1. 海を渡る蝶
作詩:結木瞳 / 作曲:大村友希 / 編曲:猪股義周
2. 流氷えとらんぜ
作詩:藍川由那 / 作曲:愛田幾也 / 編曲:猪股義周
3. 海を渡る蝶[オリジナル・カラオケ]
4. 流氷えとらんぜ[オリジナル・カラオケ]




■花咲ゆき美「雨の港駅」



演歌・歌謡界きっての美貌(私感です)と少しウィスパーっぽい声質がそれだけで切ない花咲ゆき美。昨年、介護など家庭の事情で事務所を退所。歌手活動が危ぶまれたが、とりあえず新曲が出てよかった。活動ペースは落ちそうだがファンはひと安心か。

「雨の港駅」は1年半ぶりとなった新曲。作曲にはシンガーソングライターのHANZOを初めて起用。リード曲の「雨の港駅」は、王道のハチロク系バラード。カップリングの「お店噺し」は、「酔っ払っちゃった」系のこちらも王道のポップス調。どちらの曲も女の孤独を歌ったものだが、声に込められた悲哀が楽曲の世界観をより増幅している。いつもにも増して泣きの感情が強めに聞こえるのは気のせいだろうか。〈泣き〉の歌の第一人者として、活躍を期待したい。



「雨の港駅」 発売情報

2024年6月4日 Release
CRCN-8666 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. 雨の港駅 作詩:菅 麻貴子 / 作曲:HANZO / 編曲:伊戸 のりお
2. お店噺し 作詩:菅 麻貴子 / 作曲:HANZO / 編曲:伊戸 のりお
3. 雨の港駅[オリジナル・カラオケ]
4. お店噺し[オリジナル・カラオケ]
5. 雨の港駅[一般用カラオケ(半音下げ)]
6. お店噺し[一般用カラオケ(半音下げ)]




■知里「シークレットラブ」



日大藝術学部声楽科の院まで出ているという、今や演歌・歌謡系には珍しくなったクラシックの素養を持った歌手。

前作のカップリング曲「愛しても」に続いて、今回は2曲とも麻生知里名義で本人が作曲。「シークレットラブ」は、前作「哀しみのラストタンゴ」、前々作の「永遠の人」に続いて、お得意のラテン・テイストの楽曲。これまでで最もアッパーなダンス・ナンバーとなった。このままラテン路線を定番化していくのなら、クラシックの素養も含めて考えれば、タンゴを取り入れるのもアリかもしれない。カップリングの「夢陽炎」は、70年代のヤマハ系のようなフォーク風メロディーを持ったバラード。知里の作曲家としての幅の広さにも驚かされる。

「 シークレットラブ」発売情報

2024年7月2日 Release
CRCN-8669 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. シークレットラブ 作詩:伊藤美和 / 作曲:麻生知里 / 編曲:照屋宗夫
2. 夢陽炎 作詩:伊藤美和 / 作曲:麻生知里 / 編曲:照屋宗夫
3. シークレットラブ (アコースティック ver.)  作詩:内館牧子 / 作曲:三木たかし / 編曲:矢田部 正
4. 夢陽炎 [オリジナル・カラオケ]
5. シークレットラブ[一般用カラオケ(半音下げ)]
6. 夢陽炎[一般用カラオケ(半音下げ)]




文◎池上尚志



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