タック・スミス、俺たちは正真正銘のオールドスクールなロックンロール・バンド

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去る8月28日に発売された第2作『ならず者の代償』が好評を博しているタック・スミス&ザ・レストレス・ハーツの初来日公演が、9月29日(日)に東京・渋谷クラブクアトロ、30日(月)に大阪・梅田クラブクアトロで行なわれる。

「ミュージシャンである以前に音楽おたく」だと自認するタック・スミスにとってジャパン・ツアー実現は長年の夢のひとつであり、彼は日本のファンと向き合うことばかりではなく、この国の音楽関係者と会うことも楽しみにしていたのだという。そこで筆者も接触を試みてみたところ、なんと日本上陸から丸1日経たないうちにインタビューに応えてくれた。さっそく彼の「日本初上陸後の第一声」をお届けするとしよう。ちなみに彼は、結構なお喋り好きである。


「昨日(9月27日)の午後にこちらに到着したんだ。まだ時差ボケのさなかに居るのかもしれない(笑)。なにしろ24時間の旅を経てきたからね。ナッシュヴィルの自宅を出て空港に向かったのが午前4時のことだった。7時出発の便に乗って、13時間にわたるフライトを経て……思い出すだけでしんどくなってくるけど、今はもう全然OKだ。昨夜は滞在先のホテルのまわりを散策したり、マネージャーがレコードのかかるバーに連れて行ってくれて、ウィスキーを飲んだりして過ごしたんだ。敢えてそれなりに夜更かししたから、ぐっすり眠れたよ。正直、日本に来ることは長年の夢のひとつだったから、あらかじめ気分が盛り上がっていて期待を膨らませ過ぎていたところがあったかもしれないけど、その期待はまったく裏切られていないね」

「俺はずっとこの機会を待っていたんだ。多くのロック・ミュージシャンたちが口を揃えて「日本は最高だ!」って言うじゃないか。だから自分でもいつか日本でやりたいと夢見てきた。まだ到着から1日しか経っていないから日本の印象についてあれこれ言うことはできないけど、みんながこぞって日本について絶賛するのはうなずけるし、このツアーが終わったら、今回の体験を自分なりに噛み砕くことになるんだと思う。日本の人たちは全般的に、アメリカ人と比べると落ち着いている印象があるし、その点もすごく俺には合っている気がするな」

「実はつい最近、ヨーロッパ・ツアーを終えたばかりなんだ。向こうでは素晴らしい時間を過ごしたよ。21日間に18公演という無謀ともいえるほど厳しい日程のツアーだったために、全行程を終えて家に戻った時にはすっかり声が出なくなっていた。日本に向けて発つまでどうにか回復させなきゃと思ってすぐに医者に診てもらい、お陰様で今はこうして普通に喋ることもできているし、明日からのライヴには本調子で迎えることができる。ビッグ・ネームたちならば適度にオフを挟みながらツアー日程を組むことができるだろうけど、俺たちみたいな若手は6公演やって1日休む、というサイクルで動き続けるしかない。しかもクラブで、クルーも不在の状態でね。リアルなパンク・ロックのスタイルで動いているんだ。つまり俺たちは正真正銘のオールドスクールなロックンロール・バンドだってこと。そんな俺たちのライヴを気に入ってもらえるはずだと信じているよ」

「ヨーロッパ・ツアーの中でも、特にイギリスでプレイすることは少年期からの夢だった。言ってしまえばイギリスと日本でプレイすることが二大目標だったという感じかな。もちろんイギリスへは、以前やっていたバイターズというバンドのツアーで行ったことがあるけど、あの時は本当に夢が叶ったという気分だった。そして日本についても、チープ・トリックの『at武道館』を例に出すまでもなく、歴史的なライヴ・アルバムが生まれてきた場所だし、イギリスに対する憧れとはまた少し違った感情を抱いてきた」

「先日のヨーロッパ・ツアーは確かに日程的には過酷だったけれど、やりがいのあるものだったし、良い結果に繋がったと思っている。小規模の会場ではあれソールドアウトになった公演も結構あったし、自分たちだけを観に来てくれているファン、自分の曲を気に入ってくれている人たちが欧州にもたくさんいてくれることを実感できたのはとても嬉しかった。しかもツアーの過程の中でバンドもいっそうタイトになってきたし、ダイナミックスが増してきた。各地でのライヴ評にも好意的なものが多かったし、有意義なツアーになったと思う。そして日本でも同じことが起きるのを期待しているんだ。正直、明日が正真正銘の日本でのファースト・ショウだから、どんな反応、どんな光景を期待していいのかわからないところが俺にはある。だけどそこで『きっとこんなふうになるはず』なんて想定したりはせずに、何が起きるのかを楽しみにしていたいんだ」

コーヒーなど飲みながら会話を始めたところ、いきなりタックの話が止まらなくなってきた。実は今回のインタビューでは改めて彼のルーツを紐解くような話もしているのだが、それについてはまた機会を改めてお届けすることにしよう。とにかくまずは東京、大阪でのライヴに足を運んでみて欲しい。そして彼が言うところの「オールドスクールなロックンロール・ショウ」を味わい尽くそうではないか。

「これから東京と大阪でのショウを観に来てくれる人たちにはまずお礼を言いたい。みんなのサポートにとても感謝しているよ。ひとりでも多くのロック・ファンと出会いたいと思っているし、これから長い付き合いを続けていけることを願っているよ」



『ならず者の代償』に収録の「めげずにロング・ウェイ」の歌詞からは、彼がいわゆるオーヴァーナイト・サクセスを夢見ているのではなく、長い道のりを歩み続けていく覚悟であることがうかがえる。そしてきっと、ここから彼と日本のファンをめぐる長い物語が始まっていくことになるのだ。ちなみに本記事内の写真でタックが段ボールの切れ端に書かれたメッセージを手にしている理由は、その「めげずにロング・ウェイ」のミュージックビデオにある。そちらも是非チェックしてみて欲しい。

取材・撮影◎増田勇一


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