【対談】Ran × 植田真梨恵、コラボ第三弾は同郷の大先輩と闇落ちをテーマに万華鏡サウンド「自信に繋がったというか、私の誇り」
■繰り返し同じことをできるのは尊い
■けど、音楽ぐらいは目新しく広がりを
──タイトルにもなっている“レディ・フラペチーノ”という言葉は、もともと植田さんの歌詞ストックの中にあった言葉だそうですが?
植田:具体的な歌詞のイメージはなくて、この言葉だけをメモしていたんです。“女性ならではのカスタマイズ感”みたいな曲をいつか書けたら面白いかもなって。女性がメイクをする時の“もっと綺麗になりたい”と思う感じと、Ranちゃんのスウィートでかわいい女の子な感じが、二人で歌う曲のイメージに合いそうだなと考えていました。
──カフェでフラペチーノをカスタマイズするのと、自分にメイクを施すのは、相通ずるイメージがあるということでしょうか?
植田:そうですね。フラペチーノのカスタマイズで、甘くなり過ぎて、“やり過ぎた! 甘過ぎた! もう要らないかも!もっと欲しいかも!”みたいなイメージですね。
Ran:私は“レディ・フラペチーノ”よりも先に聞いていた“カスタマイズ”という言葉を覚えていて。お化粧、服装とかのカスタマイズみたいなイメージを抱いていたんです。
──日常の風景とかではなくて、心の内面を描いた曲ですよね。
植田:心の痛みや弱さ、“もっとこうしたい”というせめぎ合い、内面にあるコンプレックスとかですね。他人から見たらかわいいのに、本人にとってはコンプレックスな部分とかが滲むように、歌詞の言葉を羅列していったんです。でも、あえて “これぞ”っていうワードは挙げなかったんですね、特にワンコーラス目は。だけどRanちゃんはそれをパッと読んだだけですぐにわかってくれて。曲に対する解釈が速かったんです。“こんなにも伝わってくれるんだ”と思って感動しました。なので、そこから先のフレーズを一緒に書いていく作業も、そこに沿って作っていってくれたので、共作がすごくやりやすかったんです。
Ran:“闇堕ち”というテーマもあったので、“かわいくなった”というカスタマイズではなくて、“もっともっと!”というような欲望を描くイメージだなと思ったんです。
植田:女性二人で歌うという点でも、テーマとして合っていたんだと思います。過去に「Lady Marmalade」(映画『ムーラン・ルージュ』)という女性コラボのカッコいい曲がありますけど、“強い女の子の弱い部分”みたいなところが、“甘いもの” “美容”という部分にシンクロしたような、中毒性を描いた曲ですね。
──“もっとかわいくなりたい”という願望は、ゴールに辿り着くことがない一種の中毒症状なんでしょうね。
植田:実際にRanちゃんのテンションがわかりやすく上がってくれた瞬間って、「明日のミュージックビデオ撮影のメイク、どうする?」みたいな話をした瞬間だったりするんですよ。一緒にメイクを試したり、私のコスメとかを見て「かわいい!」と言っている時にRanちゃんのキラキラ指数がわかりやすく上がって、私も嬉しくなったんです(笑)。お互いに共鳴し合えますし、やっぱりかわいいものってシンプルに嬉しいんですよね。
──かわいいものに対して嬉しくなる感情は、深まり続けるコンプレックスと表裏一体ですよね。
植田:Ranちゃんのかわいさって、初めて会ったときに私、“かわいい!”って叫んだくらいなんですけど(笑)、こんなにかわいいRanちゃんにも“もっとこうだったらな”というのがあって、誰にでもある感情なんだと思います。そういうテーマを二人で一緒に歌えるのが「Lady Frappuccino」です。
Ran:コンプレックスって、たくさんありますからね。夜寝る前にエラボトックスとか肩ボトックスとか調べちゃいますから。
植田:うそやん(笑)! こんなにかわいいのに! でも、自分ではそういうことを思うものですよね。
──サウンドもスリリングでカッコいいですね。資料によると「今っぽい音構成とミックスで、かつメロディの核はなんとなく'70年代の雰囲気」が気に入っているという植田さんのコメントがあります。かなり起伏に富んだ展開をしますが、時間をかけて作り込んだんですか?
植田:いや、時間もなかったのでかなり一気に作り上げました(笑)。
Ran:納期が迫っていたので(笑)。
植田:さっきも話が出ましたが、とにかくRanちゃんに大阪へ来てもらう前に、ワンコーラスは形にしておきたいと思っていて。Ranちゃんが鼻歌を送ってくれたので、私もそれに応える形で、Aメロ、Bメロ、これがサビかなっていう、どこにはまるかわからないセクションをでたらめ英語の鼻歌にして返したんですね。そんなことをしているうちに私に火が点いてきて、曲の構成のイメージが湧き。このままでは全部出来てしまうと思ったので(笑)、そこで一度立ち止まって、“こんな感じになっているよ”っていうデモをMTRで録音して。そのときに二人のボーカルラインがわかるようにコーラスラインも入れて。そういう作業をしていると歌詞のイメージもできてきたので、それも送って。そうしたらRanちゃんがすごい理解力で「もう覚えました!」って(笑)。
──そのデモもRanさんのボイスメモをベーシックに敷いて作られたそうですね。
植田:はい。Ranちゃんの鼻歌をバックコーラスにして、転調もさせず、むしろコード4つの循環コードにして。だけど、Aメロとかサビの構成がフォーマット通りにこない、セクションがグチャグチャに進んでいくような感じというか。ラップのバースを作るのに近いイメージで作りました。
──おっしゃるように、J-POPの王道とは異なるイメージで。オープニングアレンジからして惹き込まれます。
植田:オープニング辺りはクイーンの「バイシクル・レース」みたいになったらいいなと思って、そういうイメージで作りました。
Ran:最初は作り方がわからなかったくらい、曲作りに関しても初めての経験をたくさんさせていただきました。私は普段、ギターを抱えてコード進行を決めて、メロディを重ねて、その後に歌詞を書いて…みたいな感じなんですけど、その自分の常識を取っ払ったところから制作が始まったという感覚でしたね。
──と言いますと?
Ran:目まぐるしい感じがすごく楽しかったんです。植田さんと私のコーラスが入り混じるセクションとか、呪文のような歌が展開するセクションとか、最初に構成を考える段階からそういうものを組み合わせて作りたいというお話をしていたんです。
植田:繰り返し同じことをできるのは尊いことですけど、飽きちゃいますよね。音楽ぐらいは目新しく、今までにやったことがないエリアに向かって広がっていく楽しさがあっていいのかなと思っています。だから今回のコラボもなるべく自由な曲作りにしたかったんです。
──なるほど。
植田:“レディ・フラペチーノ”という曲のテーマを丁寧に扱いたかったので、“やり過ぎない” “言い過ぎない” “行き過ぎない” “下品にし過ぎない”ということも考えていました。でも、“伝わる” “わかる”というものであると同時に、“面白い”にもなるギリギリのバランスを成立させたかったんです。そういうところもRanちゃんは気をつけて取り扱いながら作ってくれたので、すごくありがたかったです。
──ヘッドホンやイヤホンとかで聴くことを推奨したい曲です。耳の中で様々な音像やハーモニーが渦巻くのが楽しいですから。
植田:音像もいろいろ頑張りました。マスタリングもギリギリまでやり直していただいたりしながら仕上げていったんです。
Ran:聴いていただいたら、驚きつつワクワクできると思います。
──とても時間がない中で作ったとは思えない完成度です。
植田:世の中の制作サイクルは速くなっているし、そんな中でもせっかくコラボするなら“遊びながら、手軽だけどこだわったぞ!”っていうものを作ることができたら、そのほうが楽しいかなと思いました。
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