【対談】新山詩織 × Ran、共鳴と刺激を返信し合った2つのコラボ作完成「今の自分から昔の自分に向けて」
新山詩織とRan、ふたりの女性シンガーソングライターによる初コラボ作品の完成だ。Ranが憧れを公言する新山詩織とのコラボ作品となる「あの日 feat.新山詩織」が3月29日にデジタルリリースされたことに加え、4月27日には新山詩織のデジタルシングル「春曇り feat.Ran」が配信スタートされる。Ranにとってはコラボ企画三部作の第一弾であり、新山詩織にとっては山崎あおいとの「Free」以来のコラボ作となるものだ。
◆新山詩織 × Ran 画像 / 動画
<新山詩織live 2022〜New〜>(2022.4.17@東京・日本橋三井ホール)や、<新山詩織 Live 2023『何者 ~十年十色~』>(2023.7.21@渋谷 PLEASURE PLEASURE)のオープニングアクトとしてRanが起用されたほか、ビーイング(現B ZONE)所属アーティストを中心としたイベント<B All Light>(2023.4.28@unravel Tokyo)での共演など、両者は先輩後輩としてランデブーを重ねてきた。Ran曰く、月9ドラマ『ラヴソング』に出演していた新山詩織の姿と歌声に、学生当時のRanの心が射貫かれ、以降現在までリスペクトの対象として気持ちを募らせてきたのだという。
そして完成した「あの日 feat.新山詩織」と「春曇り feat.Ran」の2曲は、いわゆる“レコーディングに参加してみました”的なコラボではない。ソングライターとして、シンガーとして、楽曲制作から歌入れまでがっぷり四つに組んで、お互いの英知を重ね合ったからこそ生まれた刺激と共鳴が力強く美しい。BARKSでは、ふたりの宿命的な関係性と両曲制作秘話についてじっくりと話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■ふたりでオムライスを食べに行ったり
■イルミネーションを見たり
── Ranさんの「あの日 feat.新山詩織」が3月29日にデジタルリリースされたことに加え、4月27日には新山詩織さんのデジタルシングル「春曇り feat.Ran」がリリースされます。まずは、おふたりの出会いや、今回のコラボレーションに至るきっかけを教えていただけますか?
新山:Ranちゃんと初めて会ったのは、2021年だったかな。私の渋谷WWW Xでの再始動ライブ(2021年12月12日 / <新山詩織live 2021〜In The Beginning〜>)をRanちゃんが観に来てくれたんです。もちろん以前から名前は知っていたんですけど、「初めて会えたね」っていう感じで。すごく嬉しかったし、かわいい子だなって。そういう気持ちでいっぱいだったんですけど、話してみると、芯の通った子だなという印象がありました。
Ran:コラボレーションのきっかけとしては、私が上京と活動スタートから今年5周年を迎えたんですね。そこでコラボ企画をしたいというのが最初にあって、「その第一弾をぜひ詩織さんと作らせていただけないですか」というお話をしたのがきっかけでした。同じ事務所の先輩ということももちろんですけど、私は学生時代から詩織さんの楽曲をずっと聴いていて、普通にファンだったんです。当時から詩織さんの楽曲が刺さりまくっていたので、「第一弾は絶対詩織さんにお願いしたいです」という気持ちでした。
──2021年の新山さんのライブが初対面ということですが、Ranさんが上京してきた時、新山さんはまだ再始動前だったということですかね?
Ran:休止されていたので、寂しかったんですけど(笑)。
新山:それでも、コラボ第一弾のお相手に選んでもらって。本当に光栄だなって。
Ran:いえいえ。こちらこそ本当にありがとうございます。
▲Ran「あの日 feat.新山詩織」
──コラボの話が決まって、新山さんとしてはRanさんの曲や歌について研究したりも?
新山:もともと曲を聴いていたり、どんな歌詞を書くのかなっていうことも見ていたんです。Ranちゃんってこんなふうに、見た目はすごくかわいらしいですけど、曲を聴くとちゃんと自分の思っていることをそのまま出せる人というか。言葉にも嘘がないんです。しっかり考えられた歌詞をシンプルな言葉で書いているから伝わる。本や小説をよく読むという話は聞いていたので、そういう影響もあるのかなって思うんですけど。とにかく私には書けない言葉がたくさんあって、さすが!って尊敬しているというか。
──実際に「一緒に曲を作りましょう」となって、まずどんなことをした感じですか。お互いのことを知るのも大事そうですよね。
Ran:何度かお話しする時間を作りましたね。それこそ最初はまさにこの会議室で。
新山:そうだ。で、「どんなテーマで書こうか」とか話して。
Ran:その後、ふたりでオムライスを食べに行きました。
新山:その次の日に「ちょっと時間ある?」って聞いて、雑談を交えながら「曲について話せないかな」って、また話をしてという感じで。
Ran:それが昨年のクリスマス前くらいでしたかね。ふたりでクリスマスツリーの写真を撮ったりしていたので(笑)。
新山:イルミネーションを見たりね(笑)。
──なんだか、すごく女の子らしい楽しそうな時間です(笑)。
新山:そういう話のなかで私は、普段Ranちゃんはどんなことを思っているんだろう?とかすごく聞いた気がしますね。
Ran:話をしながら、「エモーショナルな曲をふたりで書きたい」というので一致して。「ナチュラルで、エモーショナルなところをテーマに、作詞作曲しよう」というのは早い段階で出てきたものだったんです。
新山:変に尖ったものではなく、ただただ今ある葛藤を素直に書こうというか。これは「あの日」にも「春曇り」にも共通するところなんですけど、過去を思い返しながらとか、今は春だけど華やかなだけじゃないとか、エモい部分をテーマにして書き始めようというのはありましたね。
▲Ran
──「あの日」は作詞作曲がふたりの連名で、「春曇り」は新山さんが作曲、Ranさんが作詞というクレジットですが、実際の作業はどのような感じで進んだのでしょうか?
Ran:「あの日」のほうは、私がリリースする曲ということで、一旦私が大枠を出して。そこからどうしていこうかと、お互いにラリーをしながら作っていく感じでした。
新山:なので最初の段階から、“あの日”という言葉があったんですよね。
Ran:テーマについてはすごく迷って…実際に詩織さんとお話する前から、回想とか思い出とかを書くのか、はたまた今を生きるものにするのか、恋愛の曲にするのかとか、いろいろ悩んでいたんです。それで、ふたりでこの会議室で話しながらまとまったのが、「過去を思い返す感じがいいんじゃないか」っていうことで。そこから“あの日”という言葉をつけたんです。
──「あの日」の歌詞やそこで描かれる感情は、まさにふたりの共通体験としてありそうですね。10代ならではの名付けようのない気持ち、正解がわからない葛藤やもがきはすごくリアルなもので、今その只中にいる人や、そこを通過した人にも響く歌になっていると思います。
新山:その後は、メッセージ上でRanちゃんから1番の歌詞をもらって、私が2番を書いてという感じのラリーだったんです。きっとRanちゃんもそうだったかもしれないですけど、私は10代の頃とか、学生時代の自分を思い出しながら書いていきました。今は大人になったけど、たまに昔の自分をどこかで思い出して、もしあのときああだったらこうだったのかな…っていうと後悔になってしまうのかもしれないですけど、そうではなくて。過去を思い返しながらも、そのまま過去にしがみつくか、ちゃんと前を向いて進んでいくかは自分次第だなと思っていて。そこからはRanちゃんの歌詞を受けて、昔の自分に向けて書いてみたりしていましたね。
──Ranさんとしては、当時の自分に新山さんから返答をもらうような気持ちもあったでしょうか?
Ran:正直に言うと、実際に10代の多感な時期に詩織さんの曲だったり、いろんな音楽を聴いていた自分がいて。その時と今とのギャップというか、その時の自分に今ならどう言えるのかなっていう気持ちがすごく大きかったですね。本当に勝手なんですけど、新山さんもそう思ってくれていたらいいなとか。いろいろなお話をしたなかで、きっと同じように、ちょっとした後悔とか、こうしていれば、ああしていればみたいなものは共通項としてあるのかなと思っていたので。
新山:うん。そういうRanちゃんの言葉とか歌詞があったからこそ、私も歌詞が書けた感じはありました。
──お互いの歌詞のなかに、“この言葉が出てきてハッとした”というフレーズとか、胸を突かれる瞬間はありましたか。
新山:全体的にもそうなんですけど。特に一番の頭に“♪何もなかったようで ただ何か満たしたかった”というフレーズがあって。“ああ、こういう感じ、私にもあったな”って。今ももしかしたらあるかもな、ということはすごく思いました。
Ran:私が1番を書いて、2番の歌詞を詩織さんからいただいたときに、“言葉の合わせ方がすごいな”って。さっきの冒頭の部分“♪何もなかったようで〜”は、わざと抽象的に書いているんですけど。それに対して、詩織さんが2番の頭で“♪大人になったようで まだ君にすがりたかった”とスパッと返していただけて。そこはグッときましたね。
──作詞を通した手紙のようなやりとりですよね。
Ran:はい(笑)。
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