【ライブレポート】Nothing's Carved In Stone、<Live at 野音>に特別なドラマ「エモいことを言う必要がないくらいエモいね」
Nothing's Carved In Stoneが8月31日、東京・日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ<Live at 野音 2024>を開催した。自身5度目となる日比谷野音公演のレポートをお届けしたい。
◆Nothing's Carved In Stone 画像
「野音だけ売り切れるのが早いのはおかしいと思う」と村松拓(Vo, G)は笑いながら観客に語りかけた。
5月15日にリリースした『BRIGHTNESS』リリースツアーのツアーファイナルだった7月15日のZepp DiverCity (TOKYO)公演でも村松は同じことを言っていたから、何か引っ掛かるものがあるのだろう。確かに、なぜ野音ばかりが? 野音ならではの開放感を求めている人が多いというのが一番考えられる理由だが、もしかしたら、基本、野音では土日および休日にライブの開催が限られているため、足を運びやすいのかもしれない。
もっとも、いずれも想像の域を出るものではないから、Nothing's Carved In Stone (以下、ナッシングス)のファンに尋ねてみたら、意外な答えが返ってくるかもしれない。とにかくナッシングスの<Live at 野音>には、チケットをいち早く買いたいと思わせるサムシングスペシャルがあるようなのだが、5回目の<Live at 野音>はそれとはちょっと違う理由で、特別なものになったのだった。始まりからしてドラマチックだったと思う。
<Live at 野音 2024>が開催された8月31日は、日本列島に居座った台風10号の影響で荒天になることが懸念され、バンドはライブを開催するのか延期するのか、かなり悩んだのだそうだ。幸い台風の影響はそれほどでもなく、雲の間にうっすらと見える青空の下、客席を埋めた観客が開演を待っていた。
そうこうするうちにSEが開演を告げ、バックドロップが掲げられる。ひょっとしたら今日は、このまま雨は降らないかも⁉ ライブが始まる直前のワクワクの中、“やった!”と快哉を叫んだのも束の間、メンバーたちが1曲目の「Overflowing」をまさに演奏し始めた瞬間、大粒の雨が降り始めたのだから、筆者はあまりにも呑気すぎたようだ。それにしても、ライブの開始とともに雨が降り始めるなんて、何と言うタイミング。狙おうとしてもできるもんじゃない。いや、バンドはそんなことはこれっぽっちも望んではいなかったと思うけれど。
野音で見た直近2回のライブが雨だった筆者は、自分の雨男ぶりに苦笑いするしかなかったが、一度走り出したバンドの演奏と、それに応える観客の盛り上がりは土砂降りだろうと何だろうと、もう止まらない。
「(こんな日に)よく来たね。4人でNothing's Carved In Stoneです。行こうぜ、日比谷! 声を聞かせてくれ!」──村松拓
ファンキーな「Bright Night」、アップテンポでキャッチーな「Around the Clock」とフィジカルに訴えかけるロックナンバーの連打で揺らした客席をさらに揺らしたのが「Challengers」。言葉を跳ねさせるリズミカルな歌がナッシングスらしからぬ異色曲に思えるのだが、いつしかメンバー達以上にファンのお気に入り曲になっていたことを、この日、筆者はイントロで沸いた歓声から知る。前述した歌のみならず、歌の裏で生形真一(G, Cho)が奏でるトリッキーなリフはもちろん、生形がデリケートに奏でる単音リフに日向秀和(B)が敢えてダイナミックなフレーズをぶつけるアンサンブルも聴きどころだ。
続く「Sing」で「声を聞かせてくれ!」とコール&レスポンスからシンガロングを求めた村松が「聞こえねえよ!」と珍しく熱くなったのは、雨の中、立ち続けている観客を鼓舞したかったからだ。もちろん、村松は日比谷の空に大きな歌声を響き渡らせた観客に感謝を伝え、労うことも忘れない。観客を跳ねさせたメランコリックなダンスポップ・ナンバー「Wonderer」、ベースの爆音とギターの轟音で観客を圧倒したヘヴィロック・ナンバー「In Future」、リズムを完璧にキープする大喜多崇規(Dr)の超人的なスティック捌きに目が釘付けになった高速ファンクの「Damage」とたたみかけるように繋げ、客席を揺らしたあと、「最高。ありがとう」と語りかけた村松が次に演奏する曲のタイトルに掛けて言った言葉が心憎かった。
「めっちゃ雨が降ってるけど、今日は下に太陽があるってことなんだよね。太陽のようです、皆さん。輝きをどうもありがとう! 太陽のように咲く花にように生きていたいよね。今日はみなさんのことを、そういう名前だと思ってタイトルコールします。いいかな? 「きらめきの花!」」──村松拓
ワイプで応えながら、雨の中でもきらめきを失わない花たちがこの日、ステージの4人にはどんなふうに映ったことだろう。
いつしかライブは後半戦に。ナッシングス流のAORなんて言ってみたい「SUNRISE」、バラードの「朱い群青」をじっくりと聴かせると、生形と日向がリフをユニゾンさせる「Pride」からライブの流れは再びテンポアップ。
「ここでやる意味っていうのは、やっぱりみんなのため。それだけです! 思い残すものがないように全力で演奏します。おまえらひとりひとりの胸に届くよう気持ちを込めて、一音一音に全部込めていくからついてこいよ!」──村松拓
インダストリアルな響きもある「Mirror Ocean」、奔放なバンドの演奏と村松の歌が取っ組み合うようなアンサンブルに加え、日向と生形のソロのリレーも聴きどころだった「Like a Shooting Star」、オーケストラヒットも鳴らしながらレイヴをバンドサウンドに落とし込んだ「Idols」、アンセミックな「Freedom」、エンドレスで鳴り続ける大喜多のキックがグルーヴを作る「Out of Control」、そして“愛で埋め尽くして”と希望に満ちた未来を称えながら、観客のシンガロングがクライマックスにふさわしい光景を作り出した「Dear Future」。これまで作ってきた楽曲の振り幅を改めて印象づけながら、新旧の楽曲をほぼノンストップで繋げ、今現在のナッシングスのロックバンドとしてのアティチュードを見せつけたセットリストを締めくくったのが、野音ではお馴染みのバラード「The Silver Sun Rise Up High」。残念ながら、雨のせいでこの曲を野音で演奏する理由の1つである月(=Silver Sun)を見ることは叶わなかったが、雨の<Live at 野音>はメンバー、観客ともに特別なものとして、記憶に残り続けるに違いない。何よりもいつもとは違う2時間を共に過ごし、そこに生まれた感情を分かち合ったことで、バンドと観客の絆はより強いものになったはずだ。
「エモいことを言う必要がないくらいエモいね。最高の夜をいただきました。ありがとうございます。同じ時代を生きてやっていくってことの意味を、現時点で感じることはなかなかできないかもしれないけど、一緒に生きてくれる以上は長く続けます。Nothing's Carved In Stoneは音楽をやっていくのでよろしくお願いします!」──村松拓
アンコールに応え、エフェクターを駆使した生形のギターの音作りが楽曲をきらめかせた「Will」をじっくりと聴かせた後、バンドはもう1曲、アップテンポのオルタナロック・ナンバー「Isolation」を披露して、観客にシンガロングの声を上げさせた。演奏しながら向かい合う4人の姿が、村松が言うところの「4人でNothing's Carved In Stone」を物語っていたと思う。
気がつけば、雨が上がっていた。何というタイミングだろう。今回の<Live at 野音>は最後の最後までドラマチックだった。
取材・文◎山口智男
撮影◎RUI HASHIMOTO [SOUND SHOOTER]
■<Nothing's Carved In Stone “Live at 野音 2024”>8月31日(土)@東京・日比谷野外大音楽堂 SETLIST
02. Bright Night
03. Around The Clock
04. Challengers
05. Sing
06. Wonderer
07. In Future
08. Damage
09. きらめきの花
10. SUNRISE
11. 朱い群青
12. Pride
13. Mirror Ocean
14. Like a Shooting Star
15. Idols
16. Freedom
17. Out of Control
18. Dear Future
19. The Silver Sun Rise Up High
encore
20. Will
21. Isolation
■東阪ワンマン<Perfect Sounds 〜For Rare Tracks Lovers〜>
11月15日(金) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00
▼チケット
一般 5,300円(税込) / 学割 3,800円(税込)
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