【ライブレポート】Nothing's Carved In Stone、全国ツアーファイナルに渾身の一音「命を削って、ありったけの熱量で」

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Nothing's Carved In StoneがEP『BRIGHTNESS』のリリースに伴って、自身約2年ぶりとなるワンマンツアー<Nothing's Carved In Stone「BRIGHTNESS TOUR」>を開催した。全国15ヵ所をまわった同ツアーのファイナルは、7月15日の東京・Zepp DiverCity (TOKYO)。同公演のレポートをお届けしたい。

◆Nothing's Carved In Stone 画像

「良いことを言おうかと考えたけど、作品に全部詰めこみました──村松拓(Vo, G)が言ったその言葉通り、全国15ヵ所を回った<BRIGHTNESS TOUR>のファイナル公演となるこの日、Nothing's Carved In Stone(以下ナッシングス)はMCを含め、演奏以外の要素を限りなく省き、演奏に熱を込めることだけを考えていたようだ。

元々、ライブ中のMCに時間を割くバンドではなかったが、この日は特に言葉数を絞っていたように思えたし、楽器の持ち替えも含め、曲間もできるだけ空けずに曲をたたみかけるように繋げながら、一気呵成に駆け抜けていったバンドの姿が印象的だった。


この日、ナッシングスが演奏したのは、5月15日にリリースした『BRIGHTNESS』の7曲を軸にした新旧の全21曲。4分台の曲がセットリストの大半を占めていたことを考えれば、それだけの曲数をやって1時間45分という尺の長さからも彼らがいかに演奏にだけ集中していたかがわかってもらえると思う。しかし、それにもかかわらずだ。勢い任せのライブになってしまわずにテクニックとともにプレイヤーとしてのユニークさを印象づけるプレイやアンサンブルの数々を見せつけたところにこそ、ナッシングスというバンドが持つ真骨頂があったんじゃないかという気がしている。今回は、そんなところを見どころと考え、レポートを書き進めてみたい。

“さあ完璧な夜が始まる前に 過去にしがみついた腕を払え”という冒頭の歌詞からしてライブの幕開けにふさわしい『BRIGHTNESS』収録のアンセミックなロックナンバー「Freedom」で日向秀和(B)がスラップしながら、生形真一(G, Cho)がソリッドに鳴らすコードリフに絡みつくように奏でたベースフレーズや、その「Freedom」から「You're in Motion」「Chaotic Imagination」と繋げていき、観客に声のみならず、拳も上げさせながら、フロアを揺らしていったタイミングで、生形が巧みに足元のペダルを操作しつつ、ビブラート、トレモロピッキング、チョーキング、クロマチックランとさまざまな奏法を織りまぜ、かき鳴らしたエモーショナルなギターソロはともに、“あぁ、今まさに自分はナッシングスのライブに来ているんだ!!”と気持ちを高揚させるものだった。


そして、大喜多崇規(Dr)のドラムの連打からなだれこんだ「Rendaman」では、モンキーダンスしながら観客を煽った日向のベースソロに合わせ、観客が嬉々としてハンドクラップで応える。

「おす! 4人でNothing's Carved In Stoneです!」と挨拶した村松はこの日、この「4人でNothing's Carved In Stoneです」という言葉を何回か口にしたが、それは5月19日からツアーを回ってきた中で改めて辿りついた心境なのだろう。

「(ツアーを回ってきて)ナッシングスめっちゃ磨かれています。誰1人置いていきません。最後までついてきてください!」──村松


村松の宣言とともにリズミカルな歌が印象的な『BRIGHTNESS』収録の「Challengers」から始まった前半戦は、サビのキックが4つ打ちになる「Spirit Inspiration」と繋げ、なるほど、ダンサブルなリズムで観客を跳ねさせようというわけか──と思ったのも束の間、バンドはそこにナッシングス流プログレ・ナンバーなんて言ってみたい「Cold Reason」を繋げ、筆者の浅はかな予想をあっさりと打ち砕く。三拍子のニュアンスが独特の浮遊感を演出しながら、イマジネーション豊かにリズムパターンを変化させていった大喜多のドラムを中心にバンドの演奏は白熱。そして、エンディングはメンバー4人が向かい合いながら、全員で最後のキメの一音を鳴らす。

その「Cold Reason」で歌の伴奏という概念から逸脱したバンドの演奏に拮抗するようにボーカリストとしての力量を見せつけた村松は続くヘヴィなギターリフとキャッチーなサビを持つオルタナロック・ナンバーの「In Future」で、超人的な声量でフロアを圧倒したのだった。

「『BRIGHTNESS』、みんな聴いてくれました? 最高でしょ? 前向きな力に変わってほしいと思って、いろいろな思いとエナジーを詰め込んで作った作品です。俺らの音楽を聴いてくれてるみんなに、安っぽい言葉かもしれないけど、ほんの少しでも元気を分け与えられたらいいなと思ってるし、こうやってみんながライブに来て、とんでもない笑顔を俺達にくれるという非日常を感じてるし。根本、俺達は自分達の中にある気持ちに応えるために音楽をやるし、それがみんなに届いたらうれしいし。ほんとそれだけなんだけど、こうやってみんなの前で演奏している時は、みんなのことだけを思って、一人一人に届くように歌うので、聴いてください!」──村松


『BRIGHTNESS』収録の「Will」からの後半戦は、聴かせる曲を繋げていく。生形のロングトーンを生かしたリフも聴きどころだった、その「Will」はアンセミックなロックバラード。前掲の村松のMCに繋がるメッセージを凝縮した日本語の歌詞を届けるため、バンドアンサブルはナッシングス的にはタイトと言えるものだったが、そこから一転、次の「Red Light」のアンサブルは、まさにナッシングスの真骨頂と言えるだろう。メランコリーとキャッチーな魅力が入り混じるポップロック・ナンバーにもかかわらず、この曲調とこの歌メロに⁉と思えるギターリフを歪みにジェット音を混ぜた音色で、これでもかとたたみかけるように重ねる生形のプレイは、鬼気迫るという表現がふさわしい聴きどころだった。

そこにもう1曲ミッドテンポでじっくり聴かせる「Blaze of Color」を挟んでから、「揺らそうぜ!」と「Idols」「Bright Night」とダンサブルな曲を繋げ、観客を跳ねさせたバンドがそこからたたみかけるように繋げていったのは、お互いの顔を見ながら笑顔で演奏する4人の姿が印象的だった「Isolation」をはじめ、シンガロング必至のアンセムの数々だ。

「俺ら本気で音楽をやっていきます。音楽を鳴らすためにいろいろなことを犠牲にしても、このステージに戻ってきます。他の人に言われたらダサいと思うけど、俺達は命を削ってやってます。ありったけの熱量でみんなに届けて、それが日本中に散らばって、大きな何か幸せになるきっかけになることを夢見てやっていきます!」──村松

日向と大喜多が演奏中にハイタッチを交わした「Out of Control」。その大喜多の軽やかなスティック裁きと力強いキックのコンビネーションも見どころだった「Around the Clock」では生形がフラッシーなギターソロを閃かせる。続く「November 15th」の大喜多のドラムは、まるで人力ドラムンベースみたいな迫力だ。


そして、「Dear Future」は村松の「もっと!」という声に応え、どんどん大きくなっていった観客のシンガロングがリリースから5ヵ月、この曲がナッシングスの新しいライブアンセムになっていることを物語る。

そこからさらに盛り上げるのかと思いきや、『BRIGHTNESS』同様に「SUNRISE」でしっとりと本編を締めくくるという意外な展開に意表を突かれながら、この曲が持つアーバンでアダルトオリエンテッドな魅力を味わってもらうにはベストな選曲だったんじゃないかと思ったりも。歪みにうねりを加えつつ、絶妙に揺らした生形のギターの音色が心地いい。なんでも、フェイザーとアンプの組み合わせの妙で鳴らしているのだそうだ。音作りに対するこだわりも含め、そんな音色もまた聴きどころの1つだった。

8月31日の日比谷野外大音楽堂公演が早々にソールドアウトしたことを報告しながら、「言うことは特にありません。あるとしたら、“みなさん愛してます”と“感謝してます”だけ」と村松の言葉に観客が歓声を上げたアンコールは、さらにバラードと言うにはエモすぎる「Walk」と明るいロックナンバーの「Perfect Sound」の2曲を演奏したのだが、ナッシングスが新たに始めるコンセプトライブのタイトルが<Perfect Sounds>なのだから思わずニヤリとせずにいられないではないか。


<BRIGHTNESS TOUR>を駆け抜けていったナッシングスはその勢いのまま、すでに未来を目指している。この日、「拓さーん!」と客席から声を掛けられた村松は照れ笑いしながら、「ナッシングスです」と答えたが、そんな些細なことからも15周年を経て、ナッシングスの4人の結びつきがバンドとして、さらに強いものになったことが窺える。

「Perfect Sound」のアウトロで、日向が両手の手のひらを生形に見せているから、何だろうと思ったら、エンディングのキメの回数だった。日向の提案どおり、4人は大喜多を中心に向かい合い、最後の最後に渾身の一音を10回鳴らしたのだった。

取材・文◎山口智男
撮影◎RYOTARO KAWASHIMA

■<Nothing's Carved In Stone「BRIGHTNESS TOUR」>7月15日(月/祝)@東京・Zepp DiverCity(TOKYO)セットリスト

01. Freedom
02. You're in Motion
03. Chaotic Imagination
04. Rendaman
05. Challengers
06. Spirit Inspiration
07. Cold Reason
08. In Future
09. Will
10. Red Light
11. Blaze of Color
12. Idols
13. Bright Night
14. Isolation
15. Out of Control
16. Around The Clock
17. November 15th
18. Dear Future
19. SUNRISE
encore
en1. Walk
en2. Perfect Sound

■<Nothing's Carved In Stone “Live at 野音 2024”>

8月31日(土) 東京・日比谷野外大音楽堂
open16:30 / start17:30
▼チケット
一般 6,000円(税込) / 学割 4,500円(税込)


■東阪ワンマン<Perfect Sounds 〜For Rare Tracks Lovers〜>

10月11日(金) 大阪・GORILLA HALL OSAKA
11月15日(金) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00
▼チケット
5,300円(税込)
※学割 3,800円(税込)
【オフィシャル先行】
受付期間:8/4(日)23:59まで
https://eplus.jp/ncis-hp/


■映像作品『Nothing's Carved In Stone 15th Anniversary Live at BUDOKAN』

2024年8月28日(水)リリース
【15th 記念盤 (3DISC+ヒストリー&フォトブック)】
・Blu-ray:SSRV 3024-26 ¥27,500(税込)
・DVD:SSRV 3027-29 ¥22,000(税込)
予約:https://www.official-store.jp/ncis/
【通常盤 (1DISC)】
・Blu-ray:QYXL-90005 ¥5,940(税込)
・DVD: QYBL-90006¥4,950(税込)
予約:https://ncis.lnk.to/15thBUDOKAN


▼トラックリスト ※15th 記念盤/通常盤共通
<15th Anniversary Live at BUDOKAN>
01. Out of Control
02. Deeper,Deeper
03. YOUTH City
04. ツバメクリムゾン
05. Chain reaction
06. Cold Reason
07. Words That Bind Us
08. Sands of Time
09. Brotherhood
10. Stories
11. Gravity
12. 村雨の中で
13. Red Light
14. Walk
15. Inside Out
16. Everlasting Youth
17. In Future
18. きらめきの花
19. Diachronic
20. Shimmer Song
21. Milestone
22. Like a Shooting Star
23. Music
24. You're in Motion
25. Spirit Inspiration
26. Idols
27. November 15th
28. Isolation
29. BLUE SHADOW
encore
en1. Around the Clock
en2. Sunday Morning Escape
en3. Dear Future

▼トラックリスト ※15th記念盤のみ
<Bring the Future> at LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
01. Mythology
02. In Future
03. Deeper,Deeper
04. Falling Pieces
05. PUPA
06. No Turning Back
07. きらめきの花
08. Isolation(Acoustic Set)
09. Midnight Train(Acoustic Set)
10. Shimmer Song(Acoustic Set)
11. Beautiful Life(Acoustic Set)
12. Fuel
13. Mirror Ocean
14. Milestone
15. Spirit Inspiration
16. Out of Control
17. Scarred Soul
18. Bloom in the Rain
19. Impermanence
20. Walk
encore
en1. Sands of Time
en2. 村雨の中で

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