【インタビュー】(夜と)SAMPO、「心のモンスターを抱える人がどうすれば変われるのか」

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メンバー全員が会社員を兼業しながら活動をするロックバンド(夜と)SAMPO。首謀者である吉野エクスプロージョン(G)は元ハンブレッダーズ。メンバーである、なかのいくみ(Vo)は加速するラブズ、寺岡純二(Dr)は元フィッシュライフなど関西で実力のあるバンドマンたちがそろい、「何かを選ぶために、何かを捨てなくてもいい」という意思のもと活動をしている。

8月28日にリリースされる1stフルアルバム『モンスター』はそんな(夜と)SAMPOの現時点における集大成ともいえる作品だ。その理由はこれまでバンドのテーマであった「何者でもない者たちが、自分たちの気持ちにどう折り合いをつけていくのか?」に対して、真正面から挑み回答を出したアルバムだからだ。

本作は心の中の満たされない承認欲求や自己肯定感に対して、現実を否定し、逃避しながらも最終的に「あるがままでいい」というメッセージへ向かい歩みを進めていく。その姿は紆余曲折を経て、メジャーシーンで活動する(夜と)SAMPOの生き様が、投影されたかのような内容である。

今回はこのアルバム『モンスター』について、そして(夜と)SAMPOの現在地と今後について、ソングライターの吉野エクスプロージョンに話を聞いた。


──まずアルバムを作ったきっかけから聞かせてください。

吉野エクスプロージョン:もともと6曲ぐらいのコンパクトな作品がリスナーとしては好きで、フルアルバムを作ることに対してはあまり興味はなかったです。ただ自分も20代の最後だったので「今までやってきたすべてをつぎ込んだら、どのような作品になるのか?」という探究心みたいなところから、『モンスター』を作ろうと思いました。制作当初から「コンセプトを決めて作ろう」というのはありましたが、アルバムを象徴する明確なワードみたいなものは特になくて。それこそ表題曲である「モンスター」という曲ができて、作品としての軸が決まったという感じです。


──なるほど。

吉野エクスプロージョン:「モンスター」という心のけものを歌った楽曲と、同じメロディながらポップなアレンジでそのけものを克服した後を描く「ヒューマン」という楽曲をアルバムの最初と最後に置き、「心のモンスターを抱える人がどうすれば変われるのか」というコンセプトにしたらいいなと思ったんです。ちなみにこの「ヒューマン」は大阪の銭湯に入っていた時に、歌詞がブワーって出てきて。そのまま家に帰ってアコギを弾きながら歌ったら完成しました(笑)。

──「プラズマクラシックミュージック」は、吉野さんの夢での体験を描いた曲だとか。歌詞やサウンドがメルヘンのような世界観に寄っている部分も面白いですね。


吉野エクスプロージョン:僕、とても眠りが浅くて(笑)。夢の中で曲が流れていることがあるんです。ある日、サビのメロディーラインと「プラズマクラシックミュージック!」と言って終わった夢を見て。「お、今の曲はいいぞ」と思って書き始めたのがこの曲です。

──「idea」は心のモンスターを受け入れる曲になります。この曲に対して吉野さんはSNSで「自分が1番好きといえる曲です」とのことですが、その理由とは?


吉野エクスプロージョン:気に入っている理由が3つあって。ひとつはアルバムとして大切な曲になった点。曲順として「変身」の前にあることが、すごく重要で。「変身」はモンスターが自分の中に存在していると自覚して、「獣こそ自分自身である」と受容することでしか、自分を変えることはできないという歌です。その受容するというのを助けるのが「idea」という曲。私も獣であると受けいれることが、僕はもっとも難しい問題だと思っていて。人間って、わかっているふりができるじゃないですか。例えば、自分のことを少し皮肉めいて「俺ってアホやからさ」とか言う人っていますよね。でも本音ではそのようなことは思ってはいないと感じていて。

──いわゆる、逃避行動のひとつですからね。

吉野エクスプロージョン:そう。だから自己否定して自尊心・承認欲求を抑圧して、自分から切り離そうとするのではなく、モンスターな部分も受容することで「ありのままで過ごしていいんだよ」と、この曲では言いたくて。あとこの曲、今自分が住んでいる滋賀県のことを歌っているんです。都会で生活していたころは「何者かになりたい。けど、なれない」というのがバチバチ闘い合っていて、暇で退屈な日々を過ごしていることに焦燥感がありました。でも自然豊かな場所で生活をしていると、心が穏やかになっていき、暇な日常でもほっとして過ごせたんです。そういう自分自身を許すきっかけを与えてくれたのが滋賀でした。そんな愛すべき場所についての曲を書けたというのが、お気に入りポイントのふたつ目です。

──あとひとつは?

吉野エクスプロージョン:アレンジが上手くいったところです。この曲は今までよりもシンプルな曲調を心掛けていて、僕の得意とするビビッドなアレンジの曲作りとは真裏を行くようにしたんです。当初はまったく違ったアレンジを考えていて。でも、バンドのマネージャーが「あまり重すぎないバラード曲がアルバムにあってもいいんじゃない?」と言ってくれて、その時にこれを入れようかなと思ったんです。「あまり重すぎないバラード曲」という命題で、内容が「滋賀県に移住して心穏やかな日常が過ごせている」だったので、このようなアレンジになりました。

──(夜と)SAMPOというバンドは常に「何者にもなれなかった自分たち」の視点から、心の折り合いをどうつけるのかを楽曲で語っていました。結成当初から、このようなテーマでバンドをやろうとは考えていましたか?

吉野エクスプロージョン:バンドを組んだ時に「何者にもなれない」とかは考えてもいなかったです。そこよりかはサラリーマンをやっていると、何かを目的に仕事をしている時よりも、目的のない夜のたわいない会話とかの方に人生の本質があると思っていて。それは散歩もそうだよねみたいな感じで、(夜と)SAMPOをスタートさせました。でも、吉野エクスプロージョンはたぶん「何者にもなりたいけど、なれなかった」という劣等感が根底にあったからバンドを組んだと思うんです。先ほども語りましたが、ライブがない休日を過ごしていたら「なぜ意味もない休日を過ごしているんだろう」と焦りのようなものが自分の中にありました。それは「何者かとして、音楽を一生懸命やっている自分でないといけない」という気持ちがあったからだと思っていて。だから「誰かバンドやろう」みたいなことをSNSで書いて。そこから同級生が反応し、(夜と)SAMPOを結成して今があります。


──「何者にもなれない」はバンドというよりも、吉野さん自身のコンセプトだと?

吉野エクスプロージョン:そうかもしれませんね。メンバーにもそのコンセプトを背負わせているのかも(笑)。でも、多分同じことを感じている人は世の中に沢山いて、そんな人たちに届けたいな、と思って今回までアルバムや楽曲のコンセプトにはしている、ということだと思います。

──今までやってきたテーマがひとつに集約されたのが『モンスター』だし、(夜と)SAMPOの現時点における集大成的な作品であると感じています。これから、吉野エクスプロージョンがより「何者」を突き詰めていくのか、それとも別の方向性に行くのか、次の一手が気になります。

吉野エクスプロージョン:次はどうしたいかはメンバーと話していて、もしアルバムを作るのならばコンセプトは無しでやりたいと思っています。「メンバー全員でより楽しく楽曲を制作したい」ですね。まだ(夜と)SAMPOではやったことのないジャンルの楽曲が、アイデアとしていくつかあって。新しいスタイルに挑戦したいと思います。

──バンドが喜ぶ形をさらに追求したいんですね。

吉野エクスプロージョン:でもそれにプラスして、ちゃんと世間からウケる曲を書きたいです。今はメジャーに所属して、さまざまな人と手を組みながら作品を作っています。だから今まで以上に楽曲に対して考えるプロセスを踏んでいるのに、反応がイマイチなのはめちゃめちゃ悔しい。『モンスター』は魂を込めて作った最高のアルバムです。でも世間の反応がなかったら、僕の中のモンスターは騒ぎだすと思います。そういう意味でもリスナーから多くの反応が得られる作品になってほしいです。

取材・文◎マーガレット安井



(夜と)SAMPO『モンスター』

2024年8月28日(水)発売
CD 2,970円(税込)WPCL-13600
https://YTS.lnk.to/MonsterPu
1.モンスター
2.シャドウ
3.春
4.プラズマクラシックミュージック(『#居酒屋新幹線2』オープニングテーマ/TOKYO FM「Skyrocket Company」 2024年1月 スカレコ~社員のうた~)
5.ロケット・ガール
6.ストマック
7.YES
8.idea
9.変身
10.ヒューマン
11.革命前夜(2024 Version)

グッズ付限定盤&ショップ別オリジナル特典
■セブンネットショッピング限定グッズ付限定盤
CD+オリジナルグッズ 5,170円(税込)
オリジナルグッズ:マフラータオル
※CDは通常盤と同一のものとなります。
※オリジナル特典も対象となります。

ショップ別オリジナル特典
・Amazon.co.jp
メガジャケ
・楽天ブックス
アクリルキーホルダー
・セブンネットショッピング
ミニスマホスタンドキーホルダー
・全国CDショップ・ネットショッピングサイト共通特典
オリジナルステッカー
※全国CDショップ・ネットショッピングサイト共通特典「オリジナルステッカー」はAmazon.co.jp、楽天ブックス、セブンネットショッピング、その他一部店舗は対象外となります。
https://yorutosampo.com/news/detail/30304
※一部のCDショップ(およびネットショッピングサイト)では特典プレゼントを実施していない場合がございます。
※一部のネットショッピングサイトでは、「特典付き」と「特典なし」のカートがございますのでご注意ください。
※特典は数に限りがございます。無くなり次第終了となりますので、お早目のご予約をお勧めします。
※特典に関するお問い合わせは、直接各CDショップ(およびネットショッピングサイト)にてご確認ください。

<1st ALBUM『モンスター』Release Tour>

2024年9月21日(土)
大阪・心斎橋ANIMA
w/ フリージアン、CAT ATE HOTDOGS
開演:17:30~(開場 17:00~)

2024年9月28日(土)
東京・渋谷Spotify O-nest
w/ インナージャーニー、peanut butters
開演:19:00~(開場 18:30~)
チケット詳細:https://linktr.ee/yorutosampo_monster

<インストアLIVE>

インストアアコースティックライブ&サイン会
■大阪会場
日時:9月7日(日)OPEN12:30 / START13:00
会場:タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
対象店舗:タワーレコード梅田NU茶屋町店
■東京会場
日時:9月29日(日)OPEN11:30 / START12:00
会場:タワーレコード錦糸町パルコ店 イベントスペース
対象店舗:タワーレコード錦糸町パルコ店
※対象店舗にて対象商品をご予約・ご購入いただいたお客様に先着でイベントにご参加いただけます。
※サイン会はお買い上げのCDジャケット1枚にメンバー全員のサインを入れさせていただきます。
※イベント当日はイベント入場引換券・サイン会参加券・CDジャケットを持ってご参加ください。
https://wmg.jp/yorutosampo/news/89432/

◆(夜と)SAMPOオフィシャルサイト
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