【ライブレポート】『マガツノート』初ツアー＜荒魂決起會＞、“憤怒”の感情すら 昇華するV系バンドと声優陣のライブ

近未来戦国×ダーク楽曲メディアミックスプロジェクト『マガツノート』のライブハウスツアー＜マガツノート全国巡業二〇二三「荒魂決起會」＞の東京公演『憤怒ノ夜』が、7月27日（木）渋谷WWW Xにて行なわれた。

◆ライブ写真

武将達が各陣営の枠を超え、「喜」「怒」「哀」「楽」をテーマにした4バンドを結成してフェスに出演するという、『戦シーズン 弐nd Battle 荒魂大祭』（通称：『戦シーズン2』）と連動したライブハウスツアー＜荒魂決起會＞。全国4カ所を廻るプロジェクト初のライブツアー、その4公演目となる『憤怒ノ夜』には、ZOMBIE、零[Hz]、RAZORの3組と、ゲスト声優として神尾晋一郎（織田信長役）、峯田大夢（政宗役）、小笠原仁（秀吉役）、馬場惇平（官兵衛役）が出演。

ゲスト声優はもちろん各バンドのボーカリストも参加した“幕間キャラトーク”や、「怒」をフィーチャーしたアグレッシヴなステージで、“有害人類Tシャツ”を着用したオーディエンスがひしめくフロアに熱狂の渦を巻き起こした（“有害人類”は『マガツノート』に登場する用語であり、同プロジェクトのファンネーム）。


1番手に登場したZOMBIEは、4公演中3公演に参戦。しかもすべてトップバッターで出演してきたこともあり、フロアの雰囲気を完全に掴んでいる様子だ。1曲目の「アブノーマル・セラピー」から重低音を効かせたエグいサウンドで飛ばしていき、奏多が「特別な夜をもっとスペシャルなものに！」と叫ぶと、ツアー全公演に参加した政宗役の峯田大夢が登場。


「クソったれが」へなだれ込む。このコラボは仙台公演でサプライズ的に披露されていたこともあり、息の合ったパフォーマンスで有害人類を魅了しつつ、峯田もZOMBIEのメンバーもとにかく楽しそうにステージを暴れまわっていた。それは、異なるフィールドで活動している同士が交わる『マガツノート』というコンテンツならではの場面であり、確実に両者の親交が深まっていることが窺える瞬間でもあっただろう。


さらに「これをやらないと終わらない気がします！」と、『マガツノート Season:1』で蛇-ウロボロス-に提供した「ウルトラムシケラボーイ」をパンキッシュに叩きつけ、「最後にこの曲をやりたかった！　心を込めて届けます」と、「song for me…」を披露。一際エモーショナルに音を高鳴らし、ステージを終えた。


2番手は、こちらも4公演中3公演に参戦した零[Hz]だ。彼らは1曲目から早くもコラボを披露。秀吉役の小笠原仁と、官兵衛役の馬場惇平を呼び込み、『マガツノートSeason:1』でMAD FANGに書き下ろした「惡⻤招雷」でライブをスタートさせた。ダンサブルなビートを軸にしつつも、怪しさと勇ましさが絡み合うド派手なヘヴィサウンドの上で、小笠原が力強く咆哮すれば、馬場は時折がなるように歌声を放ち、ROY（Vo）と共にフロアの有害人類を挑発する、パワフルなパフォーマンスを繰り広げた。



2人を送り出した後も、凄まじい熱を放ち続けていく5人。「IDEATRUMP」ではモッシュでフロアを激しく揺らし、「BAKEMONO carnival」ではヘッドバンギングを巻き起こす。なかでも強烈だったのが「ZEUS」。ずっしりとしたグルーヴと艶のあるアンサンブルでフロアに迫り、アウトロではROYが熱のこもったフェイクを響かせた。


「今日はおもいっきり感情的に、エモーショナルに行きたいと思います」と、この日のステージでROYが話していたのだが、まさにその宣言通りのパフォーマンス。「全員で作り上げたツアーをぶち上げたい」と繰り出されたラストナンバーの「VENOM」まで、終始フルスロットルで畳み掛けるステージだった。


続いて、ソロ楽曲プロジェクト【COVER&EXPOSE】をフィーチャーしたコラボコーナーに。【COVER&EXPOSE】は、1武将につき2曲のソロ曲が制作され、「Side:COVER」は“キャラクターの外面的な部分を、人気アーティストのダークな名曲をカバーすることで表現”、「Side:EXPOSE」は“キャラクターの知られたくない素顔や弱さ等の内面をオリジナル楽曲で表現”するというもの。この日は2曲の「Side:COVER」が披露され、両曲共にRAZORが演奏するというスペシャルなものになっていた。


フィードバックノイズがけたたましく鳴り響く中で幕が開くと、がっちりと握手を交わしているRAZORの猟牙（Vo）と、政宗役の峯田大夢が目に飛び込んできた。演奏されたのは、政宗の「Side:COVER」曲であるLUNA SEAの「JESUS」。峯田は鋭い眼光で、猟牙は笑みを浮かべながら、フロアにいる有害人類にそれぞれ視線を送り、危険な色気を放ちながらメロディを届ける。


曲を終えると、峯田と入れ替わる形で登場した官兵衛役の馬場惇平と、官兵衛の「Side:COVER」曲であるNIGHTMARE「ジャイアニズム天」へ。ヘヴィでギラついたハードナンバーでヘッドバンギングを巻き起こす中、猟牙と馬場の凶暴なデスボイスの掛け合いも飛び出し、有害人類を激しく沸かせていた。


そして、この日のトリを務めるRAZORのステージがスタート。「SAMURAIソードMAN」「GRAVITY EMOTION」と、ヘヴィな轟音でフロアを激しく豪快に揺らし、有害人類の声を激しく求め続ける。また、「ブルータルモダン」では、冒頭のヘッドバンギングをするセクションで、急遽ウォールオブデスをやることを提案する猟牙。「お前らの顔を見たらめちゃくちゃにしたくなった！」と、彼らが『マガツノート』に楽曲提供をし、この後に登場する某武将のようなドSっぷりでフロアを焚き付ける。


場内の熱気がピークに達したところで「あの男を呼ぼうか！」と、猟牙がステージに招き入れたのは、織田信長役の神尾晋一郎。邪悪で威圧的な高笑いをしながら姿を現した神尾と、『マガツノート Season:1』で第六天魔王軍のイメージソングとして書き下ろした「存在証明」を披露した。疾走する強靭なバンドサウンドの上で、神尾は猟牙と声を掛け合いつつ、セリフを交えながら歌い上げる。そこからボイスドラマのMCを挟み、RAZORが提供した『戦シーズン 2』チーム怒・逆鱗のテーマ曲「追憶の果てに眠れ」へ。極悪な重音が轟く中、猟牙が小道具として取り出した日本刀を振りまわし、神尾が迫力のある低音を響かせる圧巻のパフォーマンスでライブを締め括った。



各地で熱狂を巻き起こした『マガツノート』初の全国巡業となったが、同ツアーの千秋楽公演＜荒魂大祭＞は8月27日、ヒューリックホール東京で開催された。こちらは『戦シーズン2』の楽曲をはじめ、『マガツノート』の楽曲達を声優陣が歌唱するフェスライブで、峯田大夢、小笠原仁、馬場惇平、大河元気（左馬之助役）、美藤大樹（家康役）、岡本和浩（忠勝役）、沢城千春（直政役）、神尾晋一郎、堂島颯人（才蔵役）の9名が出演。BARKSでは追って＜荒魂大祭＞のライブレポートも公開する。


『マガツノート』では、登場キャラクター（武将）によるソロ楽曲シリーズ【COVER&EXPOSE】よりミニアルバム『マガツノート「Side:EXPOSE」Vol.1』が10月15日に発売されること、9月20日より『マガツノート』本編ボイスドラマ「マガツノート Season:3」が放送開始することも発表されており、今後一層の盛り上がりが期待できそうだ。

取材・文◎山口哲生
写真◎菅沼剛弘