【対談連載 in <PUNKSPRING>】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第15回ゲスト:シンプル・プラン

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■鋭い! このアルバムはまず
■シンプル・プランの基本を目指した

WANI:「アイ・ドゥ・エニシング」がシンプル・プランの方向性を見つけたような曲だったということですが、ポップパンクと呼ばれるスタイルにしようとしたきっかけは?

ピエール:もともと僕とチャックは、シンプル・プランの前にリセットというバンドをやっていたんだよ。その当時は、攻撃的なパンクスタイルで、ツタツタツタツタ(ヒザをドラム代わりに叩きつつ)みたいな高速なビートだった(笑)。5〜6年、そのバンドをやってたかな。アルバムも2枚出して、カナダ国内のツアーもやったりしたんだよ。そんなときにブリンク182を聴いて、“これはいいな”って惹き込まれた。

WANI:それがきっかけだったんですか?

ピエール:そう。それから“ポップパンクのような音を追求したい” “そういう曲をやりたい”ってね。そう強く思うようになったことが、本当の始まりだったと言えるんじゃないかな。ブリンク 182やグリーン・デイなんかを聴きながら、自分たちも“こうやったらどうだ” “ああやったらどうなる”とかトライの連続だったよ。なにしろ、僕らのもともとのルーツはメタルだったからね。長髪を振り乱しながらリフを刻むのがメタルの基本だろ(笑)。そうじゃないところを模索し始めたわけだから。


チャック:僕らはまず、パンクロックから全部の影響を受けようと思ったんだよ、アレンジやテクニックとかね。ちょうどフー・ファイターズやウィーザーなど、オルタナティヴロックが一気に盛り上がり始めた時期でもあったから、そこからの影響も当然のように受けたよ。でも僕らはいろいろな影響を受けながらも、よりメロディックに、よりキャッチーに、ものすごくポップなものもブレンドさせたいと思っていたんだ。そしてパンクやハードコアを中心としたフェス<ワープト・ツアー >や、それこそ<PUNKSPRING>に出演できるバンドになりたいって。やるべきことや目指すべきサウンドはしっかり見えていたよ。だから模索しながらも変に迷うこともなかった。それが成功したひとつの理由でもあると思う。

ASH:メタルとか疾走感あるパンクとかやっていたときも、やっぱりメロディアスなものが好きでした?

ピエール:うん、そうだね。前にやっていたメタリックな音のバンド時代から。なにしろビーチ・ボーイズやトム・ペティ、ビートルズなんかが大好きだったし、うちの親父はビートルズの大ファンでもあるんだよ。そのおかげでメロディアスなものは、子供の頃からすごく好き。自分で曲を作るようになったときも、自然に三声のハーモニーを作ったりしていたから。メインのメロディがあったら、そこに絡むようにふたつのハーモニーを構成させるとかね。

チャック:僕は10代のとき、もっとパンクらしいパンクが好きだったんだ。いろいろ聴いてきた中で特にお気に入りバンドになったのが、カリフォルニアのノー・ユース・フォー・ア・ネイム。彼らの曲はものすごくメロディが立っていて、ポップでもある。メロディって、ものすごく大きな武器になると思うんだ。あと僕はガレージパンクとかオールドスクールなパンク、アメリカ西海岸のメロディックパンクも好きでね。それらからポップな感性は養われていったところがあるかも。あとはアレンジも重要。ポップパンクであっても、プログレッシヴなアレンジにすると、メロディとのコントラストが生まれて、ポップさがさらに際立つから。常にいろんなこと考えながら、“もっといい感じにならないか” “もっといい曲にできないか”って、そんな感じだよ。


▲ASH(Vo)


▲WANI(Dr)

ASH:2022年リリースの最新作についても聞きたいんですが、『ハーダー・ザン・イット・ルックス』は、今までのシンプル・プランらしさと、新しいシンプル・プランを感じたアルバムだったんですよ。クリエイティヴの中で意識したことは?

ピエール:鋭い! このアルバムはまず、シンプル・プランの基本スタイルを目指したから。それまではモダンなスタイルというか、新しいことにいろいろトライしながら作ってきたところがある。でも日本をはじめとする世界中のファンが僕らに求めているものはどういう曲なのか、そこを考えてみたんだよ。つまり“自分たちの思うシンプル・プランらしさとは?”ということだね。そこから逃げることなく、2022年のシンプル・プランが出来うる限りのことを形にしてみようって。

チャック:そう。これまでいろんなアルバムを作ってきて、自分たちとファンが相思相愛なサウンド感とか要素がある。それを改めて意識して、全てをひとつにまとめてみようって。それがアルバム『ハーダー・ザン・イット・ルックス』のエネルギーになっている。

ASH:ということは原点回帰みたいな?

ピエール:そう、出来うる限りやってみたよ。もちろん僕らはメンバーそれぞれの音楽的な好みもあれば、他にもいろんな音楽を聴いていたりする。それを新たな曲に挑戦的に活かすことだって考えられた。でも、ファンのみんながシンプル・プランに求めていることや、自分たちが最も得意なことを形にして、みんなでライブで楽しめるアルバムにしようって。シンプル・プランのファミリー(ファン)が最高の気分になってる姿を、僕らも見たいからね。

ASH:でも、楽曲「アイコニック」には新しさを感じて、新たなシンプル・プランという印象も受けたんですよ。

ピエール:そう、そうなんだよ! アルバムには、実は毛色のやや違う曲が2曲入っていることに気づいたと思うんだ。シンプル・プランらしさを目指しながらも、やっぱりちょっとだけ違ったものとか、新たな挑戦を入れ込んでもいいんじゃないかって。

ASH:それが「アイコニック」と「アングザイエティ」ですか?



ピエール:気づいてた? 気に入ってくれたんだったら嬉しい。普段は使わないようなコードをたくさん使って書いた曲なんだ。そういう新たな側面もあるけど、同時にファンのみんながシンプル・プランに期待するような歌詞にしたいと考えていた。そういう挑戦をするのも楽しかったよ。

チャック:それに原点を意識するといっても、デビューした2002年のままということではないんだ。僕らは挑戦するのが好きだし、新しい影響を常に受けたいと思っているからね。新しいパンクバンドやポップパンクがたくさん出てきているのもエキサイティングなことだよ。彼らは僕らが作ってきたものなどに触発され、独自に解釈しながら新しいものを生み出し、それに僕らはインスピレーションを得て、また音楽を生む。刺激的な円が形成されているような感じにも思えるよ。

ASH:刺激を与え合っているわけですね。

チャック:そう。そういう中で作った『ハーダー・ザン・イット・ルックス』だから、原点というだけではなく、現在進行形のサウンドって言えるんじゃないかな。実際に、自分たちらしさを意識しつつ、限界をちょっとでも押し上げようとしながら作っていたから。原点のようなものを作りたかったと言ったものの、同時に今日的な音だって必要だよね。

ASH:今日の<PUNKSPRING>のステージでやる予定ですか?

ピエール:もちろん!

ASH:おおっ、楽しみ!


▲ピエール・ブーヴィエ(Vo)


▲チャック・コモー(Dr)

ピエール:実は「アイコニック」にはエピソードがあるんだよ。リフを思いついて曲にしてみたんだけど、“これはシンプル・プランには使えないな”と自分で思ったんだ。それでもハードディスクに録音しておいて。で、みんなで集まって曲を作っていたとき、ちょっと煮詰まった雰囲気になり始めてね。自分ではシンプル・プランに使えないと思っていたリフを、「こういうのもあるんだけど」ってメロディまで付けた原曲の状態で聴かせてみたんだ。そうしたら「めちゃくちゃいいじゃないか! これはやるべきだよ」ってみんなが言うから、予想外の展開だったよ(笑)。「じゃあ、ちょっと待ってくれ。曲に仕上げてみるよ」って。

ASH:へぇ、めちゃくちゃいいエピソードじゃないですか。

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