【インタビュー】G-FREAK FACTORY、茂木洋晃が語る「Dandy Lion」の儚さと逞しさ「立ち会っていく音楽でありたい」
■あんなにひ弱な綿毛のたんぽぽが
■ライオンという文字を背負っている
──今回のシングル「Dandy Lion」の話にもつながっていくんですけど、作詞や作曲に向かうモチベーションはいかがでした?
茂木:作詞がめちゃくちゃ難しかったです。この2〜3年で感情や価値観、疑心までもが変わってきて、ある意味、常識も屈折した部分があると思うんですね。答えが出た部分もいくつかあると思うんです、コロナ禍によって。今まで思っていることや考えていること、目指しているものや夢みたいなものの中に、どうやっても叶わないものも出てきたと思うし。ある種、決着がついたものがいくつかあるんですよね。だから、これを今言ったら絵空事だなって思うようなこともあるので、コロナ禍によって、これは書けないなって思うようなものも若干出てきました。作曲は、地元の河原に行ってインストゥルメンタルばっかり聴いていたから、できちゃうんですよね(笑)。河の流れやせせらぎがBPMになったりして、景色と音楽がどんどん溶け合っていくんですよ。すごくいい時間でしたね。
──作曲は、テーマなど決めなくても湧き上がるばかりで?
茂木:どうでもいい曲も合わせたら200〜300曲ぐらいあります(笑)。そこに言葉を入れて歌にするまでが…。今はちょっと光が見えているときなんですけど、真っ暗なときに書く曲とか、真っ暗なところに向かって落ちていってるときに書いた曲もあって。めまぐるしく状況が変わっているから、曲をリリースするときには明けているかもしれないし、もしかしたら違う新型が来ているかもしれない。
──作詞には大きく影響しますよね。
茂木:うん。そのぐらいスピード感のある敵なので。でも逆らわずにいけたらいいなと思いましたね、文字に関しては。そのときに書いたことが、リリースするときにどういう状況になっていてもしょうがないというか(苦笑)。
──嘘をつかなければいいわけですよね。
茂木:そう。歌詞をまず走り書きして、次の日の朝、頭を一度リセットするじゃないですか。そうすると、やっぱり違和感があったりするんですよ。あとは翌日に綺麗にしようとしたり。そうすると嘘っぽさが入ってくる。そのせめぎ合いかな。
──表題曲「Dandy Lion」は、人生を歌う曲ですが、茂木さんの歌声には常に優しさがあるんですよ。辛そうな描写だとしても、痛みや悲しみばかりではないと思うんです。
茂木:ありがとうございます。今、たんぽぽの綿毛のようにギリギリの状態だと思うんですね、みんな。風とか雨で、円形だったものが簡単に崩れていってしまうような。でもその綿毛たちはどこか宿命のような場所に行って、そこから再び花を目指して根を張っていくという。たんぽぽというワードを検索すると、英語では“Dandy Lion”じゃないですか。“ライオン”という文字が入っている。あんなにひ弱な綿毛のたんぽぽがライオンという文字を背負ってるんだと。百獣の王であるライオンも、自分が強いということを自覚しているかといったら、そうでもないと思うんです。全てが主観で本能だから。つまりは孤独だと思うんですよ。
──なるほど。両極端にイメージが広がります。
茂木:その両極端なふたつを真ん中に集める曲が「Dandy Lion」。今の日本を歌うことができたら、この曲は仕上がりだと思えたんです。あと今なら、こういう曲をちゃんと出してもいい時期だなという。今までだったら、“これは作っても、すぐにライブでやらなくなるな”って質感の曲だと思うんですよ。
▲シングル「Dandy Lion」
──ライブで盛り上がらせる曲とは別の良さがありますし、G-FREAK FACTORYとしては異質な曲かもしれません。
茂木:そうなんです。今は、ライブでお客さんは曲に合わせて暴れているんじゃなくて、ちゃんと曲を聴いてくれているでしょ。しっかりと観てくれる。こういう曲をちゃんとできるようになったら、今のG-FREAK FACTORYとメンバーのまたひとつ新しいチャンネルになるというか。
──歌い方自体、チャレンジというか新しい側面を形にしていると感じましたが?
茂木:よく言われるんですよ、「このツアー中に歌い方が変わったよね」って。でも、全然自覚はないんです。歌い方に変化があるとすれば、やっぱり弾き語りを始めたからだと思うんですよね。
──アコギと歌だけで聴かせる弾き語りによって、歌い方のふり幅もさらに出たのかもしれません。それにしても、2曲目の「STAY ON YOU」や3曲目の「唄種」は、セクションごとに唱法も違うし、メロディの部分をしっかり歌い切っていて、葛藤や不安を歌っていても、やっぱり優しさという感情が核にあると感じるんです。
茂木:歌い方が変わった自覚は本当にないんですけどね(笑)。あと考えられるのは、ライブではフルセットで突っ走り続けていたので、今、ライブ活動にちょっと隙間があることで、声に余裕もできたんだと思うんです。俺、MCで声をよく潰すし(笑)。
──MCというよりも、曲のエンディングなどで気持ちが高まってメッセージし続けるときですよね。
茂木:そうです。あれがなければ、ノドは三連チャンでも四連チャンでも大丈夫だなって、弾き語り組合の経験で気づきました(笑)。
──今回、楽曲アレンジも細部まで巧妙なやり口といいますか、聴きごたえありますよ。
茂木:モチーフが決まっちゃえば、アレンジに関してはうちのメンバーはすごいんで。それに、今までは自分が楽器をプレイできなかったけど、この2年間のつたないギターの練習のおかげで、アレンジのアイデアも具体的な形で持っていけるじゃないですか(笑)。ちょっと違和感があれば、「そこはこっちのほうがいいんじゃないか」って言うという。
──その成果が新曲に。
茂木:今回のアレンジは、実はいっぱい鳴ってますよね、音やフレーズが。「Dandy Lion」「STAY ON YOU」「唄種」、すべて気に入った3曲ができたと思います。今、廻っているツアーの現場リハーサルで、PAやスタッフも交えて、新曲のリハーサルもちょっとずつ始まっていて。難しい3曲ですけど、実際にライブでやるときの楽しみのほうが大きいですよ。
──それにライブで歌い続けていくことで曲の意味合いも変化していきそうですね。
茂木:そうですね。違った思いが出てくるかもしれない。その辺は大いにあると思います。CDというアイテムは教科書というか、ひとつの作品なんですけど、教科書どおりじゃなくていい。全然変化していけばいいと思います。
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