【インタビュー】HYDE、20周年オーケストラコンサートとこの先を語る「この状態に我々はどう対処していくか?」

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HYDEが7月27日、『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021 Complete Box』をリリースした。同作品は、DISC1にツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>よりパシフィコ横浜公演の模様を、DISC2に平安神宮での奉納コンサート<20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU>の模様を収めるなど、一連のオーケストラコンサートを記録した映像作品となっている。また、豪雨に見舞われた平安神宮初日や、郷里・和歌山での<20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama>の舞台裏などに密着したドキュメンタリー映像“Orchestra Concert Documentary”も収録。さらには<20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama>ライヴ音源を収めたCDやオリジナルフォトフレームも付属する。なお、『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021』はDISC1とDISC2(※“Orchestra Concert Documentary”除く)からなる映像作品となるものだ。

◆HYDE 画像

ソロ活動20周年、L'Arc-en-Ciel結成30周年というアニバーサリーイヤーをコロナ禍に直撃されたHYDE。熱狂の渦にオーディエンスを巻き込むアグレッシヴなライヴができない状況下、静謐なソロ1stアルバム『ROENTGEN』の存在に光を当て、オーケストラ編成でのツアーを実施。着席での観覧スタイル、声援やシンガロングの無い静けさをもプラスに転じ、見事なコンサート空間をつくりだしてみせた。

そしてリリースされる『HYDE 20th Anniversary ROENTGEN Concert 2021 Complete Box』は、演者として表現世界に没入するHYDE、プロデューサーとして全体を冷静に見渡しジャッジするHYDE、常にオーディエンス側の目線を失わずエンターテインメントを届けようとするHYDE、と様々な顔に出会える貴重映像の宝庫である。荒々しいパフォーマンスをライヴハウスで繰り広げる対バンツアー<HYDE LIVE 2022 RUMBLE FISH>(※大阪公演レポート名古屋初日レポート名古屋2日目レポート)の真っ最中、モードを切り替え、HYDEはオーケストラコンサートについて振り返ってくれた。

   ◆   ◆   ◆

■伝わりやすいということは
■僕の基本かもしれないです

──2021年の一連のオーケストラコンサートを映像で改めて拝見して深く惹き込まれました。HYDEさんはご覧になって、どのように感じられましたか?

HYDE:編集チェックとかで観ても、ついつい観入っちゃうんですよね、スーッと吸い込まれるというか。L'Arc-en-Cielのようなライヴとはまた違って、オーケストラの演奏によって音楽に惹き込まれる感じがありますね。動きとか演出とかと言うよりも。

──HYDEさんご自身も、いつにも増して歌に集中なさっているように見えました。実際、フィーリングはいかがでしたか?

HYDE:前回の<黑ミサ>(<HYDE ACOUSTIC CONCERT 2019 黒ミサ BIRTHDAY>)よりも、さらに歌の表現力が増したんじゃないかなと思っていて。表現もそうですけど、“伝える力”が付いたような気がしますね。


──では、DISC1→DISC2の順にお訊きしていきます。DISC1にはツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>の終盤であるパシフィコ横浜公演の模様が収録されます。オーケストラ形式ということもあって、集客制限の無いもので。同ツアー初日となった中野サンプラザ公演は、久しぶりに100%埋まった会場を見渡したHYDEさんが、本当にうれしそうになさっていた記憶があります。

HYDE:ファンの子もずっと我慢して耐えていたと思いますし、その当日も感染していたら会場に入れないわけだから、コンサートに来るまでも感染症対策を頑張ってくれていたと思うし。そういう意味でもやっぱり、出会えた喜びはお互いにいつも以上に大きかったですよね。マスクをしていても、ファンの子がうれしそうにしているのは伝わってきますから。我々も全員検査をして、もし感染が判明したら突然メンバーがいなくなる可能性もあるわけで。みんなちょっとピリピリしていましたね。

──オーケストラですと大人数の出演者になりますもんね。

HYDE:そう。人が多いということは感染リスクが高まるということでもありますからね。

──その緊張感ある中で進んでいったツアーだったんですね。結果、HYDEさんはこのコロナ禍、感染対策を万全に施せば、ライヴは決して危険なものではないことを実証してきました。

HYDE:ファンの子たちの努力とスタッフの努力と、その気持ちが結集すればライヴ会場は安全なんですよね。

──そして『ROENTGEN』というアルバムは、もともとご自身の内面を掘り下げて生まれた静謐な作品です。20年後にツアーという形で披露し、人々とその世界観を共有したことで、作品に対する捉え方はどのように変化しましたか?

HYDE:う~ん……、“今の僕がやるとああいう感じになるのかな?”ということですかね。つくっている時は、実際にライヴで披露することは考えてなかったですから。だから、“リアルでやるとこうなるんだな”というのは、僕としても改めて感じる驚きでもあったし。アリだなと思いましたね。“これはまたいつかやりたいな”って思いました。

──ある意味、不幸中の幸いという側面もあったんでしょうか。

HYDE:そうですね、再発見できましたね。『ROENTGEN II』をつくっている……と言いながら今は中断しちゃってるんですけど(笑)、ツアーに向けて新曲を作っている時は本当にやる気満々でしたし。ちょうどコロナ禍もあって、“激しいライヴはできないしなぁ”みたいな感じだったから。

──リアルに披露してみて、特に驚きがあったのはどの曲ですか?

HYDE:「NEW DAYS DAWN」とかかな。もともとギターの代わりにチェロを使うイメージでできた曲だったんです。今でこそApocalypticaのような、チェロのメタルバンドがいますけど、僕はApocalypticaの存在を知らない時から、すでにあれをやっていたという。

──Apocalypticaとは後に共演されますが、それよりずっと前だったんですね。

HYDE:ね、随分前ですよ。“チェロでスラッシュメタルをやったらどうなるんだろう?”みたいな気持ちでつくったから、あの曲を演奏すると“おおっ!”ってなりますね。イントロの金属音もそうだし、ちょっとロックを感じる時はやっぱりロックモードのHYDEがチラリチラリするというのはありましたね。

──ドラマティックな陰影に富んだバラード「THE ABYSS」など、新曲群も素晴らしかったです。初披露の手応えはいかがでしたか?

HYDE:手応えはありましたね。『ROENTGEN』の曲はもう、なんだかんだで20年聴いてきたから(笑)、新しい曲があると自分自身もすごく燃えるし。いい曲だと思うし、やっていて新鮮で楽しかったです。

──ああいった雰囲気を湛えた曲たちが増えていった先に、『ROENTGEN II』が誕生するということですかね。

HYDE:そうですね、そのうちつくらないといけないですね(笑)。


──お忙しいと思いますし、コロナ禍の状況にも変化がありますから。さて、DISC2には平安神宮での奉納コンサート<20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU>が収録されます。初日は大雨に見舞われましたが、あの2日間を今振り返って、どんなことが一番印象に残っていますか?

HYDE:お客さんの頭上にある雨雲を眺めながら歌った初日の光景ですかね。この記憶を焼き付けたいな、と思いながら歌っていました。

──それは、喜びともまた違う感情なのでしょうか?

HYDE:突き詰めると喜びかもしれないですね。奉納コンサートではあるんですけど、神様に向かって歌い、ファンの方に向けて歌って、自分がそれを生業にして人に喜びを与える職業だということに幸せを感じるというか。こういうタイミングで、あの場所で出来てうれしかったし、すごく感慨深かったですね。

──それが激しいロックであっても、音楽そのものの成り立ちを考えると、神に捧げるものという起源がありますよね。ソロ20周年というタイミングで、これ以上ないほど象徴的な場所でライヴをされた、という巡り合わせを感じます。

HYDE:まぁ、そういうのもあるかもしれないですね。終演後も感謝しかなかったです。雨が降った初日も、上手く出来た2日目も、やっぱり“神様ありがとうございました”という気持ちでした。

──演奏形態としては、オーケストラと雅楽、生バンドが融合されるという、なかなか観られない稀有なスタイルでした。つくり込んでく中でHYDEさんは特にどういうことを大事にされていたのですか?

HYDE:僕自身アヴァンギャルドな音楽はそれほど好きじゃないから、しっかりと伝わるものを目指しましたね。ファンの子が聴いても分かりやすいものが僕の喜びでもあるので。雅楽もそうですし、石笛(いわぶえ)や能楽師による狂言が入ってきたこともそうですし、やっぱり流れが美しいものにしたい。僕、激しいロックであってもあまり複雑になり過ぎると、ちょっと“うん……?”ってなっちゃうんですよ。伝わりやすいということは、僕の基本かもしれないです。キャッチーにするという作業が僕の仕事ですね。

──オーケストラツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>が続いているなかで行われた平安神宮での奉納コンサートでもありました。

HYDE:そのオーケストラがいるから、平安神宮でのコンサートも見栄え的にもカッコいいものになるだろうという流れでもともとは企画したんですけど、結局別もののコンサートになりましたね(笑)。平安神宮ならではの演出とかアレンジ、それこそ雅楽との融合があったので、大変でしたね。

──伝統芸能の演者さんたちとのコミュニケーションにはやはり、難しさもあったのでしょうか?

HYDE:僕が直接雅楽の方々とお会いできるのは公演前日のリハーサルが初めてだったので、それまでの間はスタッフ経由でやり取りしてもらっていたんですけど、結構大変だったみたいですね。

──決まり事も多そうですね。

HYDE:ものすごくありました。だから、実現させるのはなかなか大変で。あと、コンサートができる時間も決まっていて、一般参拝が終わってからの時間から20時30分までしか音を出してはいけなかったんです。本来僕は2時間ぐらいの公演をしているのに、平安神宮だけ1時間というのもせっかく来てくれるファンの子がかわいそうだから、“いかに内容をギュッと濃くして満足してもらうか?”とか。特に初日は雨のために開演時間が遅れてしまったので、その辺のことは意識しましたね。

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