【インタビュー】HYDE、20周年オーケストラコンサートとこの先を語る「この状態に我々はどう対処していくか?」
■神様が与えてくれたものにどう対処していくか
■そこで切磋琢磨していくのが我々のスタンス
──ドキュメンタリー映像“Orchestra Concert Documentary”には、豪雨で定刻に開演できず、どんどん曲数を削っていく苦渋の決断のプロセスが映し出されていました。どの曲をカットするか?という判断は、あの場で急に突き付けられたことだったのですか?
HYDE:そうですね。あれはもう、演出をすべて理解していないと判断できないですから、僕自身がバシバシと決めていきました。
──「6、7曲目をカット」、それでも足りず「さらに減らしてほしい」と求められて、次は「4、5曲目」というふうに、素早く判断なさっていました。どういう思考回路で削除曲を選ばれたのですか?
HYDE:やっぱりコンサートとして、要点となる曲は外せないので。正直に言えば、セットリスト全曲に意味があるんですけど、その中に特に重要な部分というものがあって。例えば、連続して重要な曲があるという構成は、僕的にはちょっと緩急が無いように感じるんです。重要な曲をやって、次に谷があって、また次の山に向けてという起伏があって美しいコンサートだと思うから。だから本来は全部やりたいんですけど、どうしても谷の部分を削るしかないですよね。そういう流れがあってもともと演奏曲を決めていたから、端折る部分はまぁすぐに判断できましたけど。苦しい決断でしたね。
──オーケストラツアーにはなかった「ZIPANG」や「MY FIRST LAST」といった選曲も見どころのひとつで。
HYDE:平安神宮でやるからには、そういう肝というかハイライトとなる部分は欲しいと思ってました。
──初日は曲数は減って残念でしたが、コンサートの骨子が際立ち、2日目はそれを経ての全体像が観えて。2日間あって良かったですよね。
HYDE:ほんまですね。1日だけで終わっていたら、えらいことになってた。“もう二度とやるか!”っていう気持ちで終わってたかもしれないですね(笑)。
──神への奉納ではありつつ、HYDEさんが喜ばせたい対象であるファンの皆さんは、大雨でずぶ濡れになっていたわけですし。
HYDE:そうなんです。できれば傘を差した状態で観せてあげたかったんですけどね、差すと後ろの人が観えなくなってしまうので。それに、浴衣を着てたり、オシャレをして来てくれていたファンの子も多かったから余計にかわいそうでしたね。一応事前に、カッパを持ってくるようには伝えてあって、それは良かったなとは思いました。
──ドキュメンタリーでは、HYDEさんはご自身が濡れることは厭わず、ファンの皆さんを一番に心配なさっている姿に優しさを感じました。
HYDE:楽器が濡れたら故障してしまいますけど、歌って特にそういうことがないので、僕は何てことないんですよ。音の環境さえ何とかなれば歌えるから。あの日は本当にすごい土砂降りだったので、足元にあるスピーカーが飛んだら音が聴こえなくなるので演奏ができなくなっちゃうけど、そこさえ何とかすれば、僕自身が濡れるのなんて大したことない。終わったらすぐお風呂に入れるし。でも、ファンの子たちはせっかくおしゃれをして、音楽を受け止めに来てくれているのに。雨がその邪魔になっちゃうから、かわいそうだなと思っていて。雨で濡れて心配っていうのもあるし、ファンの子たちの気持ちが歌に集中できなくなっちゃうという意味でも、かわいそうだなと思っていましたね。
──その両面に胸を痛めていらっしゃったのですね。でも、終わって時が経てば、ひときわ強く印象に残る、忘れられない想い出になるでしょうね。
HYDE:そうなんですよ、映像として観た時に、雨が降っていたことによる説得力があると思いました。切ない曲とかはグッと入ってきましたしね。そういう意味では、映像化して初めて“あの日は雨で良かった”と思えましたね。ファンの子にもこの映像を観ていただいたら、さらに“この日観に行ったよ。雨で良かった”って思ってもらえるかもしれない。
──歴史的な1日ですものね。雨も演出の一部になっていましたし、建物に投影するプロジェクションマッピングも幻想的で、あの空間を活かしきっていました。演出プランはどのように組み立てられたのですか?
HYDE:舞台のどこにオーケストラを配置するかとか、どういう登場の仕方をして、どういう衣装を着るかとか、楽曲のチョイスとか、映像チェックとか。まぁ、やっていたこと自体は普通のことです。
──衣装は白陰陽師とでも言いますか、平安時代からタイムスリップして来たかのようでした。
HYDE:「どういう衣装がいいか?」って京都の友だちと話していたら、「やっぱりみんな陰陽師を観たいんじゃないですか?」という話になって、その雰囲気で考えていきましたね。演出に関しては、いかにお客さんが神社と僕の両方を観られる状態にするかということを考えていって。というのも、お客さんは座って観るわけで、目の前に大きなオーケストラがいると、後ろにある神社の建物が観えなくなってしまうんですよね。だから、オーケストラの位置はなるべく下げて、後ろの神社がしっかり観やすい状態にしたい、とかね。
──そこもお客さん目線ですね。
HYDE:僕はそういう目線で常に考えるんです。プロジェクションマッピングも、映像を観せたいという制作側の立場のスタッフは細かいことを考えて作ってきてくれるんだけど、“いや、それお客さんからしたら観えてないし”って思っちゃうものが結構多くて。観えていないものがあると印象がボヤけてしまうから、だったら逆にもうそういった素材は無しにして、観やすいものだけコントラストを上げて目立たせるとか。素人が観て分かりやすくなるよう、僕がなるべくアドバイスするようにはしていますね。
──HYDEさんの身体に巻き付く白い蛇のプロジェクションマッピングもクライマックスを盛り上げて見事でした。それと、篝火の数に至るまでディレクションなさっていましたよね。後ろの建物に投影する月の映像を観せたいなら、そこまで明るくし過ぎなくていいんじゃないかとか。
HYDE:そうそう。それも素人目線ですよね。でも、素人だとたぶん演出のことは分からないから、“あ、火が点いた。すごい”で終わりかもしれない。でも映像のプロからすると、火よりも月を観せたいわけですよね。そう考えるとやっぱり“火が強過ぎるよね”と言える人って、どちらの立場からも意見を言える僕しかいない。そういう意味でも、両方を観ることができる存在として、プロデュースするようにしています。
──中心に立つパフォーマーでありながら、全体もご覧になっているということですよね。誰かに任せたくなることはないですか?
HYDE:いや、任せられるなら任せたいですけど……(笑)。まぁしょうがないですね、そこは。
──ヘア&メイクは睫毛が白く、髪もプラチナブロンドで、現実離れしたムードをまとっていました。ヘア&メイクはどのようなコンセプトだったのですか?
HYDE:白っぽく、色素が抜けたような感じにはしたいなと思っていました。コンセプトは何だろうな? やっぱりその場の雰囲気に合うように、ということかな。たぶん<HALLOWEEN PARTY>で培ったんだと思います。
──なるほど。
HYDE:あの場に則した、まぁ言い方は正しくないかもしれないですけどコスプレというかね。それを楽しんだという感じじゃないでしょうか。もともと昔の人も、能や狂言もそうですが、顔にすごいメイクをして舞台に立っていたわけじゃないですか。それと同じような感じで現代の僕が、ああいう場所で舞台に立つのであればこういう感じかな、というプロデュースですね。
──<HALLOWEEN PARTY>の経験すら役立ったということは、やはりHYDEさんにとって集大成的なコンサートだったんですね。
HYDE:そうですね、まさに。
──コンサートが終わった後、神様に感謝する気持ちになったとおっしゃっていましたし、始まる前には、雨が止むように手を合わせて祈る場面も収められていました。あのコンサートの2日間が終わってから、神に対する気持ちが変化した部分は何かありますか?
HYDE:うん。よく神社へ行ってお願い事をするじゃないですか。もちろんお願い事をするのはいいんです。だけど、我々はしょせん“生かされている”と思うようになったというかね。神様が与えてくれたものに対して我々はどう対処していくか。そこで切磋琢磨していくのが我々のスタンスで。お願い事をするのとはまた別の話かなと思いました。だから、お願い事をするというよりも、“この状態に我々はどう対処していくか?”ということを神様に観ていただく、という気持ちにちょっと変わりましたね。
──より謙虚な気持ちになった、ということでしょうか?
HYDE:そうですね。そうあるべきなんだなと思いました。
──そういう瞬間も収められた貴重な映像ということにもなりますね。
HYDE:初日は豪雨で、みんながかわいそうで、本当に開演前は力が抜けたんですけど、結果ドラマティックになりましたね。初日は雨で悔しい思いもあったけど、2日目はやりたかったことがしっかりできた。その2日間を1つのパッケージと考えれば、すごく美しいコンサートだったと思います。雨の日の映像がすごく美しいんです、自分で言うのもなんですけど(笑)。この映像作品が出来て、やっと満足いく形になりました。
──映像作品に加えて、Complete Boxには郷里・和歌山での<20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021 Wakayama>の音源を収めたライヴCDも入ります。この音質があまりにも素晴らしくて。ライヴレコーディングではありながら、スタジオレコーディングにも匹敵するほどで、「THE ABYSS」や「SMILING」といった『ROENTGEN II』に収録されるであろう楽曲を高音質で聴くことができるという。本当にメモリアルなパッケージになりましたね。
HYDE:そうですね。まだリリースしていない新曲をライヴ音源にも入れてしまうという(笑)。詰め込みましたね。もう、これ以上入れるもん無いです(笑)。
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