【インタビュー】HYDE、『HYDE [INSIDE]』の圧倒的表現力と攻撃性「不思議な、日記みたいなアルバム」
約5年ぶりとなるHYDEのニューアルバム、その名も『HYDE [INSIDE]』が完成した。2020年発表の「BELIEVING IN MYSELF / INTERPLAY」以降のシングルが収録されているアルバムは、そのままコロナ禍以降のHYDEの軌跡と言えるようだ。さまざまな困難が立ち塞がった4年間。しかし、HYDEならではのアイデアを駆使し、自ら先陣を切ってステージに立ち続け、貪欲に表現を磨いてきた。その結果、無二の世界を築いているワンマンはもとより、フェスに出演すれば初見のオーディエンスを魅了してやまない。
◆HYDE 画像 / 動画
アルバム全13曲中10曲が、そうしたライヴで既に披露され、キラーチューンとしてフロアやフェスを沸かせてきた楽曲たちだ。ライヴのエネルギーごとアルバムに閉じ込めつつ、メタルコアの領域にまで踏み込んだ新曲「SOCIAL VIRUS」では攻撃性をさらに高め、バラード「LAST SONG」では圧倒的な表現力を見せて締め括る。ソロとしてキャリア20年を越えてなお、自ら理想を求めて挑戦と進化を止めないHYDEというアーティストに飲み込まれる1枚の完成だ。
14名のコンポーザーの参加、自身の名前を冠したセルフタイトル、“内なるHYDE” “HYDEの心の中”の意図…アルバムを完成させた今、HYDEがどんな未来図を描いているのか、じっくり語ってもらった。
▲『HYDE [INSIDE]』
◆ ◆ ◆
■静かなHYDEもいれば、激しいHYDEもいて
■まさにジキルとハイドのようなキャラクター
──アルバム『HYDE [INSIDE]』についてお伺いしていきたいと思います。前作『ANTI』から約5年の軌跡が詰まったアルバムになりましたが、完成しての手応えはいかがですか?
HYDE:僕としては結構あっという間で、そんなに長く空いた感覚はないんですよ。ただ、5年前というとちょうどコロナ禍が始まる前だったので、そこからの激動の時代に作曲したものが集まっているんですよね。思えば、初期の「INTERPLAY」を作った頃は、令和になって、オリンピックが東京で開催されて、時代的にもっと開花するという気持ちでやってましたから。そういう意味では、不思議な、日記みたいなアルバムとも言えるかもしれない。
──制作しながら、振り返る作業にもなりましたか?
HYDE:振り返るって感じじゃないけど、改めて考えるとそういう面もあるなっていう感じですね。
──最近は特にアルバムにはせずに、音源を単発でデジタルリリースするアーティストもいますが、いずれアルバムという形にはしようと思っていたんですか?
HYDE:もちろんです。僕のファンにはCDというフィジカルをグッズとして欲しい人もたくさんいるし、ぜひ出したいとは思っていましたね。アルバムにすることによって、やっとひとつの作品が完成するというイメージがあるし。こういう激しいアルバムを作りたかったんですよ。
──本当に、過去イチで激しいアルバムですよね。そういう意味では、ソロ活動20周年の2021年、1stアルバム『ROENTGEN』をフィーチャーしたオーケストラコンサートを開催した時期にリリースされたシングル「NOSTALGIC」と「FINAL PIECE」は入っていないですが、やっぱり別軸という扱いですか?
HYDE:そこは次のアルバムですね。以前から、『JEKYLL』と『HYDE』っていう2枚のアルバムを出したいと思っていて。まず今回、激しいアルバムの『HYDE [INSIDE]』が出て、次の『JEKYLL』はオーケストラやアコースティックのアルバムにしようと思ってて。できればの話ですけどね。
──静と動でいう静の部分は、ずっと裏側にある存在なんですね。
HYDE:そうですね。アメリカを活動拠点にしていた時に「静かなHYDEもいれば、激しいHYDEもいて、まさに“ジキルとハイド”のようなキャラクターになったらどうか」みたいな話があったんですよ。飲みながらの軽い雑談でしたけど、僕としても“確かにそうかもな”と思って。それ以来、ずっと“そういうアルバムを2枚作れたらいいな”というイメージがあるんです。やっぱり、なんだかんだ言いながら名前に引っ張られるものなんですよね。L'Arc-en-Cielも、最初は二面性と言っていたけど、今では虹色で多面的じゃないですか。
──たしかにそうですね。“ジキルサイド”の作品もぜひ聴きたいです。
HYDE:僕自身もいろんなことをやりたいので、ちょっとひとつにはまとめられないんですよね。激しいライヴもあれば、オーケストラの<黑ミサ>も自分の中の王道だから。両方必要なものですね。
──では、今回の『HYDE [INSIDE]』は、思いっきりアグレッシヴサイドに振り切ろうと。
HYDE:そうですね。だって、そもそもこの中に「NOSTALGIC」とかは入れられないでしょ(笑)。まあ、別の意味で「BELIEVING IN MYSELF」とか「ON MY OWN」も、“前のアルバムに入ってたんじゃなかったっけ?”って最初は思っちゃいましたけど。
──2020~2021年頃の曲はもう懐かしく感じますよね。いざアルバムの完成に向けて動き出したのはいつ頃なんですか?
HYDE:去年からですかね。あと2曲で13曲になるからそろそろ…とは思っていて、年が明けてL'Arc-en-Cielが一段落したら制作に取りかかろうという流れでしたね。でも、アルバムジャケットは早い段階で決めていて、去年の「6or9」ミュージックビデオ撮影の時にもう撮影していたんですよ。
──早いですね。その時すでにイメージがあったんですか?
HYDE:「BELIEVING IN MYSELF」から、シングルのジャケットをタトゥーシリーズでずっとやってきて。その最後はHYDE自身のタトゥーにしようというオチを決めいていたんです。蛇のマークが僕自身に入っているイメージで、それに合わせて実際にタトゥーを入れたりして。最初にアイデアを考え始めた時は数年先のことだったから、いざ実際にやってみたら自分の裸がいろんなところに使われることになっちゃって、ちょっと恥ずかしかったけど(笑)。
──かなりインパクトのあるジャケットです。
HYDE:ソロならではですよね。バンドだったら「なんで自分の名前をタイトルにしてるの」ってなるだろうし、そんなアイデア自体恥ずかしくて言えない(笑)。
──2009年リリースのベストアルバム『HYDE』以来のセルフタイトルでもありますね。前作が否定的な意味を持つ『ANTI』だったのに対して、今回はタイトルが『HYDE [INSIDE]』です。なおかつ、ご自身の写真がジャケットになっていて。「これが今のHYDEです」という自信や確信めいたものが伝わってきたんですが?
HYDE:うーん、そうなのかもしれないけど、基本的に『JEKYLL』と『HYDE』をセットで考えていたので。“これが俺だ”って言いたいわけでは特になくて。すでに、もう“次はこうしたいな”っていうアイデアがあるし。
──頭の中のアイデアは、かなり先のものもどんどん湧いてくるんですか?
HYDE:そうですね。もともとそういうことを考えるのも好きなほうなので。最近…そういうところが僕の個性なのかなと思い始めました。自分では当たり前だと思ってたけど、そういうヴィジョンがない人も案外多いと聞いて。僕はそういうヴィジョンを考えるのが好きだから、ロゴやグッズのデザイン、ライヴの構成とかもアーティスト自身が考えるのが普通だと思っていたけど、デザイナーにお願いしてそこから選ぶ方も多いみたいですね。この間、石井竜也さんとラジオでお話する機会があったんですけど、彼はアート分野でもすごい活躍されている方じゃないですか。僕よりすごい人がいるって改めて知ったと同時に、そういうタイプばかりじゃないんだなって気がつきましたね。
──「音楽を作ることしかしません」という人もいますからね。
HYDE:ね。それはそれで素晴らしいスタイルだと思うけど。
──アイデアが尽きることはなさそうですか?
HYDE:むしろ減らすようにしてます。昔だったらもっとのめり込んでやってたと思うけど、今はそっちにあまり時間を使いたくないから。
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