【コラム】Omoinotake、『チェリまほ THE MOVIE』主題歌「心音」が織り成すリアルな鼓動と深い感動
2021年11月にEP『EVERBLUE』でメジャーデビュー、映画主題歌としても話題の最新曲「心音」(4月13日配信リリース)がiTunes総合ランキングで6位につけるなど盛り上がりを見せるピアノトリオが、Omoinotakeだ。5月20日にNHK総合『あさイチ』に出演、番組内の『特選!エンタ』のコーナーでメジャーデビュー曲「EVERBLUE」と最新曲「心音」をフルで披露した。
◆Omoinotake 動画 / 画像
朝の生番組で、また普段のライヴとは違ったスタジオライヴという環境だったが、デビュー前から渋谷を中心に路上ライヴを重ねながら観客を増やし、チャンスを掴んできたバンドらしい巧みなアンサンブルと(朝にも関わらず)エモーショナルなハイトーンで、スタジオや視聴者の心をつかんだ。トークでは路上ライヴでのエピソードや目標である「紅白歌合戦に出ること、出続けることで頑張っている姿を見せたい」と語り、パフォーマンスを間近で見たMCの博多大吉に「僕の言うことじゃないですけど、大晦日は空けておいてください」とお墨付き(?)を得た。放送中よりSNSでは感動の声や他の曲も聴いてみたいという声が上がり、Twitterトレンドで1位。短い時間だったが初めての生番組でのパフォーマンスで、しっかり“Omoinotake”の名を刻んだ。
Omoinotakeは2012年に、中学からの同級生である島根出身の藤井怜央(レオ / Vo&Key)、福島智朗(エモアキ / B)、冨田洋之進(ドラゲ / Dr)が東京で結成したピアノトリオ。ライヴハウスで活動をしながら、2017年にインディーズで1stアルバム『So Far』をリリースした3人は、その活動の場を路上にも広げていった。
コロナ禍で実際にライヴを行なうことが難しい時期も“#NoBuskNoLife”と銘打って、様々な場所から無観客のオンライン・ストリートライヴを配信し、馴染み深い渋谷スクランブル交差点を見下ろす場所で行なったライヴでメジャーデビューの発表もしている。その音に都会的な街の息吹やそこに暮らす人々の温度を感じるのは、路上ライヴを通して得たリアルな感覚が昇華されているからだろう。音楽ファンが足を運ぶライヴハウスとは違って、路上では様々な人が行き交い、時にはハプニングだって起こる。身も心も鍛えられるような路上ライヴでの経験は実際に曲作りや、キャッチーさにも生かされていったようで、当時のBARKSインタビューでは「路上ライヴをやっていたことで、曲のどの部分を切り取ってもハッとするように曲を作るということが根底にある」と藤井怜央は語っている。
R&Bやダンスミュージックを下地に、チルなムードからアッパーで心弾ませるグルーヴを生み、また1フレーズで聴き手を曲が描く情景に引っ張り込んで追体験させるとともに、普段はしまい込んでいる気持ちとも出会わせてくれる。切なさ、懐かしさ、いつか抱いた淡い思いや、そこでの香りやこそばゆい温度感。Omoinotakeのポップミュージックは、様々な人間模様が交錯する路上=ストリートという場で、そのひとりひとりの人生のどこかで重なり、寄り添い合う曲へと洗練されていった。
歌詞を手がけるのは、エモアキこと福島智朗。“エモ”アキというニックネーム通り、その筆致は、喜怒哀楽、とくに切なさの琴線に触れる。そして、藤井怜央のエモーショナルなハイトーンヴォーカルと流麗な鍵盤、物語に豊かな起伏をつけていく冨田洋之進のドラム、さらにピアノトリオで唯一の弦楽器として際立つ存在を放つ福島智朗のベースのアンサンブルで、カラフルな音楽を描いている。
メジャーデビュー前より、「モラトリアム」(2020年)が劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』主題歌に起用され、YouTubeの人気チャンネル『THE FIRST TAKE』にも登場し、コロナ禍でのリアルな心境を封じ込めた「One Day」(2020年)を披露して話題となった。またテレビ東京のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のオープニング曲として書き下ろした「産声」は、ドラマ主人公の心の機微を表現して、作品に欠かせない音楽としてドラマファンの心も惹くなど、Omoinotakeの曲は広がっていった。ドラマはこの春映画化され、映画『チェリまほ THE MOVIE』では主題歌を手がける。
それが4月13日に配信リリースされた「心音」だ。「産声」が突然芽生えた恋心、感情の胎動への戸惑いや高まる思いを綴った曲ならば、今回の「心音」は相手と心を重ね合わせることで生まれる喜びや、愛おしさ、強さ、だからこそ湧き上がる切なさも丁寧に描いた。形はないけれど尊いものを、温かなサウンドとキャッチーで晴れやかなメロディに映した1曲となっている。また、メンバー個々のサウンド&プレイも絶妙だ。休符を巧みに操るベースラインは楽曲を躍動させ、パットを駆使した2番Aメロのハイハットワークは極上のフックを作り出した。ピアノとボーカルのみになる落ちサビは“さよならのいらない 二人になろう”という歌詞と作用し合って実にエモーショナル。感情の起伏をなぞるアレンジとアンサンブルは、まるで死角がない。
これまで大事に積み重ねてきた音楽への思いと、メジャーデビューという新たなフィールドに進んでいく高揚感やそこに滲む一言では言い切れない“蒼い”感情を爽快でロックなアンサンブルで描いたメジャーデビュー曲「EVERBLUE」に続いて、最新曲「心音」では真正面からラブソングを歌った。それぞれタイプは異なる曲だが、その真ん中にあるのはリアルな鼓動感だ。ふとしたことで心が1ミリでも2ミリでも動いた瞬間を音楽として表現する、そのいわく言い難い感動がOmoinotakeの曲を豊かに、そしてキャッチーなものにしているのだろう。
取材・文◎吉羽さおり
■Digital Single「心音」
作詞:福島智朗 作曲:藤井怜央
配信リンク:https://smar.lnk.to/4vaZct
■Major 1st EP『EVERBLUE』
【初回生産限定盤(CD+DVD)】AICL-4133~4134 ¥2.000+tax
・スペシャルスリーブケース封入(ブルーピリオド絵柄)
【通常盤(CD)】AICL-4135 ¥1.500+tax
▼DISC 1:CD ※初回生産限定盤/通常盤共通
1. EVERBLUE
2. By My Side
3. クロスワード
4. 漂流教室
▼DISC 2:DVD
1. “EVERBLUE” Music Video
2. “ブルーピリオド” OPノンクレジットVer.
購入:https://lnk.to/TSZqq9
配信リンク:https://lnk.to/MIcjDN
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